2022年7月13日水曜日

キハ281系・キハ283系引退へ スーパー特急挑戦と妥協と挫折の歴史




まもなく定期運用を引退する、JR北海道の高速化とその終わりのきっかけを作った振り子式ディーゼル特急車両キハ281系とキハ283系を紹介します。

記事作成日: 2021.09.17/記事更新日: 2022.07.13

千歳線を走る特急「スーパー北斗」キハ281系
キハ281系
千歳線を走る特急「スーパー北斗」

JR後高速化に取り組んだJR北海道

キハ281系とキハ283系の話をする前に外せないのが路線の高速化の話です。

JR各社はJR化後に、それぞれ高速化への取り組みを行っていました。JR北海道も例外ではなく、「函館本線高速化事業・根室本線石勝線高速化事業・宗谷本線高速化事業」などが実施されました。

理想で言えば線路自体での作り直しですが、当然莫大な費用が発生するので無理な話です。そのため高速化事業は、妥協案として路盤の強化やポイント通過速度の向上など既存の路線を最大限利用しての高速化が実施されました。

しかし線路などの地上設備の改良だけでは高速化は十分ではありません。そこで投入されたのがキハ281系とキハ283系です。

函館本線の切り札キハ281系

JR独自で行った函館から札幌へ向かう列車の所要時間を短縮すべく、函館本線高速化事業と合わせて1992年から27両導入されたのがキハ281系です。1994年より特急「スーパー北斗」として運行を開始しました。特急「北斗」より30分以上の大幅な高速化が実現しました。

雪の千歳線を走るキハ281系
キハ281系
雪の千歳線を走る
国鉄時代から函館本線で運行されてたいキハ183系は、エンジンのパワーアップにブレーキの強化で高速化が図られていましたが当然限界もあります。

そこでJR四国の2000系をベースに、雪にも強いようJR北海道用にカスタマイズして開発されたのがキハ281系です。キハ183系と同じ強力なエンジンやブレーキを搭載するだけでなく、車両がカーブを通過する時に傾けるための装置「制御自然振り子装置」を搭載しました。この装置は台車の構造が複雑になるものの、あらかじめ高速走行に耐えられるよう路盤を強化することで、カーブ通過時に列車の車体を傾け乗り心地を損なわず通過することが可能になります。これにより日本初のディーゼル特急130km/h運転と、カーブ通過時の速度を振り子装置が無い通常列車と比べ最大30km/hも引き上げることが可能になりました。

完成系として更なる高みを目指したキハ283系

根室本線石勝線高速化事業に合わせて、1995年から「スーパーとかち」用などに38両が導入されたのがキハ283系です。1997年より「スーパーおおぞら」として運行を開始し、「おおぞら」より40分以上の時間短縮を実現しました。その後「スーパー北斗」や「スーパーとかち」でも利用が開始されました。

札幌駅停車中のキハ283系特急車両
札幌駅停車中のキハ283系

函館本線と同じく、線路と車両の両面からの高速化ということで実施されました。この事業では線路など地上設備を第三セクターの道東高速鉄道開発(現在の北海道高速鉄道開発)が改良しJR北海道へレンタル、車両側をJR北海道が用意することになりました。

基本的な設計はキハ281系と同じですが、走る線区に合わせた改良やカーブ通過時により滑らかに通過できる自己操舵機能を台車に追加しました。最高速度は130km/hと同じものの、カーブ通過時の速度を通常列車より最大40km/hも引き上げることに成功しました。

この車両の設計最高速度は145km/hでまだ速度には余裕がありました。そのため2000年に一部車両に140km/h対応工事、2006年には一部車両に振り子装置に空気バネ車体傾斜装置を組み込んだ実験を行い、更なる高速化や新型車両につながる実験をしていました。

このようにキハ281系とキハ283系はJR北海道の高速化に多大な貢献したのです。

JR北海道の綻びを露わにしたのもスーパー特急

JR化後に高速化を続けてきたJR北海道ですが、2011年にキハ283系のエンジンシャフトが脱落する大事故が起きました。乗客の機転によりけが人が出なかったのは奇跡としか言いようがないものでした。その後も他の鉄道会社ではありえない事故が頻発し、経営体質が問題となります。

事故の原因はJR化後努力はしてきたものの、人口減少や経済成長の低迷で思ったより収益伸びず経営が悪化したこと、国鉄分割時の見通しの甘さなどがあります。結果コスト削減を車両や人材全ての面で行うしかなくなったのですが、そのやり方にも問題があり様々な事故に繋がりました。

経営改善策として特急の速度ダウンなど身の丈に合わない高速運転の見直しや、国鉄時代の車両を中心とした新型車に置き換えてのコスト削減と安全性向上、赤字路線や駅の廃止など多岐にわたることが今も実行されています。

スーパー特急故の高コスト体質

高速運転の見直しは結果としてキハ281系とキハ283系の引退を決定づけました。

高速運転は車両にも線路にも負担をかけるため、両面からコストが上がります。なので最高速度とカーブ通過時の速度を下げるだけでコストカットになります。それに合わせて全ての車体傾斜装置も使用を停止しました。

苗穂にて留置中のキハ261系
キハ261系0番台
苗穂の留置線にて

振り子式は複雑な装置と紹介しましたが、複雑な分整備コストもかかります。それなのに速度を落としてカーブ通過時の高速運転をしないのですから、鉄道会社としてはただのお荷物装置です。おまけに長距離を高速走行していた車両は痛みも通常より激しいものとなります。

経営悪化の中唯一の明るい話題だった海外からの外国人客の流入も完全に停止しました。それらの理由から本来であればメンテナンスをすれば十分使える車両でも、国鉄型のキハ183系と共にキハ261系1000番台で置き換えられることになりました。

キハ261系は宗谷本線高速化事業と合わせて「振り子装置」の代わりに「空気式車体傾斜装置」を採用し、製造とメンテナンスコストを抑えてカーブ通過時に最大25km/hの速度アップを実現した車両です。置き換えは0番台から1000番台1~4次車までは付いていた空気式車体傾斜装置を省き、更にコスト削減した5次車以降のキハ261系1000番台で行われています。それに合わせて空気式車体傾斜装置搭載している既存の車両も、取り外し工事が実施されています。

2022年度より定期運用離脱開始

2022年現在ではキハ281系は特急「北斗」でのみ使用されており、2022年9月いっぱいで、定期運行からは離脱します。元々2019年発表の「JR北海道グループ中期経営計画2023」で、2022年度中の運用離脱が記載されていました。27両の在籍を考えると、2022年度分のキハ261系新製で2022年度中に運用離脱は微妙に思えましたが、定期運用からは予定通りの離脱決定となりました。

外国人客が多い状況が続いていれば何らかの活用法があったかもしれませんが、現在の状況では定期運用離脱後はキハ281系はそのまま廃車になる可能性高いと予想します。

一方キハ283系は特急2021年9月に発表の2022年春のダイヤ改正で「おおぞら」のキハ261系化が決まり、2022年3月で定期運用を離脱しました。このまま一時的な臨時運行で使用されたのちに廃車となるかと思われましたが、新たな活躍の場が与えられることなりました。JR北海道の定期特急で最も古い車両をキハ183系で運行されている「オホーツク」「大雪」で、2023年3月から運行が開始される予定です。キハ283系置き換え分のキハ261系の増備は今のところ予定されていないのですが、今後長期間の運用になるか短期間でのつなぎでの運用となるかは見守っていきたいところです。

北海道内の高速道路・バイパス延伸の対抗や交通による環境負荷問題などを考えると、再び高速化をして鉄道利用を促す必要があります。

対策が必要なのは各方面重々理解はしていても、何も出来ず緩やかな衰退しか見通せないのが現状です。どこも最低限しか支援の余裕はなく、投資にせよ廃止にせよ思い切った決断が出来ない鉄道に限らない社会情勢もあるからです。

鉄道ファンとしてはJR発足時のようにチャレンジ精神あふれるJR北海道の姿を再び見れることを、たとえ願望と言われようと強く望んでいます。

※記事の一部にご指摘があり修正いたしました。ご指摘ありがとうございます。


2022年6月18日土曜日

電車の顔の話 普通電車編 - 鉄道雑学




列車の顔と呼べる先頭車両のデザインですが、目的や会社によって色々な形があります。そんな列車の顔について見ていきたいと思います。今回は比較的新しい普通列車を中心に紹介します。

列車には目的ごとの顔がある

JR東日本E231系とE233系
JR東日本E231系とE233系
先頭車両のデザイン、列車の顔と呼べるデザインに明確なルールがあるわけではありませんが、傾向はあります。

普通列車は機能性を最優先したデザイン。特急列車では機能性だけでなく、会社のイメージにも繋がるため、デザイン性を重視したデザイン。新幹線であれば速度を重視したデザインになっています。

今回は比較的新しい普通列車のデザインを見ていきたいと思います。

コストと機能を優先したい普通電車

普通列車のデザインは箱型のデザインが多い傾向にあります。お客さんを安く快適に沢山乗せるには、まずスペースが重要です。そのため最もスペースが有効利用できる箱型になります。それに加えて走る場所によって、乗客の多さ・連結の必要性・気象条件に合わせての装備が考慮されます。

特に通勤列車は大量の車両を用意する必要があり、単純化されたデザインが理想です。単純なデザインであれば破損したときの修理も簡単ですし、平面的なら掃除の手間も減ります。

方向性としては同じはずですが、各社こだわりがありデザインでは結構違ったものとなります。

例えば、JR東日本は装飾は最低限でシンプルなデザインを採用する傾向にあります。特にE231系以降の通勤電車はその傾向が強い車両が多いです。

一方で私鉄は住宅地開発など沿線事業も手掛けることからイメージを大事にします。そのためコストがかかってもデザインを重視することがあります。相鉄の新車では車のようなグリルがありますが、ラジエーターを冷やす必要のない鉄道では無意味なものです。本当にデザインのためだけに、お金をかけているのです。

通勤電車の顔

それでは各社の通勤電車の顔を見ていきたいと思います。

JR東日本E235系
JR東日本E235系
JR東日本の通勤電車の最新形式のE235系です。非常にシンブルなデザインで、大型の一枚窓を採用し、上部にヘッドライトとテールライトと行先表示機を備える最小限の構成です。窓ガラスが大きいため、非常に見晴らしの良い構造になっています。

JR東日本の場合、以前は山手線など混雑する首都圏を走る短距離を走る通勤電車と、混雑はするものの駅間の長い郊外を走る首都圏の郊外電車で設計を変えていました。今では効率化と技術の進歩で、通勤電車に寄せた共通のデザインとなっています。

JR西日本323系
JR西日本323系
JR西日本の大阪環状線323系です。大阪環状線という通勤路線の特性を考えれば、大型の一枚窓の構成でも良いのですが、JR東日本とは対照的に近郊型車両に寄せて共通化されています。

東京メトロ17000系
東京メトロ17000系
JR東日本とは違い3分割された構造の東京メトロ17000系です。地下鉄車両は非常用脱出扉を前面に設けることが必須なので、そのため扉があります。ただし、非常用で普段は使わないので片側に寄せることで、出来るだけ運転手の視界を確保しています。ある程度曲面も使われており、そこはコストのかかっている部分のはずです。

京王電鉄9000系
京王電鉄9000系
京王電鉄9000系です。都営新宿線に乗り入れるために、非常用の貫通扉を設けています。東京メトロと違い、貫通扉は端に寄せないデザインを採用しています。コストのかかる曲面ガラスを採用して、運転手の側面の視界を確保しているのがポイントです。

相模鉄道12000系
相模鉄道12000系
通勤電車ではかなり例外的な見た目重視の相模鉄道12000系です。車のようなデザインで、ヘッドライトはリング状のデザインが入り、フロントグリルのような装飾が施されています。鉄道でいえば完全に不要な装備で、デザインのためだけのものです。これは相鉄のブランド戦略の一環で、鉄道車両以外も含めてデザイン性を高め企業価値を高めようとするものです。車両カラーリングではよく見られますが、通勤電車のデザインでここまでやるのは珍しい方だと思います。

静岡鉄道A3000形
静岡鉄道A3000形
静岡鉄道のA3000形です。静岡鉄道は清水市など静岡県の都市部を走る私鉄です。地方私鉄は中古車を導入することが多いのですが、都市部で運行しているので比較的経営基盤が強く、自社設計の新型車両を導入しています。

都市部で需要が安定しているため、2両の固定編成での運行で貫通扉はありません。こちらもデザイン性を重視しており、コストアップに繋がる編成によって異なるカラーリングを採用しています。

近郊型やローカル線のデザイン

都心部近郊やローカル線のデザインも基本は同じですが、需要に合わせて連結できるようになっていることが多く、そのため通路用の貫通扉を設けることが多いです。また、地方の非電化私鉄では、新潟トランシスの車両が採用されることが多く、よく見ると似ていることが多いのです。

JR東日本E721系
JR東日本E721系
東北地区を中心に活躍する、JR東日本E721系です。首都圏以外のJR東日本の車両は、連結や雪を考慮した構造となっています。そのため中心に貫通扉を装備し、連結時は車内の通行が出来る設計が多く採用されています。

JR北海道733系
JR北海道733系
札幌近郊で活躍するJR北海道733系です。中心に貫通扉を設け、連結時を考慮するのは他と同じです。それに加えて北海道は積雪も多く、駅間距離が長く高速走行を行います。そのためヘッドライトの数を多くし、視界確保や列車の接近をわかりやすくしています。

どの鉄道車両も踏切などでの衝突時に、運転手の安全確をする構造となっています。JR北海道の車両は、普通よりも運転台も高い位置にし前面を厚みのある構造にすることで、衝突の時の安全性がより高いものとなっています。

JR東日本GV-E400形
JR東日本GV-E400形
JR東日本の最新式電気式気動車のGV-E400形です。東北や新潟地区で活躍しています。こちらもヘッドライト上部に付け、中心に貫通扉を設けて連結を対応しています。ローカル線は最初1両単位で運行されるので、乗客数に柔軟に対応出来るよう1両から数両の連結を考慮した設計が一般的です。

JR北海道H100形
JR北海道H100形
こちらはGV-E400形の兄弟車にあたるJR北海道H100形です。全く同じでも良いのですが、733系同様の理由だと思いますがライトが運転台下にも増設されているのが分かります。

鹿島臨海鉄道8000形
鹿島臨海鉄道8000形
鹿島臨海鉄道8000形です。この車両は非電化私鉄では多く採用されている新潟トランシス製の車両です。ライトの位置が違ったりはしますが、新潟トランシスの車両はよく見ると似ている部分があったりします。

今回の紹介はここまででざっくりした解説として各社の傾向などを紹介しました。他にも色々な顔の理由があるので、是非どうしてそういう形なのか考えてみると楽しいと思います。


2022年6月12日日曜日

上越新幹線275km/h運転復活とさよならE2系




 JR東日本は2022年6月7日に、2023年春から上越新幹線の最高速度を再び275km/hへ引き上げると発表しました。これと同時上越新幹線より2022年度末にE2系を引退させ、E7系に統一すると発表しました。今回は再び275km/h化されること、E2系がこのタイミングで引退する理由を考察します。

今回は全区間で275km/h化

JR東日本E2系新幹線
上越新幹線から引退するE2系
写真の下枠交差パンタグラフのタイプは
既に引退済み
275km/hに速度が引き上げられるのは、「大宮~新潟」間で上越新幹線全区間となります。現在同区間は240km/hが最高速度で、30km/h速くなることになります。後述しますが、以前は下り一部列車が一部区間でのみ275km/h運転が実施されていました。

これにより所要時間が最大7分短縮されると発表しています。275km/hで運行するのはE7系です。E7系は設計こそ275km/hですが、260km/hでの運行しかしておらず、これで本来の性能が発揮されることになります。これに合わせて上越新幹線はE7系に統一され、E2系は2022年度末に一足早く上越新幹線から引退となります。

2019年5月にも275km/h化することをJRは発表していたのですが、当時は2022年度末実施予定としていたので、若干計画は遅れたことになります。

高速化発表化以降、車両を使った試験や工事などを進めてきました。速度が上がれば騒音も増えるので、防音壁のかさ上げや形状の変更、吸音壁を設置することで騒音が大きくならない工事が実施されています。また、高速走行をするとどうしても架線が揺れやすくなるので、架線をより強く引っ張って張る工事を行うことで、地上設備でも高速化を実施しました。

復活する275km/h運転

1990年3月10日~1999年12月4日の間で、「上毛高原~浦佐」間の下り勾配を利用して、越後湯沢を通過する下り速達列車の一部だけでトンネル区間を中心に275km/h運転を実施していました。

これは谷川連峰を超える際の高低差を利用したもので、上毛高原駅が標高約440m・越後湯沢駅が約355m・浦佐駅が約118mと下りが続いているのが分かります。この区間は半分以上がトンネル区間で、騒音も問題になりにくい構造です。それを利用して275km/h運転を実施していました。(標高は駅中心部の地上1Fを基準にしたものです。)

この列車には、専用の4編成の200系だけが使われていてました。ATC関係を275km/h用に特別改造し、ブレーキ性能や騒音対策が強化され検査基準も厳しくした特別編成でした。

その後275km/hは中止されてるのですが、これは200系以降の車両で車両性能が向上したことや、ほくほく線が開業し「はくたか」乗り換えなど越後湯沢駅の重要性が高まったことが理由とされています。

E7系統一で車両性能向上で275km/h復活へ

JR東日本E7系新幹線
上越・北陸新幹線で活躍する
E7系
2021年10月までは最高速度が240km/hのE4系が上越新幹線で運行されており、これも速度アップの障壁だったと考えられます。

現在上越新幹線で運行しているE2系は、275km/h対応のE2系1000番台で、東北新幹線では275km/hでの運行が可能です。そして、公開されているカタログスペックだけで言えば、E7系と大差はありません。しかし、E7系はE5系の技術を取り入れ、最高速度とスペックを落とした車両なので、E2系よりは性能が高く高速運転しやすいはずです。

また、E2系は順次廃車の進められている古い車両です。安全性や信号制御を考えると、東北新幹線で275km/走っているから、上越新幹線もそのまま走れるという単純な話ではないはずです。走れるか走れないかで言えば上越新幹線でも275km/hで走れるでしょうが、引退が近い車両へ手間をかけるのは得策でないという判断になったのだと思います。

上越新幹線がE7系に統一されることで、すべての車両性能や座席数が統一されることになりまうす。これによりダイヤを考える上で単純化できることや、ダイヤが乱れたときへの対応が楽になります。

東北新幹線でE2系が残る理由としては、最高速度がE2系と同じE3系が速度上のボトルネックとして残っており、E3系は今後置き換えることが予定されているからだと思います。E3系はE2系と連結して運行されているので、E3系の引退と同時期に東北新幹線でのE2系も引退になると予想します。

そういった理由からE2系の置き換えを上越新幹線で先に進め、東北新幹線でのみの運行とし、E7系で統一しての速度向上の実施という判断なのではないしょうか。240km/hを最高速度として、E2系の上越新幹線での繁忙期の臨時運行が今後あるかは、気になるところです。


鼻の短い山形新幹線E8系投入 E3系の終焉へ




JR東日本は2020年3月3日に山形新幹線へE8系を投入し、福島駅のアプローチ線の改良を行うと発表しました。E8系の特徴を中心に解説します。
記事作成: 2020.03.03/記事更新日: 2022.06.12

鼻は短く最高速度300km/hで定員重視

JR東日本E3系2000番台
山形新幹線E3系2000番台
E8系は2024年春から運行開始で、E5系との併結で東北新幹線走行時の速度が275km/hから300km/hに引き上げられます。2024春から2026年にかけて導入予定です。

基本的な構成はE6系に準じたものとなりますが、大きく違うのは速度と定員です。E6系は鼻が尖っている先頭部13m、最高速度320km/h、定員330名(グリーン車22名)、荷物スペース四か所、車椅子スペース一か所です。対してE8系は先頭部9m、最高速度300km/h、定員355名(グリーン車26名)、荷物スペース七か所、車椅子スペース二か所となります。

E6系は「こまち」として「はやぶさ」と連結して、東北新幹線内は最速達列車として運行しています。一方でE3系は「つばさ」として「やまびこ」と連結して運転していますが、「やまびこ」は元々停車駅が「はやぶさ」より少し多めに設定されている列車です。また、「こまち」は盛岡まで、「やまびこ」は福島までと、東北新幹線内を走る速度や停車駅が列車の設計に反映された形です。

グリーン車はE6系もE8系も先頭車一両のみで7両編成となっているため、先頭車2両で10名以上の定員が増えていのるが分かります。さらにE8系は大型荷物スペースが全車両に拡大され車椅子スペースが一か所増えているのに定員が増加しており、他の箇所でも定員増加の工夫がされているようです。

E3系からの変更箇所として全車両のフルアクティブサスペンションダンパー化による乗り心地向上、E3系・E6系との違いがコンセントの全席化となっています。カラーリングに関しては現行を踏襲します。

投入編成数としては当初17編成の導入を予定していました。しかし、2022年6月の報道によると、導入決定時より需要が下回る予想となったため、運行中のE3系1000・2000番台の合計数と同じ15編成の導入となります。

導入編成数は減ったものの運行本数に影響はないとしているため、現在の運行本数より減るのではなく、週末に運転されている臨時列車や東北新幹線内での増結編成での運用の調整になるのではないでしょうか。

E3系の終焉へ

E3系は0番台が秋田新幹線に投入され、その後にE3系1000番台と2000番台が投入されました。2022年6月現在では東北新幹線の増結用と山形新幹線用に1000番台・2000番台が活躍しています。

E8系が投入されることで、本来のミニ新幹線としての役目は終わると予想されます。また、増結用編成としては0番台が秋田新幹線引退後活躍したように、1000番台と2000番台が少しだけ活躍するかもしれません。しかし、速度も同時に引き上げられるために、その頃にはE2系も定期運転では引退してるでしょうから唯一のダイヤ上ネックになるため微妙なところです。

福島駅のアプローチ線の改良

福島駅にある奥羽本線から東北新幹線への接続用のアプローチ線は、下り線側のみの単線構造となっています。なのでアプローチ線を上り線にも増設し、複線構造に変更されるのがE8系導入と同時に発表されました。使用開始は2026年度で、E3系の置き換え完了と同時になります。

これにより東北新幹線上での平面交差や単線区間が解消されるために、増発やダイヤ乱れ時の対応がしやすくなります。


2022年6月7日火曜日

報道の印象と違う?蒲蒲線計画の都と大田区の合意について解説




 大田区と都が2022年6月6日に合意した新空港線(通称:蒲蒲線)の発表内容について解説します。見ていただくと報道とは印象も変わってくる部分もあるかと思います。最初に簡単にまとめて細かい点を解説していきます。

京急1000形
蒲蒲線は京急への乗り入れも目指すが
実現なるか…

簡単には補助金の支払の一部と大田区が主体になることを合意

1 大田区は、整備主体となる第三セクターに出資、都市鉄道利便増進事業の採択に向けた調整など、本事業を推進する主体となる。

2 東京都と大田区は、都市鉄道利便増進事業の地方負担分について補助を行う。その負担割合は、東京都が3割、大田区が7割とする。 

3 大田区は、整備主体となる第三セクターとともに、本事業の事業計画の検討に当たり、事業費の圧縮に努める。 

4 本事業の都市計画決定及び都市計画事業認可の後、大田区が本事業を特別区都市計画交付金制度の対象事業とすることができるよう、東京都と大田区は調整を行う。 

5 空港アクセス利便性の向上に資する京急蒲田から大鳥居までの整備について、東京都と大田区は、引き続き実現に向けた関係者による協議・調整を行う。

6 上記合意事項の実現に向けて、東京都と大田区は、責任を持って必要な対応を行う。

大田区ホームページ
「新空港線(矢口渡~京急蒲田)整備事業について」より引用

上の文章は2022年6月6日大田区と都が合意した発表したことについて、大田区ホームホームページにあった内容です。

以上より簡単に解説すると、大田区が事業の中心となり、今後第三セクターを設立する。都と大田区で「都市鉄道利便増進事業」という制度の補助金の支払い割合を合意した。今後もコスト削減に努める。都と大田区で具体的な計画を決め、特別区都市交付金という都からの出資を受けられるようにする。今回決まったのは東急多摩川線矢口渡駅~京急蒲田間で計画路線の一部分、京急蒲田~大鳥居間は今後も協議する。それらが実現できるよう、都と大田区は努力するといった具合です。

実際に路線建設に至るには様々な申請が必要で、そういったことはまだと分かります。なので建設を決定したわけではありません。

それではそれぞれについて、1~6を細かく見ていきたいと思います。

1.大田区が中心に事業を進める

この新規路線は線路や駅を第三セクターが建設し保有し、東急など鉄道会社へレンタルして実際に運行を行してもらう想定です。なので、大田区が第三セクターに出資することで、中心的に事業を進めることができます。それで中心に事業を進めるとなったのです。

都市鉄道等利便増進法というのがあり、その法律に基づいて行われるのが都市鉄道利便増進事業です。これを利用すると国・自治体が3割づつ費用を補助金で負担してくれて、実際の支払いは残り3割のみでよくなります。なので事業が認可されるように努力するということです。

2.都と大田区で補助金の支払い割合決定

先ほどの都市鉄道利便増進事業で自治体が3割支払うとありましたが、この割合を都が3割・大田区7割と決めたということです。総事業費が1360億円の予定なので、単純計算で自治体支払い分が3割で453億円、大田区はその7割で約317億円支払うことを合意したことになります。

実際には都からの資金や第三セクターへの出資があるので、支払い金額はそこから増減します。

3.コスト削減を頑張ります

これに関してはあまり言うことはないのですが、1000億円を超える事業なのでコスト削減を頑張りますというこです。

4.東京都からの資金を受けられるようにする

簡単に言うと計画をちゃんと決めて、都から認可してもらい、都から資金を受け取れるようにするという話です。

この辺りは私も理解しきれてないので、間違っていたら申し訳ないのですが、解説していきます。

都市計画法という都市の開発に関する法律があるので、まず大田区が具体的な計画を決めた都市計画を決定します。そうすると都道府県、この場合は都が認可することで、都市計画事業というものになります。そしてその財源が都が交付する特別区都市計画交付金制度というわけです。

5.今決まっているのは路線の一部分

今回の話の対象となっているのは、「矢口渡~京急蒲田」間で計画の一部のみ、「京急蒲田~大鳥居」間は引き続き調整するということです。報道によると2030年代に、部分開業を目指すとしています。

新空港線(通称:蒲蒲線)は東急矢口渡駅から蒲田駅・京急蒲田駅を経て、京急空港線大鳥居駅まで繋がる路線です。元々「矢口渡~京急蒲田」間を第一整備、「京急蒲田~大鳥居」間を第二整備として分割して建設する予定です。なので、第一整備の区間のみ話がまとまったということです。

6.これからも対応を続けていく

このように見ると実際の路線新設にまだまだなことだらけとわかります。なので、引き続き都と大田区がで対応していくということです。

以上が大田区と都が合意した内容の解説です。こうやって見ると報道の内容や印象と違うところも見えてきたのではないでしょうか?

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蒲蒲線(新空港線)ってどんな計画でメリットや問題は?




 羽田空港へ向かう新空港線として計画されている通称「蒲蒲線」が、どんな計画でどんなメリットや問題があるのか紹介します。

記事作成: 2022.06.06/記事更新: 2022.06.07

そもそも蒲蒲線って?

東急5050系
蒲蒲線に乗り入れるかもしれない
東横線の列車
蒲蒲(かまかま)線という通称で呼ばれている新空港線ですが、東急矢口渡駅から京急大鳥居駅までを結ぶ計画の路線です。

東急多摩川線矢口渡駅を出て環八を越えたあたりで分岐し、まず地下に潜ります。そこから蒲田駅・京急蒲田駅を経て、京急空港線の大鳥居駅手前で空港線に合流し、大鳥居駅に至ります。そこから京急空港線に乗り入れて、羽田空港を目指します。蒲田駅と京急蒲田駅を結ぶのが、蒲蒲線という通称の由来です。

これによって東京メトロ副都心線・東急東横線方面から東急多摩川線を経由して列車を乗り入れさせ、東京西部や埼玉方面からの羽田空港へのアクセス向上を狙っています。

矢口渡~京急蒲田間を「一期整備」、京急蒲田~大鳥居間を「二期整備」とし、二段階で新設する計画です。一期整備区間を2030年代までに完成を目指しています。

計画の中心は大田区が担います。線路などの設備を大田区が出資する第三セクターが整備し、実際の営業は東急が運行することを大田区は想定しています。総事業費は1360億円を見込んでいます。

どこまで計画は進んでいるのか?

必要予算や路線の大まかな計画を立てるところは既に完了していて、予算の出資割合や出資者を募っている段階です。今決まっているのは都と大田区が補助金の支払いについて、一部合意しているところです。

この後に出資者同士や運営を委託する東急などと調整を行い、実際に国などに計画を申請して認可や補助金などを受けられるようにし、実際の建設に移る必要があります。なので、かなり実現性が高まっていますが、まだ本当に計画が実施されるか分からないところがあります。

時間よりも乗り換えの楽さ?

効果が期待させている東横線方面渋谷駅から、どんぶり勘定ですがどの程度早くなるか予想してみたいと思います。

今の山手線・京急の場合、山手線「渋谷~品川」間が約13分、京急「品川~羽田空港第1・第2ターミナル」が快特で約15分、乗り換えが5~10分と考えると32~37分といったところでしょうか。

東急経由で東横線「渋谷~多摩川」間が現在と同じ急行で約13分、多摩川線「多摩川~蒲田」間は現在と同じ普通で11分と想定、「蒲田~京急蒲田」間を3分程度と想定、京急線「京急蒲田~羽田空港第1・第2ターミナル」は現在の急行と同じ11分と想定で、38分程度という予想になります。

蒲蒲線への列車を東急線内特急で、京急蒲田から大鳥居以外止まらない快特とほぼ同じ停車駅にすれば、もう少し早くはなるかもしれませんが、5分早まれば御の字といった具合だと思います。ただ、後述する東急線の本数や京急の立場を考えると、特急や快特並みにするのは難しいとも思います。

こう見てみると時間的には大幅に早くなるかは微妙なところです。ただ、計画が謳う通り東横線や副都心線方面からであれば、乗り換えがなくなる分こちらを選択する人も少なくないと思います。

もう少し具体的なメリットは?

想定としては東横線・副都心線を経由して東武や西武からの列車も直通することで、新宿方面に埼玉方面からの羽田空港へのアクセスが向上します。南北線や都営三田線と直通する目黒線からも東横線に簡単に乗り換えられるので、多くの人が羽田空港へアクセスする際に楽になると思います。

蒲田駅と京急蒲田駅は800mほどあります。そこが鉄道で結ばれれば大田区内の移動も楽になります。

鉄道会社としては東急と京急が関係してきますが、東急に関しては主体が大田区であるので、比較的小規模な投資で新たな乗客を確保できる可能性があり、乗らない手は無いといった感じです。

一方で京急は微妙な立場です。アクセス向上の期待できる東京西部や埼玉方面の乗客は、今であれば品川から京急に乗って、羽田空港に向かう乗客が多く含まれています。品川から羽田空港と大鳥居から羽田空港では、当然前者のほうが京急の利益は多くなります。しかし、新しい経路での需要創出が多少考えられる事や、JRも新しい羽田空港への路線を計画しているので、乗らざる得ないといった状況なのではないでしょうか。

そして主体となる大田区としては、この新路線による効果で街づくりの起爆剤としようとしています。具体的にはリニア完成による羽田空港の国際線への発着枠増加するとの予想からの外国人需要の増加、空港や京浜工業地帯への近くという立地、飲食店の多い土地柄、そういったものを絡めて街の活性化や企業誘致へ繋げようと考えているようです。

大田区民の負担は少なくない

予算について実際に決まったわけではありませんが、今決まっている都市鉄道利便増進事業の負担割合を見るに、単純計算300億円を少し超える負担は決まっています。第三セクターへの出資も考えると、ほかの補助金などを活用しても300億円は確実に越える負担になりそうです。

ただ、大田区は区の予算を3000億円で組める規模なので、普通の都市では考えられない予算規模でも、何とかならないわけではありません。しかし、区民への負担は決して小さくないと言えます。

難しい車両の問題

予算さえ付けば第一期整備の矢口渡~京急蒲田間は、実現可能です。ただ、車両や運用については、調整がかなり面倒になりそうです。多摩川線の列車が乗り入れるだけであれば問題ないのですが、東横線方面からの列車乗り入れが多摩川線を走るのに課題があります。

最初に車両についてですが、多摩川線の列車は18mの3両固定編成です。東横線や副都心線の列車は、20mの8両か10両編成のどちらかです。多摩川線の列車が東横線方面へ乗り入れるのは、需要に対して車両数が少なすぎる上に、ホームドアの問題があります。東横線の列車が多摩川線方面へ乗り入れるには、18mより長い20mへ車体・8~10両の長い編成に対応できるよう、線路や駅を様々な改造が必要があります。ただし、車体の問題に関しては、18m路線の20m化は日比谷線という例があるので、線路側は最低限で主に車両側の対応で可能な場合もあります。

運用については東横線があっちこっちに乗り入れているので、そこへ更に乗り入れ路線を増やすという点です。東横線はみなとみらい線・東京メトロ副都心線が既に乗り入れており、さらに東急新横浜線が乗り入れる予定で、各乗り入れ路線には更に複数の路線が乗り入れてます。既に超複雑な乗り入れ路線網に、更に多摩川線経由で蒲蒲線乗り入れるという問題があります。

また、多摩川線は今は普通列車しか運行しておらず、特急など駅を通過する列車はありません。もし特急として走らせるのであれば、駅を通過できるようダイヤや設備の調整が更に必要になります。

難しい線路の幅の問題

第一整備までは、面倒というだけで不可能ではありません。問題は第二整備の京急蒲田~大鳥居間です。

大鳥居から先は京急の線路を走るわけですが、京急の線路幅は1435mmで東急の線路幅は1067mmで幅が違い、このままでは走れません。技術的には線路を4本や3本ひいて、両方の幅に対応させることは可能です。しかし、線路が増える分メンテナンスが大変になり設備故障原因も増えるので、鉄道会社的にはやりたくないというのが本音です。

フリーゲージトレインという線路の幅が違っても走れる車両を使う案もあるのですが、車体コストが高くなることや開発がとん挫に近い状態で完成していないので、現時点では案としてはほぼ無い状態です。

さらに空港線は結構な本数の列車が走っているため、京急としては、お客さんを取られてしまうかもしれない蒲蒲線からの列車へ本数を割きたくないとも想像できます。

そういった理由から京急への乗り入れに関しては、実現が疑問視されているだけでなく、京急へは京急蒲田での乗り換えで対応して、第一整備で計画が打ち切りになるのではという見方もあります。

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2022年6月6日月曜日

ハイブリッド・電気式・液体式 気動車の駆動方式のメリットデメリット




従来からのエンジンだけで動く液体式、充電電池で動く蓄電池式、エンジンと電池でモーターが動くハイブリッド、エンジンで発電してモーターで動く電気式と、近年増えてきた非電化区間の様々駆動方式のメリットデメリットを考えます。正直頭で整理しきれないところもあるので、間違っているところは優しくご指摘いただければ助かります…
記事作成日: 2020年9月9日/記事更新日: 2022年6月6日

これからは電気式が主役か?

電気式気動車のGV-E400系
電気式気動車のGV-E400系
新津駅にて撮影
既にJR東日本とJR北海道では電気式気動車の大量導入が行われています。この後紹介するそれぞれの特性を見ると、電池価格の変動の要素はあるものの電気式気動車が主役となり、次にハイブリッド気動車や蓄電池式気動車となっていきそうです。

液体式気動車

只見線キハ40系
オーソドックスな液体式気動車キハ40系
只見線小出駅
メリット
・ディーゼルエンジンだけで構成がシンプル
・比較的軽い
・技術的に安定している

デメリット
・変速機の整備性が悪い
・走行性能が低い
・エネルギー効率が悪い傾向にある
・エンジン音がうるさい

いわゆる従来型の気動車で、バスやトラックと同じ方法で動きます。ディーゼルエンジンで、直接車輪を動かします。日本で今走っている気動車はほとんどこの方式です。

この後紹介する電気式の列車は、ディーゼルエンジンの他に発電機やモーターが必要になるので、構成としてはシンプルになります。一概に比較は出来ませんが車両重量も比較的軽い傾向にあります。ただ、変速機など重さのある部品もあったりと、ハイブリッド気動車と比べても1tレベルの軽量化なので、大幅に軽いわけではありません。

構成としてはシンプルなのですが、エンジンの回転を必要なトルクや速度に合わせて調節する変速機が必要です。変速機は構造が複雑なので、これが重量増加や整備性の低下を起こします。また、液体式の気動車は電車よりも加速や最高速度の面で劣ります。更に蓄電池の使える車両に比べるとエネルギー効率が落ち、燃費が悪いと言えます。停車中もエンジンを動かす必要があり、発車時はエンジンがフル回転になるので特にうるさくなります。

みんな電車

蓄電池車もハイブリッド気動車も電気式気動車も、みんな電車です。違うのは電源を何に頼ってるかという点です。

そもそも何故電車にするかと言えば、例えばJR東日本の車両の大半は電車です。電車ベースであれば、技術や部品の共有をしやすくなりメンテナンスも簡単になります。性能も電車のほうが高いので、ベースを電車にすることで加速が良くなっています。

地方私鉄が導入する液体式気動車は価格が公開されてる場合があり、1両1億5千万程度の例があります。一方で量産効果のあるJRの通勤電車は価格が公開されてないものの、平均1億円程度と言われます。ローカル線用は数が出ないので元々コストが上がりがちですが、通勤電車と部品を共通化出来るのであれば導入コストも下がる余地があるのかもしれません。

蓄電池式車

JR東日本EV-E801系 ACCUM
JR東日本EV-E801系 ACCUM 
蓄電池車
メリット
・電車として走れる
・効率が良い
・最も静か
・走行性能は高い
・構造がシンプル

デメリット
・コスト、特にリチウムイオン電池が高い
・電池の量で走行性能や走行距離が決まる
・充電設備が必要
・頻繁に電池を使うと電池の劣化が進む


一言でいえば電池で走る電車です。なので、電車と気動車の比較とほぼ同じとなります。電池はリチウムイオン電池で、スマートフォンの電池の大きいものが搭載されています。

比較的エネルギー効率が良いです。電化区間では架線からパンタグラフで充電し普通の電車として走り、非電化区間では電池でモーターを動かして走ります。エンジンが無いので、他の方式より静かです。走行性能も高く、減速する時にモーターで発電して電池に充電することでエネルギー効率も高くなります。

問題のすべてはリチウムイオン電池と言っても、過言ではありません。リチウムイオン電池を沢山載せられれば、電車と全く同じ高い加速で速い最高速度で走り、長距離の運行が可能です。しかし、リチウムイオン電池は値段が高く、沢山載せるほど車両が重くなります。そこで距離や加速など妥協点が必要になります。それでもJR東日本最新世代の液体式気動車キハE120系の加速が1.58km/h/sに対し、烏山線のEV-301系では加速は2.0km/h/sと一昔前の通勤電車や近郊列車レベルで高くなっています。また、スマートフォンと同じように充電と放電を繰り返すと、電池が劣化し性能が落ちます。なので加速と減速が少ない平坦で、駅間距離が長いほうが、電池の劣化が少なく済みます。そして充電電池の充電する設備がない場合に、充電設備が必要になります。

烏山線の充電設備
烏山線の充電設備
車両後ろ側の架線柱が充電部
非電化区間の充電設備の例ですが、写真は烏山線の充電設備です。終点の烏山駅に設置されている設備で、充電用の架線が駅の一部分だけに設置されています。非電化区間走行中はパンタグラフを下げているのですが、駅停車中だけパンタグラフを上昇させ充電します。

走行距離が短い路線に導入されており、JR東日本だと烏山線・男鹿線、JR九州では香椎線で導入されています。烏山線や男鹿線は始発駅が元々電化されており、終点側に最低限の充電設備追加して対応しています。香椎線では中間駅の香椎駅にのみ充電設備がないので、運行系統を二分割しています。特に烏山線は周りの路線すべてが電化されていましたが、烏山線だけが違いました。電車に統一されてことで、そのあたりの調整もやりやすくなったはずです。

ハイブリッド気動車

メリット
・効率が比較的良い
・走行性能が良い
・比較的静か
・変速機がない

デメリット
・車両構成が複雑
・コストが高い
・比較的重い
・頻繁に電池を使うと電池の劣化が進む


ハイブリッド気動車は、電源を電池とエンジンを回して動かす発電機に頼っている点が特徴です。

JR東日本ハイブリッド車は近郊電車レベルの2.3km/h/sの加速を実現しています。蓄電池式の電車と同じようにリチウムイオン電池を搭載しています。そのため蓄電池車同様に、ブレーキ時に発電して電池に溜めることが出来ます。停止時はエンジンを切って電池だけに頼ることもでき、発車してある程度の速度まで電池だけでモーターを動かし、一定の速度以上になるとエンジンの発電も加わります。プリウスのような家庭用自動車と似た制御がされていて、停車・低速時の騒音も同じように抑えられています。また、エンジンを効率の良いな回転数で動かして予め発電して電池に蓄えることも出来るので、その点でも効率が上がります。液体式気動車にある変速機のような複雑な部品もありません。

複雑な部品はないものの、電池に発電機にモーターと色々なものが載っているのでそこがデメリットとなります。色々なものが載っているので車両のコストも上がりますし、それぞれの機器をどう動かすかの複雑な制御が必要で、重さも多少重くなります。蓄電池式と同じように、充電と放電を繰り返すと電池の劣化が早まります。そのためブレーキ時のエネルギー効率で言えば一番載せたい普通列車に載せると、電池の劣化が早く進むのと、発着時は電池が重りとなり効率が落ちます。

これらを踏まえハイブリッド気動車は、リゾート列車や快速列車に採用される傾向にあります。どちらも普通列車よりは停車や加減速が少ないので、電池の負担が減ります。更に必要な車両数が少ないので、ある程度のコストの高さまでは許容できます。リゾート列車の場合は快適性や環境に対するイメージも必要なので、騒音の低減や効率性の面でアピールができます。

電気式気動車

JR東日本GV-E400系
JR東日本GV-E400系
電気式気動車
メリット
・走行性能が良い
・変速機がない
・構成は比較的シンプル
・ハイブリッド気動車よりは車両価格が安い

デメリット
・うるさい
・効率が悪い


電気式気動車は電源をディーゼルエンジンから発電した電気のみに頼りモーターを動かす電車です。変速機が無い分モーターと発電機は載っていますが、あまり複雑な構成をしているわけではありません。エンジン始動用の最低限のアルカリ蓄電池しか載っていないので、コストも下がって車両価格も安いはずです。

電気をエンジンに頼るので、停車時もエンジンのアイドルが必要ですし、加速時は従来の液体式気動車並みのエンジン回転が必要となり、音もあまり変わりません。また、ブレーキをかける時に電気をためることはできないので、その点でも効率は液体式気動車を上回るとは言えません。

車両性能はJR東日本GV-E401系の例では、ハイブリッド気動車と同じ2.3km/h/sの加速を実現しています。走行性能では蓄電池車を上回ります。ただ、実際には従来型の液体式の気動車と合わせた低速の加速モードがあるので、常用されているわけではありません。

JR東日本の東北地区やJR北海道のローカル線で大規模な導入が行われており、液体式気動車の置き換えがかなり進められました。

先ほども紹介したように普通列車にハイブリッド車を採用する場合、電池の劣化と重さの問題があります。さらに山岳線では車両重量のデメリットが大きくなる上に、どうしても加減速が増えて電池の負荷が増えます。非電化区間の多くは山岳線で、乗客も少なくコストもかけられない路線です。そこで妥協案としての電気式気動車のメイン採用という形になったと想像できます。将来蓄電池の価格がぐっと下がれば、また変わってくると思います。

以上を踏まえると最初に紹介したように主流は電気式がローカル線となり、リゾート列車や仙石東北ラインのような優等列車用にハイブリッド気動車、短距離の非電化区間は蓄電池式という住み分けがなされていくと思います。


2022年5月19日木曜日

東武鉄道新型特急500系リバティ 半蔵門線には直通しない?




2015年4月22日に東武鉄道が発表した新型特急500系「リバティ」について、車両の仕様などを中心に解説します。そして半蔵門線に直通出来るにも触れていきます。運用に就いては「万能特急東武500系リバティ 縦横を駆ける」をご覧ください。
記事作成日: 2015.04.22/記事更新日: 2022.05.19

500系特急電車スペック

東武日光線を走る500系特急リバティ
東武日光線を走る500系特急リバティ

編成概要

東武500系編成表
500系編成イメージ

車両形式: 500系
初期導入車両数: 3両×8編成=計24両
導入路線: 東武本線
運行開始日: 2017年4月21日
製作会社: 川崎重工
デザイナー: 奥山 清行

最初に発表された導入車両数は、3両×8編成=24車両の特急車両です。2016年度に導入され、2017年4月21日から運行を開始しました。基本的には2編成を連結した6両で運行します。その後も追加の導入が行われ、2022年現在3両×17編成=51両が在籍しています。

運行路線は東武スカイツリーライン(伊勢崎線)・日光線・鬼怒川線・アーバンパークライン(野田線)・野岩鉄道線・会津鉄道線と、本線系統であればどこでも走れるようになっています。

6両の編成のスペーシアは東武と野岩鉄道の境界駅である新藤原駅まで乗り入れていますが、そこから先は変電所容量の関係で乗り入れが難しいという話を聞いたことがあります。3両編成の小回りのよさが生かされています。

製造は川崎重工です。東武鉄道での採用は1946年に戦後の輸送力不足改善のため国鉄から割り当てられた63系以来となります。(川崎重工に吸収合併された汽車製造が8000系を作っているので、これを含めると変ります。)

デザイナーは北陸新幹線E7系や山手線E235系、中央線特急E353系などを手がけた奥山 清行氏です。

スペーシアの後継ではない

春日部駅に入線する東武100系
特急スペーシアとして活躍する
東武100系特急電車
発表時のプレスリリースで「特急スペーシア、特急りょうもう等に加えて、特急列車のさらなる利便性を向上を目的に」とあるように、新しい選択肢としての導入で既存特急車両の後継ではありません。スペーシアが6両を基本としていることからも後継ではないとすると納得できます。 

 導入当時は1800系の改造車である東武300系が6両×2編成=計12両、350系が4両×3編成=計12両在籍していました。ちょうど24両の導入で、全て置き換えられることも予想されましたが、この時は300系の置き換えのみとなりました。 

 追加車両により、200系廃車開始による「りょうもう」の一部運用、「きりふり」廃止とスペーシア廃車開始により350系と100系が担っていた定期特急や臨時特急の役目も果たすようになりました。 そして2021年に100系スペーシアの後継車N100系が発表されたので、スペーシアの後継車としてはそちらが担います。

また、車体の構造的にはATS-Pさえ搭載すればJRへの乗り入れることも可能だと思いますが、今のところ予定は無いようです。

気になる地下鉄直通

500系発表前に特急車の地下鉄乗り入れを検討するような話もありましたが、そちらはTHライナーが運行されたので、地下鉄乗り入れは無くなったようです。それでも実際可能なのか考えてみます。

地下鉄の乗り入れの障害になるものとして、前面貫通扉と車体幅の制約があります。500系は前面貫通扉はなんとかなりますが、車体幅やカーブの制約で怪しいです。

前面貫通扉は地下鉄を走る上で、非常口用に絶対に設置する義務があります。500系は貫通扉は増解結用が付いているので、設置義務は満たしています。しかし、そのままでは駄目で、貫通扉から地面に降りる非常用階段を取り付けるよう改修が必要です。

地下鉄はトンネルの大きさの関係で車体幅が大きい車両は入れない場合があります。500系の車体幅は2870mmです。これに対し半蔵門線直通対応車50050系が2770mm、日比谷線直通対応車20000系列が2874mmとなっています。

なので、半蔵門線に関しては車体幅的に無理です。日比谷線は車体幅だけで見れば問題ありませんが、東京メトロ13000系や70000系が舵操舵台車を装備して20m車の乗り入れに対応したのを見ると、カーブの問題で難しそうです。やはり500系の地下鉄乗り入れは、今後も無いと思います。

車両外観

下今市駅留置中の東武500系
下今市駅留置中
スペーシアが白系の塗装で明るめの帯が入っていたので、全体的にだいぶ締まった印象を受けます。

下今市駅で停車中の東武500系リバティ
下今市駅での分割作業
前面は貫通型で分割・併結が可能な形状で、今までの東武特急が非貫通型であるのと対照的です。旧成田エクスプレスの253系に似た形状ですが、253系が車掌しか通行できないのに対し、旅客も通行可能なタイプとなっています。

連結作業中の東武鉄道500系リバティ
連結作業中

分割作業の動画

分割や併結時には貫通幌のロックは駅員が行い、貫通幌の収納や外側の扉の開閉は自動的に行う、半自動方式となっています。そして、車内の運転台側の扉のロックなども手作業で行います。連結時には連結部がオレンジに点灯し、注意喚起の音が流れます。一部自動化されていると言っても作業量は特段減ったわけではないので、6050系と比べて作業時間が短縮されているなどの印象はありませんでした。

東武鉄道500系リバティ 上部前照灯
上部前照灯

東武500系ヘッドライト・テールライト
下部ヘッドライト・テールライト
ヘッドライト専用のライトが貫通扉上、ヘッドライト・テールライトを兼ねたものが前面下部についています。LEDタイプのもので非常に指向性が高く、写真の通り横からだと点灯しているのが殆ど分かりません。また、下部の前照灯は日中では3分の1程点灯し、夜間は全て点灯するようになっています。

東武鉄道500系側面LED行先表示器
側面LED行先表示器

東武鉄道500系リバティのロゴ
側面ロゴ

側面の行先表示器はスタンダードなフルカラーLED表示器を採用しています。側面にはリバティのロゴが貼られています。

電装部品など

SS182M(TRS-16M)

東武鉄道500系リバティ搭載東芝製VVVFインバータ
東芝製VVVFインバータ
足回りはには東武30000系で試験を行っていた永久磁石同期モーター(PMSM)が採用されるほか、東武鉄道では初めてアクティブサスペンションダンパーが採用されます。モーターはPMSMです。2017年4月21日に東芝がモーターを納入したと発表しました。台車は東武車では一般的なボルスタレス台車が採用されています。

実際に乗ってきましたが、発車時のモーターやインバーター音などはスペーシア100系と比べると、非常に静かに感じました。揺れについてもアクティブサスペンションダンパーがある分、少なく感じました。

東武鉄道500系リバティのパンタグラフとクーラー
パンタグラフとクーラー
パンタグラフは先頭車と最後尾に一つづつ搭載されています。クーラーは屋根上に集中式の物が、一両につき一つづつ搭載されています。最近は屋根まで塗装されている車両もありますが、そういった特徴はありません。

車内サービスとしてWi-Fiや2Aまで対応のPC用電源も用意されます。車内サービスについては「万能特急東武500系リバティ 縦横を駆ける」に記載しているので、そちらもご覧ください。

走行から分割シーンまで撮影しました


2022年5月18日水曜日

2022年度関東大手私鉄新型車両動向まとめ




  関東大手私鉄が発表する2022年度の事業計画などを基に関東大手私鉄の新車計画を紹介します。順次加筆・修正の予定です。

記事作成日: 2022年4月29日/記事更新日: 2022年5月18日

東京メトロ17000系
引き続き導入される予定の17000系

新車より衝撃の譲渡車検討 西武鉄道

西武鉄道は5月12日に「事業計画」を、西武ホールディングスも同日に「西武グループ中期経営計画(2021~2023年度)』の進捗」を発表しました。

「事業計画」によると新型車両40000系が3編成導入されます。既に車両側の対応工事が進められていたデジタル無線への更新が実施されます。

衝撃的だったのは「西武グループ中期経営計画(2021~2023年度)』の進捗」のほうです。2022年度中の話ではありませんが、将来的にサステナ車両と西武鉄道が呼称する、譲渡車の話が含まれていました。サステナ車両は、コスト削減を進めるため他社から導入を検討している、無塗装VVVFの中古車両のことです。この文が出る前にはJR東日本と営業面・運転面で協力するとあるので、そのまま考えるならばJR東日本から車両の譲渡を受けると考えるのが自然ですが、本当にJRの車両が西武鉄道を走るかは気になるところです。

車両更新のみで来年以降に1500形更新? 京浜急行

京浜急行は5月11日に「鉄道事業設備投資計画」を発表しました。今年度は新車の導入は無いようです。

2022年度中に行われるとはっきり書かれているのは新1000形の車両更新で、フリースペースや車内液晶の設置と、走行機器の更新のみです。

一方で2022年度以降で発表されたのが1500形の置き換えで、来年度以降からの実施となりそうです。1500形は1985~1993年までに製造された車両で、鋼鉄製で製造時から現在まで界磁チョッパ制御の初期製造グループの4両編成・アルミ製で界磁チョッパからVVVFに更新された中期製造の6両編成・アルミ製で最初からVVVFで機器更新をしていない後期製造の8両編成と、製造年も車両構造も異なっています。車両の痛み具合が基準ならば、初期車の4両編成、機器更新をしていない後期車、最後に中期製造となります。

界磁チョッパからVVVFにすることでの省エネ性もアピールされていたので、まずは4両編成の車両が更新されると思います。その後の順番は運用の都合も大きいので、今後の動向に注目です。

新車ゼロ?で力を溜める 東武鉄道

東武鉄道は4月28日に「設備投資計画」を発表しました。今年度は新型車両の導入は無いようです。

スペーシア100系の後継として導入が発表されたN100系は、2022年度は車両製造のみを行い2023年度導入とあります。今年度中に納車され試運転などの車両を実際に動かせる形にするかは微妙な表現となっています。

通勤電車は車両更新含めて大きな発表は無しです。なので、内装や電装部品の大幅更新しない小規模なもののみとなるかと思ったのですが、東武鉄道の車両更新の委託を受けている津覇車両に更新車とみられる車両が入場したため、大幅な更新も行う車両もあるかもしれません。また、70000系4編成・50000系8編成に車内カメラの搭載、列車の走行データを収集するシステム「Remote」を500系4編成・50000系1編成搭載予定と発表しています。

2023年度からN100系新型スペーシアの導入、2024年度から野田線(アーバンパークライン)向け通勤電車の導入が控えているため、今年はかなり控えめな動きとなったようです。

新横浜線開業に向けて準備 相模鉄道

相模鉄道は4月26日に「鉄道・バス整備投資計画」を発表しました。今年度は21000系3編成の導入のみで車両更新の発表はありませんでした。

2023年3月に新横浜線が開業し5社11路線の乗り入れが実施されるに合わせて、以前から導入を続けていた20000系・21000系の導入も大詰めとなり3編成の導入です。21000系は20000系を8両版と言えるもので、微妙な違いはありますが実質20000系と同形式の車両です。

車両更新の発表が無いのでヨコハマネイビーブルー塗装への変更など、外観と内装を大きくリニューアルするは今年度は無さそうです。同様の発表だった昨年の動きを見ると、大幅なリニューアルを伴わない機器更新は実施されるかもしれません。

7000系全廃か?東京メトロ

東京メトロは「事業計画」を発表しました。今年度は有楽町・副都心線、丸ノ内線、半蔵門線に新車を導入するとしています。

有楽町・副都心線は7000系が2編成残っているので、17000系増備で全廃になる可能性が高そうです。丸ノ内線の02系と半蔵門線の8000系については、まだ多数の車両が残っています。そのため丸ノ内線向け2000系と半蔵門線向け17000系の増備は来年以降含め続きそうです。

南北線用の増結車については去年同様具体的には触れられませんでしたが、今年度も増備されると予想されます。

小さな動きでは車両の改修で、丸ノ内線、日比谷線、有楽町・副都心線、半蔵門線の車両に脱線検知装置を搭載し、脱線時に自動停止するシステムの搭載を予定しています。

三田線・新宿線・大江戸線へ新車導入 都営地下鉄

東京都交通局は「東京都交通局経営計画2022」として2024年度までの計画を発表しました。新型車両は三田線4編成、新宿線4編成、大江戸線8編成を2024年度までに導入と発表です。

まとめての発表で今年度の具体的な内容は分かりません。三田線の8両化や新横浜線開業が来年であることを考えると、今年度に集中投入されそうです。また、新宿線の10両化が今年度終了を予定しているので、新宿線も確実に車両の動きが発生すると予想されます。

あくまでも試験となりますが、操舵台車の試験導入を騒音低減で快適性向上のために予定しています。台車の構造としては東京メトロが採用している、台車の片側のみ動くタイプです。大江戸線も新車導入があるので、新車への導入となるのか既存車での試験となるのかも注目です。

小さな動きとしては走行時の車両データを集める車両情報収集システムの運用を今年度から三田線で開始し、車内の監視カメラを2024年度までに16編成に設置の予定です。


2022年4月29日金曜日

野田線日立製新車で減車に8000系・10030系引退? 東武鉄道新型通勤車両導入へ




東武鉄道は2022年4月28日に東武野田線(アーバンパークライン)へ新型車両の導入を発表しました。これに合わせて車両の長さを6両から5両へすると発表しました。新型車両についてや、それに伴って起こる車両動向などを予想します。

70000系に次ぐ新形式で導入

野田線で運行中の60000系

導入線区: 野田線
導入時期: 2024年度
車両形式: 不明
導入車両数: 不明
製造メーカー: 不明

東武鉄道は野田線(アーバンパークライン)へ新型車両の導入を発表しました。発表したプレスの内容はかなり大雑把なもので、導入時期が2024年度で野田線に導入するとだけが分かっています。これに合わせて編成の長さを現行の6両から5両に減車するとも発表し、この点は大きな変化です。

車両は環境に配慮した省エネタイプで、サービス・快適性の高い車両との文言もありますが、具体的な内容は今のところありません。

車両形式は不明ですが、新形式が導入されるようです。東武鉄道での最新の通勤車両は70000系です。70000系は日比谷線直通用に操舵台車採用し、仕様を東京メトロの13000系と合わせ実質同形式であるなど特殊な車両です。もう一つ前の形式である野田線60000系は最終導入が2015年であり、PMSMやSiCなど現行の技術は採用されていません。以上の経緯や技術的な一新を考えると、新形式となるのは納得できます。

日立製で最終的には25編成導入?

8000系と10030系は引退?

鉄道チャンネルによると25編成導入です。7編成が最初から5両での製造、18編成が4両で製造されます。4両編成の車両は、車両の組み換えを行って全編成5両とするとしています。これはプレスに無い内容なので正確性はよくわかりませんが、これが事実だとするといくつか予想が出来ます。

まず18編成が4両編成で落成し車両の組み換えで5両にする場合、ちょうど60000系が18編成在籍しているので、60000系から1両抜いての組み換えとなります。60000系は日立製作所製なのでメーカーを揃えるのが無難で、日立製が濃厚となります。また、60000系はT車含めた各車両に運転に必要な機器が搭載されており、簡単に組成変更ができません。60000系もある程度長い期間かけて更新工事が必要になると予想されます。

ただし、60000系含む日立製の車両はA-Trainという規格化がされており、内装のモジュール化や電装部品の取り付けが工夫されており、内装も走行機器も比較的簡単に更新できるよう設計されています。なので昔の車両ほどの更新工事の大変さは無い設計にはなっています。

野田線で運行している8000系は16編成、10030系が9編成となっています。ちょうど導入車両数と一致します。それらは全て新車で置き換えられることとなります。

野田線で運行中の80000系
野田線で走る8000系は導入から40~50年経っているため、全編成が引退になると予想されます。

野田線で運行中の10050系
野田線で運行中の10030系50番台
10030系列は導入から30年経っており、2022年に初の廃車が発生しました。更新工事で転属させるのは微妙なとこではあるのですが、ローカル線区にも8000系が残っておりそちらの置き換えが必要なため、転属と廃車両方が行われると予想されます。

本数維持で減車は他社にも波及するか?

25編成の導入が正しければ、運行本数はおおむね今まで通りとなります。今後は人口減少と高齢化で需要減少が見込まれており、それに対応する形です。

首都圏は地方の人口を吸い取る形で人口が増加していましたが、限界を迎える予想はコロナ関係なく以前からありました。特に通勤などの需要は人口減少に加え高齢化も加わるため、利用者の減少はより大きいものと予想されます。関東私鉄各社は2020年頃までは減車より増車を行ってきましたが、いよいよ減らす段階となったようです。

利便性を維持しつつ需要に合わせるなら短編成化し本数を維持するのが最も無難なやり方で、今回はまさにその形です。おそらく他の私鉄各社も本腰を入れて利用者減少対策を行ってくるでしょうが、同様の動きとなるかも注目です。


東武鉄道ペーシア後継N100系導入へ JR・地下鉄乗り入れは無し




 東武鉄道は100系特急スペーシアの後継として、N100系を2023年度に導入すると2021年11月11日に発表しました。これにより100系の一部の置き換えが進むと思われます。今発表されている内容から、解説やスペーシアとの比較をしていきます。

記事作成日: 2021.11.15/記事更新日: 2022.04.29

カーボンニュートラルを打ち出した車両

置き換え予定の
東武100系スペーシア

型式: N100系
導入車両数: 6両×4編成
運行路線: スカイツリーライン・日光線・鬼怒川線
車両製造会社: 日立製作所

車両形式はN100系、愛称はまだ未定です。しかし、「Connect & Updatable~その人、その時と、つながり続けるスペーシア~」をコンセプトに打ち出しているため、スペーシアという名前は何らかの形で残りそうです。

COP21が実施されている中での発表で、製造から運行までカーボンニュートラルを打ち出し、実質CO2排出量が0になる予定です。他の交通より環境に優しい鉄道の要素を、より強く打ち出した形です。保守的な東武鉄道としては、素晴らしい取り組みだと思います。

導入車両数は6両×4編成の24両を予定しています。現在100系スペーシアは9編成が在籍しているため、半分程度がまず置き換えられると思われます。

白ベースの前面展望特急

カラーリングは今のスペーシアと同じ白ベースで、日光東照宮より着想を受けた仏閣や日本人形に使われる白色塗料の胡粉(ごふん)をイメージした色となります。スペーシアとは違い車体帯は無く、窓付近に黒のアクセントが入ります。先頭車両の前面デザインは、近鉄特急の「ひのとり」に似たデザインです。大型側面窓は先頭車両のみ窓割も違って六角形のデザインとなります。

車両製造メーカーは日立製作所となります。50000系・60000系と日立製作所を採用していた東武鉄道ですが、70000系は近畿車輛・特急500系リバティは川崎重工製だっため、久々の日立製作所製です。日立製作所はアルミ合金使った特急から通勤電車まで対応出来る、「A-Train」シリーズを売りにしています。そのため車体も100系スペーシアと同じくアルミ合金が引き続き採用される模様です。

大幅に変更された座席構成

座席数212席で、現行のスペーシアの284席より大きく減っています。座席の配置は大きく変更され、より観光と外国人観光客の需要に特化したものとなりました。

東武日光側の先頭車1号車はカフェカウンターのあるラウンジ車で、「コックピットラウンジ」の愛称が付きます。100系スペーシアでは営業を終了したビュッフェですが、日光・鬼怒川の商品を提供するカフェカウンターとして形を変えて継続します。運転台後ろは大型ガラスの仕切りが採用された展望車にもなっています。

2号車はプレミアムシートです。2+1列配置のJRグリーン車に似た構成で、料金も値上げが行われると予想されます。

3・4号車は2+2の従来通りの座席配置です。

5号車は通路側の仕切りが大きく座面・座席が固定されたボックスシートが採用されます。このタイプの対面式の座席は海外で見られるもので、海外需要を意識しての採用だと思います。

浅草側先頭車の6号車は100系でも採用されていた個室になります。個室は5室あり、4部屋は100系と似た4人用です。そのうち運転台に最も近い部屋は他より広く「コックピットスイート」という愛称で、7人まで利用出来る部屋になります。通常個室の2部屋分を使っただけあり、私鉄最大の個室を謳っています。こちらも大型ガラスの仕切りが採用された展望車です。

JR乗り入れは今のところなしで地下鉄線は不可

運行路線はスカイツリーライン・日光線・鬼怒川線鬼怒川線駅までとしています。500系リバティが汎用性重視で、東武本線系統の様々な路線に乗り入れられるのと比べると対照的です。また、6両固定という関係もあり、変電設備の容量が厳しい野岩鉄道や会津鉄道には乗り入れないようです。

100系スペーシアのうち3編成がATS-PなどJR乗り入れ対応装備を装着しており、日常的に栗橋駅からJR線に入りJR新宿駅まで乗り入れています。今発表されている線区には含まれていないため、今のところJR線には入らないようです。今後についてはあり得るかもしれません。スペーシアはJR乗り入れ編成のほうが、暫くは確実に運行継続されそうです。

また、先頭車両が非貫通デザインで法律上必須の非常時脱出用貫通扉がないため、どうやっても地下鉄乗り入れ対応は法律上出来ません。そのため地下鉄乗り入れはあり得ません。

そのまま廃車?100系スペーシア

置き換えが行われた後の100系スペーシアですが、今のところ発表はありません。順当に考えれば、特急りょうもう用の200系がDRCの部品流用車で部品単位では50年物で、そちらへの玉突き転属となります。

ただ、単純にそうならない可能性が高そうです。東武100系も導入が平成初期のため30年程度経っています。普通の鉄道会社が行っている、VVVFなどの電装系などの大幅な機器更新を行っていません。そう考えると車両の痛み具合によっては廃車のほうが安くつく可能性もあります。実際そういった判断もあったのか、N100系の導入を待たずに2022年に初めての廃車が発生しました。
 
なので今後の導入時に転属させるのは微妙なところとなってきました。


2022年3月31日木曜日

東上線の電車も走るかも? 有楽町線「豊洲~住吉」間延伸決定へ




 2022年3月28日に東京メトロ有楽町線の「豊洲~住吉」間の延伸が決定しました。開業は2030年代半ばの予定です。延伸区間の解説を中心に、もしかしたら東上線からの回送列車が走るかもという点にも最後触れます。

川越市駅に到着する東京メトロ10000系
有楽町線でも使われる
東京メトロ10000系

約5kmの延伸へ

建設キロ: 4.8km
事業者: 東京メトロ
総建設費: 約2690億
開業目標: 2030年半ば

都区内東部の利便性向上、スカイツリーや豊洲市場などの観光地へのアクセス向上、東西線の混雑緩和を理由に建設が決定されました。

建設区間は「豊洲~住吉」間4.8kmです。ルートは半蔵門線住吉駅側からみると、東京都道465号線四ツ目通りの真下を通り南下し、JR東日本のレールを管理している越中島貨物駅付近の汐見運河とぶつかったところで西へ向かい、新木場側から豊洲駅直前で有楽町線に合流し終点の豊洲駅に至る経路です。

途中駅は3駅作られる予定で、新駅二つと既存駅との接続駅1つとなります。住吉側から見ていくと江東区千石2丁目あたりに新駅が一つ、既にある東西線の東陽町駅に接続して一つ、汐見運河にぶつかったところから西へ向かって首都高9号深川線とぶつかったあたりの江東区枝川2丁目のあたりに新駅が一つ、そして豊洲駅に至ります。

第三セクターなどを作るのではなく、事業者は東京メトロです。なので利用者としては東京メトロと同じように使え、負担は小さくなっています。

建設費は約2690億円です。同時に申請された南北線の延伸区間が2.5kmで1310億円なので、概ね距離に比例して倍額となっています。詳細な費用の調達方法や内訳は調べられなかったのですが、整備新幹線など様々な運輸事業に関わっている独立行政法人の鉄道・運輸機構からの融資や補助金により建設されます。最近の鉄道建設事業を見ると東京メトロの実質的な負担は建設費の3割ぐらいと予想します。

やっと準備されていた設備が活躍へ

始点と終点となる半蔵門線の住吉駅と有楽町線の豊洲駅は、開業時から元々延伸が可能なようになっている構造で駅が作られています。

どちらの駅も今営業用で使っている線路とは別に延伸路線用の線路が設置されており、留置線や臨時のホームスペースとして活用されています。

どういった形の乗り入れ形式となるか

列車の運行形態について発表はまだありません。

配線の構造的に半蔵門線は押上方面からの列車が、有楽町線は和光市方面からの列車が延伸区間に乗り入れが可能です。

有楽町線と半蔵門線の都心部の駅の位置関係を考えると大きく乗り入れる意味はあまり無さそうに思えます。また有楽町線各駅から住吉駅より、半蔵門線各駅から豊洲方面への需要の方がまだありそうに思えます。

そう考えるとピストン運行か、半蔵門線側からの住吉駅への乗り入れとなりそうです。

本線列車との顔合わせや

東上線からの検査列車が直通するかも?

東上線からの営業列車が走ることは無いと思いますが、一部回送列車が走る可能性はありそうです。

東武東上線と越生線は他の東武鉄道の路線からは独立しています。そして、東上線車両の全般検査や重要部検査を行っていた川越工場を閉鎖しました。そのため秩父鉄道を経由して南栗橋の工場まで検査列車を送るという、変わった形態になってしまいました。それが豊洲駅で半蔵門線と繋がれば、地下鉄車両は比較的簡単に東上線と本線を行き来することが出来るようになります。

半蔵門線は車両限界が有楽町線より少し小さく地下車でも50070系の一部しか乗り入れ不可能な点、半蔵門線の信号システムにCBTCを導入する予定などの問題点もあります。しかし、乗り入れ開始が10年以上先なので、東上線の地下車の大半の9000系もさすがに更新がされている可能性が高く、その頃には有楽町線もCBTCに更新となってもおかしくないので、東上線の検査を行う車両が走る可能性は十分ありそうです。

先ほど説明したよう東上線と越生線の位置の関係上、普段は本線との車両とは顔を合わせません。しかし、地下鉄線を経由しては顔を合わせており、中目黒駅で日比谷線直通の本線の車両と東上線からの副都心線直通の車両が他社の駅で顔を合わせています。なので新線が開業されれば、豊洲駅でも顔合わせをするようになるかもしれません。


2022年2月20日日曜日

新型制御で高速化の希望になれ!新型振り子式「やくも」




 特急「やくも」用に導入される273系振り子式特急電車と、273系に採用される新しい技術「車上型の制御式自然振り子方式」について注目したいと思います。

ベースは271系?

形式: 273系特急形直流電車
車両数: 44両 (4両×11編成)
営業時期: 2024年春

JR西日本は2022年2月16日に特急「やくも」向けに、273系を44両導入すると発表しました。運行開始は2024年春で、これにより最後の国鉄型特急電車となった381系を順次置き換えます。それに合わせて2022年3月19日より381系の国鉄色リバイバル運転を行います。

デザインはシルエットのみ明かされており現在検討中としていますが、シルエットを見る限り関空特急「はるか」で活躍する271系をベースにしているようです。

現在の発表ではVVVF化による省エネルギー化・バリアフリー化・防犯カメラ設置・Wi-Fiとコンセント整備と目新しくないものも多く目につきますが、日本初の「車上型の制御式自然振り子方式」採用という大きな特徴もあります。

日本国内では電車での振り子式の新形式は20年以上採用がなく、在来線特急界では明るいニュースです。

山を貫き瀬戸内海と日本海を結ぶ

「やくも」と381系

273系が導入される特急「やくも」は、山陽本線・伯備線・山陰本線を経由して「岡山~出雲市」間を結ぶ特急列車です。新幹線により活躍の減る在来線特急ですが、瀬戸内海と日本海を結ぶ路線は無いため、今でも「やくも」は1時間に1本をベースに設定されている重要な特急です。

山を抜けてカーブの多い区間を走る関係で、1973年に中央線の特急「しなの」・1978年に阪和線と紀勢線の特急「くろしお」・最後に1982年特急「やくも」と381系特急電車を採用した路線です。

381系は自然振り子式と呼ばれる車体傾斜装置が搭載されていて、カーブに入ると遠心力で車体が傾くことで、カーブでも乗り心地を損なわず高速で通過することが出来ます。ただし、車体傾斜装置は乗り心地を維持するための装置のため、あらかじめ線路や架線を高速走行可能な用にする工事が必要です。

381系は485系や183系に似た見た目をしていますが、振り子装置以外にも車体を鋼鉄製からアルミ製にしたり、冷房を床下にするなどして低重心化する工夫があります。

カーブの多い路線に採用された381系ですが、老朽化の問題により「やくも」以外では引退しています。そして485系が引退して今では、「やくも」は最後の国鉄型特急電車が定期運行で活躍する貴重な列車ともなっています。

コストが重くても採用された振り子式

振り子式車両は台車や場合によってはパンタグラフも構造が特殊化するため、コストの関係で採用を減らしています。その代わりとしてカーブの通過速度は振り子式より多少劣るものの空気ばねの空気量を調整して車体を傾けるため、構造が他の一般列車とほぼ同じでコストがあまりかからない空気ばね式の車体傾斜装置がが採用が増えています。

最近で振り子式が採用されたのはJR四国が空気ばね式では技術的にどうしても難しかった場合と、かなり消極的な理由でした。また、「くろしお」に至っては、381系の後継車では車体傾斜装置自体を省いてコスト削減がなされることもありました。

コストがかかっても振り子式が採用されるのは、それだけ「やくも」がまだ重要だと思われているからなのだと思います。

新型制御で少しでも安くなるか?

381系自然振り子式はカーブに差し掛かるだけで勝手に車体が傾く反面、車体がカーブに入ってから車体が傾くため乗り心地が悪くなるデメリットもあります。そのため乗り物酔いが起きやすく、「ぐったりやくも」などという不名誉なジョークもあったりしました。

そのため最近の振り子式車両は制御付き自然振り子という方式を採用しています。線路上にあるATS地上子の位置を記録したマップデータと車両側の計測装置による位置情報を基に、カーブに入るタイミングに合わせて機械的にアクチュエータを制御して少し車体を傾けはじめ、その後は自然振り子式同様に勝手に車体が傾くという仕組みです。

273系ではそれに代わり「車上型の制御付自然振り子方式」が採用されます。詳しい情報はプレスにはJR西日本のプレスには載っていませんでしたが、2020年の鉄道総研の研究成果にその技術と思われるものの詳細「車体傾斜車両向け高精度自車位置検出システム」が出ていました。

それによると従来の方式はATS地上子の位置が変わるたびに車両側にデータを入れかえが必要だったり、大きな駅を走行時に本来の経路とは違う線路を走ると位置を見失う場合がありました。それを車体に搭載したジャイロセンサーによるヨーイング角(大雑把にはカーブ時の車体の傾きみたいなもの)と走行速度からカーブの角度を計算し、車両に搭載された線路のマップを照合して±2mの精度で位置を検出します。これにより車両上のデータメンテナンスを10年程度まで伸ばせるとしています。

最近の日本の特急車両は乗客の減少や高速網との勝負に負けているため、高速化技術よりコスト削減の技術ばかりに投資される傾向にあります。今回の技術は車体傾斜装置の導入コストを、大きくではないものの下げる技術の一つです。車体傾斜による高速化は線路側に改良も必要のため依然コストがかかりますが、空気ばね式にも適用できるこの技術と空気ばね式車体傾斜装置であれば、以前よりもハードルが下がっているのも事実です。こういったご時世でなかなか難しいにしても、もう少し攻めの鉄道車両が増えてくれると良いと願って少し大げさですが、ブログ記事タイトルをつけさせて頂きました。


2022年2月11日金曜日

そもそもパタパタって何? さよなら京急川崎駅パタパタ表示器




 京急川崎駅に残された最後の通称「パタパタ」表示器、正式名称「反転フラップ式案内表示器」について紹介します。

京急川崎駅 反転フラップ式案内表示器
京急川崎駅
反転フラップ式案内表示器

そもそも「パタパタ」って何?

「パタパタ」の愛称でよばれている表示器は、「反転フラップ式案内表示器」と呼ばれるものです。フラップと呼ばれる薄い鉄板をパタパタ切り替えることで、行先や列車種別を表示します。1953年に東京駅に設置されたのが日本では最初のようです。

最近ではおしゃれな卓上時計ぐらいでしか見かけなくなりましたが、以前は大きな駅や空港に多く設置されていました。今では国内だと関東では京急川崎駅が最後に、一部の関西私鉄駅や空港にわずかに残るのみとなっています。

フラップを転換する必要があるため、表示を切り替えるの時間がかかります。また、鉄板に文字や記号などを使う場所にあった印刷をする必要があるため、基本的に特注品になりコストもかかりますし、新しい表示をするにはフラップの交換が必要になったりもします。そのため最近では、切り替えが早く簡単にデータの更新で新しい表示が出来る、LEDや液晶をモニターを使った表示器が一般的になっています。

京急川崎駅のパタパタ

京急川崎駅 反転フラップ式案内表示器

関東最後のパタパタは京急川崎駅の下りホームだけに1台だけ設置されています。京急のプレスによると1986年12月26日に京急川崎駅に設置されたのを皮切りに、一時は10駅にまで設置されていました。このパタパタは二代目の表示器とのことです。古くなり部品交換も難しく、他の駅同様2月中旬に更新が行われます。

京急川崎駅下りホームは日中でも毎時18本の発着本数があり、緩急接続可能な1面2線の構造です。そのため表示内容も列車の「発車順番・発車番線・種別・行先・時刻・車両数・補足情報」と、7種類のフラップで多くの情報が表示できます。段数も三段の表示で、一度に3本の列車の情報が表示可能です。

この表示器は複数の機能が一体になったタイプでパタパタだけでなく、上部に停車駅表示のランプやパタパタ横にアナログ時計が付属しています。

京急川崎駅 反転フラップ式案内表示器の時計
時計の下にある「京三製作所」のロゴ

製造は信号装置やホーム設備を多数製造している、国内鉄道装置大手の京三製作所です。

表示切替は列車が発車する行われます。上段から下段と順番に表示が切り替わっていきます。

京急川崎駅 反転フラップ式案内表示器をズームしたところ
ズームして撮影

下からよく見ると、フラップは上下2分割されていて、だいぶ痛みがあるのも分かります。

このように他の表示器にはない様々な特徴をもったものです。仕方がないとは言え、なくなるとちょっと寂しいものですね。何気ない表示器にも、今後は目を配って見ていきたい気持ちになりました。



2022年1月30日日曜日

まさかの東武乗り入れ ー 相鉄・東急新横浜線2023年開業




2023年春開業予定の相鉄・東京新横浜線「日吉~羽沢横浜国大」について、鉄道趣味的な観点から概要を解説します。

記事作成日: 2022.01.29/記事更新日: 2022.01.30

東急5050系
乗り入れに使用予定の東急5050系

開業区間は10km

相鉄・東急新横浜線路線図
新横浜線路線図

2023年3月に開業する予定の区間は東急日吉駅~相鉄横浜国大駅の約10kmとなります。

相鉄側が既に開業している相鉄新横浜線西谷~羽沢国大駅から4.2㎞1駅延伸する形で、東急側からは日吉駅から途中に新綱真島駅を挟んで2駅延伸する形で5.8kmの新線東急新横浜線が開業します。

これは「神奈川東部方面線」と呼ばれていたもので、「相鉄⇔JR」の相互直通と「相鉄⇔東急」の相互直通二つの計画をまとめていたものです。既に羽沢横浜国大駅より行われている相鉄とJRの乗り入れに加えて、今回の新線開業ですべて完成となります。

これにより東急方面から東海道新幹線新横浜方乗り換えの利便性向上や、相鉄方面からの都心への利便性向上が期待されています。

相鉄側から新横浜駅へが10・8両編成がラッシュ時10本・日中4本、東急側から新横浜駅へが10・8・6両編成がラッシュ時14本・日中6本の運転予定です。

新横浜駅が唯一2面3線の日常的に折り返し可能な駅なので、6両の列車はそこまででそれ以外が相互直通する形になるようです。

新横浜駅には5社11路線の超複雑乗り入れ

東急が複数の路線と乗り入れていることや、相鉄が東急線から更に地下鉄経由して「渋谷・新宿・永田町・大手町」など都心への乗り入れを目的としていたため非常に複雑な乗り入れになってしまいました。

東急からは「東横線・目黒線」、相鉄からは「相鉄本線といずみ野線」が乗り入れます。

それに加えて東急東横線を経由して「東京メトロ副都心線とその直通先の東武東上線」の2路線、東急目黒線を経由して「東京メトロ南北線とその直通先の埼玉高速鉄道」と「都営三田線」3路線が乗り入れます。

路線の分岐駅である西谷と日吉は折り返し設備は比較的充実している駅なので、ダイヤ乱れ時の影響はある程度抑えられると思います。しかし、これだけの複雑だと、どこかの路線の運休など大きなダイヤ乱れが起きると、小さな影響は波及してしまうと思います。

まさかの東武鉄道参入

そして誰もが予想だにしていなかったのが東武鉄道東上線の直通です。乗り入れ区間も最近観光客が増えてる川越までではなく、東上線の10両編成の列車乗り入れ可能最北端の小川町までを予定しています。一方で東武鉄道と同じような境遇の西武鉄道は乗り入れは、需要などから今のところする予定は無いと発表しています。判断としてはこちらが無難です。

これにより東上線からは新横浜駅での新幹線乗り換えや日産スタジアム(横浜国際総合競技場)へ行きやすくなり、相鉄方面からは川越観光や小川町・長瀞方面の観光やトレッキングがしやすくなります。

今でも東上線は東急・メトロの車両を使って「元町・中華街⇔小川町」に東上線無料最優等列車の快速急行を運転しているので、確かに下地はありました。

しかし、はっきり言って東上線が乗り入れる意味は、利便性や観光の意味から考えてもほとんどありません。東上線から東海道新幹線を使うならそれこそ品川駅で良いですし、相鉄方面から川越・小川町方面への観光需要の掘り起こしを期待するのは難しいのは明白です。案内に東上線が入ることで、多少認知度向上が狙える程度が分かりやすいメリットだと思います。

西武鉄道も似たような取り組みとして「元町・中華街⇔西武秩父」を繋ぐS-Trainを運行していますが、遠さだけでなく指定席料金の値段も相まって苦戦しており、それが乗り入れをしない決断に繋がったと思います。

そういった状況でも最近の東武鉄道は比較的チャレンジしようとしているので、その一環なのだと思われます。相当な工夫が必要だと思いますが、どう需要を掘り起こすのかも注目です。

様々な車両が乗り入れ予定

相互乗り入れがほぼ確実な車両
相鉄: 20000系・21000系
東急: 5050系・5080系・3000系・3020系

新横浜まで乗り入れる可能性がある車両
都営: 6300形・6500形
東京メトロ: 9000系
埼玉高速鉄道: 2000系

乗り入れるかもしれない車両
東武鉄道: 9000系・9050系・50070系
東京メトロ: 10000系・17000系

参考-JR相鉄相互直通車両
相鉄: 12000系
JR: E233系7000番台

はっきりしたことは実際の運行開始までは分かりませんが相鉄と東急の相互直通を行う車両として、新横浜線の事業者である相鉄と東急の車両が使用されるようです。2社の車両は両方の路線へ乗り入れ可能なよう信号システムの工事が完了されています。東急車は5050系が西武・東武含めた全線乗り入れ可能、それ以外の東急・相鉄車は東武・西武以外の直通先全路線に乗り入れ可能な仕様です。

一方で都営・東京メトロ・埼玉高速鉄道の車両は相鉄への乗り入れ工事が確認されておらず、新横浜駅までかイレギュラー運用時のみ新横浜駅までとなる可能性が高そうです。埼玉高速鉄道などは特にそうですが、事業者によってはメリットが小さく乗り入れに工事・メンテナンス費用がかかる乗り入れには消極的です。そういった事情によるものと思われます。

東上線への乗り入れは本数が相当少ないと予想されるので、相鉄と東上線両方が乗り入れ可能な東急5050系を使うのが一番簡単な方法です。ただ、技術的には新横浜駅まで乗り入れ可能なはずなので、東武車乗り入れも可能性としては僅かに残っています。また、副都心線で使われている10000系や17000系が乗り入れることは運用が複雑になるので無いと思いますが、技術的には東武車同様に可能なので、可能性としては同様という具合です。

参考ですがJRと相鉄の相互直通車は、信号システムの関係や地下鉄乗り入れ装備がないため東急・地下鉄方面への乗り入れができないため、JRと相鉄のみの相互直通となります。

現状わかっている情報としてはこのような感じです。この記事は順次加筆・修正していく予定です。



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