2016年1月25日月曜日

西武鉄道 首都圏初のレストラン観光電車発表




2015年6月16日に西武鉄道は4000系車両1編成を改造した観光電車を2016年春以降から運行開始すると発表しました。
記事作成日: 2015.06.16/記事更新日: 2016.01.25

秩父線寄居駅付近で折り返す4000系
観光電車のベースとなる4000系

4000系を大幅改造

車両: 4000系(4両1編成)を改造
愛称: 西武 旅するレストラン 52席の至福
定員: 編成あたり52名
運行開始: 2016年4月17日
運行日数: 土日を中心に年100日程度を予定
運行区間: 「池袋~西武秩父」「西武新宿~西武秩父」「西武新宿~本川越」駅間など


この列車は「秩父」をモチーフとした列車で、全座席で食事が楽しめるレストラン列車です。食事以外にも車内演奏会や映画上映など多目的な利用で、国内外問わず貸切運行を出来るようにするそうです。以前から中期経営計画などで観光電車という名称で発表されていましたが、今回初めて具体的な内容が発表されました。

ベースになるのは観光用や郊外輸送向けとして「池袋~西武秩父」間などで活躍する4000系4両1編成を大幅改造したものが使われる予定です。通常の4000系はボックスシートを中心とした典型的な近郊型車両ですが、改造後は1両が多目的スペース、もう1両がオープンキッチンベース、残り2両がオープンダイニング席(1両あたり26席)に改造されます。車内インテリアとして沿線の伝統工芸品や木材を一部使用する予定です。外観は水色をベースに、車両ごとに四季をテーマにしたカラーリングが施されます。

こういった古い一般列車を観光用に改造する方法はJRや地方私鉄などがよく行っていますが、首都圏の似たような車両として東武鉄道の634型展望列車があります。634型もベースは観光や郊外輸送向けの6050系を改造して展望車としたものです。

運行区間は非常に広く、「池袋~西武秩父」「西武新宿~西武秩父」「西武新宿~本川越」を中心に運行するようです。貸切も行えるそうなので、もっとマニアックな区間への入線もありそうです。また、運転日数は年間100日程度としているので、年間通して土日は運行する計算となります。

愛称や運行開始日についても2015年12月17日に西武鉄道が発表しました。愛称の由来として、店員が52名であること、列車内で過ごす時間の「くつろぎ」「特別感・限定感」、記憶の残りやすさを挙げています。この発表で、車内チャイムに向谷実氏を起用したことも発表されました。

運行は4月17日から

ブランチコース

・料金:
10000円(大人料金のみ)
・ダイヤ
池袋10:50発→西武秩父14:00着
西武新宿10:45→西武秩父14:00着
西武新宿10:45→本川越13:15着

ディナーコース

・料金
15000円(大人料金のみ)
・ダイヤ
西武秩父17:40発→池袋20:20着
西武秩父17:40発→西武新宿20:00着
本川越17:15発→西武新宿20:00着

2016年1月25日に運行開始日や料金と料理を担当するシェフが発表されました。料金は大人料金のみです。4月17日からの運行で、当面は「池袋~西武秩父」「西武新宿~西武秩父」の経路でのみの運行となります。運行初日は出発式が行われる予定です。

ダイヤを見て頂くと分かりますが、ダイヤはそれぞれ一部を共有するような形となっています。また、どのコースでも特急列車を使わない場合でも2時間はかからない所要時間なので、1位時間以上は余分に時間をかけていることになります。

首都圏では初のレストラン列車

私として気になる点は「首都圏を走る電車の中であっても非日常感を楽しんで頂くため、「乗って楽しい」「食べて美味しい」をテーマに全ての座席で食事が楽しめる空間とし」(プレスより引用)の部分です。西武鉄道は埼玉県を中心に運行する鉄道で、今回発表された運行区間も住宅街を走る距離は少なくありません。そんな中で非日常を演出するのはなかなか難しい感じがします。

地域の食材を使った食事を楽しめる観光列車は、JR私鉄問わず地方を中心に運行が増えています。そんな中で首都圏を中心に運行する列車は初で、そういう意味では狙い目だったのかもしれません。しかし、非日常の演出という点では地方路線より劣ると思います。このデメリットとメリットをどう生かすかが、列車の面白さに繋がりそうです。

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2016年1月15日金曜日

鹿島臨海鉄道 新型車両8000形導入へ




2016年1月15日に鹿島臨海鉄道は6000形置き換えようとして新型車両8000形の導入を発表しました。

運行は2016年春のダイヤ改正から

鹿島鉄道は旅客向け車両として1985年から1993年にかけて導入した6000形19両を保有・運行をしています。今回車両の老朽により新型車両8000形を順次導入していくと発表しました。運行開始は2016年春のダイヤ改正からを予定しています。

大幅な変更が加えられた8000形

・ロングシート化
・3ドア化
・空気バネ化
・冷暖房性能アップ
・エンジン性能の向上
・車内が静かに

鹿島鉄道のプレスによると上記のような特徴を挙げています。それでは従来の6000形と簡単に比較しながら解説していきます。

座席配置は転換クロスシートを中心としたセミクロスシートでしたが、オールロングシートとなります。これにより定員が120名から15名増えた135名になりました。

扉配置はローカル線向けとしてはオーソドックスな片開きの2扉でしたが、車両両端の2つの扉が片開き・真ん中の扉が両開きの変則的な扉構成となります。

台車はコイルバネ台車から空気バネを採用したボルスタレス台車となります。これにより乗り心地が向上します。

カラーリングも赤を基調としたものから、下半分がブラウン、上半分がブルー、アクセントしてレッドになりました。

展示会・試乗会を実施

2016年2月14日に神栖駅にて事前申し込み不要の展示会が実施されます。

2016年2月20・21・27・28日には大洗鹿島線沿線の水戸市・大洗町・鉾田市・鹿嶋市住民を対象に、試乗会も実施されます。応募は往復はがきでとなります。

展示会・試乗会に興味があるかたは鹿島臨海鉄道HPに詳細があるので、そちらをご覧ください。


2016年1月6日水曜日

在来線が弱め 2015年度の年末年始利用状況




JR各社が12/25~1/5の年末年始の新幹線・特急列車の利用状況を発表したので紹介します。

大宮駅に到着するE7系新幹線
伸びの中心は北陸方面
昨年度は全体的に増加しましたが、今年度は曜日の関係もあってか減少が多くなりました。特に在来線に関してはJR全てで減少です。今年は暖冬で大きな悪天候などはなかったのに減少で、曜日による休みの取りやすさのほうが影響は大きいようです。

JR北海道-計93%

※本州方面・函館方面・旭川方面・釧路方面の主要4線区で集計

トータルでは前年比減の93%でした。

北海道新幹線開業準備のため完全運休をした本州方面と、釧路方面の列車は5%前後の減少です。旭川方面は函館本線の運休により16%の減少です。

函館方面は唯一の増加で6%の伸びでした。また、本州方面も夜行列車が廃止された上に、完全運休を行ったことを考えると、健闘している範囲だと思います。

JR東日本-計101%(新幹線102%・在来線97%)

※新幹線各線、羽越・常磐・外房・内房・総武・成田・ほくほく・東海道・中央線など17区間で集計

トータルは101%でした。

新幹線は102%で伸びです。しかし、実質北陸新幹線のみの増加で、他の路線は数パーセントの減少と全体で見ると単純に好調とは言えないようです。

在来線は97%で減少です。中央線と常磐線が前年とほぼ同じ、東海道線が3%の微減、羽越本線が7%の減少、外房線と内房線の合計が11%の減少でした。

外房線と内房線の減少はダイヤ改正で列車の運行本数自体が減ったので、そのまま利用者数が減ったのではないでしょうか。昨年は日本海側の天候不順があったり羽越線などに影響が出ましたが、天候が悪くなかった今年も昨年に続き減少で少し気になります。常磐線を走る特急は、上野東京ライン開業で運行区間が延長されましたが、前年比を越えるには至りませんでした。

総武線と成田線(成田エクスプレス)は5%の増加で、在来線唯一の増加でした。

JR東海-計100%(新幹線101・在来線93%)

※新幹線、東海道・中央・高山・紀勢・飯田・御殿場・身延線で集計

トータルは100%でした。

新幹線は101%で微増です。こだまが前年比と同じ100%、のぞみとひかりが101%で、今年の曜日の並びを考えれば減少無しは健闘したと思います。

在来線は93%で減少です。高山線は前年と同じ、御殿場・紀勢線が3%の減少、飯田線は13%減と大きく減りました。東海道線はサンライズが99%で微減ですが、しらさぎが19%の減少です。しらさぎは東海道新幹線へ乗り継いでいたお客さんが、北陸新幹線の影響で減った可能性が高そうです。

JR西日本-計101%

※新幹線、北陸・湖西・山陰・福地山・智頭・伯備・瀬戸大橋・関西空港・きのくに線で集計

トータルで計101%でした。

山陽新幹線は計97%で微減です。ひかりが前年比と同じだった以外は、全ての種別で3~5%の減少となりました。北陸新幹線は前年比分を在来線との比較ですが、208%で大幅に上昇しました。北陸新幹線効果がちゃんと続いています。

在来線は94%で減少です。北陸線(しらさぎ)の81%は北陸新幹線の影響だと思いますが、他の路線でも10%以上の減少があったりと、少し元気が無い印象を受けました。きのくに線は去年北陸新幹線開業で余剰になった車両をリニューアルして、381系を全廃しました。それでも93%というのは、あまりイメージアップにならなかったのではないかと思います。

湖西線(サンダーバード)が101%、関西空港線が(はるか)が112%で大幅に伸びました。JR東日本と同じ北陸方面と空港特急が伸びるという傾向が見られました。

JR四国-計96%

※瀬戸大橋・予讃・土讃・高徳線で集計

トータルで96%です。

列車単位では「うずしお」が前年比を越えましたが、他の特急は減少です。そのため路線単位でも高徳線を除く路線で減少となりました。

JR九州-計99%(新幹線102%・在来線97%)

※新幹線、長崎・日豊線で集計

トータルでは99%でした。

JR九州は全体的に好調で新幹線が102%で唯一伸びました。長崎線は99%でほぼ前年比どおりですが、日豊線が95%で足を引っ張る形となりました。

JR九州は観光列車に力を入れているので、そのデータも出してくれれば面白いなと思います。


2016年1月5日火曜日

今年も発売 北海道&東日本パス




2016年1月5日にJR北海道と東日本は2016年度分の「北海道&東日本パス」について発表しました。18きっぷとは違った魅力なども紹介したいと思います。
記事作成日: 2015.02.19/更新日2016.01.05

青森駅停車中の急行はまなす
2016年ダイヤ改正までは「はまなす」にも使えます

北海道&東日本パスとは?

大雑把に言うと18きっぷに似た切符です。「JR北海道と東日本の普通・快速列車なら7日間自由に乗り降りできる」というところを押えてもらえればよいです。

18きっぷ同様に春・夏・冬の特定の期間に発売されますが、18きっぷよりは長い期間に設定される傾向があります。

北海道&東日本パスを選ぶポイントとしては、「7日間連続だけど18きっぷより安い」「IGR銀河鉄道や青い森鉄道が使える」「基本的には普通列車で格安移動だけど、新青森~新函館北斗間だけ新幹線に乗りたい」があるかどうかではないでしょうか?今では格安航空LCCのお陰で、時間を選ばなければ札幌まで安く早く移動できるようになりました。「はまなす」廃止で基本的には18きっぷのほうが利用価値が高くなったように思えます。

発売・利用期間・値段


発売期間

春: 2016年2月20日~4月16日
夏: 2016年6月20日~9月24日
冬: 2016年12月1日~2016年1月4日

利用期間

春: 2016年3月1日~3月19日/3月26~4月22日
夏: 2016年7月1日~9月30日
冬: 2016年12月10日~2016年1月10日

値段

3月19日分までは大人10290円・子供5140円
3月26日分からは大人10850円・子供5420円

切符は利用日の一ヶ月前からです。春の利用期間は2014年と同じ期間に戻りましたが、一部使用出来ない期間があります。値段も北海道新幹線開通に伴い内容が一部変更されるため、途中で料金が変ります。

18きっぷとの違い

・JR以外の一部路線も使える
・急行の乗車券として使える
・函館~新青森間を自由席特急券で乗る場合は乗車券として使える
・新青森~新函館北斗間は特定特急券で乗る場合は乗車券として使える
・自分が決めた連続した7日間しか使えない
・一枚の切符で複数人の使用は出来ない

メリットとして、JR北海道・東日本以外の路線として「青い森鉄道線・IGRいわて銀河鉄道線・北越急行線」の全線で使うことが出来ます。また、2015年の北陸新幹線延伸で三セク化された旧信越線の一部区間、北海道新幹線開業後で第三セクターとなる道南いさりび鉄道では使用出来ません。富士急行線については2016年1月5日のプレスで表記が消えたので、誤植でなければ使用出来なくなります。

乗車券としては18きっぷと同じような効力ですが、一部違うところがあります。

急行券を追加すれば急行列車にも乗れるため、北海道新幹線開業までは急行「はまなす」に乗れます。急行券のみの場合は自由席、急行券と指定席料金でカーペットカー・指定席、急行券と寝台料金で寝台車にも乗れます。

北海道新幹線開業後は新函館・北斗~新青森間を乗車する際に、特定特急券で乗車する場合は乗車券として使えます。指定席・グリーン・グランクラスに乗車する際は同区間でも運賃を払う必要があります。特定特急券というのははやぶさ・はやてに自由席はないので、指定席の空席に座れる自由席券の代わりみたいなものです。特定特急券は「新青森~新函館北斗」間で3900円です。

津軽海峡線「木古内~蟹田」間(新幹線開業まで)、石勝線「新得~新夕張」間、奥羽本線「青森~新青森」間については、18きっぷ同様に自由席に限り特急も「北海道&東日本パス」だけで乗車出来ます。

デメリットとして期間内の連続した7日間の使用となるので、18きっぷのような期間の頭と終わりに旅行などは出来ません。また、一人一枚となっているので、グループでの旅行では人数分必要です。

他にも様々なルールがあるのでJR東日本・北海道ホームページや駅の窓口で注意点を確認してから切符を買う・利用することをお勧めします。

魅力が半減「はまなす」廃止

今までは「東京~青森」がちょうど一日ぐらいだったので、急行「はまなす」を使うと早朝出発すれば翌朝には札幌と、「東京~札幌」を簡単に安く移動できる切符でした。それが北海道新幹線開業に伴い「はまなす」が廃止されるために出来なくなります。

関東⇔北海道の利用では新幹線の特定特急券よりや安く深夜も運行している青函フェリーや八戸からのシルバーフェリーの有効利用を検討するほうが良いと思います。青函フェリーの場合は1600~2000円から乗れるので、値段は半値程度です。さらに深夜運行しているのもポイントです。「八戸~苫小牧」間を運行するシルバーフェリーは4000円からですが、こちらも深夜運行しているため札幌へ行くときはこちらが良いと思います。


「18きっぷ」に新たな特例区間を追加




2016年3月26日の北海道新幹線に伴い、青春18きっぷに新たな特例区間が設けられます。

大宮駅停車中のJR東日本E5系新幹線

北海道新幹線で今までにない特例が設定へ

北海道新幹線が開通すると「蟹田~木古内」間が新幹線になり、「木古内~五稜郭」間が第三セクターの道南いさりび鉄道に移管され、18きっぷが使用出来なくなります。当初は特例は難しいという話もあり、2015年12月8日の運輸審議会ではまだ検討中でありましたが、「青春18きっぷ北海道新幹線オプション券」という追加料金を払う形で2016年1月5日に特例が発表されました。

使用出来る区間は北海道新幹線「奥津軽いまべつ~木古内」間と道南いさりび鉄道「木古内~五稜郭」間です。料金は大人・子供ともに1枚2300円で、この券1枚につき一度だけ片道で利用できます。18きっぷのオプションなので、使用時は18きっぷとこの券両方持っていることが必要です。北海道新幹線開業日から利用が出来るようになります。

この切符の特徴としては、北海道新幹線では立席特急券とほぼ同じ扱いで、「木古内~五稜郭」間に関しては途中下車の出来る普通の切符の扱いのようです。また、新幹線で「奥津軽いまべつ~木古内」間以外へ乗り継ぐ場合、指定席・グリーン車・グランクラスを利用する場合は運賃分含め利用できません。このような分かりづらい部分もあるので、利用する際は駅員さんに一度相談することをお勧めします

ちなみに奥津軽いまべつ駅の目と鼻の先に津軽線津軽二股駅がるので、本州側の乗り換えはそちらからとなります。

特例を利用する際は安く夜間も運行する青函フェリーも合わせて検討したほうが良いと思いますが、夏の「木古内~五稜郭」間は景色も良く気持ち良いので、そういう意味で特例の利用も検討してはどうでしょうか?

現在設定されている特例区間

現在設定されている特例区間も表記しておきます。

・富山~高岡間(あいの風とやま鉄道)・・・城端線と氷見線が飛び地となるので
・金沢~津幡間(IRいしかわ鉄道)・・・七尾線が飛び地となるので
・青森~八戸間(青い森鉄道)・・・大湊線、八戸線が飛び地となるため※1

東宝新幹線・北陸新幹線が延伸することで第三セクターになったため、JRの飛び地路線が生まれました。そのため、第三セクター駅で途中下車せずJR線へ乗り継ぐ場合は普通・快速列車が使用できます。

※1・・・野辺地駅は除く

・青森~新青森間(JR東日本奥羽本線)
・木古内~蟹田間(JR北海道津軽海峡線)※2
・新得~新夕張間(JR北海道石狩線)

上記3区間は普通列車の運行本数の関係上、特急・急行列車の普通自由席が使用できます。ただし、上記以外の区間にまたがって利用する場合は全区間の特急券・急行券・乗車券が必要です。

※2・・・北海道新幹線開業後は廃止されます。

・宮崎空港~宮崎間(JR九州宮崎空港線)

上記区間は普通列車の運行本数の関係上、特急・急行列車の普通自由席が使用できます。ただし、上記以外の区間にまたがって利用する場合は上記区間以外の特急券・乗車券が必要です。

※注意
この他にも特例がありますが、特例区間については以上になります。これはこの記事を書いたときのもです。

間違いがないよう書いたつもりですが万が一間違いがあった場合は、当ブログでは責任をとることは出来ませんし、せっかくの旅が台無しになることもあります。特例の変更などもありうるので、特例を使用する場合は駅窓口で駅員さんなどに聞いてから使用することを勧めます。


2016年1月3日日曜日

最後の夜行急行「はまなす」の魅力と今後




「北斗星」が廃止され後、新たに注目を集める列車「はまなす」の魅力と今後について紹介したいと思います。
最終更新日: 2016.01.03


札幌駅停車中の急行はまなす
札幌駅で発車を待つ急行「はまなす」

急行「はまなす」とは?


青函連絡船の廃止後に本州と北海道を結ぶ夜行列車として1988年から運行を始めたのが急行「はまなす」です。運転区間は青森~札幌駅間で、どちらの駅からも22時過ぎに出発して早朝に終点へ付くダイヤになっています。

2012年に大阪~新潟を結ぶ夜行急行「きたぐに」が臨時になってからは、定期運行を行うJR最後の急行列車となりました。

2014年以降は「トワイライトエクスプレス」「北斗星」が廃止されていくなか、「カシオペア」とともに運行を続けています。しかし、JRは2016年3月の北海道新幹線に合わせる形での廃止にする方針と報道され、9月16日に正式に廃止が発表されました。

「はまなす」の魅力

今時珍しい客車


函館駅に停車中のED79形
函館駅で急行「はまなす」から切り離されたED79形


今時としては珍しい客車を使用しています。「はまなす」の運行区間には多くの非電化区間があり、電車では全線を走ることが出来ません。そして、青函トンネルは安全の関係で火災の危険があるディーゼル列車なども通ることが出来ません。そのため、青森~函館間はED79形電気機関車・函館~札幌間はDD51形ディーゼル機関車が牽引することになっていて、函館駅で機関車の付け替え作業を見ることが出来ます。

ちなみに「はまなす」も客室の電灯などのサービス電源用にディーゼル発電機を積んでいますが、消火装置を搭載することで青函トンネルの基準をクリアしています。

「北斗星」が廃止となった今では、定期列車で国鉄時代設計の青い客車を使用しているのは「はまなす」だけです。寝台『特急』ではないのでブルートレインとは言えないかもしれませんが、非常に貴重な車両での運行となっています。

はまなすの走行・車窓動画

お財布に優しい


通常料金で乗る以外の方法として企画切符を使うというのがありますが、北海道・東日本パスと「はまなす」の組みあわせは最強です。北海道・東日本パスは7日間JR北海道とJR東日本と一部私鉄の快速・普通列車を乗り降り自由という切符ですが、例外として「はまなす」の座席とカーペットカーには急行券などを追加するだけで乗れるというものがあります。これを利用すれば北海道と関東を1万5千円程度で往復できるのです。

また、大きな額ではありませんが新幹線との乗り継ぎ割引の対象にもなっているので、新幹線特急券と一緒に購入することをお勧めします。

一つ注意としてカーペットカーやB寝台はえきねっとでの予約が出来ません。また、シーズン中のカーペットカーは一ヶ月前10時には即満席になります。一般的な特急列車とは違う部分もあるので、予約日当日より前に駅の窓口で細かく聞いてから指定席確保に望むことをお勧めします。

面白い編成


誤乗車防止の張り紙
運が良いと回送のため連結されている車両がある
今時の列車は特急なら座席だけ、寝台列車なら寝台だけというのが多いですが、「はまなす」は寝台車、座席車両、「カーペットカー」を連結しています。普段は7両ですが、夏季の旅行シーズンなどは最大12両の長大編成で運転されることもあります。

寝台車は24系客車を使った開放B寝台のみで、乗車券・急行券の他に寝台料金が必要です。
個室がなく仕切りがカーテンのみなので、ちょっと苦手な方も多いかもしれません。

座席車両は14系客車で一般的な特急車両に使われるような座席の車両と、「ドリームカー」と呼ばれる大きくリクライニングする車両があります。このドリームカーのリクライニング座席は、本当に大きくリクライニングするので快適です。

そして最後の「カーペットカー」は、名前の通りカーペットに布団を敷いた感じの車両です。清掃も行き届いているので、寝心地自体は開放B寝台とさほど変らないと思います。

「ドリームカー」と「カーペットカー」は急行券以外に指定席券が必要ですが、設備を考えるとお得な車両です。ただし、連結されない日もあるのでみどり窓口で確認が必須です。お勧めとしては、お金に余裕があるなら「B寝台」、安く済ませたいけど快適性を確保したいなら「カーペットカー」です。

最後に「ドリームカー」と「自由席」の比較ですが、指定席である「ドリームカー」はほぼ満席であっても、「自由席」のほうはガラガラということもあります。座席としての快適性は「ドリームカー」で間違いないのですが、トータルの快適性では必ずしも上とは言えない時もあります。

また、営業列車に回送列車を連結することもあり、運が良いと函館駅で客車の切り離しも見ることが出来ます。

自動販売機がついている

最近は駅のキオスクの充実で車内販売や自動販売機が消えていますが、長時間走る夜行列車である「はまなす」には健在です。値段も普通の自動販売機と同じで、缶の大きさも250mlなどではない普通のサイズを売っているものポイントが高いです。

そんな「はまなす」の今後

急行はまなすののびのびカーペットカーのロゴ
車両かだいぶ老朽化しているのが分る

2016年3月までは運行決定

「北斗星」や「トワイライトエクスプレス」が廃止され、「はまなす」の今後が気になる方も多いと思います。今分かっているのは2016年3月までは運行されるということです。新幹線開業の切り替え工事があるため、「青森発→札幌行き」が青森基準で3月21日、「札幌発→青森行き」が札幌基準で3月20日が最終運行日となります。それまでは大きな減便もなく運行されます。

※ダイヤ: 「北斗星」「はまなす」「カシオペア」新ダイヤ徹底解説

北海道新幹線開通後の青函トンネルは設備を新幹線用に切り替えて、新幹線車両と特別な機関車が牽引する貨物列車しか走れなくなる予定です。そして、実際の開業より前に乗務員の訓練や機械の試験を行う必要があります。

しかし、今走っている青函特急や貨物を運休して訓練や試験を行うことは、本州北海道間の人と物の流れを止めてしまうので出来ません。そこで北海道新幹線では、貨物や特急が運行しなくなる深夜帯を使って試験を行うことにしました。そのため観光要素の強い「北斗星」と「トワイライトエクスプレス」は車両の老朽化という理由と、北海道新幹線の準備のため早くに廃止となりました。

それに対し「はまなす」は観光列車というより本州と北海道を結び、札幌からの最終列車などもかねる都市間輸送の要素が大きく廃止が難しい列車です。そして、ダイヤ的にも青森行きの列車の函館発車時刻を遅らせることで対応出来たので、2016年3月まで運行することが出来ました。

北海道新幹線開業に合わせて廃止へ

『札幌―青森間の夜行急行「はまなす」、函館―新青森間の特急「白鳥」「スーパー白鳥」も廃止する方針だ。』
『』内は北海道新聞2015年9月2日報道の 「「カシオペア」実質廃止 「はまなす」「白鳥」も JR2社調整」 より引用したもので、JR北海道とJR東日本が考えている今後の方針です。

近年公式な廃止より新聞などで先に発表したのち、JR各社が公式な廃止発表を行うことが多いのですが、今回も実質的な廃止発表でした。JR北海道・JR東日本が2015年9月16日に発表した北海道新幹線開業に関するプレスで、正式に廃止の発表がされました。

何故廃止になるのか

今後も青函トンネルを走行するためには、新幹線開業後にJR北海道が新しい電気機関車も用意する必要があります。しかし、青函トンネル付近の電化区間でしか利用できず、高額な電気機関車の導入は資金的にも難しいと思います。また、技術的にはJR貨物保有のEH800形電気機関車で客車を牽引することも可能ですが、最低限の導入になる見込みで、貨物列車以外で使うには数が足りないと思われます。なので、今後は青函トンネルを越えての運行は難しい状況です。

そして「木古内~五稜郭」間が第三セクターに移管されることも問題です。これにより、今までJR北海道が得ることが出来ていた同区間の運賃が無くなってしまいます。この減収は通常運賃で「青森~札幌」間を乗車した場合、JR北海道が受け取る運賃の約1割にあたる840円分で、無視出来ない金額です。

さらに廃止報道で触れられていましたが、JR北海道としては北海道新幹線開業後は乗客が減少すると考えているのも問題のようです。

今後部分的に残ることはあるのか?

2015年12月18日にダイヤ改正の発表がありましたが、代替列車などの発表はありませんでした。「札幌→東室蘭」に関してだけは、「札幌22:00発→室蘭23:46着」すずらん12号が設定されました、実質値上げではありますが、この区間にだけは一応代替と呼べると思います。

次に臨時列車としての運行を考えてみましょう。最初に書いたよう都市間輸送としての重要性や、冬季の移動手段確保などの観点からも重要性の高い列車です。そのため北海道新幹線開業後は車両を気動車に変更し、函館~札幌間の夜行列車にされる可能性が僅かにあります。この函館~札幌間の夜行列車というのは、快速「ミッドナイト」という名前で運転されていた実績もあります。

しかし、乗車率が悪く無さそうな観光列車も合理化で廃止してしまう、JR北海道の消極的な姿勢を見ると難しそうに感じます。また、北海道新幹線により特例区間が廃止されそうなのを見ると、安く移動できるメリットも消える可能性が高そうです。その点で乗車率が大きく下がりそうなことも考えると、可能性が0でないにしても運行は難しそうです。

一応議題には上がった貨物連結案

最後にネタ的な話題です。国交省の運輸審議会の資料に、「津軽海峡間は新幹線以外の選択肢がなくなるので、客車を貨物に連結可能か」という話が出ていました。その回答は、「客車自体が老朽化しているので新造コストの問題がある」「貨物の入換え作業によるタイムロスや編成によってはホームからはみ出る」「貨物列車と旅客列車では始発・終着駅が違うことや、今現在青森・函館駅には貨物が入ることはたいため運用面に課題がある」と回答がされていました。

身も蓋もないことを言えば、JRとしては客車の新造コスト捻出・複雑な運用・旅客を新幹線以外に流したくないという前提があるので、この案は無理な話です。ここは鉄道趣味的な思考実験ということで、どうやったら多少は現実的な案になるか考えてみたいと思います。

運用についてですが、青森・函館発着を辞めてしまえば一気に楽になると思います。青森始発を東青森に、函館発着を五稜郭にしてしまえば一気に楽になります。どちらも貨物取り扱いのある駅なので増解結は楽に出来ますし、はまなす運用に関して言えば夜間発着なので停車時間も多少無理が効きます。札幌行きの場合は「東青森~五稜郭」間はコキの最後尾に客車を連結、五稜郭でコキから分離して機関車を連結すれば、かなり楽になるのではないかと思います。

しかし、解決できない問題として貨物の遅延があります。都合の良い時間に「東青森~五稜郭」間だけを走る列車があれば理想ですが、なかなかそうは行きません。おまけに連結相手の貨物が遅れたら何かと面倒です。特に深夜帯に発着する駅で待つ人々はとても困るでしょう。幻の貨物連結案ですが、趣味的には一度でいいから見てみたいものです。

廃止発表とJR北海道の存在意義

JR北海道としては合理化のため運行を続けるのが難しい列車なのは十分理解できます。しかし、地域に必要とされていながら赤字で運行が苦しいのは、JR北海道の大半の列車にも言えることです。なので、私としては赤字でも需要が残っている列車まで整理を始めたら、JR北海道の存在意義とは何なのかと考えてしまいます。

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北海道新幹線青函トンネル問題を整理する その2




前回の北海道新幹線青函トンネル問題を整理する その1の続きとして青函共用走行問題の回避・緩和案から話をしたいと思います。
記事作成日: 2014.10.04/記事更新日: 2016.01.03
苗穂工場に留置されるトレインオントレイン試験車両
苗穂工場内のトレインオントレイン試験車両

青函共用走行問題の回避・緩和案

1.新幹線と貨物の運行時間帯を分ける
2.すれ違い時のみ新幹線が減速
3.トレインオントレイン(以後TOTと呼ぶ)
4.第二青函トンネル建設
5.トンネルの中心に隔壁を設ける
6.コンテナ載せ換え

それでは一つづ見ていきましょう。

1.新幹線と貨物の運行時間帯を分ける

これは一番安くて技術的にも一番簡単な方法ですし、新幹線1往復程度の高速走行が具体案として実現に向けて検討されています。

しかし、青函トンネルは保守時間を除くと常に列車が走っていることや北海道本州間の物流で大きな割合占めていることを考えると、1往復分でも運行時間を分けて運休時間が延びれば北海道本州間の物流へのダメージが生まれること予想されています。さらに長距離貨物は遅延もよくあるので、今以上にダイヤのやりくりが大変になるのが想像できます。

2.すれ違い時のみ新幹線が減速

デジタルATCや以前紹介したATACSなど新しい信号システムの登場により柔軟性が向上しているので、比較的安く簡単に可能な案です。

しかし、安全性という点では今までに無い試みなので、これから実証することが必要です。青函トンネルの共用走行が始まった後に、様子を見ながら実用化に向けた技術開発が必要になると思われます。

3.トレインオントレイン

これは貨物列車を新規開発した貨物新幹線に載せて走るというもので、新幹線との速度の問題やコンテナの飛散防止対策も可能かつダイヤ上の制約も大幅に緩和できるので一見良さそうですが、問題も多いのです。

・開発に1000億が見込まれること
・ダイヤの関係上貨物を載せる貨物新幹線がとても多く必要になる
・新幹線に貨物列車を載せるので軌道への負荷が大きい
・載せ換え時間を入れると100km/hで青函トンネルを走るのと変らない

などメリットも多いのですが解決の難しいデメリットが多いのも事実です。

4.第二青函トンネル建設

最強の解決策であり試算では4000~5000億の費用が見込まれています。この額自体は今の青函トンネルを作ったのと変らないぐらいの金額で、物価上昇も考えると安いと言えます。

どうして安く建設できるのかというと、今ある青函トンネルの側に作ることで青函トンネルの作業坑や地質調査を流用すること、最初に掘った時よりも向上した技術で可能にします。しかし安いというのは最初に掘ったトンネルとの比較で「常識的に安い!」とは言いずらい金額であり、トンネルの数だけ維持費が増大するのも問題です。

5.トンネルの中心に隔壁を設ける

トンネルを改良する案では現実的な費用で1600億程度が見込まれます。隔壁を設置するに当たって隔壁の自重にトンネル路盤が耐えられるようにするため、トンネルの中心・線路脇にもアンカーを打つ必要があるので、工事内容としてはそこまで単純ではありません。

すれ違い列車については問題を解決できるだけでなく、貨物の飛散問題も回避できます。ただし、速度自体は向上しないので、貨物列車の後続が新幹線の場合には制限が残ります。そして費用が1600億と決して安くないのもデメリットです。

6.コンテナ載せ換え

2016年1月1日に北海道新聞「青函に時速200キロ「貨物新幹線」検討 新幹線は東京へ最速3時間台」の記事で明らかになった検討案です。文字通りの方式で、2020年前半に専用コンテナクレーンでH5系ベース新幹線貨物列車にの載せ換えて200km/h程度で走行できるようにするというものです。車両基地建設なども含めてコスト800~1000億で、TOTを下回る可能性があります。

新幹線に貨物列車は走っていないので、完全新規開発となります。ただ、TOTに比べれるとコンテナのみを載せるので線路への負担が小さく重心も低いので、TOTより高速に運行できる可能性が高いです。M250系スーパーレールカーゴは比較的軽い荷物専用なので単純比較は出来ませんが、電車貨物の技術も0ではないので技術的難易度もTOTよりは下がります。

デメリットとして貨物の載せ換え時間がありますが、北海道新幹線延伸時に貨物の運転区間も伸ばせば帳消しに出来ます。最終的に札幌まで貨物新幹線を延伸すれば、有珠山の影響で室蘭本線が運休になっても貨物が運べます。ただし、最高速度が200km/h程度が限界だと厳しいかもしれません。北海道新幹線も将来的には320km/h運転、さらには360km/h・400km/hとなっていくかもしれません。その時貨物が200km/h程度だとダイヤ的に面倒になってくる可能性があります。この話は案が持ち上がった段階なので、FGTのように大きな課題が出てくる可能性がありますし、私のような素人ではフワフワした話しか出来ません。ただ、他の方式にはない可能性がいくつもあるように感じます。


こう全てを見ると1と2の案を組み合わせるのが、今の時点では現実的といったところでしょうか。青函トンネル自体はゾーン539の相性があるよう50kmちょっとの区間です。この区間を現在の予定140km/hで新幹線が走行すると20分程度かかってしまうのに対し、普通の新幹線のように260km/hなら10分程度で走行できます。東海道新幹線の涙ぐましい努力を見ると、この区間もどうにかして高速化したくなるのも分かります。今後の技術開発やアイディアに期待ですね。

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第二青函トンネルのメリットから建設まで考える


2016年1月2日土曜日

北海道新幹線青函トンネル問題を整理する その1




今回はいろいろな議論がされてきた青函トンネルの共用走行問題について、私自身もう一度整理したいこともあり、2回に分けて紹介しようと思います。
記事作成日: 2015.10.04/記事更新日: 2016.01.02
津軽海峡線を走るEH500牽引の貨物列車
木古内付近を走るEH500形牽引の貨物列車

青函トンネルは新幹線を前提に作られた

青函トンネルは建設の段階から新幹線が走れるようにされていました。1988年に開業してから25年以上新幹線は走ることがなく、特急電車や貨物列車が運行されていました。北海道新幹線開業にあたり、当初の予定通り新幹線が運行することになったわけですが、一つ大きな問題が生まれました。旅客は全て新幹線に移行するとしても、25年に渡り北海道の物流を支えてきた貨物列車を廃止することは出来ません。

そこで青函トンネルを含む一部区間を、貨物列車と新幹線の両方が走る共用走行区間とすることにしました。しかし、それはそれでまた別の問題が発生してしまいました。この記事ではどういった工事が行われ、どのような問題が発生したかを紹介します。次回の記事北海道新幹線青函トンネル問題を整理する その2ではどのような解決法が検討されているか紹介します。

北海道新幹線のためにどんな工事が行われたか

北海道新幹線開業にあたり、青函トンネルを含む共用走行区間「新中小国信号場~青函トンネル~湯の里知内信号所」間で大きく分けて4種類の工事が行われました。

・新幹線と在来線の共用を可能にする三線軌条化
・新幹線と在来線の中心位置がずれることによる架線の偏移の調整
・新幹線と同じ電圧25kvへの電圧変更
・古くなったATCの更新及びそれに関するケーブル敷設

これが主なところとなっています。それでは一つづつ解説します。

三線軌条化

北海道新幹線共用区間の三線軌条
北海道新幹線の三線軌条
急行「はまなす」より撮影
在来線と新幹線では線路の幅が違い、新幹線より在来線のほうが狭くなっています。貨物列車は九州から北海道まで走る列車もあり、在来線に合うような一般的な規格で作られています。そこで問題解決のために、線路を一本だけ共有して3本にします。こうすることで新幹線と在来線が同じ区間を走れるようになります。この方法はミニ新幹線や一部私鉄線で実績のある方法ですが、高速走行予定の新幹線区間では初めての採用です。

架線偏移の調整

三線軌条の写真を見ていただくと分かりますが、三線軌条区間では在来線と新幹線では車両の中心が異なってしまいます。通常電車の架線は、線路の中心にくるよう張ればいいのですが、三線軌条区間では新幹線線路の中心と在来線線路の中心の間にする必要があり、その調整が行われました。

2500kV化

元々共用区間の電圧は東北地区のJR在来線で一般的な、交流20000Vでした。しかし、新幹線は交流25000Vで電圧が異なります。そのため共用区間の電圧を新幹線と同じ電圧へ変更し、貨物列車を牽引する電気機関車を交流20000Vと交流25000Vで走れるようにして対応しました。

ATCなどの信号設備更新

列車制御システムは青函トンネル建設時に整備新幹線計画へ含まれるようになった時に、ATCを採用することが決定し新幹線用ATCに準ずるシステムで構築しました。しかし、現在の新幹線は青函トンネル建設時より新しいATC、デジタルATCになったため、青函トンネル内のATCも更新することになりました。

新幹線と在来線が共用するとどんな問題が起きるか


・新幹線と貨物列車双方にダイヤ上の制約が生まれる
・すれ違い時の安全確保
・コンテナの飛散対策

ダイヤ上の制約


貨物列車は設計上100キロを上回る程度までしか速度を出せません。青函トンネルを走る貨物は、南は福岡からと様々な場所を基点に走るので100キロ以上出せる専用車両を融通するのは現実的ではありません。そして新幹線は本来200km/hを超えて走るよう設計されているので、貨物にあわせて走るということは大きな無駄が生じます。

すれ違い時の安全確保

次にすれ違い時の問題ですが、コンテナ車はトンネルを相対速度200km/hですれ違うことは想定していても、300km/hなどは想定していません。想定以上の速度ですれ違えばコンテナが吹き飛ぶなど何が起こるか分かりません。重い荷物をつんでいる時は対策のしようもあるかもしれませんが、軽い荷物であったり空のコンテナである場合もあり、対策を余計に難しくしています。

コンテナの飛散対策

何らかの理由で貨物が脱線したりして、積載物の飛散が起こった場合新幹線に衝突してしまいます。その対策も必要とされています。

それでは次回の北海道新幹線青函トンネル問題を整理する その2でどのように緩和・回避するかを書いてみたいと思います。

余談なのですが、現在厳密な意味での新幹線との線路共用が行われているの区間はありません。秋田新幹線の一部区間は三線軌条化さていますが、在来線扱いなので新幹線との線路共用ではありません。この区間は旅客列車のみとの共用ですが過去には山形新幹線にあった三線軌条区間では貨物列車との共用があったと思うので、青函トンネルと似た状況の路線が存在したことがあります。

青函トンネルは安全上火気厳禁なので可燃物を積載した車両は原則として通行できません。そのため貨物列車もコンテナ主体で可燃物を積載しないものとなっています。ただし、厳密には自動消化機能を搭載した電源車、青函トンネル内のみ電源OFFとなる発電機付き冷蔵コンテナなどの例外があります。

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第二青函トンネルのメリットから建設まで考える


2016年1月1日金曜日

3年目突入 「みなと横浜 初日の出号」「天覧山 初日の出号」運行




2015年1月1日に東武東上線・西武池袋線発→横浜高速鉄道みなとみらい線元町・中華街行きの「みなと横浜 初日の出号」と、元町・中華街発→西武池袋線飯能行きの「天覧山 初日の出号」が運行されました。前半では3列車の概要ついて紹介、後半では東上線での運行の様子を写真で紹介します。

坂戸駅に到着する東急5050系Shibuya Hikarie号を使ったみなと横浜 初日の出号
東上線を走る「みなと横浜 初日の出号」

3列車の紹介

「みなと横浜 初日の出号」と「天覧山 初日の出号」は、2013年3月の東武・西武・東京メトロ・東急・横浜高速の5社直通が始まって以来、毎年元旦に運行されています。毎年始発駅の鉄道会社以外の車両で運行されるのが特徴です。今年度の運行ダイヤは、3列車ともに去年と同じダイヤとなっているようです。

ダイヤ詳細については、直通5社のホームページを参照ください。

東上線発「みなと横浜 初日の出号」

車両: 東急電鉄5050系4000番台「Shibuya Hikarie号」
ダイヤ概要: 森林公園3:50→元町・中華街5:54

車両は昨年度と同じ東急電鉄の「Shibuya Hikarie号」が使用されます。定期運用で東上線川越市以北への乗り入れは無いので、非常に貴重な運用です。

森林公園を3:50に出発し、臨時列車として東武東上線は各駅、東京メトロ副都心線・東急東横線武蔵小杉までは急行運転で運行します。5:31発の武蔵小杉から先元町・中華街までは、休日ダイヤの武蔵小杉発の始発列車と同じダイヤでの運行です。

池袋線発「みなと横浜 初日の出号」

和光市駅に到着する東京メトロ10000系
東京メトロ10000系

車両: 東京メトロ10000系
ダイヤ概要: 飯能3:39→元町・中華街5:29

こちらも車両は昨年度と同じ東京メトロ10000系です。飯能を3:39に出発し4:33発の小竹向原までの西武線内は快速運転、小竹向原から4:52発の渋谷までの副都心線内は急行、渋谷から5:29着の元町・中華街までの東横線・みなとみらい線内は特急運転です。

保谷駅4:14発→池袋行きの各駅列車が、練馬駅で接続を行います。こちらも去年と同じです。

みらとみらい線発「天覧山 初日の出号」

和光市駅停車中の西武6000系
西武鉄道6000系

車両: 西武鉄道6000系
ダイヤ概要: 元町・中華街3:59→飯能5:43

今回は初めて西武鉄道6000系を使っての運行です。昨年度は東急5050系、2年前は「Shibuya Hikarie号」を使っての運行でした。

3:59発の元町・中華街から4:34発の渋谷までの東横線・みなとみらい線内は特急運転、渋谷から4:51発の小竹向原までの副都心線内は急行運転、小竹向原から5:43着の終点飯能までの西武線内は準急運転です。

池袋4:43発→保谷行きの列車が、保谷駅で接続します。この列車も去年と同じダイヤです。

来年は「Fライナー」になる?

2016年3月26日より直通5社は「Fライナー」を運行します。来年からは名称がちょっと変るかもしれません。さらに東上線の地下鉄直通の優等列車が「Fライナー」運行開始に合わせて運行するため、来年の東上線臨時列車は東上線内も優等列車になるかもしれませんね。

3年目も無事運行

東上線の2016年最初の始発電車として、今年も無事運行を行いました。

みなと横浜 初日の出号運行時の東武東上線坂戸駅電光掲示板
時刻などの表示は無し
昨年に続き今年も電光掲示板での表示はありませんでした。運行初年度は表示を行っていたので、是非表示を行って欲しいものです。

坂戸駅に到着する東急5050系Shibuya Hikarie号を使ったみなと横浜 初日の出号
表示は普通
東上線内は各駅停車での運転ですが、列車種別表示も「普通」表記でした。

坂戸駅停車中の東急5050系Shibuya Hikarie号を使ったみなと横浜 初日の出号

ホームにはまばらですがお客さんが居たので、ガラガラということはありませんでした。

動画での運行の様子

運行も3年目に入り、定着してきたのかなと思います。Fライナー運行最初の年となる来年は、どんな臨時列車が運行されるか楽しみです。最後にですが、ご一緒に撮影したかたお疲れさまでした。

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東武東上線2015年度初電「みなと横浜 初日の出号」運転


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