2020年7月11日土曜日

2020年7月ついに運行開始 新型新幹線N700Sを解説




2016年16月24日に製造することが発表され、2020年7月1より運行を開始したN700Sについて紹介します。
記事作成日: 2016.06.24/記事更新日: 2020.07.11

東京駅に到着するN700A
東海道・山陽新幹線で
現在最も新しい形式のN700A


最高のN700系2020年7月1日運行開始

JR東海は2016年6月24日に東海道・山陽新幹線向けに新型新幹線車両N700Sを投入すると発表しました。そして試験車両にあたる確認試験車を2018年に、2019年より量産車の投入を開始し2020年7月1日に運行を開始しました。N700SのSは最高という意味の「Supreme」という単語に由来します。

2016年6月24日発表

・「SiC」などの採用による軽量省電力化
・柔軟な車両編成への対応
・新型先頭車形状にによる騒音低減
・フルアクティブ制振制御の採用
・リチウムイオン電池採用による非常時居住性改善
・走行機器や車内のモニタリング強化
・地震時のブレーキ短縮
・全席コンセント設置


2017年9月28日発表

・パンタグラフの構造変更
・台車の構造変更による軽量化
・6極駆動モーター採用
・歯車装置の歯車の形状を変更

N700SはN700A系をベースにフルモデルチェンジした車両で、発表当時より順次新しい技術について発表されていきました。それらについてすべてのではありませんが、解説したいと思います。

SiCなどの採用による軽量省電力化

新幹線は長年軽量化と省電力化が図られてきましたが、今回一番大きな鍵を握ると思うのが「SiC」の採用です。「SiC」は炭化ケイ素の略です。従来半導体と言えばシリコン(ケイ素)でしたが、炭化ケイ素を使うことで、より高性能で耐熱性に優れたパワー半導体を作ることが出来ます。そして高性能な分同じ性能を求めるのであれば、小型省電力化が可能になるわけです。さらに耐熱性に優れているため、冷却機器の小型化で装置全体を小型に出来ます。

N700Sでは他の機器の見直しと共にインバーター冷却システムを走行時の風で冷やす走行冷却方式に変更するインバーター装置の見直しとで、16両編成あたり11t削減しました。

消費電力ではN700Aと比べて当初7%削減可能としていましたが、運行開始時の資料では285km/h走行時6%の削減となっています。これはN700Aの275km/h走行時の消費電力よりもわずかに少ない値です。

柔軟な車両編成への対応

「SiC」の採用などで装置が小型になったことで、床下機器の配置も大幅に見直されました。従来は8種類あった床下機器のパターンを4種類に絞ることで、設計変更なく16・12・8・7・6両の柔軟な編成を可能としました。これをJR東海は標準車両と読んでいて、国内外問わずに低コスト・タイムリーに車両が供給可能になります。

6~8両まではオールM車による編成とし、12両の場合は10M2T、16両の場合はオールMか14M2Tの組み合わせを可能としています。

新型先頭車形状の採用

N700系は「エアロダブルウィング」という形状を採用していますが、新しく「デュアルスプリームウィング」という形を採用しました。ボートの船底に採用されているような形に非常に近くなっています。これにより更に走行時やトンネル進入時の騒音を低減できます。

さらに前照灯も大型化され、視認性を向上しています。この前照灯はLEDを採用していますが、消費電力はN700Aの半分になっています。

グリーン車にフルアクティブ制振制御の採用

現在採用されている制振技術の「アクティブサスペンションダンパー」は、車体と台車をつなぐ油圧ダンパーを進行方向に対し垂直に設置し、電子制御によりダンパー内の弁の堅さを変えて横揺れを軽減する技術です。

今回採用された「フルアクティブ制振制御」は基本的な構造は「アクティブサスペンションダンパー」と同じですが、弁ではなく油圧ポンプを使う点が大きな違いです。今までのようにダンパ-の堅さを変えてゆれを軽減するのではなく、油圧ポンプでダンパーの油に力を加え振動を打ち消すことを可能にします。

今回採用されるのは編成中のグリーン車のみです。これによりグリーン車の振動は、人が分かるレベルで減るとしています。

リチウムイオン電池採用による非常時居住性改善

鉄道車両には非常時などのためにバッテリーが搭載されていて、通勤電車では近年リチウムイオン電池が採用されています。N700Aで採用されたいた鉛蓄電池からリチウムイオン電池に変更されます。これにより電池の重量30%・体積50%低減されるにも関わらず、電池容量はより大きなものとなります。

通勤電車では大容量のリチウムイオン電池の採用で、停電時にその場に停車が危険と判断した時に、電池だけでゆっくり走る機能が採用されはじめています。N700Sも同様の機能を新幹線として初めて採用します。

新幹線のトイレは水や排水量を削減するため水をポンプで吸い込む方式となっているので、停電時などには使えませんでした。今回電池の容量が大きくなったことで、停電のような電気が止める状況でも一部車両でトイレが使用可能になります。

走行機器や車内のモニタリング強化

近年では新幹線・通勤電車問わずに普通の車両に搭載したセンターでリアルタイムで車両や車外の状況を記録し、車両や地上設備の故障予防やメンテナンス低減に役立てようという取り組みが盛んです。N700Sでは既に採用済みの台車振動検知システムを強化するなどし、より多くのデータを取得して役立てる予定です。

一部通勤電車や新幹線には監視カメラが搭載されていますが、現状はドライブレコーダーのように後で見るためのものです。N700Sでは運転指令所はリアルタイムで映像が見ることが出来るようになり、非常時に乗務員への指示などでサポートが出来るようになります。

地震時のブレーキ短縮

ATCやブレーキデータの改善で、地震時の停車距離がさらに短くなります。N700Aは登場以降も改修を続けることで、登場時と今年度から増備される700A三次車では地震時に5%停車距離が短くなっています。N700Sではさらに5%短くなります。

停車時のブレーキアシスト

駅間を走行する時は速度を出し過ぎるとATCによる自動ブレーキがかかるようになっていますが、駅停車時の30km/h以下の速度でも状況に応じ自動ブレーキがかかるようになりました。

通常時は自動ブレーキは作動しませんが、停止位置までに停車出来ないスピードが出ているときは、それ以下のスピードになるよう自動ブレーキがかかるようになります。

パンタグラフの構造変更

現在のN700A系では4分割のすり板を採用した、在来線に似た形状のすり板をパンタグラフで採用していました。それがJR東日本E5系などで採用しているようなすり板を多く分割したタイプに変更されます。構造的にもJR東日本の多分割すり板に近いようですが、すり板の固定構造が微妙に違い、たわみ式すり板という名称が使われています。

JR東海系の新幹線では大型のパンタグラフカバーを装着することで、パンタグラフを固定する台座は小型の支持部の4点で固定するものを採用していました。それが大型の支持部2点で固定するものに変更されます。

台車構造の変更による軽量化

台車のフレーム構造を変更することで、フレーム内にあった補強材を減らし1台車あたり75kgの軽量化と溶接部分の数を減らします。フレーム内の変更がメインなので、大きな外観上の変化はなさそうです。


6極駆動モーター採用

最近の電車には交流モーターが使われていますが、この交流モーターの出力をサイズに変えずに上げる方法として、モーター内の極数をあげるというのがあります。この方法はパワーが上がる変わりに、同じ回転数を得るにはより高速なスイッチングの出来るインバーターシステムを必要するデメリットがあります。

N700SではSiCを採用したましたが、SiCは今までのSi(シリコン)を採用したインバーターより、より高速でスイッチングできます。そのため6極駆動のモーターを新幹線で初めて採用されたようです。

歯車装置の歯車の形状を変更

モーターの回転を車輪に伝えるため、間に歯車が入ります。この歯車の歯の形状が変更となりました。従来の物はハスバ歯車というもので、騒音が軸受けのダメ―ジが大きいものでした。今回採用されたヤマバ歯車は、それらが少ないものとなります。

JR東日本の新幹線試験車であるFASTECH 360でも採用されましたが、ヤマバ歯車はE5系では採用に至りませんでした。そのため営業車としては始めての採用という表現になりました。

耐雪構造の強化

台車の露出部を減らし台車付近の車体に融雪用のヒーターを搭載することで、列車の着雪を防ぐ機能が強化されました。

東海道新幹線N700系置き換え用車両

N700Sは試験車両にあたる確認試験車を2018年に、2019年より量産車の投入を開始し2020年7月1日に営業運転を開始しました。

一方2019年度ギリギリの2020年3月1日をもってJR東海所属の700系が全てが運行を終了し、N700Aで置き換えられました。なので、N700SはJR東海所属のN700系置き換え用として投入が続けられます。

JR西日本については700系の引退時期を発表していませんが、16両編成のB編成は3月13日に定期運行を終了しており、ひかりレールスター用の8両のみの運行となっています。今のところN700Sの導入は発表していませんが、いずれ導入が開始されると思われます。16両以外の編成にも対応しているため、JR西日本所属のひかりレールスターなども対象になるのではないでしょうか。一部では北陸新幹線の名前を挙げているところもありますが、雪に対する耐雪構造の関係やJR東日本との車両運用の関係で、将来の延伸時含めて無いのではと思います。

九州新幹線の800系新幹線も時期としては2020年頃に置き換え時期を迎えるので、今後対象に追加されるか気になるところです。

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