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2023年6月17日土曜日

関東私鉄2023年新型車両動向まとめ




各社の事業計画などをもとに2023年の関東大手私鉄の新型車両動向をまとめました。私が理解している範囲で、現在の車両動向も解説します。

東武鉄道はスペーシアXのみで10050系ワンマン化と8000系一部線区全廃か

東武日光線を走るN100系SPACIA X
増備予定のSPACIA X
新造車両は特急用N100系スペーシアXの追加2編成です。その他に10050系2両編成を、7編成更新して佐野線・小泉線・桐生線用にするとしています。

N100系スペーシアXは東武鉄道のフラグシップ特急で、2023年7月に2編成が運行を開始します。100系スペーシアは既にりょうもうへ転用ではなく廃車が発生しているので、今回のN100系の導入でも廃車になる可能性は十分ありますが、ならない可能性が出てきました。8月より日光線の特急リバティを増車する関係で、100系スペーシア充当の列車が増えるので今後の需要次第となりそうです。

10050系は通勤電車で、2両編成はスカイツリーライン(伊勢崎線)での増結用して組み込まれ、単独での運行は行っていません。それをローカル線用にワンマン改造して投入されます。投入予定線区では2両編成の8000系が6編成運行されおり、今年度で一気に廃車となる見込みです。今後は3両編成の8000系で運行の伊勢崎線以北などにも投入され、減車されるのではと予想します。

西武鉄道は40000系のみ


新造車両は40000系4編成40両の増備です。車両更新で6000系1編成の制御装置とモーターの更新が実施されます。サステナ車両(他社からの中古車)にも言及はありましたが、準備を進めているとのみとなっています。

40000系は2017年から製造される通勤車両で、ライナー・通勤兼用のデュアルシートが10両6編成、通勤用が10両6編成在籍しています。最近は通勤用の増備と同時に2000系の中心に廃車が発生しており、この流れが今年も続くと思われます。

6000系は1992年~98年に製造された車両で、2014年以降に制御機器をとモーターの更新が行われてきました。今年は既に入場中の第1編成の6101Fが更新されれば、6000系全編成の更新が終了します。

東急電鉄は新車なし


東急電鉄は大井町線9000系・9020系置き換え用の車両製造に着手します。

9000系は1986年~91年に製造で15編成、9020系は1992年~93年に製造された2000系の改造車で3編成が在籍します。なので最終的には18編成の置き換えが行われる見込みです。今年度は着手とあるので、年度内の導入は無さそうです。また、田園都市線と大井町線にCBTCの導入をすると発表があったので、それを見据えた設計になると予想されます。

相模鉄道は21000系2編成で導入済み


相鉄は21000系8両2編成を導入し、予定数の9編成全ての導入が完了するとしています。既存車両については、リニューアルも実施されます。

相鉄は2023年3月15日開業した新横浜線直通用に10両編成の20000系と、編成数が8両編成になった以外はほぼ同じ仕様の21000系を導入していました。21000系を開業後すぐとなる3月末に第8編成と4月末に第9編成を導入したので、既に今年度分の新車投入は終了しています。

リニューアルの実施とだけあったので、具体的な数や内容は不明です。今年から車体を青くするヨコハマネイビーブルー化も再開されているので、更新分は実施されそうです。

小田急電鉄は3000形更新のみ


小田急は3000形6両3編成の更新のみで新車はありません。

3000形は2001年から06年に製造された車両で、昨年から新製日順ではなく6両編成に更新が実施されています。見た目では分かりにくいのですが、内容は制御機器から内装と多岐に渡り大規模なものとなっています。

京王電鉄は5000形1編成


京王はライナー拡充用に5000系1編成の増備と、8000系3編成26両の機器更新が実施されます。

5000系は京王ライナー・通勤者兼用に2017年から導入され、7編成が在籍します。これに加えて1編成が増備されます。

8000系は1992年から99年に製造された車両で、今までに車体更新と機器更新が別々に実施されてきました。実施両数が発表されているのは機器更新の方で、8000系には8両と10両が存在するので、8両2編成と10両1編成が実施される見込みです。機器更新以外についても昨年も平行されて実施されていたので、今年度もされる可能性が高いです。

京浜急行は10000形2編成


京急は今年度は1000形を8両1編成、6両1編成を導入と発表しています。車体更新は8両1編成、4両2編成が実施されます。そして2025年と26に20両づつ、計40両導入する予定です。

京急は2022年度に1500形の置き換えを発表しており、昨年度は新車導入がなかったにもかかかわらず、2023年3月に4両2編成の廃車が発生しています。なので、順当にいけば今年度も1500形の廃車が発生する見込みです。

車体更新は内装工事を中心としたもので、フリースペース設置・非常通報装置の増設・窓の開閉化が実施されます。走行機器は基本的に弄らないはずですが、窓が開くことになったため換気扇用の電源を撤去したりがあるので、小規模な機器の変更も発生する場合があります。

そして2023年以降として40両の新車が見込まれていますが、これは運賃の改定を国交省に申請する書類にあった数字で、参考程度のものとなります。ただ、この数字通りであれば、1500形は現在22編成138両在籍するので、置き換え完了までには時間がかかりそうです。

京成電鉄は3100形1編成と新車設計開始


京成電鉄は3100形1編成の導入と、新型車両の3200形の設計に着手と発表しました。

3100形は2019年よりスカイアクセス線用として導入されました。今年度分の1編成分が既に6月に出場しており、それを含めて7編成となりました。

そして設計に着手される3200形ですが、編成車両数が変更できる設計を予定しています。最近は西日本の0.5M車やJR東海のN700Sなど、需要の増減や転属時を考え、編成の組み換えが用意な設計が増えています。その流れの一つと言えます。

3200形の登場が決まったことで、3100形の増備が不透明にもなりました。根拠のない私の予想では、突発な理由で編成の増備が急がれない限り3200形の増備に一本化される気がするのですが、今後に注目です。

東京メトロは言及があるのは丸ノ内線のみ


東京メトロは丸ノ内線への新型車両導入するとしています。

東京メトロは導入車両数を毎年はっきりは発表しないのですが、昨年は丸ノ内線以外にも半蔵門線や有楽町・副都心線も言及していたのが、丸ノ内線のみとなっています。

有楽町・副都心線は増備終了とみても良さそうですが、半蔵門線は置き換え中の8000系が残っています。丸ノ内線は元々の計画だと2023年度中に02系全車置き換えの予定で、現在52編成中12編成が02系です。そう考えると今年度は集中的に2000系の増備が実施され、02系が全廃となるかもしれません。


2022年6月12日日曜日

鼻の短い山形新幹線E8系投入 E3系の終焉へ




JR東日本は2020年3月3日に山形新幹線へE8系を投入し、福島駅のアプローチ線の改良を行うと発表しました。E8系の特徴を中心に解説します。
記事作成: 2020.03.03/記事更新日: 2022.06.12

鼻は短く最高速度300km/hで定員重視

JR東日本E3系2000番台
山形新幹線E3系2000番台
E8系は2024年春から運行開始で、E5系との併結で東北新幹線走行時の速度が275km/hから300km/hに引き上げられます。2024春から2026年にかけて導入予定です。

基本的な構成はE6系に準じたものとなりますが、大きく違うのは速度と定員です。E6系は鼻が尖っている先頭部13m、最高速度320km/h、定員330名(グリーン車22名)、荷物スペース四か所、車椅子スペース一か所です。対してE8系は先頭部9m、最高速度300km/h、定員355名(グリーン車26名)、荷物スペース七か所、車椅子スペース二か所となります。

E6系は「こまち」として「はやぶさ」と連結して、東北新幹線内は最速達列車として運行しています。一方でE3系は「つばさ」として「やまびこ」と連結して運転していますが、「やまびこ」は元々停車駅が「はやぶさ」より少し多めに設定されている列車です。また、「こまち」は盛岡まで、「やまびこ」は福島までと、東北新幹線内を走る速度や停車駅が列車の設計に反映された形です。

グリーン車はE6系もE8系も先頭車一両のみで7両編成となっているため、先頭車2両で10名以上の定員が増えていのるが分かります。さらにE8系は大型荷物スペースが全車両に拡大され車椅子スペースが一か所増えているのに定員が増加しており、他の箇所でも定員増加の工夫がされているようです。

E3系からの変更箇所として全車両のフルアクティブサスペンションダンパー化による乗り心地向上、E3系・E6系との違いがコンセントの全席化となっています。カラーリングに関しては現行を踏襲します。

投入編成数としては当初17編成の導入を予定していました。しかし、2022年6月の報道によると、導入決定時より需要が下回る予想となったため、運行中のE3系1000・2000番台の合計数と同じ15編成の導入となります。

導入編成数は減ったものの運行本数に影響はないとしているため、現在の運行本数より減るのではなく、週末に運転されている臨時列車や東北新幹線内での増結編成での運用の調整になるのではないでしょうか。

E3系の終焉へ

E3系は0番台が秋田新幹線に投入され、その後にE3系1000番台と2000番台が投入されました。2022年6月現在では東北新幹線の増結用と山形新幹線用に1000番台・2000番台が活躍しています。

E8系が投入されることで、本来のミニ新幹線としての役目は終わると予想されます。また、増結用編成としては0番台が秋田新幹線引退後活躍したように、1000番台と2000番台が少しだけ活躍するかもしれません。しかし、速度も同時に引き上げられるために、その頃にはE2系も定期運転では引退してるでしょうから唯一のダイヤ上ネックになるため微妙なところです。

福島駅のアプローチ線の改良

福島駅にある奥羽本線から東北新幹線への接続用のアプローチ線は、下り線側のみの単線構造となっています。なのでアプローチ線を上り線にも増設し、複線構造に変更されるのがE8系導入と同時に発表されました。使用開始は2026年度で、E3系の置き換え完了と同時になります。

これにより東北新幹線上での平面交差や単線区間が解消されるために、増発やダイヤ乱れ時の対応がしやすくなります。


2022年5月19日木曜日

東武鉄道新型特急500系リバティ 半蔵門線には直通しない?




2015年4月22日に東武鉄道が発表した新型特急500系「リバティ」について、車両の仕様などを中心に解説します。そして半蔵門線に直通出来るにも触れていきます。運用に就いては「万能特急東武500系リバティ 縦横を駆ける」をご覧ください。
記事作成日: 2015.04.22/記事更新日: 2022.05.19

500系特急電車スペック

東武日光線を走る500系特急リバティ
東武日光線を走る500系特急リバティ

編成概要

東武500系編成表
500系編成イメージ

車両形式: 500系
初期導入車両数: 3両×8編成=計24両
導入路線: 東武本線
運行開始日: 2017年4月21日
製作会社: 川崎重工
デザイナー: 奥山 清行

最初に発表された導入車両数は、3両×8編成=24車両の特急車両です。2016年度に導入され、2017年4月21日から運行を開始しました。基本的には2編成を連結した6両で運行します。その後も追加の導入が行われ、2022年現在3両×17編成=51両が在籍しています。

運行路線は東武スカイツリーライン(伊勢崎線)・日光線・鬼怒川線・アーバンパークライン(野田線)・野岩鉄道線・会津鉄道線と、本線系統であればどこでも走れるようになっています。

6両の編成のスペーシアは東武と野岩鉄道の境界駅である新藤原駅まで乗り入れていますが、そこから先は変電所容量の関係で乗り入れが難しいという話を聞いたことがあります。3両編成の小回りのよさが生かされています。

製造は川崎重工です。東武鉄道での採用は1946年に戦後の輸送力不足改善のため国鉄から割り当てられた63系以来となります。(川崎重工に吸収合併された汽車製造が8000系を作っているので、これを含めると変ります。)

デザイナーは北陸新幹線E7系や山手線E235系、中央線特急E353系などを手がけた奥山 清行氏です。

スペーシアの後継ではない

春日部駅に入線する東武100系
特急スペーシアとして活躍する
東武100系特急電車
発表時のプレスリリースで「特急スペーシア、特急りょうもう等に加えて、特急列車のさらなる利便性を向上を目的に」とあるように、新しい選択肢としての導入で既存特急車両の後継ではありません。スペーシアが6両を基本としていることからも後継ではないとすると納得できます。 

 導入当時は1800系の改造車である東武300系が6両×2編成=計12両、350系が4両×3編成=計12両在籍していました。ちょうど24両の導入で、全て置き換えられることも予想されましたが、この時は300系の置き換えのみとなりました。 

 追加車両により、200系廃車開始による「りょうもう」の一部運用、「きりふり」廃止とスペーシア廃車開始により350系と100系が担っていた定期特急や臨時特急の役目も果たすようになりました。 そして2021年に100系スペーシアの後継車N100系が発表されたので、スペーシアの後継車としてはそちらが担います。

また、車体の構造的にはATS-Pさえ搭載すればJRへの乗り入れることも可能だと思いますが、今のところ予定は無いようです。

気になる地下鉄直通

500系発表前に特急車の地下鉄乗り入れを検討するような話もありましたが、そちらはTHライナーが運行されたので、地下鉄乗り入れは無くなったようです。それでも実際可能なのか考えてみます。

地下鉄の乗り入れの障害になるものとして、前面貫通扉と車体幅の制約があります。500系は前面貫通扉はなんとかなりますが、車体幅やカーブの制約で怪しいです。

前面貫通扉は地下鉄を走る上で、非常口用に絶対に設置する義務があります。500系は貫通扉は増解結用が付いているので、設置義務は満たしています。しかし、そのままでは駄目で、貫通扉から地面に降りる非常用階段を取り付けるよう改修が必要です。

地下鉄はトンネルの大きさの関係で車体幅が大きい車両は入れない場合があります。500系の車体幅は2870mmです。これに対し半蔵門線直通対応車50050系が2770mm、日比谷線直通対応車20000系列が2874mmとなっています。

なので、半蔵門線に関しては車体幅的に無理です。日比谷線は車体幅だけで見れば問題ありませんが、東京メトロ13000系や70000系が舵操舵台車を装備して20m車の乗り入れに対応したのを見ると、カーブの問題で難しそうです。やはり500系の地下鉄乗り入れは、今後も無いと思います。

車両外観

下今市駅留置中の東武500系
下今市駅留置中
スペーシアが白系の塗装で明るめの帯が入っていたので、全体的にだいぶ締まった印象を受けます。

下今市駅で停車中の東武500系リバティ
下今市駅での分割作業
前面は貫通型で分割・併結が可能な形状で、今までの東武特急が非貫通型であるのと対照的です。旧成田エクスプレスの253系に似た形状ですが、253系が車掌しか通行できないのに対し、旅客も通行可能なタイプとなっています。

連結作業中の東武鉄道500系リバティ
連結作業中

分割作業の動画

分割や併結時には貫通幌のロックは駅員が行い、貫通幌の収納や外側の扉の開閉は自動的に行う、半自動方式となっています。そして、車内の運転台側の扉のロックなども手作業で行います。連結時には連結部がオレンジに点灯し、注意喚起の音が流れます。一部自動化されていると言っても作業量は特段減ったわけではないので、6050系と比べて作業時間が短縮されているなどの印象はありませんでした。

東武鉄道500系リバティ 上部前照灯
上部前照灯

東武500系ヘッドライト・テールライト
下部ヘッドライト・テールライト
ヘッドライト専用のライトが貫通扉上、ヘッドライト・テールライトを兼ねたものが前面下部についています。LEDタイプのもので非常に指向性が高く、写真の通り横からだと点灯しているのが殆ど分かりません。また、下部の前照灯は日中では3分の1程点灯し、夜間は全て点灯するようになっています。

東武鉄道500系側面LED行先表示器
側面LED行先表示器

東武鉄道500系リバティのロゴ
側面ロゴ

側面の行先表示器はスタンダードなフルカラーLED表示器を採用しています。側面にはリバティのロゴが貼られています。

電装部品など

SS182M(TRS-16M)

東武鉄道500系リバティ搭載東芝製VVVFインバータ
東芝製VVVFインバータ
足回りはには東武30000系で試験を行っていた永久磁石同期モーター(PMSM)が採用されるほか、東武鉄道では初めてアクティブサスペンションダンパーが採用されます。モーターはPMSMです。2017年4月21日に東芝がモーターを納入したと発表しました。台車は東武車では一般的なボルスタレス台車が採用されています。

実際に乗ってきましたが、発車時のモーターやインバーター音などはスペーシア100系と比べると、非常に静かに感じました。揺れについてもアクティブサスペンションダンパーがある分、少なく感じました。

東武鉄道500系リバティのパンタグラフとクーラー
パンタグラフとクーラー
パンタグラフは先頭車と最後尾に一つづつ搭載されています。クーラーは屋根上に集中式の物が、一両につき一つづつ搭載されています。最近は屋根まで塗装されている車両もありますが、そういった特徴はありません。

車内サービスとしてWi-Fiや2Aまで対応のPC用電源も用意されます。車内サービスについては「万能特急東武500系リバティ 縦横を駆ける」に記載しているので、そちらもご覧ください。

走行から分割シーンまで撮影しました


2022年5月18日水曜日

2022年度関東大手私鉄新型車両動向まとめ




  関東大手私鉄が発表する2022年度の事業計画などを基に関東大手私鉄の新車計画を紹介します。順次加筆・修正の予定です。

記事作成日: 2022年4月29日/記事更新日: 2022年5月18日

東京メトロ17000系
引き続き導入される予定の17000系

新車より衝撃の譲渡車検討 西武鉄道

西武鉄道は5月12日に「事業計画」を、西武ホールディングスも同日に「西武グループ中期経営計画(2021~2023年度)』の進捗」を発表しました。

「事業計画」によると新型車両40000系が3編成導入されます。既に車両側の対応工事が進められていたデジタル無線への更新が実施されます。

衝撃的だったのは「西武グループ中期経営計画(2021~2023年度)』の進捗」のほうです。2022年度中の話ではありませんが、将来的にサステナ車両と西武鉄道が呼称する、譲渡車の話が含まれていました。サステナ車両は、コスト削減を進めるため他社から導入を検討している、無塗装VVVFの中古車両のことです。この文が出る前にはJR東日本と営業面・運転面で協力するとあるので、そのまま考えるならばJR東日本から車両の譲渡を受けると考えるのが自然ですが、本当にJRの車両が西武鉄道を走るかは気になるところです。

車両更新のみで来年以降に1500形更新? 京浜急行

京浜急行は5月11日に「鉄道事業設備投資計画」を発表しました。今年度は新車の導入は無いようです。

2022年度中に行われるとはっきり書かれているのは新1000形の車両更新で、フリースペースや車内液晶の設置と、走行機器の更新のみです。

一方で2022年度以降で発表されたのが1500形の置き換えで、来年度以降からの実施となりそうです。1500形は1985~1993年までに製造された車両で、鋼鉄製で製造時から現在まで界磁チョッパ制御の初期製造グループの4両編成・アルミ製で界磁チョッパからVVVFに更新された中期製造の6両編成・アルミ製で最初からVVVFで機器更新をしていない後期製造の8両編成と、製造年も車両構造も異なっています。車両の痛み具合が基準ならば、初期車の4両編成、機器更新をしていない後期車、最後に中期製造となります。

界磁チョッパからVVVFにすることでの省エネ性もアピールされていたので、まずは4両編成の車両が更新されると思います。その後の順番は運用の都合も大きいので、今後の動向に注目です。

新車ゼロ?で力を溜める 東武鉄道

東武鉄道は4月28日に「設備投資計画」を発表しました。今年度は新型車両の導入は無いようです。

スペーシア100系の後継として導入が発表されたN100系は、2022年度は車両製造のみを行い2023年度導入とあります。今年度中に納車され試運転などの車両を実際に動かせる形にするかは微妙な表現となっています。

通勤電車は車両更新含めて大きな発表は無しです。なので、内装や電装部品の大幅更新しない小規模なもののみとなるかと思ったのですが、東武鉄道の車両更新の委託を受けている津覇車両に更新車とみられる車両が入場したため、大幅な更新も行う車両もあるかもしれません。また、70000系4編成・50000系8編成に車内カメラの搭載、列車の走行データを収集するシステム「Remote」を500系4編成・50000系1編成搭載予定と発表しています。

2023年度からN100系新型スペーシアの導入、2024年度から野田線(アーバンパークライン)向け通勤電車の導入が控えているため、今年はかなり控えめな動きとなったようです。

新横浜線開業に向けて準備 相模鉄道

相模鉄道は4月26日に「鉄道・バス整備投資計画」を発表しました。今年度は21000系3編成の導入のみで車両更新の発表はありませんでした。

2023年3月に新横浜線が開業し5社11路線の乗り入れが実施されるに合わせて、以前から導入を続けていた20000系・21000系の導入も大詰めとなり3編成の導入です。21000系は20000系を8両版と言えるもので、微妙な違いはありますが実質20000系と同形式の車両です。

車両更新の発表が無いのでヨコハマネイビーブルー塗装への変更など、外観と内装を大きくリニューアルするは今年度は無さそうです。同様の発表だった昨年の動きを見ると、大幅なリニューアルを伴わない機器更新は実施されるかもしれません。

7000系全廃か?東京メトロ

東京メトロは「事業計画」を発表しました。今年度は有楽町・副都心線、丸ノ内線、半蔵門線に新車を導入するとしています。

有楽町・副都心線は7000系が2編成残っているので、17000系増備で全廃になる可能性が高そうです。丸ノ内線の02系と半蔵門線の8000系については、まだ多数の車両が残っています。そのため丸ノ内線向け2000系と半蔵門線向け17000系の増備は来年以降含め続きそうです。

南北線用の増結車については去年同様具体的には触れられませんでしたが、今年度も増備されると予想されます。

小さな動きでは車両の改修で、丸ノ内線、日比谷線、有楽町・副都心線、半蔵門線の車両に脱線検知装置を搭載し、脱線時に自動停止するシステムの搭載を予定しています。

三田線・新宿線・大江戸線へ新車導入 都営地下鉄

東京都交通局は「東京都交通局経営計画2022」として2024年度までの計画を発表しました。新型車両は三田線4編成、新宿線4編成、大江戸線8編成を2024年度までに導入と発表です。

まとめての発表で今年度の具体的な内容は分かりません。三田線の8両化や新横浜線開業が来年であることを考えると、今年度に集中投入されそうです。また、新宿線の10両化が今年度終了を予定しているので、新宿線も確実に車両の動きが発生すると予想されます。

あくまでも試験となりますが、操舵台車の試験導入を騒音低減で快適性向上のために予定しています。台車の構造としては東京メトロが採用している、台車の片側のみ動くタイプです。大江戸線も新車導入があるので、新車への導入となるのか既存車での試験となるのかも注目です。

小さな動きとしては走行時の車両データを集める車両情報収集システムの運用を今年度から三田線で開始し、車内の監視カメラを2024年度までに16編成に設置の予定です。


2022年4月29日金曜日

野田線日立製新車で減車に8000系・10030系引退? 東武鉄道新型通勤車両導入へ




東武鉄道は2022年4月28日に東武野田線(アーバンパークライン)へ新型車両の導入を発表しました。これに合わせて車両の長さを6両から5両へすると発表しました。新型車両についてや、それに伴って起こる車両動向などを予想します。

70000系に次ぐ新形式で導入

野田線で運行中の60000系

導入線区: 野田線
導入時期: 2024年度
車両形式: 不明
導入車両数: 不明
製造メーカー: 不明

東武鉄道は野田線(アーバンパークライン)へ新型車両の導入を発表しました。発表したプレスの内容はかなり大雑把なもので、導入時期が2024年度で野田線に導入するとだけが分かっています。これに合わせて編成の長さを現行の6両から5両に減車するとも発表し、この点は大きな変化です。

車両は環境に配慮した省エネタイプで、サービス・快適性の高い車両との文言もありますが、具体的な内容は今のところありません。

車両形式は不明ですが、新形式が導入されるようです。東武鉄道での最新の通勤車両は70000系です。70000系は日比谷線直通用に操舵台車採用し、仕様を東京メトロの13000系と合わせ実質同形式であるなど特殊な車両です。もう一つ前の形式である野田線60000系は最終導入が2015年であり、PMSMやSiCなど現行の技術は採用されていません。以上の経緯や技術的な一新を考えると、新形式となるのは納得できます。

日立製で最終的には25編成導入?

8000系と10030系は引退?

鉄道チャンネルによると25編成導入です。7編成が最初から5両での製造、18編成が4両で製造されます。4両編成の車両は、車両の組み換えを行って全編成5両とするとしています。これはプレスに無い内容なので正確性はよくわかりませんが、これが事実だとするといくつか予想が出来ます。

まず18編成が4両編成で落成し車両の組み換えで5両にする場合、ちょうど60000系が18編成在籍しているので、60000系から1両抜いての組み換えとなります。60000系は日立製作所製なのでメーカーを揃えるのが無難で、日立製が濃厚となります。また、60000系はT車含めた各車両に運転に必要な機器が搭載されており、簡単に組成変更ができません。60000系もある程度長い期間かけて更新工事が必要になると予想されます。

ただし、60000系含む日立製の車両はA-Trainという規格化がされており、内装のモジュール化や電装部品の取り付けが工夫されており、内装も走行機器も比較的簡単に更新できるよう設計されています。なので昔の車両ほどの更新工事の大変さは無い設計にはなっています。

野田線で運行している8000系は16編成、10030系が9編成となっています。ちょうど導入車両数と一致します。それらは全て新車で置き換えられることとなります。

野田線で運行中の80000系
野田線で走る8000系は導入から40~50年経っているため、全編成が引退になると予想されます。

野田線で運行中の10050系
野田線で運行中の10030系50番台
10030系列は導入から30年経っており、2022年に初の廃車が発生しました。更新工事で転属させるのは微妙なとこではあるのですが、ローカル線区にも8000系が残っておりそちらの置き換えが必要なため、転属と廃車両方が行われると予想されます。

本数維持で減車は他社にも波及するか?

25編成の導入が正しければ、運行本数はおおむね今まで通りとなります。今後は人口減少と高齢化で需要減少が見込まれており、それに対応する形です。

首都圏は地方の人口を吸い取る形で人口が増加していましたが、限界を迎える予想はコロナ関係なく以前からありました。特に通勤などの需要は人口減少に加え高齢化も加わるため、利用者の減少はより大きいものと予想されます。関東私鉄各社は2020年頃までは減車より増車を行ってきましたが、いよいよ減らす段階となったようです。

利便性を維持しつつ需要に合わせるなら短編成化し本数を維持するのが最も無難なやり方で、今回はまさにその形です。おそらく他の私鉄各社も本腰を入れて利用者減少対策を行ってくるでしょうが、同様の動きとなるかも注目です。


東武鉄道ペーシア後継N100系導入へ JR・地下鉄乗り入れは無し




 東武鉄道は100系特急スペーシアの後継として、N100系を2023年度に導入すると2021年11月11日に発表しました。これにより100系の一部の置き換えが進むと思われます。今発表されている内容から、解説やスペーシアとの比較をしていきます。

記事作成日: 2021.11.15/記事更新日: 2022.04.29

カーボンニュートラルを打ち出した車両

置き換え予定の
東武100系スペーシア

型式: N100系
導入車両数: 6両×4編成
運行路線: スカイツリーライン・日光線・鬼怒川線
車両製造会社: 日立製作所

車両形式はN100系、愛称はまだ未定です。しかし、「Connect & Updatable~その人、その時と、つながり続けるスペーシア~」をコンセプトに打ち出しているため、スペーシアという名前は何らかの形で残りそうです。

COP21が実施されている中での発表で、製造から運行までカーボンニュートラルを打ち出し、実質CO2排出量が0になる予定です。他の交通より環境に優しい鉄道の要素を、より強く打ち出した形です。保守的な東武鉄道としては、素晴らしい取り組みだと思います。

導入車両数は6両×4編成の24両を予定しています。現在100系スペーシアは9編成が在籍しているため、半分程度がまず置き換えられると思われます。

白ベースの前面展望特急

カラーリングは今のスペーシアと同じ白ベースで、日光東照宮より着想を受けた仏閣や日本人形に使われる白色塗料の胡粉(ごふん)をイメージした色となります。スペーシアとは違い車体帯は無く、窓付近に黒のアクセントが入ります。先頭車両の前面デザインは、近鉄特急の「ひのとり」に似たデザインです。大型側面窓は先頭車両のみ窓割も違って六角形のデザインとなります。

車両製造メーカーは日立製作所となります。50000系・60000系と日立製作所を採用していた東武鉄道ですが、70000系は近畿車輛・特急500系リバティは川崎重工製だっため、久々の日立製作所製です。日立製作所はアルミ合金使った特急から通勤電車まで対応出来る、「A-Train」シリーズを売りにしています。そのため車体も100系スペーシアと同じくアルミ合金が引き続き採用される模様です。

大幅に変更された座席構成

座席数212席で、現行のスペーシアの284席より大きく減っています。座席の配置は大きく変更され、より観光と外国人観光客の需要に特化したものとなりました。

東武日光側の先頭車1号車はカフェカウンターのあるラウンジ車で、「コックピットラウンジ」の愛称が付きます。100系スペーシアでは営業を終了したビュッフェですが、日光・鬼怒川の商品を提供するカフェカウンターとして形を変えて継続します。運転台後ろは大型ガラスの仕切りが採用された展望車にもなっています。

2号車はプレミアムシートです。2+1列配置のJRグリーン車に似た構成で、料金も値上げが行われると予想されます。

3・4号車は2+2の従来通りの座席配置です。

5号車は通路側の仕切りが大きく座面・座席が固定されたボックスシートが採用されます。このタイプの対面式の座席は海外で見られるもので、海外需要を意識しての採用だと思います。

浅草側先頭車の6号車は100系でも採用されていた個室になります。個室は5室あり、4部屋は100系と似た4人用です。そのうち運転台に最も近い部屋は他より広く「コックピットスイート」という愛称で、7人まで利用出来る部屋になります。通常個室の2部屋分を使っただけあり、私鉄最大の個室を謳っています。こちらも大型ガラスの仕切りが採用された展望車です。

JR乗り入れは今のところなしで地下鉄線は不可

運行路線はスカイツリーライン・日光線・鬼怒川線鬼怒川線駅までとしています。500系リバティが汎用性重視で、東武本線系統の様々な路線に乗り入れられるのと比べると対照的です。また、6両固定という関係もあり、変電設備の容量が厳しい野岩鉄道や会津鉄道には乗り入れないようです。

100系スペーシアのうち3編成がATS-PなどJR乗り入れ対応装備を装着しており、日常的に栗橋駅からJR線に入りJR新宿駅まで乗り入れています。今発表されている線区には含まれていないため、今のところJR線には入らないようです。今後についてはあり得るかもしれません。スペーシアはJR乗り入れ編成のほうが、暫くは確実に運行継続されそうです。

また、先頭車両が非貫通デザインで法律上必須の非常時脱出用貫通扉がないため、どうやっても地下鉄乗り入れ対応は法律上出来ません。そのため地下鉄乗り入れはあり得ません。

そのまま廃車?100系スペーシア

置き換えが行われた後の100系スペーシアですが、今のところ発表はありません。順当に考えれば、特急りょうもう用の200系がDRCの部品流用車で部品単位では50年物で、そちらへの玉突き転属となります。

ただ、単純にそうならない可能性が高そうです。東武100系も導入が平成初期のため30年程度経っています。普通の鉄道会社が行っている、VVVFなどの電装系などの大幅な機器更新を行っていません。そう考えると車両の痛み具合によっては廃車のほうが安くつく可能性もあります。実際そういった判断もあったのか、N100系の導入を待たずに2022年に初めての廃車が発生しました。
 
なので今後の導入時に転属させるのは微妙なところとなってきました。


2022年2月20日日曜日

新型制御で高速化の希望になれ!新型振り子式「やくも」




 特急「やくも」用に導入される273系振り子式特急電車と、273系に採用される新しい技術「車上型の制御式自然振り子方式」について注目したいと思います。

ベースは271系?

形式: 273系特急形直流電車
車両数: 44両 (4両×11編成)
営業時期: 2024年春

JR西日本は2022年2月16日に特急「やくも」向けに、273系を44両導入すると発表しました。運行開始は2024年春で、これにより最後の国鉄型特急電車となった381系を順次置き換えます。それに合わせて2022年3月19日より381系の国鉄色リバイバル運転を行います。

デザインはシルエットのみ明かされており現在検討中としていますが、シルエットを見る限り関空特急「はるか」で活躍する271系をベースにしているようです。

現在の発表ではVVVF化による省エネルギー化・バリアフリー化・防犯カメラ設置・Wi-Fiとコンセント整備と目新しくないものも多く目につきますが、日本初の「車上型の制御式自然振り子方式」採用という大きな特徴もあります。

日本国内では電車での振り子式の新形式は20年以上採用がなく、在来線特急界では明るいニュースです。

山を貫き瀬戸内海と日本海を結ぶ

「やくも」と381系

273系が導入される特急「やくも」は、山陽本線・伯備線・山陰本線を経由して「岡山~出雲市」間を結ぶ特急列車です。新幹線により活躍の減る在来線特急ですが、瀬戸内海と日本海を結ぶ路線は無いため、今でも「やくも」は1時間に1本をベースに設定されている重要な特急です。

山を抜けてカーブの多い区間を走る関係で、1973年に中央線の特急「しなの」・1978年に阪和線と紀勢線の特急「くろしお」・最後に1982年特急「やくも」と381系特急電車を採用した路線です。

381系は自然振り子式と呼ばれる車体傾斜装置が搭載されていて、カーブに入ると遠心力で車体が傾くことで、カーブでも乗り心地を損なわず高速で通過することが出来ます。ただし、車体傾斜装置は乗り心地を維持するための装置のため、あらかじめ線路や架線を高速走行可能な用にする工事が必要です。

381系は485系や183系に似た見た目をしていますが、振り子装置以外にも車体を鋼鉄製からアルミ製にしたり、冷房を床下にするなどして低重心化する工夫があります。

カーブの多い路線に採用された381系ですが、老朽化の問題により「やくも」以外では引退しています。そして485系が引退して今では、「やくも」は最後の国鉄型特急電車が定期運行で活躍する貴重な列車ともなっています。

コストが重くても採用された振り子式

振り子式車両は台車や場合によってはパンタグラフも構造が特殊化するため、コストの関係で採用を減らしています。その代わりとしてカーブの通過速度は振り子式より多少劣るものの空気ばねの空気量を調整して車体を傾けるため、構造が他の一般列車とほぼ同じでコストがあまりかからない空気ばね式の車体傾斜装置がが採用が増えています。

最近で振り子式が採用されたのはJR四国が空気ばね式では技術的にどうしても難しかった場合と、かなり消極的な理由でした。また、「くろしお」に至っては、381系の後継車では車体傾斜装置自体を省いてコスト削減がなされることもありました。

コストがかかっても振り子式が採用されるのは、それだけ「やくも」がまだ重要だと思われているからなのだと思います。

新型制御で少しでも安くなるか?

381系自然振り子式はカーブに差し掛かるだけで勝手に車体が傾く反面、車体がカーブに入ってから車体が傾くため乗り心地が悪くなるデメリットもあります。そのため乗り物酔いが起きやすく、「ぐったりやくも」などという不名誉なジョークもあったりしました。

そのため最近の振り子式車両は制御付き自然振り子という方式を採用しています。線路上にあるATS地上子の位置を記録したマップデータと車両側の計測装置による位置情報を基に、カーブに入るタイミングに合わせて機械的にアクチュエータを制御して少し車体を傾けはじめ、その後は自然振り子式同様に勝手に車体が傾くという仕組みです。

273系ではそれに代わり「車上型の制御付自然振り子方式」が採用されます。詳しい情報はプレスにはJR西日本のプレスには載っていませんでしたが、2020年の鉄道総研の研究成果にその技術と思われるものの詳細「車体傾斜車両向け高精度自車位置検出システム」が出ていました。

それによると従来の方式はATS地上子の位置が変わるたびに車両側にデータを入れかえが必要だったり、大きな駅を走行時に本来の経路とは違う線路を走ると位置を見失う場合がありました。それを車体に搭載したジャイロセンサーによるヨーイング角(大雑把にはカーブ時の車体の傾きみたいなもの)と走行速度からカーブの角度を計算し、車両に搭載された線路のマップを照合して±2mの精度で位置を検出します。これにより車両上のデータメンテナンスを10年程度まで伸ばせるとしています。

最近の日本の特急車両は乗客の減少や高速網との勝負に負けているため、高速化技術よりコスト削減の技術ばかりに投資される傾向にあります。今回の技術は車体傾斜装置の導入コストを、大きくではないものの下げる技術の一つです。車体傾斜による高速化は線路側に改良も必要のため依然コストがかかりますが、空気ばね式にも適用できるこの技術と空気ばね式車体傾斜装置であれば、以前よりもハードルが下がっているのも事実です。こういったご時世でなかなか難しいにしても、もう少し攻めの鉄道車両が増えてくれると良いと願って少し大げさですが、ブログ記事タイトルをつけさせて頂きました。


2021年2月21日日曜日

東京メトロ17000系の東武東上線内試運転を振り返る




 2021年より本格的に実施された東武東上線での東京メトロ17000系の試運転を、乗務員訓練を中心に振り返ります。

2020年12月から本格スタート

東京メトロ17000系は有楽町線や副都心線で運行している7000系の置き換え用として導入された新型車両です。

東京メトロ17000系東上線内深夜試運転
東上線内深夜試運転
2020年1月に17000系の第一編成が製造されましたが、東上線では年末までは志木駅近辺での小規模な試運転に留まっていました。12月20日にやっと東上線の和光市から小川町まで入線し、技術者も添乗し誘導試験やPQ輪軸試験など東上線内での走行が問題無いかの最初の技術的な検査が行われました。その後は同様の目的で池袋まで入線しました。

深夜に最低限の技術的な確認が終わった後は、日中に小規模な入線試験が実施されました。

2021年1月23日からは乗務員訓練

技術的な確認が終わった後は、実際に列車を動かす運転手さんや車掌さんの訓練が始まります。17000系は東京メトロの車両ですが様々な路線に乗り入れます。そのため東上線へ車両を貸し出しての訓練となります。

東京メトロ17000系の東上線乗務員訓練初日
東上線乗務員訓練初日
年も変わり第1編成の製造から約1年の経った2021年1月23日からは、あいにくの雨でしたが東上線川越市駅~森林公園駅間で営業列車の合間を縫って乗務員訓練が開始されました。同区間を各駅に停車して往復しました。

訓練初日の様子


川越市駅に停車する17000系試運転列車
川越市駅に停車する
乗務員訓練の試運転列車
暫くは1編成が貸し出されて川越市駅~森林公園駅間で、ほぼ毎日乗務員訓練が行われました。

志木駅の電留線へ入線する東京メトロ17000系
志木駅の電留線に入る17000系
2月8日からは更にもう1編成が貸し出され2編成体制となりました。1編成は相変わらず川越市駅~森林公園駅間で乗務員訓練が続けられ、もう1編成は高坂~志木間で乗務員訓練が行われました。

川越市駅での17000系の並び
2編成になったため乗務員訓練列車同士のすれ違いも見られるようになりました。川越市駅では電留線で発車待ちの訓練列車の横を志木からの訓練列車が追い抜く一幕も見ることができました。

8000系とすれ違う17000系訓練列車
8000系とすれ違う訓練列車
次の週からは2編成とも川越市駅~森林公園駅間での乗務員訓練となりました。平日の上り訓練列車の1本は森林公園検修区から越生線への回送列車の一本前を臨時ダイヤで先行して走っていたため、後続の回送列車は坂戸駅手前で信号待ちが発生しました。上の写真はその信号待ちの列車とすれ違う下り訓練列車です。


東上線への17000系回送列車
東上線への回送列車
訓練列車は1ヵ月間行われましたが、その間に何度か列車は東京メトロの車両基地へ帰るために回送列車が設定されていました。おそらく簡単な検査が理由だと思われます。

様々な乗務員訓練の様子

2月21日営業運転開始へ

東上線での訓練は2021年2月20日まで行われました。そして翌日の21日の朝1本だけ有楽町線の新木場から和光市まで営業運転が行われました。

この時点で製造が完了しているのは17000系の10両3編成のみです。今後10両編成の車両も引き続き増備されるだけでなく、8両編成の車両増備されます。

そして全ての車両が揃ったのちに7000系は引退する予定です。

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2021年2月13日土曜日

東京メトロ17000系を紹介 - 有楽町線・副都心線用7000系置き換えへ




 東京メトロ7000系置き換え用に副都心線・有楽町線に導入される東京メトロ17000系を紹介します。

17000系の導入で7000系は引退へ

東京メトロ17000系試運転列車
東上線で乗務員訓練する17000系
東京メトロ17000系は東京メトロ有楽町線と副都心線用に、10両6編成と8両15編成が導入される予定です。10両編成は日立製作所製、8両は近畿車輛製と製造メーカーが違うのも特徴です。

営業路線としては東京メトロ有楽町線・副都心線の他、直通先の東武東上線・西武池袋線・東急東横線・横浜高速鉄道みなとみらい線となります。相鉄線については不明です。

置き換えが行われる
東京メトロ7000系
有楽町線と副都心線開通時から使用されている7000系は、10000系の導入時にも一部置き換えが行われました。そして今回の17000系で全てが置き換えられ、引退します。

丸みのある可愛い先頭車両

東京メトロ17000系先頭車両
先頭車両
車体はアルミ合金です。先頭車両は丸みのあるデザインとなっており、スカートも丸みのある柔らかいデザインとなっています。地下鉄用のため前面から脱出できるよう非常用の扉が付いています。

デザインのイメージ図を見たときはいまいちに感じましたが、実際に見てみると良い可愛いらしい良いデザインに感じました。

東京メトロ17000系日本製鉄MTC-001連結器
日本製鉄MTC-001連結器
連結器は密着連結器です。銘板による日本製鉄製で型番はMTC-001のようです。

東京メトロ17000系行先表示器
行先表示器
行先表示器はフルカラーLEDで、列車番号もフルカラーLEDが採用されています。

東京メトロ17000系LEDヘッドライト
前照灯
前照灯と尾灯ともにLEDが採用されています。前照灯はLEDを束ねたものを二つ備えます。

東京メトロ17000系尾灯
尾灯
前照灯の下に尾灯用の赤色LEDが搭載されます。こちらはまるでなく、デザイン性のあるものが採用されています。

東京メトロ17000系側面帯
側面帯
先頭車両のアクセント部
側面の帯は7000系や先代の10000系と違い、白が1色無くなっています。また、先頭車両だけアクセントがあります。

東京メトロ17000系ピクトグラム

ピクトグラムは上部に配置され非常時脱出用のドアコックも高い位置にあり、ホームドアがあっても問題が無いように配慮されています。

屋根上機器

東京メトロ17000系アンテナ
先頭車両のアンテナ
東京メトロではデジタル無線の導入をすすめており、先頭車両にはデジタル無線や乗り入れ先の他社線用に合計3本のアンテナが搭載されます。

東京メトロ17000系パンタグラフ
パンタグラフ
パンタグラフはシングルアーム式を採用し、10両編成では1両づつに1基で計4基搭載しています。そのため7000系や10000系のように1両に2基搭載する車両はありません。

東京メトロ17000系クーラー
冷房装置
冷房装置には集中式を採用し、1両に1基搭載されます。性能は58kWで7000系よりは橋梁であるものの、10000系とは同じ能力です。

冷房のカバーは全体的に角ばったものが採用されています。全体的に柔らかいデザインを採用しているので、ちょっと違和感を感じます。

床下機器

東京メトロ17000系台車FS781
FS781を採用
東京メトロでは整備不良とボルスタレス台車の特性により、苦い思い出があります。そのため10000系に続きモノリンク式ボルスタ台車を採用します。

東京メトロ17000系の台車銘板
銘板より日本製鉄製と分かる
形式はFS781で日本製鉄製です。モーター車もトレーラー車も同一の台車を使用します。

モーターはPMSM(永久磁石同期モーター)205kWを採用します。4M6Tで10両編成のうち4両がモーター車で、和光市方面を1号車とした時2・4・7・9号車がモーター車です。このMT比・モーター車の位置・モーター出力は07系と同じで、5M5Tの10000系と比べると先祖返りと言えるかもしれません。

ちなみに有楽町線・副都心線のMT比・出力の変遷としては、7000系(VVVF更新車)5M5T・165kW→07系4M6T・205kW→10000系5M5T・165kW→17000系4M6T・205kWとなっています。

加速度は3.3km/h/s、減速度3.5km/h/s、非常時減速度4.5km/h/sです。営業最高速度は110km/hで、設計最高速度は120km/hです。

ブレーキは回生ブレーキと路面ブレーキを備えます。

東京メトロ17000系SiC-MOSFET VVVF
VVVF(SiC-MOSFET)
VVVFは三菱製でフルSiC(炭化ケイ素)のMOSFET方式です。モーター車1両につき1群の、計4群を搭載します。

東京メトロ17000系SIV
SIV
ハイブリッドSiC
一方でSIVはSi(シリコン)も併用する三菱製ハイブリッドタイプを5・6両目に搭載します。SiCがこなれて来たといっても、扱う電流が少なく費用対効果の小さいSIVにフルSiCはまだ採用されないようです。

東京メトロ17000系コンプレッサー
コンプレッサー
コンプレッサーはオイルフリースクロール式で4台で1ユニットとしたものを、3・6・8号車に搭載します。

各先頭車両にはATO・ATC・ATSと自社と各社の信号システムを処理するための各種機器が搭載されます。また無線制御システムのCBTCにも対応準備がされています。

東京メトロ17000系TIS装置
TIS
車両のモニタリング装置としてTISが搭載されます。これにより車両の各装置の状態がモニタリングされます。そしてTISで収集された情報がTIMAへ送られ、指令室や車両基地でリアルタイムに監視できるようになっています。

VVVFで省エネ性能が大きく進みましたが、SiC-MOSFETやPMSMの採用で更にもう一段進んだ省エネ車両となっています。これら13000系とほぼ同じ仕様ですが、13000系は舵操舵台車で台車やMT比が特殊でした。なので東京メトロの20m車としては、この仕様がしばらく標準として採用され改良されていくと思います。

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2020年10月3日土曜日

JR東日本 初の電気式気道車GV-E400系投入へ




2015年5月19日にJR東日本は新潟・秋田地区へ新型電気式気道車を投入すると発表しました。電気式気動車の本格採用はJRでは初めてで、2019年8月よりGV-E400系として、営業運転を開始しました。
記事作成日: 2015.05.19/記事更新日 2020.10.03

初の電気式気動車GV-E400系

新潟地区で運行を開始した
GV-E400系
投入されるのはハイブリッド気道車ではなく、新型電気式気道車です。仕組みとしてはディーゼル発電機で発電した電気を使い、モーターを駆動する方法です。国内ではJR貨物所有のDF200形ディーゼル機関車が採用している方式です。従来の気動車と比べこの方式を採用するメリットは電車の技術を流用することができ、部品などの共通化が可能になることです。逆にデメリットしては構造が違うため、従来の気道車との連結が難しくなると思われることと、ディーゼルエンジンだけでなくモーターなども積むのでコストが上昇すると思われることです。ただ、メンテナンスや部品共通化も含めた運用コストで、こちらを選択したのだと思われます。

ハイブリッド気動車が今回採用されなかったのは大型蓄電池の分コストがかさむだけでなく、停車加速が多い普通列車だとリチウムイオン電池の痛みが激しくなり、運用コストも更にかさむからだと思われます。特に山岳線だと電池の痛みや重量によるデメリットは大きくなります。

ハイブリッド気動車は電池を積んでる分駅停車時や発車時のエンジン使用を抑え、騒音を低減しています。しかし、蓄電池を最低限しか積んでいない電気式気道車は、発車時など電機が大量に必要になるタイミングでエンジン音をフル回転するので、普通の気動車とほぼ同じで結構うるさいのも特徴です。

車両形式名は400番台となりました。HB-E210系やHB-E300系の次の第四世代として、400番台となりました。GV-E400形が両運転台タイプの1両で運行できるタイプ、GV-E401形とGV-E402形が片側運転台の2両以上で運転するタイプです。

新型車両仕様

小川町駅留置中のGV-E400系
試験で八高線に貸し出されている
秋田地区用GV-E400系

最高速度: 100km/h
主発電機: 290kw
主電動機: 95kw
エンジン出力: 331kW(450PS)/2,100rpm

投入数: 1両編成×19編成、2両編成×22編成、計63両
投入時期(新潟地区): 2017~2019年度
投入時期(秋田地区): 2020年度

GV-E400系とキハ110系
GV-E400系とキハ110系
車体は軽量ステンレス製ですが、今までの形式と違いすそ絞りはありあません。丸みの無いデザインなので、キハ110系を彷彿させます。スカートとスノープロ―は一体型で、密着連結器と電気連結器を装備します。電気連結器は一段タイプです。

GV-E400系のヘッドライトと警笛と行先表示器
警笛は屋根上
ライト類はLED
今のところ寒冷地を中心に投入されているので寒冷地対策だと思いますが、警笛類は屋根上に設置されているだけでなく、保護用の板も上部に設置されています。

ライト類は前照灯も尾灯もLEDタイプです。行先表示器は最近採用の進むフルカラーLEDではなく三色タイプに近いもので、コストが削減されているようです。

GV-E400系のVVVFインバーター
VVVFインバーター
構造的にはハイブリッド気道車から、蓄電池を抜いたものとほぼ同様です。実際エンジンはDMF15HZB-Gで、HB-E210系と同じものを採用しています。ただ、台車や主電動機やインバーターは違うものを採用もしています。特にインバーターはSiC素子を使用したものとなり、最新の技術が適応されています。

GV-E400系台車
動台車のDT87
E233系などと似たデザイン
全車両0.5Mで車両のうち片側の台車だけにモーターが搭載されていて、もう片側は付随台車でモーターが搭載されていません。つまり1両あたりのモーター出力は、95kw×2の190kwとなっています。カタログスペックだけを見るなら、走行性能はE231系に近いものだと思います。

起動加速度は従来のキハE120系と同じ1.58km/hと、それより速く一昔前の通勤電車並みの2.3km/hの切り替えが可能です。この機能はハイブリッド気動車にも搭載されています。

また、ハイブリッド気動車がモーターと蓄電池で回生ブレーキが使えるのに対し、電気式気動車は最低限の蓄電池しか搭載していないので、それは出来ません。搭載電池もアルカリ蓄電池で、リチウムイオン電池ではありません。ただ、抑速ブレーキ時にはモーターをブレーキに使い車内の機器で電力を使用する、抑速制御モードを備えています。

埼京線で既に無線信号システムのATACSが導入され、ローカル線でも無線信号システムの開発が進められており、海外では一部導入もされています。GPSとその補助衛星の準天頂衛星みちびき用と、次世代閉塞用のアンテナ取り付けの準備工事が既にされおり、将来的に対応が可能となっています。

投入路線(新潟地区)

羽越本線(新津~酒田)、信越本線(新津~新潟)、米坂線 (米沢~坂町)、磐越西線(会津若松~新津) 

置き換えられた
只見線キハ40系

2019年8月より営業運転を開始し、2020年3月のダイヤ改正で上記路線すべてのキハ40系の置き換えを完了しました。

投入路線(秋田地区)

奥羽本線秋田駅停車中のJR東日本キハ40系
置き換え対象と思われる
秋田地区のキハ40系

津軽線 (青森~三厩)、五能線 (東能代~川部)、奥羽本線(秋田~東能代、弘前~青森)

解説

部品納入予定次期として、先行納入が2017年9月からの3両分、2019年3月から60両分の納入を求めていました。そのため2018年から試運転を行い、少数の車両による営業運転が2019年8月から、本格投入による営業運転が2020年3月のダイヤ改正となりました。

置き換え対象はキハ40系が中心です。これにより従来タイプの気動車キハE120系の配置転換も実施され、只見線の新潟地区・福島地区両方に集中投入されました。従来の気動車との共通運用が難しくなるのと将来の只見線全線復旧も見据え、運用をシンプルにする思惑もあったのかもしれません。

現時点では63両の投入となっていますが、将来的には150~250両(今回の63両は含めて)の投入を検討しているとも発表しています。

車両の導入発表と同時に公募の発表も行われました。公募はJR東日本が支給する、「ブレーキディスク・ブレーキライニング・列車無線・ATS」以外で行われ、車両全体から台車や車体などのパーツ単位の「設計・製造・保守(40年以上)」についての提案を、国内外から受け付けました。

八高線で試験開始

GV-E400系の屋根上アンテナ
上二つの台座が準備工事のもの
真ん中二つが営業運転で使用されるもの
半円状のが今回の試験用
一番下の白くて丸いのがドコモの携帯アンテナ

車両の紹介で次世代閉塞システム用の準備工事が行われていると紹介しましたが、八高線で踏切の制御システムに絞った試験が2020年9月から開始されました。2021年1月までの試験予定です。

 従来ローカル線の踏切では、線路にある車上子を通過するとケーブルで踏切に信号が送られ、遮断機が開閉していました。踏切内に車が止まっているなど非常時については、踏切近くにある特殊信号機が発光し運転手が手動で非常ブレーキをかけていました。

今回の試験ではGPSのような衛星測位システムを使って車両の位置を特定し、踏切の近くの場合は携帯電話の回線を使って遮断機を制御します。踏切内に車が止まっているなど非常時は、携帯電話回線を使って列車に情報が送られ、自動で非常停車出来るようにするものです。携帯電話の通信が不能になった場合は、列車は非常停止し踏切も遮断機が下りるようになっています。

メリットとしては地上子やケーブルが無くなるので、メンテナンスが楽になることです。これにより初期投資とメンテナンス費用が20%低減できるとなっています。ケーブルが無い分物理的な障害にも強いはずです。

一方で携帯回線の影響をそのまま受けるので、災害時の安定性などは未知数な部分もあります。

JR北海道も導入へ

JR北海道もキハ40置き換え用として同じ仕様の車両を導入すると発表しました。詳しくは関連記事のほうをお読みください。

※関連記事
JR東日本が八戸線キハ40置き換え車両を公募 その狙いは?
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