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2024年9月21日土曜日

東北新幹線列車分離が重大インシデントに当たらないのは正しいのか?




 東北新幹線が315km/h走行中に連結が外れるという前代未聞のトラブルが発生しました。こういった場合重大インシデントと呼ばれる事故に繋がりかねない事象とし、国土交通省が調査を行うのが一般的ですが、事故原因が分からないトラブル発生当日に重大インシデントには当たらないと国土交通省がコメントし、波紋を呼んでいます。これが妥当か考えてみたいと思います。

やはり重大インシデントにあたるのでは?

大宮駅に到着するE5系
当該車両と同じ形式の
東北新幹線E5系
結論から言えば過去の事例や今回と似た原因と思われる例から見るに、それらとの違いから重大インシデントにならない反証もあるものの、やはり当たるのでは?というのが私の考えです。

そもそも重大インシデントとは何が対象になるか?、今回と過去の事例を比較するとどうか?という2点から解説したいと思います。

1点目何が重大インシデントにあたるのか?

まず重大インシデントとはですが、日本では大きな事故に繋がりかねないトラブルを指して使われています。そして、そういったトラブルが鉄道で起きた場合、法令で国土交通省へ報告することが定められています。

更に具体的にどういった内容であれば報告する必要があるかも定められており、公開の件に該当しそうな「車両の走行装置、ブレーキ装置、電気装置、連結装置、運転保安設備等に列車の運転の安全に支障を及ぼす故障、損傷、破壊等が生じた事態」という例も示されています。

今回であれば連結装置のトラブルなので、上記の基準に入ると考えられます。

その報告が該当する場合は、国土交通省管轄の「運輸安全員会」が調査に向かうことになります。そして1年程度の調査を行い公に公表するので、国民が原因を知ることが出来るだけなく全ての鉄道事業者が参考に出来るというメリットがあります。

1点注意しておきたいのは、重大インシデントというのは人為的な原因だけでなく、偶発的や未知の事象も含まれるので、重大インシデントを起こしたから悪いとは言えない点です。誰もが想像できないレアケースや、未知の現象によるものであればそれを最初から防ぎようがないのは当然なだけでなく、責任の所在が誰にあるという話でもありません。だからこそ調査し、未然に事故を防ぐ対策を立てるのが重要なのです。

今回の事例の内容

近年起きた事例と比較する前に、今回の内容を知る必要があります。

2024年9月19日盛岡始発東京行きはやぶさ6号(車両形式: E5系10両)の後ろに、秋田始発東京行きのこまち6号(車両形式: E6系7両)が盛岡駅で連結。古川~仙台間を315km/hで走行中に、はやぶさ号とこまち号が分離。列車は安全装置が働きブレーキが働き減速。その時後方のこまち号の車掌が異常に気づき、2両目である12号車から先頭車両11号車へ移動し手動でもブレーキをかけて停車。

停車後に車両の連結器を目視で調べたが、特に異常はなし。緊急点検を他の車両でも行ったが、異常は見つからなかったというのが概要です。

新幹線の連結切離しは日常で歴史もある

現在東北新幹線では、E5系とE3・E6・E8系の4形式が日常的に連結を行っています。この連結運転は1992年の山形新幹線つばさ号運行開始から行われており、30年以上歴史ある運行形式で、今まで大きな事故はありません。

列車分離は本当に古典的で重大事故

列車分離事故というのは、鉄道の運行開始からある事故と言っても過言ではなく、日本で有名な古い事故は小説にもなった塩狩峠の事故です。それだけ古くからあるので、対策も行われて安全装置が発達しているだけでなく、起きてはいけない事故の筆頭ともいえると思います。

連結器は走行中外れるなどあってはならないので、それ相応の構造と強度を持っています。今の電車は様々なシステムでモニタリングをしているため、電気的にも安全装置が組み込まれています。今回はで言えば5km/h以上の速度では、切離しされないようロックする別のシステムもついています。なので、本来それが働きロックされるはずだったので、この点は間違いなく問題です

最後の安全装置という点で日本で走る鉄道であれば、連結している列車全てがブレーキ管と呼ばれるブレーキ制御用の空気の管で繋がれており、それが切断されると自動で非常ブレーキがかかる仕組みが付いています。

今回の事例でもそのシステムはちゃんと働いており、分離された時点でブレーキがかかりました。それに加えて東北新幹線の場合は、分離した車両のブレーキのかかり具合で衝突するのを防ぐため、後ろに連結している車両のほうが強くブレーキがかかるシステムが付いているそうで、今回もちゃんと300mの間隔をあけてそれぞれの列車が停車しました。なので、最後の安全装置という点では、満点の働きをしたと言ってもよさそうです。

原因は電気系統の不具合か?

事故当初から専門家も指摘していますが、連結器の破損などが見られないのを考えると電気系統の不具合により分離したと考えるのが自然です。

また、この後紹介する重大インシデントの事例でもあったのですが、電気的な不具合と人為的ミスが重なって分離するという事例がありました。

近年の事例で参考になりそうなのは2件

運輸安全委員会では、2001年からの鉄道での重大インシデントの内容をHPで公開しています。それによると、2001年から63件の重大インシデントが発生しており、そのうち2件が列車が切り離されるという内容でした。

その2件を見ると、1件目が理由不明の連結器解除による分離で非常停止、2件目が人為ミスと電気系統の不具合に地形の影響が重なったことによる分離です。これらの詳細を見るにどちらも結果安全に停止できているにも関わらず重大インシデントに含まれており、今回も調査対象に入ってよさそうに思えました。

1件目 調査中の大井川鉄道の事例

1件目は現在も調査中の大井川鉄道での事例です。

2023年11月28日に終点の家山駅についた電気機関車E31形と客車普通列車3両編成の列車は、駅構内で機回し作業を実施。機関車の付け替えを完了し、折り返し家山駅を発車しポイント付近を通過。その直後に連結器が外れ機関車と客車が分離、その時ブレーキ管が外れ非常ブレーキが作動し停車。乗客や乗務員に被害は無し。
※機回し作業とは、機関車を客車や貨車の前後反対につける作業

この件が起きた翌日には運輸安全委員会が調査入りし連結器の緊急点検を実施、12/1には車両・現場の調査が行われ連結時の検査・テスト項目の追加、12/8には事故当時の状況を再現する検証を実施も、原因が見当たらず引き続き調査というのが概要です。

観光列車という側面が強かったのもあると思いますが、安全のため事故から12/1までは似たようなシステムで運行されるSL含めて、客車列車の運行を停止しました。

このケースでも自動ブレーキにより安全に停止できています。なので、安全に停止でき、見た目では問題が確認できなくても重大インシデントに当たるというのは、ポイントです。

一方で、新幹線と違いアナログな物理的システム中心で連結すれば物理的操作をしなければ外れにくい古い方式であるにも関わらず、外れたので重大性を大きく見積もられたという点もあるかもしれません。

もう一つ特筆したいのは、大井川鉄道が事故が起きてから調査や新しいことを実施する度に、ホームページで追記しながら公開していた点です。本来当たり前ではあるはずの透明性のある事後報告というのができない企業が多い中、こういった公開を行ったのは評価すべきだと思います。

2件目 似ているかもしれない両毛線での事例

2005年5月31日に始発駅小山駅を発車した107系2両編成を2編成連結した4両編成は、次の駅の思川駅に到着。その時車両下部からエアーの抜ける音がし、車両が後退し始め車掌が非常ブレーキをかけ停車。乗客・乗務員に被害は被害は無し。

思川駅で点検を実施したところ、前2両のドアは開閉できるが後ろ2両のドア開閉ができない・ブザーによる連絡ができないなどを確認、そのため連結器を点検したところ20cm分離していたのを確認。

技術係を呼び再度点検。後ろ2両の解結スイッチは点灯していたが(連結)操作ハンドルは運転位置であり、異常は見つからなかったので、再度連結し岩舟駅へ向けて回送を実施。発車した後の走行中に本来オフのはずの自動解結NFBがオンになっていのに気づいたが、走行中なので万一を考えそのまま走行。
※自動解結NFBは自動解結装置の電源を入れるためのブレーカー

次の栃木駅到着後に、思川駅と同様の分離が発生した。というのが重大インシデントの概要です。

原因は前日の作業ミスと偶発的な電気系統の不具合と地形とみられています。

107系は2両固定編成ですが、2・4・6両と必要に応じて編成を増減するため連結切離しを行います。そのため日常的に連結と切離し作業が実施されていました。

前日も2編成の連結作業を行っていました。本来は自動解結NFBスイッチをオンにし、自動解結装置の操作を行い連結、連結完了後に自動解結NFBをオフにするのが流れです。しかし、自動解結NFBをオフにするのを作業員が忘れていたようでした。

しかし、自動解結NFBは自動解結装置の電源スイッチであるため、自動解結装置の操作を行なわなければ、問題ないはずでした。ですが、自動解結装置を分解したところ、装置自体に故障が無かったものの、設計の問題によりコネクタの通電不良で誤作動が発生した可能性があると分かりました。これにより本来人が操作したときしか作動しては行けないのに、逆に作動してしまったと考えられます。

それに加えて、自動解結装置は5km/h以上であればロックをかけるのですが、思川駅が下り勾配で停車した後に列車がゆっくり動きだしたために、勝手に動き出し分離しました。

つまり、作業員のミスと自動解結NFBの設計ミスと下り勾配という3つの条件が重なって、初めてこのトラブルが起きたことが分かりました。そして、この件では車掌が非常ブレーキをかけましたが、人為的にブレーキをかけなければ相当距離列車が動いたことも指摘されています。

これらの原因から自動解結NFB取り扱い時の確認や注意喚起のシール追加、自動解結装置の改良が実施されました。

この例では当初原因は全く分からなかったものの、調べたことにより人為的なミスや設計の不具合が起こったことが分かりました。

このケースが今回の東北新幹線のケースと違うのは、車掌の機転により列車が停止、列車に搭載された装置だけでは、安全に停車できなかった可能性があるという点だと思います。ただ、安全に停車した大井川鉄道のも調査対象になったのを考えると、そこまで大きなポイントともいえないのでは無いかと思います。そして未知であった電気系統の不具合が原因が一つだったと言う点は、今回のケースのヒントになるかもしれません。

大企業なので調査はするだろうが…

JR東日本は調査は間違いなくすると思います。人間自分に甘くなるように、自社には甘くなってしまうものです。運輸安全委員のような第三者の立ち入り・原因の公表範囲・安全対策の実施などは、全てJRの自主性に委ねられてしまうので、それがどこまで出来るかは心配なところです。

そして一番思うのは、調べて事故を防げることがあっても、調べて事故が起こることはないということです。

更に今回装置が正しく働いたのちに車掌が機転を利かせブレーキをかけたというのが、どういう意味があったかも調べる必要があると思います。JR東日本は自動化を推し進めているので、人間の機転にも意味があったのか無かったも重要な話になると思います。逆にこういうケースでは、機械の非常動作と人間の良かれと思った動作がぶつかり悪い方向に働くこともあります。

重要インシデントにならない以上はJRに委ねられたわけですが、透明性のある公表を行ってくれることを願っています。


2023年9月10日日曜日

消える振り子式特急から復活の振り子式特急へ




 国鉄時代に山岳路線などのカーブの多い線区へ切り札として投入された振り子式特急がの変遷を、登場時から現在まで紹介していきたいと思います。

記事作成日: 2015.05.25/記事更新日: 2023.09.10

振り子式車両とは

長野駅に停車するJR東海383
特急「しなの」に使用される
381系の後継で制御付き自然振り子式の383系

振り子式車両は特殊な構造の台車を利用して、列車がカーブを高速で通過したときに遠心力で車両を傾けて乗り心地を向上するシステムです。ただし、カーブの速度向上は振り子式だけで可能になるものではなく、高速で通過できるように線路を強化したり車体を軽量・低重心にするなど、様々な技術を組み合わせて可能になります。振り子装置は、あくまでも乗り心地を良くすることが中心の装置です。

「しなの」で初めて採用された振り子式

日本では国鉄時代に開発され、1973年より製造された381系が、営業列車で最初に振り子式を採用しました。381系は中央線を走る特急「しなの」でデビューし、スピードアップの成果を上げました。その後「くろしお」「やくも」と導入路線を増やしていきました。

この時採用された振り子装置の方式は、自然振り子式です。この方式はカーブを曲がると動力なしで勝手に車体が傾くので、安全性が高い利点があります。

しかし、この方式の弱点として、車体の傾く動作とカーブと合わない点です。カーブが入る時は、列車が曲がり始めてから車体が傾斜し、カーブを出たときは逆でカーブから出た後傾きがなくなります。この欠点により乗り心地が悪くなり、乗り物酔いがおきやすく乗り心地では、必ずしも好評とは言えませんでした。

乗り心地を改善した制御付き自然振り子

JR東日本E351系の台車
E351系の台車
自然振り子方式が登場して約20年後、乗り心地の悪さを改善した方式の制御付き自然振り子が登場しました。

この方式は列車の走行位置を把握し、カーブの手前とカーブを抜ける直前に少し力を加えることで、傾きのタイミングを調整することができます。そして最終的な傾きは今までと同じ方法で、カーブにより勝手に車体が傾くようにしています。なので安全への影響は最小限に抑えつつも、乗り心地を向上させることが出来ます。

JR発足後各社が新車開発にしのぎを削る時代、JR四国と鉄道総研により開発され、JR四国2000形特急気道車で採用されました。1989年に試作車が作られ、1990年より量産車が開始されJR四国の特急では標準的に採用されていきました。

上の写真の特急「スーパーあずさ」用のJR東日本E351系特急電車など、気道車・電車問わず広く採用されていき、JR貨物以外のJRグループでは急カーブの多い特急用として、全社が採用していきました。

広がる新方式空気バネ式

良いこと尽くめに見える振り子式車両ですが、大きな欠点がありました。構造が複雑になることから、車両の製造コストやメンテナンスコストが上がってしまうことです。そのため日本で振り子式を採用しているのは、ある程度コストがかかっても許される特急車両だけです。

千歳線苗穂駅付近を通過するキハ201系
空気バネ式の車体傾斜装置を採用する
JR北海道のキハ201系
そんな中で振り子式に変る方式として、「空気バネ車体傾斜式」というものが登場しました。この方式は、現在の鉄道で標準となった台車の空気バネをカーブに入ったとき膨らませ、車体を傾けるというものです。空気ばねが浮き輪のように空気が入ったゴムでできているから出来る芸当で、風船のようにカーブの外側のばねを内側より膨らませることで車体を傾けます。

車体の傾斜角度が振り子式に劣るのでカーブの通過速度は下がりますが、仕組みが簡単で製造・メンテナンスコストの両方を抑えることができるほか、乗り心地も振り子式より良いとされます。

JR北海道が開発に意欲的だった頃、コストの低さを武器に一般車両のキハ201系で1997年に初めて採用されました。当初は振り子式ではカバーしきれない路線を中心に特急用として採用されていきました。

現在ではN700系やE5系と300km/hを超える速度で走る新幹線車両にも、標準装備として採用されています。

その後は2014年に登場したJR四国8600系特急電車を皮切りに、現在振り子式の車両が運用されている区間でも、空気バネ式へ置き換えるケースがでてきました。先ほど紹介した特急「スーパーあずさ」用E351系も空気バネ式のE353系に置き換えられました。

希望だったハイブリッド傾斜システム

振り子式の採用が減っていくなか、JR北海道は振り子式と空気バネ式を共存させて更に高速でカーブを曲がれるようにと考えたのがハイブリッド傾斜システムです。振り子式で車体を傾かせつつ、さらに空気バネを膨らませて今までのシステム以上に車体を傾斜させ、カーブの通過スピードを上げようというものでした。

しかし、JR北海道内の安全に関わる度重なる大きなトラブルで、新しい技術の開発を行うより安全性の強化が先だという判断が下されました。試験車両のキハ285系は、完成したにも関わらず試験は中止となってしまいました。2014年に製造されて以来まともに本線は走ることはなく、2017年には解体されています。

この開発中止はJR北海道以外にも影響があったと思います。この当時空気バネ式が広がる一方で、振り子式を大きく発展させようとしていたのは、日本の鉄道会社の中ではJR北海道ぐらいのものでした。振り子式を採用してる列車の中には地方ローカル線なども多くあり、空気式が広がる中でも振り子式を必要としています。そんな中での唯一発展させようとしていたJR北海道がやめたことで、振り子式の日本での発展は大きく後退しました。そして地方ローカル線にとっても、進化の一つの道筋が経たれてしまいました。

車体傾斜装置を停止したJR北海道

キハ285系の後も状況は悪化していきます。安全への優先でそれ以外のコストを下げるため、JR北海道の特急車両は車体傾斜装置の採用をやめただけでなく、既に搭載されている車両での使用もとりやめています。これにより特急列車の所要時間が伸びてしまいました。

経費削減と安全対策が優先で、以前のような速度向上のめどが立っていません。確かに脱線などしたら元も子もないのですが、北海道でも高規格道路の延伸が続いており、常に速度向上の策を練らないとどちらにせよジリ貧なのは間違いありません。

状況の好転を願っているのですが、JR北海道に関わる国や自治体がとても交通政策に真剣に取り組んでいるとは言えない状況で、先が真っ暗なのが現状です。

一時は車体傾斜を捨てたJR西日本

北陸線福井駅に到着する683系しらさぎ
289系の改造元となった683系
JR北海道ほどではなくとも、一時は消極的だったのがJR西日本です。特急「くろしお」で使われていた381系を置き換えるため、2012年に登場した287系・2015年に登場した683系を改造した289系という車体傾斜装置の付いていない車両で置き換えを行いました。

287系・289系は381系と比べて強力なモーターを採用してるものの、車体傾斜システムがなくカーブの通過速度は劣ります。そのため特急「くろしお」では所要時間が381系より若干延びてしまいました。

287系が「くろしお」で運行を開始した2012年は、リーマンショックの余波もあり景気の良い時期とは言えませんでした。更に北陸新幹線の開業で北陸地域などで運行していた683系交直流特急電車が余剰となっており、当時登場して15年も経っておらず廃車にするには早すぎました。また、381系との置き換えならば所要時間に大きな差が出ない、振り子式は導入コストが高いなどもあります。

これらから推察できる経済性から、仕方の無い判断だとは思いますが、速度面では後退してしまいました。

復活の振り子式

空気ばね式に押される形で衰退していくかと思われた振り子式ですが、空気ばね式の弱点が露呈することで復活していきました。

空気ばね式の弱点としてカーブが多い区間だと、傾斜が追い付かない問題があります。風船のように空気を送り込む関係で、頻繁に空気ばねへの空気の吸気と排気を行うために、頻繁にカーブの切り替えしが行われると追い付かなくなるのです。

JR四国は気動車でも空気ばね式を拡大しようと、2017年に2600系を製造しました。しかし、カーブの多い区間では給気が追い付かないことが分かったため、導入は2編成のみとなっています。

そのためJR四国では2019年より2700系制御振り式気動車が製造されていく流れとなりました。振り子式車両の新形式は、18年ぶりの登場でした。その後JR西日本も最後の国鉄型特急電車となった特急「やくも」用381系の置き換えで、制御振り子式の273系の導入を発表し、JR東海も383系の後継に385系の導入を発表しています。

273系と385系では新しい位置検知システムやジャイロシステムを搭載し、コスト削減や振り子装置の稼働タイミングを調整出来、より進化した振り子式が搭載される見込みです。

一時はだいぶ劣勢に見えた振り子式ですが適材適所ということで、カーブが多い路線には必要な方式として復活してきています。今後もすみ分けていくのではないでしょうか。

海を越えた振り子式

停車中のJR九州885系
TEMU1000形のペースとなった
JR九州885系

日本での振り子式の採用が減る中で、台湾の国鉄にあたる交通部台湾鉄路管理局(TRA)は日本製の振り子式車両を採用し続けています。JR九州の885系の姉妹車両にあたる、日立製TEMU1000形のです。車両は太魯閣(タロコ)号用として使用されており、従来の車両より所要時間の短縮を実現しました。

また日本同様に空気ばね式車体傾斜装置の車両も採用しており、こちらも日本車輛製の日本製で、普悠瑪(プユマ)号用にTEMU2000型を採用しています。

あとがき

この記事を最初に書いた2015年は、日本の鉄道高速化を支えてきた振り子式が節目を迎えようとしていました。そして記事を更新した今では、振り子式に復活の兆しが見えています。

列車の高速化技術自体が消極化される中で、振り子式の復活は一つの明るい話題だと思います。様々な乗り物が速くなる中で、少子高齢化で新幹線以外の日本の鉄道の高速化は進みにくくなっています。日本の鉄道は今でも間違いなく安全で快適になっている一方で、乗り物は速くてなんぼのとこもあるので、高速化の取り組みが少しでも進むことを願っています。


2022年6月18日土曜日

電車の顔の話 普通電車編 - 鉄道雑学




列車の顔と呼べる先頭車両のデザインですが、目的や会社によって色々な形があります。そんな列車の顔について見ていきたいと思います。今回は比較的新しい普通列車を中心に紹介します。

列車には目的ごとの顔がある

JR東日本E231系とE233系
JR東日本E231系とE233系
先頭車両のデザイン、列車の顔と呼べるデザインに明確なルールがあるわけではありませんが、傾向はあります。

普通列車は機能性を最優先したデザイン。特急列車では機能性だけでなく、会社のイメージにも繋がるため、デザイン性を重視したデザイン。新幹線であれば速度を重視したデザインになっています。

今回は比較的新しい普通列車のデザインを見ていきたいと思います。

コストと機能を優先したい普通電車

普通列車のデザインは箱型のデザインが多い傾向にあります。お客さんを安く快適に沢山乗せるには、まずスペースが重要です。そのため最もスペースが有効利用できる箱型になります。それに加えて走る場所によって、乗客の多さ・連結の必要性・気象条件に合わせての装備が考慮されます。

特に通勤列車は大量の車両を用意する必要があり、単純化されたデザインが理想です。単純なデザインであれば破損したときの修理も簡単ですし、平面的なら掃除の手間も減ります。

方向性としては同じはずですが、各社こだわりがありデザインでは結構違ったものとなります。

例えば、JR東日本は装飾は最低限でシンプルなデザインを採用する傾向にあります。特にE231系以降の通勤電車はその傾向が強い車両が多いです。

一方で私鉄は住宅地開発など沿線事業も手掛けることからイメージを大事にします。そのためコストがかかってもデザインを重視することがあります。相鉄の新車では車のようなグリルがありますが、ラジエーターを冷やす必要のない鉄道では無意味なものです。本当にデザインのためだけに、お金をかけているのです。

通勤電車の顔

それでは各社の通勤電車の顔を見ていきたいと思います。

JR東日本E235系
JR東日本E235系
JR東日本の通勤電車の最新形式のE235系です。非常にシンブルなデザインで、大型の一枚窓を採用し、上部にヘッドライトとテールライトと行先表示機を備える最小限の構成です。窓ガラスが大きいため、非常に見晴らしの良い構造になっています。

JR東日本の場合、以前は山手線など混雑する首都圏を走る短距離を走る通勤電車と、混雑はするものの駅間の長い郊外を走る首都圏の郊外電車で設計を変えていました。今では効率化と技術の進歩で、通勤電車に寄せた共通のデザインとなっています。

JR西日本323系
JR西日本323系
JR西日本の大阪環状線323系です。大阪環状線という通勤路線の特性を考えれば、大型の一枚窓の構成でも良いのですが、JR東日本とは対照的に近郊型車両に寄せて共通化されています。

東京メトロ17000系
東京メトロ17000系
JR東日本とは違い3分割された構造の東京メトロ17000系です。地下鉄車両は非常用脱出扉を前面に設けることが必須なので、そのため扉があります。ただし、非常用で普段は使わないので片側に寄せることで、出来るだけ運転手の視界を確保しています。ある程度曲面も使われており、そこはコストのかかっている部分のはずです。

京王電鉄9000系
京王電鉄9000系
京王電鉄9000系です。都営新宿線に乗り入れるために、非常用の貫通扉を設けています。東京メトロと違い、貫通扉は端に寄せないデザインを採用しています。コストのかかる曲面ガラスを採用して、運転手の側面の視界を確保しているのがポイントです。

相模鉄道12000系
相模鉄道12000系
通勤電車ではかなり例外的な見た目重視の相模鉄道12000系です。車のようなデザインで、ヘッドライトはリング状のデザインが入り、フロントグリルのような装飾が施されています。鉄道でいえば完全に不要な装備で、デザインのためだけのものです。これは相鉄のブランド戦略の一環で、鉄道車両以外も含めてデザイン性を高め企業価値を高めようとするものです。車両カラーリングではよく見られますが、通勤電車のデザインでここまでやるのは珍しい方だと思います。

静岡鉄道A3000形
静岡鉄道A3000形
静岡鉄道のA3000形です。静岡鉄道は清水市など静岡県の都市部を走る私鉄です。地方私鉄は中古車を導入することが多いのですが、都市部で運行しているので比較的経営基盤が強く、自社設計の新型車両を導入しています。

都市部で需要が安定しているため、2両の固定編成での運行で貫通扉はありません。こちらもデザイン性を重視しており、コストアップに繋がる編成によって異なるカラーリングを採用しています。

近郊型やローカル線のデザイン

都心部近郊やローカル線のデザインも基本は同じですが、需要に合わせて連結できるようになっていることが多く、そのため通路用の貫通扉を設けることが多いです。また、地方の非電化私鉄では、新潟トランシスの車両が採用されることが多く、よく見ると似ていることが多いのです。

JR東日本E721系
JR東日本E721系
東北地区を中心に活躍する、JR東日本E721系です。首都圏以外のJR東日本の車両は、連結や雪を考慮した構造となっています。そのため中心に貫通扉を装備し、連結時は車内の通行が出来る設計が多く採用されています。

JR北海道733系
JR北海道733系
札幌近郊で活躍するJR北海道733系です。中心に貫通扉を設け、連結時を考慮するのは他と同じです。それに加えて北海道は積雪も多く、駅間距離が長く高速走行を行います。そのためヘッドライトの数を多くし、視界確保や列車の接近をわかりやすくしています。

どの鉄道車両も踏切などでの衝突時に、運転手の安全確をする構造となっています。JR北海道の車両は、普通よりも運転台も高い位置にし前面を厚みのある構造にすることで、衝突の時の安全性がより高いものとなっています。

JR東日本GV-E400形
JR東日本GV-E400形
JR東日本の最新式電気式気動車のGV-E400形です。東北や新潟地区で活躍しています。こちらもヘッドライト上部に付け、中心に貫通扉を設けて連結を対応しています。ローカル線は最初1両単位で運行されるので、乗客数に柔軟に対応出来るよう1両から数両の連結を考慮した設計が一般的です。

JR北海道H100形
JR北海道H100形
こちらはGV-E400形の兄弟車にあたるJR北海道H100形です。全く同じでも良いのですが、733系同様の理由だと思いますがライトが運転台下にも増設されているのが分かります。

鹿島臨海鉄道8000形
鹿島臨海鉄道8000形
鹿島臨海鉄道8000形です。この車両は非電化私鉄では多く採用されている新潟トランシス製の車両です。ライトの位置が違ったりはしますが、新潟トランシスの車両はよく見ると似ている部分があったりします。

今回の紹介はここまででざっくりした解説として各社の傾向などを紹介しました。他にも色々な顔の理由があるので、是非どうしてそういう形なのか考えてみると楽しいと思います。


2022年6月6日月曜日

ハイブリッド・電気式・液体式 気動車の駆動方式のメリットデメリット




従来からのエンジンだけで動く液体式、充電電池で動く蓄電池式、エンジンと電池でモーターが動くハイブリッド、エンジンで発電してモーターで動く電気式と、近年増えてきた非電化区間の様々駆動方式のメリットデメリットを考えます。正直頭で整理しきれないところもあるので、間違っているところは優しくご指摘いただければ助かります…
記事作成日: 2020年9月9日/記事更新日: 2022年6月6日

これからは電気式が主役か?

電気式気動車のGV-E400系
電気式気動車のGV-E400系
新津駅にて撮影
既にJR東日本とJR北海道では電気式気動車の大量導入が行われています。この後紹介するそれぞれの特性を見ると、電池価格の変動の要素はあるものの電気式気動車が主役となり、次にハイブリッド気動車や蓄電池式気動車となっていきそうです。

液体式気動車

只見線キハ40系
オーソドックスな液体式気動車キハ40系
只見線小出駅
メリット
・ディーゼルエンジンだけで構成がシンプル
・比較的軽い
・技術的に安定している

デメリット
・変速機の整備性が悪い
・走行性能が低い
・エネルギー効率が悪い傾向にある
・エンジン音がうるさい

いわゆる従来型の気動車で、バスやトラックと同じ方法で動きます。ディーゼルエンジンで、直接車輪を動かします。日本で今走っている気動車はほとんどこの方式です。

この後紹介する電気式の列車は、ディーゼルエンジンの他に発電機やモーターが必要になるので、構成としてはシンプルになります。一概に比較は出来ませんが車両重量も比較的軽い傾向にあります。ただ、変速機など重さのある部品もあったりと、ハイブリッド気動車と比べても1tレベルの軽量化なので、大幅に軽いわけではありません。

構成としてはシンプルなのですが、エンジンの回転を必要なトルクや速度に合わせて調節する変速機が必要です。変速機は構造が複雑なので、これが重量増加や整備性の低下を起こします。また、液体式の気動車は電車よりも加速や最高速度の面で劣ります。更に蓄電池の使える車両に比べるとエネルギー効率が落ち、燃費が悪いと言えます。停車中もエンジンを動かす必要があり、発車時はエンジンがフル回転になるので特にうるさくなります。

みんな電車

蓄電池車もハイブリッド気動車も電気式気動車も、みんな電車です。違うのは電源を何に頼ってるかという点です。

そもそも何故電車にするかと言えば、例えばJR東日本の車両の大半は電車です。電車ベースであれば、技術や部品の共有をしやすくなりメンテナンスも簡単になります。性能も電車のほうが高いので、ベースを電車にすることで加速が良くなっています。

地方私鉄が導入する液体式気動車は価格が公開されてる場合があり、1両1億5千万程度の例があります。一方で量産効果のあるJRの通勤電車は価格が公開されてないものの、平均1億円程度と言われます。ローカル線用は数が出ないので元々コストが上がりがちですが、通勤電車と部品を共通化出来るのであれば導入コストも下がる余地があるのかもしれません。

蓄電池式車

JR東日本EV-E801系 ACCUM
JR東日本EV-E801系 ACCUM 
蓄電池車
メリット
・電車として走れる
・効率が良い
・最も静か
・走行性能は高い
・構造がシンプル

デメリット
・コスト、特にリチウムイオン電池が高い
・電池の量で走行性能や走行距離が決まる
・充電設備が必要
・頻繁に電池を使うと電池の劣化が進む


一言でいえば電池で走る電車です。なので、電車と気動車の比較とほぼ同じとなります。電池はリチウムイオン電池で、スマートフォンの電池の大きいものが搭載されています。

比較的エネルギー効率が良いです。電化区間では架線からパンタグラフで充電し普通の電車として走り、非電化区間では電池でモーターを動かして走ります。エンジンが無いので、他の方式より静かです。走行性能も高く、減速する時にモーターで発電して電池に充電することでエネルギー効率も高くなります。

問題のすべてはリチウムイオン電池と言っても、過言ではありません。リチウムイオン電池を沢山載せられれば、電車と全く同じ高い加速で速い最高速度で走り、長距離の運行が可能です。しかし、リチウムイオン電池は値段が高く、沢山載せるほど車両が重くなります。そこで距離や加速など妥協点が必要になります。それでもJR東日本最新世代の液体式気動車キハE120系の加速が1.58km/h/sに対し、烏山線のEV-301系では加速は2.0km/h/sと一昔前の通勤電車や近郊列車レベルで高くなっています。また、スマートフォンと同じように充電と放電を繰り返すと、電池が劣化し性能が落ちます。なので加速と減速が少ない平坦で、駅間距離が長いほうが、電池の劣化が少なく済みます。そして充電電池の充電する設備がない場合に、充電設備が必要になります。

烏山線の充電設備
烏山線の充電設備
車両後ろ側の架線柱が充電部
非電化区間の充電設備の例ですが、写真は烏山線の充電設備です。終点の烏山駅に設置されている設備で、充電用の架線が駅の一部分だけに設置されています。非電化区間走行中はパンタグラフを下げているのですが、駅停車中だけパンタグラフを上昇させ充電します。

走行距離が短い路線に導入されており、JR東日本だと烏山線・男鹿線、JR九州では香椎線で導入されています。烏山線や男鹿線は始発駅が元々電化されており、終点側に最低限の充電設備追加して対応しています。香椎線では中間駅の香椎駅にのみ充電設備がないので、運行系統を二分割しています。特に烏山線は周りの路線すべてが電化されていましたが、烏山線だけが違いました。電車に統一されてことで、そのあたりの調整もやりやすくなったはずです。

ハイブリッド気動車

メリット
・効率が比較的良い
・走行性能が良い
・比較的静か
・変速機がない

デメリット
・車両構成が複雑
・コストが高い
・比較的重い
・頻繁に電池を使うと電池の劣化が進む


ハイブリッド気動車は、電源を電池とエンジンを回して動かす発電機に頼っている点が特徴です。

JR東日本ハイブリッド車は近郊電車レベルの2.3km/h/sの加速を実現しています。蓄電池式の電車と同じようにリチウムイオン電池を搭載しています。そのため蓄電池車同様に、ブレーキ時に発電して電池に溜めることが出来ます。停止時はエンジンを切って電池だけに頼ることもでき、発車してある程度の速度まで電池だけでモーターを動かし、一定の速度以上になるとエンジンの発電も加わります。プリウスのような家庭用自動車と似た制御がされていて、停車・低速時の騒音も同じように抑えられています。また、エンジンを効率の良いな回転数で動かして予め発電して電池に蓄えることも出来るので、その点でも効率が上がります。液体式気動車にある変速機のような複雑な部品もありません。

複雑な部品はないものの、電池に発電機にモーターと色々なものが載っているのでそこがデメリットとなります。色々なものが載っているので車両のコストも上がりますし、それぞれの機器をどう動かすかの複雑な制御が必要で、重さも多少重くなります。蓄電池式と同じように、充電と放電を繰り返すと電池の劣化が早まります。そのためブレーキ時のエネルギー効率で言えば一番載せたい普通列車に載せると、電池の劣化が早く進むのと、発着時は電池が重りとなり効率が落ちます。

これらを踏まえハイブリッド気動車は、リゾート列車や快速列車に採用される傾向にあります。どちらも普通列車よりは停車や加減速が少ないので、電池の負担が減ります。更に必要な車両数が少ないので、ある程度のコストの高さまでは許容できます。リゾート列車の場合は快適性や環境に対するイメージも必要なので、騒音の低減や効率性の面でアピールができます。

電気式気動車

JR東日本GV-E400系
JR東日本GV-E400系
電気式気動車
メリット
・走行性能が良い
・変速機がない
・構成は比較的シンプル
・ハイブリッド気動車よりは車両価格が安い

デメリット
・うるさい
・効率が悪い


電気式気動車は電源をディーゼルエンジンから発電した電気のみに頼りモーターを動かす電車です。変速機が無い分モーターと発電機は載っていますが、あまり複雑な構成をしているわけではありません。エンジン始動用の最低限のアルカリ蓄電池しか載っていないので、コストも下がって車両価格も安いはずです。

電気をエンジンに頼るので、停車時もエンジンのアイドルが必要ですし、加速時は従来の液体式気動車並みのエンジン回転が必要となり、音もあまり変わりません。また、ブレーキをかける時に電気をためることはできないので、その点でも効率は液体式気動車を上回るとは言えません。

車両性能はJR東日本GV-E401系の例では、ハイブリッド気動車と同じ2.3km/h/sの加速を実現しています。走行性能では蓄電池車を上回ります。ただ、実際には従来型の液体式の気動車と合わせた低速の加速モードがあるので、常用されているわけではありません。

JR東日本の東北地区やJR北海道のローカル線で大規模な導入が行われており、液体式気動車の置き換えがかなり進められました。

先ほども紹介したように普通列車にハイブリッド車を採用する場合、電池の劣化と重さの問題があります。さらに山岳線では車両重量のデメリットが大きくなる上に、どうしても加減速が増えて電池の負荷が増えます。非電化区間の多くは山岳線で、乗客も少なくコストもかけられない路線です。そこで妥協案としての電気式気動車のメイン採用という形になったと想像できます。将来蓄電池の価格がぐっと下がれば、また変わってくると思います。

以上を踏まえると最初に紹介したように主流は電気式がローカル線となり、リゾート列車や仙石東北ラインのような優等列車用にハイブリッド気動車、短距離の非電化区間は蓄電池式という住み分けがなされていくと思います。


2022年2月20日日曜日

新型制御で高速化の希望になれ!新型振り子式「やくも」




 特急「やくも」用に導入される273系振り子式特急電車と、273系に採用される新しい技術「車上型の制御式自然振り子方式」について注目したいと思います。

ベースは271系?

形式: 273系特急形直流電車
車両数: 44両 (4両×11編成)
営業時期: 2024年春

JR西日本は2022年2月16日に特急「やくも」向けに、273系を44両導入すると発表しました。運行開始は2024年春で、これにより最後の国鉄型特急電車となった381系を順次置き換えます。それに合わせて2022年3月19日より381系の国鉄色リバイバル運転を行います。

デザインはシルエットのみ明かされており現在検討中としていますが、シルエットを見る限り関空特急「はるか」で活躍する271系をベースにしているようです。

現在の発表ではVVVF化による省エネルギー化・バリアフリー化・防犯カメラ設置・Wi-Fiとコンセント整備と目新しくないものも多く目につきますが、日本初の「車上型の制御式自然振り子方式」採用という大きな特徴もあります。

日本国内では電車での振り子式の新形式は20年以上採用がなく、在来線特急界では明るいニュースです。

山を貫き瀬戸内海と日本海を結ぶ

「やくも」と381系

273系が導入される特急「やくも」は、山陽本線・伯備線・山陰本線を経由して「岡山~出雲市」間を結ぶ特急列車です。新幹線により活躍の減る在来線特急ですが、瀬戸内海と日本海を結ぶ路線は無いため、今でも「やくも」は1時間に1本をベースに設定されている重要な特急です。

山を抜けてカーブの多い区間を走る関係で、1973年に中央線の特急「しなの」・1978年に阪和線と紀勢線の特急「くろしお」・最後に1982年特急「やくも」と381系特急電車を採用した路線です。

381系は自然振り子式と呼ばれる車体傾斜装置が搭載されていて、カーブに入ると遠心力で車体が傾くことで、カーブでも乗り心地を損なわず高速で通過することが出来ます。ただし、車体傾斜装置は乗り心地を維持するための装置のため、あらかじめ線路や架線を高速走行可能な用にする工事が必要です。

381系は485系や183系に似た見た目をしていますが、振り子装置以外にも車体を鋼鉄製からアルミ製にしたり、冷房を床下にするなどして低重心化する工夫があります。

カーブの多い路線に採用された381系ですが、老朽化の問題により「やくも」以外では引退しています。そして485系が引退して今では、「やくも」は最後の国鉄型特急電車が定期運行で活躍する貴重な列車ともなっています。

コストが重くても採用された振り子式

振り子式車両は台車や場合によってはパンタグラフも構造が特殊化するため、コストの関係で採用を減らしています。その代わりとしてカーブの通過速度は振り子式より多少劣るものの空気ばねの空気量を調整して車体を傾けるため、構造が他の一般列車とほぼ同じでコストがあまりかからない空気ばね式の車体傾斜装置がが採用が増えています。

最近で振り子式が採用されたのはJR四国が空気ばね式では技術的にどうしても難しかった場合と、かなり消極的な理由でした。また、「くろしお」に至っては、381系の後継車では車体傾斜装置自体を省いてコスト削減がなされることもありました。

コストがかかっても振り子式が採用されるのは、それだけ「やくも」がまだ重要だと思われているからなのだと思います。

新型制御で少しでも安くなるか?

381系自然振り子式はカーブに差し掛かるだけで勝手に車体が傾く反面、車体がカーブに入ってから車体が傾くため乗り心地が悪くなるデメリットもあります。そのため乗り物酔いが起きやすく、「ぐったりやくも」などという不名誉なジョークもあったりしました。

そのため最近の振り子式車両は制御付き自然振り子という方式を採用しています。線路上にあるATS地上子の位置を記録したマップデータと車両側の計測装置による位置情報を基に、カーブに入るタイミングに合わせて機械的にアクチュエータを制御して少し車体を傾けはじめ、その後は自然振り子式同様に勝手に車体が傾くという仕組みです。

273系ではそれに代わり「車上型の制御付自然振り子方式」が採用されます。詳しい情報はプレスにはJR西日本のプレスには載っていませんでしたが、2020年の鉄道総研の研究成果にその技術と思われるものの詳細「車体傾斜車両向け高精度自車位置検出システム」が出ていました。

それによると従来の方式はATS地上子の位置が変わるたびに車両側にデータを入れかえが必要だったり、大きな駅を走行時に本来の経路とは違う線路を走ると位置を見失う場合がありました。それを車体に搭載したジャイロセンサーによるヨーイング角(大雑把にはカーブ時の車体の傾きみたいなもの)と走行速度からカーブの角度を計算し、車両に搭載された線路のマップを照合して±2mの精度で位置を検出します。これにより車両上のデータメンテナンスを10年程度まで伸ばせるとしています。

最近の日本の特急車両は乗客の減少や高速網との勝負に負けているため、高速化技術よりコスト削減の技術ばかりに投資される傾向にあります。今回の技術は車体傾斜装置の導入コストを、大きくではないものの下げる技術の一つです。車体傾斜による高速化は線路側に改良も必要のため依然コストがかかりますが、空気ばね式にも適用できるこの技術と空気ばね式車体傾斜装置であれば、以前よりもハードルが下がっているのも事実です。こういったご時世でなかなか難しいにしても、もう少し攻めの鉄道車両が増えてくれると良いと願って少し大げさですが、ブログ記事タイトルをつけさせて頂きました。


2020年10月3日土曜日

JR東日本 初の電気式気道車GV-E400系投入へ




2015年5月19日にJR東日本は新潟・秋田地区へ新型電気式気道車を投入すると発表しました。電気式気動車の本格採用はJRでは初めてで、2019年8月よりGV-E400系として、営業運転を開始しました。
記事作成日: 2015.05.19/記事更新日 2020.10.03

初の電気式気動車GV-E400系

新潟地区で運行を開始した
GV-E400系
投入されるのはハイブリッド気道車ではなく、新型電気式気道車です。仕組みとしてはディーゼル発電機で発電した電気を使い、モーターを駆動する方法です。国内ではJR貨物所有のDF200形ディーゼル機関車が採用している方式です。従来の気動車と比べこの方式を採用するメリットは電車の技術を流用することができ、部品などの共通化が可能になることです。逆にデメリットしては構造が違うため、従来の気道車との連結が難しくなると思われることと、ディーゼルエンジンだけでなくモーターなども積むのでコストが上昇すると思われることです。ただ、メンテナンスや部品共通化も含めた運用コストで、こちらを選択したのだと思われます。

ハイブリッド気動車が今回採用されなかったのは大型蓄電池の分コストがかさむだけでなく、停車加速が多い普通列車だとリチウムイオン電池の痛みが激しくなり、運用コストも更にかさむからだと思われます。特に山岳線だと電池の痛みや重量によるデメリットは大きくなります。

ハイブリッド気動車は電池を積んでる分駅停車時や発車時のエンジン使用を抑え、騒音を低減しています。しかし、蓄電池を最低限しか積んでいない電気式気道車は、発車時など電機が大量に必要になるタイミングでエンジン音をフル回転するので、普通の気動車とほぼ同じで結構うるさいのも特徴です。

車両形式名は400番台となりました。HB-E210系やHB-E300系の次の第四世代として、400番台となりました。GV-E400形が両運転台タイプの1両で運行できるタイプ、GV-E401形とGV-E402形が片側運転台の2両以上で運転するタイプです。

新型車両仕様

小川町駅留置中のGV-E400系
試験で八高線に貸し出されている
秋田地区用GV-E400系

最高速度: 100km/h
主発電機: 290kw
主電動機: 95kw
エンジン出力: 331kW(450PS)/2,100rpm

投入数: 1両編成×19編成、2両編成×22編成、計63両
投入時期(新潟地区): 2017~2019年度
投入時期(秋田地区): 2020年度

GV-E400系とキハ110系
GV-E400系とキハ110系
車体は軽量ステンレス製ですが、今までの形式と違いすそ絞りはありあません。丸みの無いデザインなので、キハ110系を彷彿させます。スカートとスノープロ―は一体型で、密着連結器と電気連結器を装備します。電気連結器は一段タイプです。

GV-E400系のヘッドライトと警笛と行先表示器
警笛は屋根上
ライト類はLED
今のところ寒冷地を中心に投入されているので寒冷地対策だと思いますが、警笛類は屋根上に設置されているだけでなく、保護用の板も上部に設置されています。

ライト類は前照灯も尾灯もLEDタイプです。行先表示器は最近採用の進むフルカラーLEDではなく三色タイプに近いもので、コストが削減されているようです。

GV-E400系のVVVFインバーター
VVVFインバーター
構造的にはハイブリッド気道車から、蓄電池を抜いたものとほぼ同様です。実際エンジンはDMF15HZB-Gで、HB-E210系と同じものを採用しています。ただ、台車や主電動機やインバーターは違うものを採用もしています。特にインバーターはSiC素子を使用したものとなり、最新の技術が適応されています。

GV-E400系台車
動台車のDT87
E233系などと似たデザイン
全車両0.5Mで車両のうち片側の台車だけにモーターが搭載されていて、もう片側は付随台車でモーターが搭載されていません。つまり1両あたりのモーター出力は、95kw×2の190kwとなっています。カタログスペックだけを見るなら、走行性能はE231系に近いものだと思います。

起動加速度は従来のキハE120系と同じ1.58km/hと、それより速く一昔前の通勤電車並みの2.3km/hの切り替えが可能です。この機能はハイブリッド気動車にも搭載されています。

また、ハイブリッド気動車がモーターと蓄電池で回生ブレーキが使えるのに対し、電気式気動車は最低限の蓄電池しか搭載していないので、それは出来ません。搭載電池もアルカリ蓄電池で、リチウムイオン電池ではありません。ただ、抑速ブレーキ時にはモーターをブレーキに使い車内の機器で電力を使用する、抑速制御モードを備えています。

埼京線で既に無線信号システムのATACSが導入され、ローカル線でも無線信号システムの開発が進められており、海外では一部導入もされています。GPSとその補助衛星の準天頂衛星みちびき用と、次世代閉塞用のアンテナ取り付けの準備工事が既にされおり、将来的に対応が可能となっています。

投入路線(新潟地区)

羽越本線(新津~酒田)、信越本線(新津~新潟)、米坂線 (米沢~坂町)、磐越西線(会津若松~新津) 

置き換えられた
只見線キハ40系

2019年8月より営業運転を開始し、2020年3月のダイヤ改正で上記路線すべてのキハ40系の置き換えを完了しました。

投入路線(秋田地区)

奥羽本線秋田駅停車中のJR東日本キハ40系
置き換え対象と思われる
秋田地区のキハ40系

津軽線 (青森~三厩)、五能線 (東能代~川部)、奥羽本線(秋田~東能代、弘前~青森)

解説

部品納入予定次期として、先行納入が2017年9月からの3両分、2019年3月から60両分の納入を求めていました。そのため2018年から試運転を行い、少数の車両による営業運転が2019年8月から、本格投入による営業運転が2020年3月のダイヤ改正となりました。

置き換え対象はキハ40系が中心です。これにより従来タイプの気動車キハE120系の配置転換も実施され、只見線の新潟地区・福島地区両方に集中投入されました。従来の気動車との共通運用が難しくなるのと将来の只見線全線復旧も見据え、運用をシンプルにする思惑もあったのかもしれません。

現時点では63両の投入となっていますが、将来的には150~250両(今回の63両は含めて)の投入を検討しているとも発表しています。

車両の導入発表と同時に公募の発表も行われました。公募はJR東日本が支給する、「ブレーキディスク・ブレーキライニング・列車無線・ATS」以外で行われ、車両全体から台車や車体などのパーツ単位の「設計・製造・保守(40年以上)」についての提案を、国内外から受け付けました。

八高線で試験開始

GV-E400系の屋根上アンテナ
上二つの台座が準備工事のもの
真ん中二つが営業運転で使用されるもの
半円状のが今回の試験用
一番下の白くて丸いのがドコモの携帯アンテナ

車両の紹介で次世代閉塞システム用の準備工事が行われていると紹介しましたが、八高線で踏切の制御システムに絞った試験が2020年9月から開始されました。2021年1月までの試験予定です。

 従来ローカル線の踏切では、線路にある車上子を通過するとケーブルで踏切に信号が送られ、遮断機が開閉していました。踏切内に車が止まっているなど非常時については、踏切近くにある特殊信号機が発光し運転手が手動で非常ブレーキをかけていました。

今回の試験ではGPSのような衛星測位システムを使って車両の位置を特定し、踏切の近くの場合は携帯電話の回線を使って遮断機を制御します。踏切内に車が止まっているなど非常時は、携帯電話回線を使って列車に情報が送られ、自動で非常停車出来るようにするものです。携帯電話の通信が不能になった場合は、列車は非常停止し踏切も遮断機が下りるようになっています。

メリットとしては地上子やケーブルが無くなるので、メンテナンスが楽になることです。これにより初期投資とメンテナンス費用が20%低減できるとなっています。ケーブルが無い分物理的な障害にも強いはずです。

一方で携帯回線の影響をそのまま受けるので、災害時の安定性などは未知数な部分もあります。

JR北海道も導入へ

JR北海道もキハ40置き換え用として同じ仕様の車両を導入すると発表しました。詳しくは関連記事のほうをお読みください。

※関連記事
JR東日本が八戸線キハ40置き換え車両を公募 その狙いは?
JR北海道新型気道車の概要発表 JR東日本と共通化へ
JR東日本 新型蓄電池車EV-E801系男鹿線へ投入


2020年9月27日日曜日

東武9050系9152F初の本線試運転と甲種輸送についてレポート




 東武9050系が9152Fが初めて東武本線系統への甲種輸送や本線系統での試運転をしました。この記事では試運転について考えられる狙いや、東武本線から東上線への甲種輸送の撮影レポートを紹介します。

東武9050系が本線走行できるかの試験か?

東武9050系は有楽町線直通用に東上線に導入された車両です。そのため、東武本線系統を走ることは一度もありませんでした。

しかし、9月17日に東上線寄居駅から秩父鉄道を経由して伊勢崎線羽生駅まで甲種輸送され、9月24日に羽生駅から寄居駅へ回送され東上線へ返却されました。本線系統への貸し出し期間中に、曳舟方面や渡瀬方面と深夜試験を実施しました。

PQ輪軸を装着する東武9050系
その謎の深夜試験で唯一分かるのは、PQ測定を行ったということです。上の写真にあるように9050系はサハ1両に、PQ輪軸を装着し東上線から本線へ回送されました。

PQ輪軸を装着することで、PQ測定が可能になります。この測定は垂直からの力Pと水平からの力Qを調べることで、列車が走行時に脱線する可能性があるかの値の脱線係数を求めることが出来ます。この検測は、新型車両の導入時などにも行われるものです。

つまりこの試験を行ったということは、今まで東上線でしか走行しかなった9050系を本線でも走らせられるか調べるための計測を行ったとみて良いでしょう。なので時期は遠くなるかもしれませんが、9050系が試運転以外で本線走行する可能性があると見て良いと思います。

もっとも、これだけでは転属のためなのか、南栗橋への入場のためなのかまでは不明でもあります。

初めての本線→東上線への甲種輸送

甲種輸送の様子


ここからは東武本線から東上線への甲種輸送についてのレポートです。

デキ500形に連結され羽生駅に停車する東武9050系
羽生駅停車中の東武9050系
東武9050系9152Fは営業列車が走らない深夜のうちに羽生駅に回送され、9月24日に秩父鉄道経由で甲種輸送されていきました。

牽引機はデキ500形502号機
三ケ尻線経由での新車の甲種輸送とは違うので、機関車は先頭車両のみ連結されています。この日の牽引機はデキ500形502号機でした。

秩父鉄道デキ500形502号機+東武9050系9152F
エアホースが運転台に伸びている
9050系に限らずデキと連結する時はそうですが、空気ブレーキを動作させるためのエアホースは連結器横の他に、運転台にも引き込まれています。

こういった特殊な場合を除き機関車との連結は想定されていないのもあってか、列車はかなり低速で、同じ寄居方面に向かう普通列車に追い越されながら走っていました。

切り離し作業中の秩父鉄道デキ500形502号機+東武9050系9152F
寄居駅での切り離し作業
寄居駅到着後はそのまま三峰口方面にある引き上げ線まで牽引し、そこからデキがバックで東上線側の留置線まで押し込む形で入ります。そしてデキは9050系を切り離し、秩父鉄道線へ戻っていきます。

連結器が並形になっている
この後夜まで9152Fは寄居駅に留置され、深夜に森林公園へ回送されていきました。到着後は夜の回送に向けてと思われてる、簡単な各種試験が実施されていました。

試験時の様子

また連結器に注目すると普段は密着連結器を装備していますが、機関車との連結のために並形の連結器に換装されています。

PQ輪軸は装着したまま

森林公園検修区で取り付けたPQ輪軸はそのままの状態で戻ってきたようです。取り付けられているのは9050系の9752号車で、二つの台車の片側一つずつに取り付けられていました。

東武9050系と並ぶ秩父鉄道7000系
秩父鉄道7000系とのツーショット
留置中は秩父鉄道の各車両とのツーショットもありました。


2018年11月24日土曜日

走り続ける日本初オールステンレス 東急7000系・7700系




東急電鉄を7700系が2018年11月24日で引退し、東急電鉄では日本初のオールステンレス車の流れを引いた車両は、全て無くなりました。しかし、その頑丈さから東急以外では活躍を続けます。そんな7000系や7700系について焦点をあてます。

さよなら東急電鉄7700系

池上線を走る東急電鉄7700系
池上線を走る
東急電鉄7700系
東急電鉄ではステンレス車体の車両を製造すべく、当時最先端のステンレス車両を造っていたアメリカのバッド社からライセンス購入を行い7000系を製造しました。それ以前にも車体にステンレスを使った車両はありましたが、全ての部材がステンレスというわけではありませんでした。7000系はステンレス製で錆に強いというだけでなく、アメリカの車両設計を基礎としていました。アメリカの場合車両同士の衝突なども想定するので、日本向けに変更した部分もあったでしょうが非常に頑丈につくられていました。今のステンレス車両は軽量化と共に衝突時に衝撃吸収を行うので、安全性という面では比較は難しいのですが、単純な頑丈さで言えばおそらく7000系の上です。そして、7000系は1962年に東急電鉄で運行を開始し2000年に引退しました。

引退直前の7700系

7000系の流れを受け継いでいたのが、1987年に誕生した7700系です。7000系の頑丈なので車体だけ流用し、電装部品を抵抗制御からVVVFに変更したり台車を8000系と同じものにするなど、大幅な改造が施されて誕生しました。最終的にはワンマン化や方向幕のLED化にまで対応したので、外観以外は常に時流にあった改造が施されていました。そんな7700系ですが、2018年11月24日をもって東急では最後まで運行されていた池上線・多摩川線を去りました。

走り続ける7000系

福島交通7000系
まもなく引退する
福島交通7000系
東急電鉄では2000年に引退した7000系ですが、地方私鉄では運行を続けています。現在運行を続けているのは、青森県の弘南鉄道・石川県の北陸鉄道・大阪府の水間鉄道・福島県の福島交通の4社です。

豪雪地帯の場合鋼鉄車両が腐食したりしますが、オールステンレスの強みを生かして雪の少ない東京から移っても元気に走ることが出来ます。

ただ、栄転先でも引退の影が迫っています。福島交通では東急電鉄より東急1000系を購入し、順次置き換えを進めています。2019年度より全てが1000系になるので、東急時代と同じように後輩形式に仕事を譲ることになります。

一方で水間鉄道では2006年より数年かけて更新工事を行っているので、こちらはしばらく安泰のはずです。弘南鉄道・北陸鉄道でもいずれ置き換えがあるでしょうが、今のところは大丈夫そうです。

7700系は養老鉄道へ

一方7700系については(3両×3編成・2両編成×3編成)が、新たに岐阜・三重県を走る養老鉄道へ譲渡されます。譲渡されるにあたり、様々な改造されます。車内については座席を一部クロスシートに変更、運賃表を設置します。外観については半分の編成は緑のラインになりますが、もう半分は東急時代のデザインを維持したままとなります。3両編成そのままの車両と、1両減らして2両編成の車両の二種類が登場します。パンタグラフはシングルアームに換装されるようです。

面白いことに改造が行われるのは、近鉄の工場となります。養老鉄道は赤字に苦しむ近鉄養老線を救うために、子会社として分離して誕生した鉄道会社です。養老鉄道の出資者の100%が近鉄の完全子会社なので、実質近鉄の一部です。なので、改造は近鉄の工場という面白い分担となりました。

こちらのほうはこれから運行を開始するので、末永く活躍を見ることが出来そうです。がんばれ7700系!


2018年8月13日月曜日

山手線などの完全自動運転を考える




2018年8月13日の読売新聞の記事で、山手線や京浜東北線に乗務員を乗せない完全自動運転を目指すという記事が出ていたので、現状の自動運転全般の問題から実現性について検討したいと思います。

どういった無人化を目指しているのか?


大崎駅停車中の山手線E234系
自動運転を目指している山手線

ベテラン乗務員の大量退職で、将来的に運転士や車掌などの不足が見込まれることに対応するのが狙いだ。
中略 
JR東が検討しているのは、列車に運転士が乗務せず、自動で運行するシステムの開発だ。第1段階として、緊急時の対応などのために車掌のみが乗車することを目指す。将来の完全無人の自動運行も視野に入れる。
以上の文章は2018年8月13日のYomiuri online 「山手線や東北新幹線、自動運転検討…運転士不足」より引用したものです。

有料記事だったので部分的にしか読めませんでしたが、概要は読み取ることが出来ます。

自動運転自体は既に普及している

・完全自動運転(ゆりかもめなどの新都市交通)
・ほぼ自動運転(新規路線や地下鉄の一部など)
・かなり部分的な自動運転(山手線や都市部の私鉄など)

まず日本での鉄道の自動運転技術について見てみましょう。今では採用路線が増えていますが、内容としては主に三つに分けられると思います。

一つ目は完全な自動運転で、「ゆりかもめ」など新都市交通で採用されているもので、ATO(自動列車運転装置)と呼ばれる装置を使います。運転士も車掌も乗務しておらず、遠隔からの監視のみとなっています。更にホームはスクリーンドアと呼ばれる大型のホームドアで仕切り、線路も基本は高架で人が入ることは出来ず、最初からその前提で作られた線路です。一方で駅の距離が数キロあり、一編成に数百人が唯に超える一般的な鉄道では採用されていません。

二つ目はほぼ自動で運転されているものです。これはつくばエクスプレスのような新規路線の他地下鉄でも採用されていて、完全自動運転と同じATOを使います。運転士は乗務していますが、車掌は乗務していません。運転手が基本的に操作するのはドアの開け閉め程度で、運転の操作は訓練や装置に不具合がある時などです。運転手の仕事は運転ではなく、列車・線路・ホームの安全を監視するのが主な役目です。ホームにはホームドアが設置されている他、運転室にはホームを確認するために駅ホームの映像が無線通信で映るモニターが付いています。完全自動運転と同じく線路に人が入れないよう設計された、新しく建設された路線に採用されていることが多いほか、地下鉄のようなホームに仕切りさえ作れば人が線路に入れなくなる路線では、後付けで採用されています。完全自動運転と違い、10両編成で沢山の人が乗るような大都市の中心路線にも採用されています。

三つめはかなり部分的な自動運転です。私鉄JR問わず設置されていることがあり山手線にも採用されていて、TASC(定位置停車装置)が使われます。運転士と車掌が乗務し、運転も殆ど運転士が行います。電車が駅に止まる最後の段階だけ自動運転となります。この装置は自動運転というより、ホームドアがあったりホームの長さに余裕がなかったりと、停車位置がシビアな路線で運転手を補助するための装置です。

第一段階であればかなり簡単だが

日本で普及している自動運転を三つに分けて解説しましたが、山手線の自動運転が目指す第一段階までであれば、比較的容易に達成することが出来ます。他の路線での実績も多く、地下鉄のような非常に多くのお客さんが乗る路線でも問題がないことが分かっているからです。

そして自動運転の中心となるATOという装置は、完全自動運転でもほぼ自動運転でも使っているので、自動で電車を動かすだけならある程度は可能です。山手線が目指す第二段階の完全自動運転では、他の部分を中心に問題があります。

・設備の更なる改修が必要
・乗客の多い路線での実積がまだ無い
・自動運転のためのデータが必要
・非常時の安全確保をどうするか

一つ目は設備の問題で、今よりも更に人が入りにくい構造にする必要があります。まず現在設置されているようなホームドアではなく、スクリーンタイプに更に改修する必要があります。その他については山手線は踏切が一か所ある以外人が入るところがなく、線路を覆うフェンスも有刺鉄線に加え他では見られないトゲが付いているものに変更されているので、時間と予算さえあれば今の技術で解決するのも不可能ではないでしょう。

二~四つ目は重なる部分もあるのでまとめて解説します。山手線は日本の路線でも乗客が多く、そのような路線にいち早く導入するのは賛否があると思います。

雨や雪などが降ると自動運転では、列車が上手く停車出来なかったりします。運転手がいる場合は、手動で対応することで対処しますが、完全自動運転の場合はそれが出来ません。それに対応するためには、実際の天気や運転手・車両のデータをもとに自動運転を開発する必要がありますが、そのためデータも不十分だと想像できます。これについてはデータの蓄積で段階的に対応する必要があるでしょう。山手線の最新型車両E235系には、様々な情報を記録するモニタリング装置が搭載されています。なので、現在の運転の状況を記録し実現が比較的容易な第一段階に向けて開発を行う。そして第一段階での自動運転の記録を取り続け、対応出来なかった時のデータをもとに、システムを向上させれば最終的には列車の運転が可能でしょう。

一番厄介な問題は非常時の安全確保です。日本は台風や地震に見舞われることも多く、予期せぬ機械的なトラブルは絶対に起きるもので、駅以外での緊急停止は避けられません。その時は駅から誘導員を派遣するわけですが、山手線は駅の間が短いので比較的有利な条件ではあります。しかし、火災のような咄嗟の判断が必要な場合では、どう考えても間に合いません。車内をモニタリング出来るようにしても、トラブルの影響で必ず使えるかは分かりません。新都市交通もこの点は一緒ですが、ほとんどの場合は高架を走り、乗客も山手線ほどではないので、まだ安全性を確保し易いと思います。一方で乗務員も完ぺきではないので間違った判断することもありえます。過去の例を見ると事故がより広がったり、逆に最悪の惨事を防げたこともあります。ただ、現状においては乗務員は居ないより居るほうが安全なことに、異論はないでしょう。

人件費削減の狙いも想像できる

技術的な問題を中心に見てきましたが、人件費という経営的な部分も外せない部分でしょう。

鉄道会社では車両や設備の保守に駅員などは、外注や契約社員にして経費削減してきました。その中で聖域的に守られてきたのが乗務員です。ここを削りたいのは言うまでもないでしょう。この点から早急に完全自動運転化させたいのなら、危険と言えるでしょう。

技術的には着実に歩みを進めていけば不可能ではない自動運転ですが、それ以外の要因で早急に進めると危険なのも事実です。より良い鉄道へと発展することを願っています。


2018年8月9日木曜日

首都圏205系最後の楽園「JR武蔵野線」




205系が活躍する首都圏の主要通勤路線としては、武蔵野線が最後の路線となりました。武蔵野線に在籍する205系0番台と5000番台にスポットを当てます。
記事作成: 2017.10.28/記事更新: 2018.08.09

205系 通勤輸送からローカル輸送へ

武蔵野線東所沢駅に到着する205系5000番台
武蔵野線で活躍する
205系5000番台
205系は国鉄末期より登場した通勤電車です。国鉄では数少ないステンレスボディの車両で、関東と関西の通勤路線に投入されていきました。関東では山手線を中心にした、首都圏の通勤区間へ投入されていきました。山手線の最長11両編成などと、10両前後の長大編成を中心に長らく活躍を続けていました。

宇都宮線を走る205系600番台
宇都宮線向けに改造された
205系600番台
そんな205系でしたが、JR東日本時代の最新型の通勤電車が投入されることで徐々に活躍の幅を狭めていきました。通勤路線での役目を終えた205系達は、短い2~4両編成に改造され、今では関東近郊のローカル路線などを中心に活躍の場を移しています。

活躍を縮小する中唯一首都圏の通勤路線で205系が活躍しているのが、武蔵野線です。JR東日本の他路線の205系が短い2~4両編成ばかりになる中、8両固定編成を維持しています。(205系600番台も宇都宮線内での運用では、4両2編成を連結して、最大で8両となります。)

バリーエーションも豊か!

武蔵野線では205系と209系が活躍していますが、大半は205系です。武蔵野線の205系は形式で見ると2形式が運行されていて、細かい違いいろいろ存在するのも、趣味として面白いところです。そこでそれぞれを紹介したいと思います。

少数派の0番台

武蔵野線205系グループでは0番台のほうが少数派となっています。車両の基本性能などは山手線などで走っていた、205系0番台と同じです。

武蔵野線はもともとは貨物列車が首都圏を迂回して運行できるよう建設され、後にその合間を旅客列車が走るようになりました。現在でも昼夜問わず貨物列車が運行されていて、列車の速度もかなり速いです。そのため貨物列車の合間をスムーズに走れるよう、6M2Tと加速度が良くなるよう調整されています。

205系0番台(メルヘン顔)

武蔵野線新座駅に到着する205系メルヘン顔
205系(メルヘン顔)
この車両は武蔵野線に新型車両として、直接かつ最初に投入されたタイプです。大きな違いは見た目の通り、先頭車両のデザインが異なっています。京葉線に直通する関係でディズニーランドを意識したとか言われていますが、真偽は謎のままです。そんな経緯から他の0番台と区別するために、「メルヘン顔」の愛称で呼ばれています。

この車両は京葉線にも投入されていましたが、京葉線向けの車両は上の写真にあるようにロカール線へ転属しています。転属した車両は改造され、宇都宮線の宇都宮以北・日光線で運行しています。

205系0番台(元南武線車)

武蔵野線新座駅に到着する205系M51編成
205系(元南武線車)
こちらは見た目が山手線で運行していたのと、近いタイプの車両です。元南武線所属の205系で、E233系投入により2編成が転属してきました。そのため武蔵野線の205系では、最後に投入された編成です。

武蔵野線205系のシングルアームパンタグラフ
武蔵野線205系では唯一の
シングルアームパンタグラフ採用
6M2Tと加速度が強化されているのはメルヘン顔と同じです。一番の特徴は武蔵野線205系グループの中で唯一、シングルアームパンタグラフを採用している点です。他の編成は全ててひし型パンタグラフです。

多数派の5000番台

武蔵野線205系グループでは、大多数を占めるのが205系5000番台です。5000番台は武蔵野線の103系を置き換えるために、様々な線区から集められた205系が使用されています。

その時にモーター車の数が足りず、すべての編成を6M2Tにすることが出来ませんでした。そこで電装部品を新しいものに交換し、対応しました。制御装置を界磁添加制御からVVVFインバータ制御に変更、モーターも直流モーターから交流モーターとて足回りを強化し、MT比こそ4M4Tであるものの必要な性能を満たせるようにしました。そして車両形式を0番台から5000番台に改めました。

205系の中でVVVFを採用しているのは5000番台だけで、5000番台が運行しているのは武蔵野線だけとなっています。

5000番台 (通常デザイン)

外観上は0番台と同じタイプの5000番台です。多くの車両が在籍しているため、編成によって細かい違いが見られます。

武蔵野線新秋津駅に到着する209系5000番
単色LEDタイプの行き先表示器

方向幕タイプの表示器
一番分かりやすいのは行き先表示器です。単色のオレンジ色タイプのLEDの物と、方向幕タイプの編成が存在しています。

扉の窓の大きさが違う205系5000番台
扉の窓の大きさが車両で違う
編成を組む際に集めてきた車両を一端ばらし、再組成を行って編成を組みました。その関係でドアの窓の大きさが、同一編成内でもバラバラのものもあります。

5000番台メルヘン顔

武蔵野線新座駅停車中の205系5000番台
5000番台唯一のメルヘン顔編成
5000番台に1編成だけにも、1編成だけメルヘン顔の編成が在籍しています。元々は最初に紹介した0番台です。

武蔵野線へ205系が大量転属してきた時に、モーター車が足りずに5000番台が生まれたわけですが、どうしても転属した車両だけでは足りませんでした。そこで既に在籍していたメルヘン顔の編成を1編成だけ改造し、数を合わせました。そのため元々連結されていたモーター車2両が抜かれ、転属してきた編成のトレーラー車2両を組み込みVVVF化しました。

5000番台化した時にに行き先表示器をLED化しています。武蔵野線のメルヘン顔の中では唯一のLED表示器なので、一発で見分けられます。

雨の武蔵野線で活躍する205系・209系

新小平駅で撮影した
武蔵野線205系全形式

さよなら武蔵野線205系

中央総武線を走るE231系0番台
転属前の中央総武線E231系
そんな205系たちの活躍する武蔵野線ですが、それももうすぐ終わりを迎えます。山手線へE235系が投入され、E231系500番台が中央総武各駅停車線へ転属します。それにより余ったE231系0番台と209系500番台が武蔵野線へ転属してきました。

西浦和駅に到着するE231系
武蔵野線で運行する
E231系0番台
E231系は2017年の中ごろより各種試験のための試験走行を行い、2017年11月上より運行を開始しました。JR東日本205系は郊外路線・ロカール線ではまだまだ活躍しますが、主要通勤路線での活躍は終わりが見えています。国鉄末期に生まれた通勤電車としての本来の仕事は、もうすぐ関東では見ることが出来なくなりそうです。


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