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2023年9月10日日曜日

消える振り子式特急から復活の振り子式特急へ




 国鉄時代に山岳路線などのカーブの多い線区へ切り札として投入された振り子式特急がの変遷を、登場時から現在まで紹介していきたいと思います。

記事作成日: 2015.05.25/記事更新日: 2023.09.10

振り子式車両とは

長野駅に停車するJR東海383
特急「しなの」に使用される
381系の後継で制御付き自然振り子式の383系

振り子式車両は特殊な構造の台車を利用して、列車がカーブを高速で通過したときに遠心力で車両を傾けて乗り心地を向上するシステムです。ただし、カーブの速度向上は振り子式だけで可能になるものではなく、高速で通過できるように線路を強化したり車体を軽量・低重心にするなど、様々な技術を組み合わせて可能になります。振り子装置は、あくまでも乗り心地を良くすることが中心の装置です。

「しなの」で初めて採用された振り子式

日本では国鉄時代に開発され、1973年より製造された381系が、営業列車で最初に振り子式を採用しました。381系は中央線を走る特急「しなの」でデビューし、スピードアップの成果を上げました。その後「くろしお」「やくも」と導入路線を増やしていきました。

この時採用された振り子装置の方式は、自然振り子式です。この方式はカーブを曲がると動力なしで勝手に車体が傾くので、安全性が高い利点があります。

しかし、この方式の弱点として、車体の傾く動作とカーブと合わない点です。カーブが入る時は、列車が曲がり始めてから車体が傾斜し、カーブを出たときは逆でカーブから出た後傾きがなくなります。この欠点により乗り心地が悪くなり、乗り物酔いがおきやすく乗り心地では、必ずしも好評とは言えませんでした。

乗り心地を改善した制御付き自然振り子

JR東日本E351系の台車
E351系の台車
自然振り子方式が登場して約20年後、乗り心地の悪さを改善した方式の制御付き自然振り子が登場しました。

この方式は列車の走行位置を把握し、カーブの手前とカーブを抜ける直前に少し力を加えることで、傾きのタイミングを調整することができます。そして最終的な傾きは今までと同じ方法で、カーブにより勝手に車体が傾くようにしています。なので安全への影響は最小限に抑えつつも、乗り心地を向上させることが出来ます。

JR発足後各社が新車開発にしのぎを削る時代、JR四国と鉄道総研により開発され、JR四国2000形特急気道車で採用されました。1989年に試作車が作られ、1990年より量産車が開始されJR四国の特急では標準的に採用されていきました。

上の写真の特急「スーパーあずさ」用のJR東日本E351系特急電車など、気道車・電車問わず広く採用されていき、JR貨物以外のJRグループでは急カーブの多い特急用として、全社が採用していきました。

広がる新方式空気バネ式

良いこと尽くめに見える振り子式車両ですが、大きな欠点がありました。構造が複雑になることから、車両の製造コストやメンテナンスコストが上がってしまうことです。そのため日本で振り子式を採用しているのは、ある程度コストがかかっても許される特急車両だけです。

千歳線苗穂駅付近を通過するキハ201系
空気バネ式の車体傾斜装置を採用する
JR北海道のキハ201系
そんな中で振り子式に変る方式として、「空気バネ車体傾斜式」というものが登場しました。この方式は、現在の鉄道で標準となった台車の空気バネをカーブに入ったとき膨らませ、車体を傾けるというものです。空気ばねが浮き輪のように空気が入ったゴムでできているから出来る芸当で、風船のようにカーブの外側のばねを内側より膨らませることで車体を傾けます。

車体の傾斜角度が振り子式に劣るのでカーブの通過速度は下がりますが、仕組みが簡単で製造・メンテナンスコストの両方を抑えることができるほか、乗り心地も振り子式より良いとされます。

JR北海道が開発に意欲的だった頃、コストの低さを武器に一般車両のキハ201系で1997年に初めて採用されました。当初は振り子式ではカバーしきれない路線を中心に特急用として採用されていきました。

現在ではN700系やE5系と300km/hを超える速度で走る新幹線車両にも、標準装備として採用されています。

その後は2014年に登場したJR四国8600系特急電車を皮切りに、現在振り子式の車両が運用されている区間でも、空気バネ式へ置き換えるケースがでてきました。先ほど紹介した特急「スーパーあずさ」用E351系も空気バネ式のE353系に置き換えられました。

希望だったハイブリッド傾斜システム

振り子式の採用が減っていくなか、JR北海道は振り子式と空気バネ式を共存させて更に高速でカーブを曲がれるようにと考えたのがハイブリッド傾斜システムです。振り子式で車体を傾かせつつ、さらに空気バネを膨らませて今までのシステム以上に車体を傾斜させ、カーブの通過スピードを上げようというものでした。

しかし、JR北海道内の安全に関わる度重なる大きなトラブルで、新しい技術の開発を行うより安全性の強化が先だという判断が下されました。試験車両のキハ285系は、完成したにも関わらず試験は中止となってしまいました。2014年に製造されて以来まともに本線は走ることはなく、2017年には解体されています。

この開発中止はJR北海道以外にも影響があったと思います。この当時空気バネ式が広がる一方で、振り子式を大きく発展させようとしていたのは、日本の鉄道会社の中ではJR北海道ぐらいのものでした。振り子式を採用してる列車の中には地方ローカル線なども多くあり、空気式が広がる中でも振り子式を必要としています。そんな中での唯一発展させようとしていたJR北海道がやめたことで、振り子式の日本での発展は大きく後退しました。そして地方ローカル線にとっても、進化の一つの道筋が経たれてしまいました。

車体傾斜装置を停止したJR北海道

キハ285系の後も状況は悪化していきます。安全への優先でそれ以外のコストを下げるため、JR北海道の特急車両は車体傾斜装置の採用をやめただけでなく、既に搭載されている車両での使用もとりやめています。これにより特急列車の所要時間が伸びてしまいました。

経費削減と安全対策が優先で、以前のような速度向上のめどが立っていません。確かに脱線などしたら元も子もないのですが、北海道でも高規格道路の延伸が続いており、常に速度向上の策を練らないとどちらにせよジリ貧なのは間違いありません。

状況の好転を願っているのですが、JR北海道に関わる国や自治体がとても交通政策に真剣に取り組んでいるとは言えない状況で、先が真っ暗なのが現状です。

一時は車体傾斜を捨てたJR西日本

北陸線福井駅に到着する683系しらさぎ
289系の改造元となった683系
JR北海道ほどではなくとも、一時は消極的だったのがJR西日本です。特急「くろしお」で使われていた381系を置き換えるため、2012年に登場した287系・2015年に登場した683系を改造した289系という車体傾斜装置の付いていない車両で置き換えを行いました。

287系・289系は381系と比べて強力なモーターを採用してるものの、車体傾斜システムがなくカーブの通過速度は劣ります。そのため特急「くろしお」では所要時間が381系より若干延びてしまいました。

287系が「くろしお」で運行を開始した2012年は、リーマンショックの余波もあり景気の良い時期とは言えませんでした。更に北陸新幹線の開業で北陸地域などで運行していた683系交直流特急電車が余剰となっており、当時登場して15年も経っておらず廃車にするには早すぎました。また、381系との置き換えならば所要時間に大きな差が出ない、振り子式は導入コストが高いなどもあります。

これらから推察できる経済性から、仕方の無い判断だとは思いますが、速度面では後退してしまいました。

復活の振り子式

空気ばね式に押される形で衰退していくかと思われた振り子式ですが、空気ばね式の弱点が露呈することで復活していきました。

空気ばね式の弱点としてカーブが多い区間だと、傾斜が追い付かない問題があります。風船のように空気を送り込む関係で、頻繁に空気ばねへの空気の吸気と排気を行うために、頻繁にカーブの切り替えしが行われると追い付かなくなるのです。

JR四国は気動車でも空気ばね式を拡大しようと、2017年に2600系を製造しました。しかし、カーブの多い区間では給気が追い付かないことが分かったため、導入は2編成のみとなっています。

そのためJR四国では2019年より2700系制御振り式気動車が製造されていく流れとなりました。振り子式車両の新形式は、18年ぶりの登場でした。その後JR西日本も最後の国鉄型特急電車となった特急「やくも」用381系の置き換えで、制御振り子式の273系の導入を発表し、JR東海も383系の後継に385系の導入を発表しています。

273系と385系では新しい位置検知システムやジャイロシステムを搭載し、コスト削減や振り子装置の稼働タイミングを調整出来、より進化した振り子式が搭載される見込みです。

一時はだいぶ劣勢に見えた振り子式ですが適材適所ということで、カーブが多い路線には必要な方式として復活してきています。今後もすみ分けていくのではないでしょうか。

海を越えた振り子式

停車中のJR九州885系
TEMU1000形のペースとなった
JR九州885系

日本での振り子式の採用が減る中で、台湾の国鉄にあたる交通部台湾鉄路管理局(TRA)は日本製の振り子式車両を採用し続けています。JR九州の885系の姉妹車両にあたる、日立製TEMU1000形のです。車両は太魯閣(タロコ)号用として使用されており、従来の車両より所要時間の短縮を実現しました。

また日本同様に空気ばね式車体傾斜装置の車両も採用しており、こちらも日本車輛製の日本製で、普悠瑪(プユマ)号用にTEMU2000型を採用しています。

あとがき

この記事を最初に書いた2015年は、日本の鉄道高速化を支えてきた振り子式が節目を迎えようとしていました。そして記事を更新した今では、振り子式に復活の兆しが見えています。

列車の高速化技術自体が消極化される中で、振り子式の復活は一つの明るい話題だと思います。様々な乗り物が速くなる中で、少子高齢化で新幹線以外の日本の鉄道の高速化は進みにくくなっています。日本の鉄道は今でも間違いなく安全で快適になっている一方で、乗り物は速くてなんぼのとこもあるので、高速化の取り組みが少しでも進むことを願っています。


2016年7月3日日曜日

東武鉄道 台鉄「プユマ」号塗装の特急「りょうもう」号運行へ




東武鉄道は2016年5月12日に特急「りょうもう」号に使用している200系1編成の塗装を変更し、台鉄「普悠瑪(プユマ)」号塗装の車両を走らせると発表しました。
記事作成: 2016.05.16/記事更新日: 2016.07.03

普悠瑪(プユマ)号塗装の東武200系特急りょうもう号
普悠瑪(プユマ)号塗装として
運行を開始した東武200系208F

6月17日より運行開始

伊勢崎線堀切駅を通過する200系特急りょうもう号
特別塗装になるのと同型の
200系特急電車

車両: 200系一編成
運行期間: 2016年6月17日~当面
運行区間: 特急「りょうもう」運行区間

関東私鉄の多くが台湾鉄路管理局(国鉄に相当、以下台鉄と略します。)と友好鉄道協定を結ぶ中、東武鉄道も2015年12月18日に同鉄道と協定を結びました。その後エンブレム付き特急「スペーシア」を走らせる・台湾風弁当を販売するなどしてきましたが、今回は「りょうもう」号の特別塗装列車を運行します。

再現は最近の鉄道で多いフルラッピングではなく、塗装とラッピングで台鉄の特急「普悠瑪(プユマ)」号の再現を行います。東武8000系なども白地の塗装に青と水色の帯はシールとしているので、同様の方法で再現すると思われます。

東武鉄道200系208F 特急りょうもうプユマ塗装 干支の猿マーク
 干支の猿マーク

東武鉄道200系208F 特急りょうもうプユマ塗装 エンブレムシール
東武鉄道200系208F 特急りょうもうプユマ塗装 エンブレムシール

塗装も行うためか、運行期間は「6月17日より当面」と相当期間を予定しているようです。ただし、側面に貼られる東武鉄道と台鉄の両社が掲出予定のエンブレムシールと、今年度新造分の「プユマ」号に掲出されていうの同じデザインの干支の「猿」マークシールは、2016年12月31日までになっています。

実物を見てきましたが、元々白地に赤の塗装を施していた車両なので、非常に似合ったデザインになっています。

東武鉄道200系208F 特急りょうもうプユマ塗装と100系日光詣スペーシア
日光詣スペーシアとの並びも

最近は特急「スペーシア」特別塗装列車の運行時刻を公開していますが、この列車も運行時刻が公開されています。運行区間は東武末端路線各線へ乗り入れている特急「りょうもう」号運行区間全てのため、非常に多くの広い区間で運行・アピールしています。運用に入っている日は2~3往復程度はしているので、狙って乗ったりお目当てのスポット・並びを狙うのも良いかもしれません。運行時刻の公表は鉄道会社のアピールの一貫でもありますが、好意でもあります。そういった気持ちに鉄道ファンとしては応えたいですね。

日本とかかわりの深い普悠瑪

日本の「特急」に相当する台鉄の列車種別「自強号」には、日立製や日本車輛製の車両も使われています。「プユマ」号には日本車輛製のTEMU2000形が使用され、空気バネ式車体傾斜を搭載した最高時速140km/hの在来線高速列車として運行しています。そういう意味でも日本に深く関わりのある車両・列車です。

台鉄で走っているTEMU1000形は日立製振り子式特急電車で、車体構造レベルからJR九州885系の兄弟車です。特急「りょうもう」に使用されている200系は日立製ではありませんが、東武の新型通勤電車の多くは日立製です。そういう面でも認知してもらえるようコラボすると、違う部分でも台湾との繋がりが分かって面白さや親しみが湧くのではと思います。

東武浅草駅に発着する
プユマ塗装のりょうもう号の映像


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2015年11月25日水曜日

南武線205系もインドネシアへ キハ40はミャンマーへ




JR東日本は南武線で活躍していた205系をインドネシアの鉄道会社へ、キハ40をミャンマーへ譲渡すると発表したことと、それに関連して技術支援を行うと発表したことについて紹介します。
記事作成日2015.04.20/更新2015.11.25

南武線尻手駅を発車する205系
今回譲渡の決まった南武線205系

4月下旬からインドネシアへ

2015年4月20日にJR東日本は南武線で活躍していた205系120両を、4月下旬よりKRLジャボタベック(ジャカルタ首都圏鉄道)へ譲渡すると発表しました。

南武線は2014年10月よりE233系8000番台が投入されたことにより余剰車両が発生しています。その余剰車両がインドネシアへ譲渡されることになります。

205系120両の譲渡とありますが、JR東日本が2013年7月に発表した南武線へのE233系の車両投入予定数が「6両編成×35編成=210両」でちょうど譲渡車両数と一致します。なので、E233系投入分が丸々インドネシアへ譲渡されるようです。

譲渡先のKRLジャボタベックへの205系の譲渡は今回が3度目となります。譲渡前のプレスリリースで1度目は埼京線・川越線205系180両、2度目は横浜線・根岸線の205系170両の譲渡を行うと発表して、実際に356両が譲渡されています。今回の譲渡をあわせると476両となり、205系だけでも中規模私鉄並みの数を保有することになります。

乗務員への訓練も実施

以前から譲渡に合わせてメンテナンスや運用に関するのノウハウの提供も行ってきました。今までに行ったものとしては「メンテナンスの技術支援のため10数名の短期派遣」などがあります。

今回は運転士が行う車両点検・整備に関して支援が行われました。今後も車両譲渡以外の面でも支援を継続していくそうです。

キハ40はミャンマーへ

2015.07.19追記

2015年7月17日にJR東日本は陸羽東線・石巻線・磐越西線・只見線などで使用してきたキハ40形13両とキハ48形6両の計19両をミャンマー鉄道公社へ譲渡すると発表しました。この譲渡はミャンマー鉄道公社から要請を受けて実施するもので、メンテナンスを担当していた技術者を短期派遣して車両の整備に関する支援も行う予定です。

仙石東北ラインの運行開始に合わせて行われたHB-E210系の投入、石巻線へのキハ110系投入、仙石線全線の電化での運転再開により、キハ40に余剰車両が発生しました。この余剰になったキハ40で只見線などで運行する非冷房車のキハ40の置き換えが行われました。

今回ミャンマーへ送られるのは只見線などで使用されていた非冷房車のキハ40や、只見線などに転属したなかった余剰車がミャンマーへ譲渡されるようです。

譲渡記念ヘッドマーク掲出

インドネシアへの譲渡を記念したヘッドマークを掲出する205系ナハ39編成
インドネシアへの譲渡を記念したヘッドマーク
海外譲渡を記念して11月16日より南武線ナハ39編成に記念ヘッドマークが掲出されました。そして12月6日には南武線での205系の一般営業は終了しました。残すは2016年1月のさよなら運転のみとなっています。

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2015年7月31日金曜日

日立 英国向けハイブリッド高速車AT-300受注




2015年7月30日に日立レールヨーロッパは英国の鉄道路線向けとして、高速車両の受注を発表したと発表しました。

受注は英国南西部向け

今回受注したのはイギリス・スコットランドに本社を持つファーストグループ社(FirstGroup plc)の子会社、ファースト・グレート・ウェスタン社(First Great Western Limited)が運営するイギリス南西部路線向け車両です。今回は40年前に作られた高速車両の置き換え用としての導入ですが、対象はディーゼル駆動の高速車両Class43のようです。運行は2018年の予定です。

ファーストグループ社はイギリス国内外でバスや鉄道の運営を行う会社で、イギリスでは鉄道とバス事業を行っています。2015年3月23日に日立は同社から優先交渉権を獲得したと発表していたので、予定通り受注を獲得したことになります。

ジャベリンとClass800/801の進化系AT-300

導入数: 7両×5編成+5両×22編成=173両(29編成)

今回受注を獲得したのは標準型都市間車両「AT-300」です。日本で走る「A-train」の技術をベースに設計された英仏間向け高速車両Class395通称ジャベリンを改良したClass800を、さらに改良した車両です。

車両の特徴としては高速車両であるほかに、Class800と同じように電化区間と非電化区間を走れることです。電化区間では架線から電気を受電し、非電化区間ではディーゼル発電機からの電力でモーターを動かし走行します。このシステムはJR東日本が運行を予定しているクルージングトレイン「四季島」と似たものとなっています。

Class800との違いは急勾配に対応するためエンジン出力を強化したこと、非電化区間での走行距離を伸ばすために燃料タンクが大型のものになってる点です。

Class800仕様

電源: AC25kV/ディーゼルエンジン
最高速度: 201km/h
設計最高速度: 225km/h
主電動機: 226kW
台車: ボルスタレス台車

細かい仕様などは発表されていないので不明ですが、基本的にはClass800に準じたものになると思います。「AT-300」は営業最高速度225km/h・オプションで250km/hまで出せるように設計されている車両ですが、Class800や置き換え対象と思われるClass43の営業最高速度が200km/hなので、同じ200km/hになるのではないかと思います。

主電動機は出力300kwが標準の新幹線に比べると、Class800はJR223系と同じぐらいの226kwと小さめです。今回導入される線区では急勾配がので、エンジンや燃料タンクのほかにも若干の主電動機の強化やM車比向上があるかもしれません。

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2015年7月22日水曜日

JR東海 キハ25系二次車と昨年度譲渡車運行開始について発表




JR東海は2015年7月22日に紀勢本線・参宮線でのキハ25系2次車の運行と、ミャンマーへの車両譲渡について発表しました。

キハ25系二次車について

紀勢本線・参宮線ではキハ25系2次車は8月1日より運行を開始する予定です。キハ25系は2010年から製造の始まった車両ですが、2015年度から改良を加えた2次車の運行を開始しました。主な改良点は「動力伝達軸落下防止枠の強化」「減速機支え構造の変更」「振動検知装置」「鹿衝撃緩和装置」の4つです。

「動力伝達軸落下防止枠の強化」「減速機支え構造の変更」は、エンジンと車輪をを繋ぐ動力伝達軸や台車に取り付けてある減速機の取り付け構造を改良して脱落を防ぐものです。2010年にJR北海道でこの二つの装置の破損によるトラブルがあったので、先手を打って改良したのだと思われます。この改良はキハ25系のみならず、既に運行しているキハ75系にも適用されます。

「振動検知装置」はN700Aで始めて搭載された装置で、台車の振動を常時監視して駆動系に異常が発生した場合、異常が軽微なうちに運転室のモニターに表示して運転士へ知らせるシステムです。在来線では初めての搭載とあるので、在来線初であるだけでなく気道車でも初めての搭載となります。

ここで一つ気になるのは、電車と気道車の違いです。新幹線と在来線電車との違いでもある程度差がありますが、電車と気道車では駆動装置がモーターとディーゼルエンジンで大きく異なります。そのあたりをどの程度反映して装置が検知するのかが気になる点です。

「鹿衝撃緩和装置」は先頭車両下部に衝撃緩和用のスポンジを取り付け、鹿との衝突時に鹿への致命傷を防ぎつつ線路の外を押し出す装置です。これにより鹿の命を守るだけでなく、ダイヤへの影響を抑えることが出来ます。特急・非貫通型のキハ85系では採用されていましたが、分割可能な車両・普通列車への本格採用はキハ25系2次車が初めてです。(キハ85系の分割タイプの先頭車にも、実験的に取り付けられていたことがあるようです。)

昨年度譲渡分がミャンマーで運行開始

以前譲渡の発表があったキハ40系とキハ11形ですが、昨年度に譲渡の発表された車両が5月にミャンマーへ到着し、7月から運行を開始したそうです。

ミャンマーの鉄道は軌道の幅が1メートルで、トンネルの高さが非常に低い規格の路線も多くあり、車輪の交換と屋根上機器の撤去工事が行われます。そのため、到着から2ヶ月ほどあけての運行開始になったのだと思われます。

2015年3月27日金曜日

JR東海 2015年度重点施策・設備投資とミャンマーへの車両譲渡発表




2015年3月27日にJR東海は「平成27年度重点施策と関連設備投資について」と「ミャンマー鉄道省への車両譲渡」を発表しました。その中から気になる点をピックアップして紹介したいと思います。

平成27年度重点施策と関連設備投資についてから

東海道新幹線関連

N700系改造車のロゴ
N700系改造車のロゴ
通常のN700Aとは「A」の文字のサイズが違う

・N700Aの投入継続とN700系の改造工事完了
・新型稼動柵の名古屋駅・京都駅での使用開始
・新型自動改札機への順次取替

N700系は2006年より営業運転している車両で、N700AはN700系の発展型として2013年から営業運転している車両です。

二車種の走行性能を比べた場合、発展型であるN700Aのほうがブレーキ・車体傾斜装置が高性能なものになっています。その差を埋めるべく2013年から改造が行われており、今年度に全80編成で完了します。今年度分は11編成の改造が行われ、JR東海は6月25日に全てのN700系の改造工事を完了したと発表しました。

東京駅では設置の完了しているホーム稼動柵が名古屋駅・京都駅にも設置されます。

在来線関連

・東海道線本線静岡地区の運行管理システム更新
・キハ25系の紀勢本線・参宮線への投入
・名松線「家城~伊勢奥津」間の工事完了と全線再開

以前発表があったとおりにキハ25系の追加投入が行われます。今回からキハ25系2次車となり、一部仕様が変更されます。

2009年の豪雨以来一部区間が運休となっていた名松線の全線再開の予定です。

ミャンマー鉄道省への車両譲渡についてから

・キハ40系12両
・キハ11系16両
・来年度も50両程度譲渡予定

キハ40系は国鉄時代にキハ11系はJR発足直後に作られ、高山本線・参宮線・紀勢本線で使用していた車両です。2015年3月17日に譲渡契約が締結され、準備出来次第ミャンマーへ引渡しとなります。

武豊線が2015年3月1日電化したことにより、同線で運行していたキハ25系が余剰となりました。その余剰車両と新製車両を合わせて高山本線のキハ40系などが置き換えられました。更に、参宮線・紀勢本線へのキハ25系投入でもキハ40系とキハ11系の余剰車両が発生します。それらが来年度の譲渡車両になると思われます。

ミャンマーへの車両譲渡は以前から積極的に行われていて、JRからではJR北海道・JR東日本・JR四国・JR西日本・JR貨物からの譲渡実績があります。JR東海からの車両譲渡は今回が初めてのようです。

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2015年3月12日木曜日

日立がイギリスで走らせるAT-200とは




2015年3月12日に日立製作所はスコットランドを走る路線向けとして「AT-200」の納入・保守を契約したと発表しましたが、その契約についてと「AT-200」について紹介したいと思います。

Abellio社とのスコットランドの路線についての契約

納入先: Abellio社
車両数: 4両×24編成+3両×46編成の計234両
路線: 「スコットランドのエディンバラ~グラスゴー路線」「スターリング~アロア~ダンブレーン路線」

イギリス・スコットランドで鉄道の運営を委託されているオランダAbellio社に納入されます。納入方法としてはClass800と似た方式で、最初の7編成を山口県にある笠戸事業所で製造し、残りをClass800が製造されているイギリスの工場で生産されます。2017年後半までに24編成、2018年12月までに46編成が納入されます。

車両受注のほかにも車両保守の契約があり、エディンバラ周辺の車両基地へ10年間サービスを提供します。

AT-200

最高速度: 160km/h
車体長: 23m
耐用年数: 35年

「AT-200」は日立が考える英国市場向け標準設計の近郊型車両にあたるものです。

この標準設計は日本市場向けのA-trainを元に英仏輸送向けに開発されたClass395をベースに英国市場にあわせたものです。

最高時速160km/hのセミクロスシートの通勤形「AT-100」、クロスシートの最高時速160~200km/hの近郊型の「AT-200」、最高時速225~250km/hまで対応する高速形の「AT-300」があります。

3車種の車両構体の基本設計が同一のものとないる点はA-trainと似ています。これらは性能面だけを合わせるのではなく英国での製造を見据え、車両製造にあたる人間の錬度・現地で調達できるアルミの種類まで考えたものです。

車両の細かい仕様などはセミオーダー式となっているのですが、「AT-200」の実物大モックアップが2014年に公開された時は非貫通型でした。納入先の事情に合わせて今回は貫通型になったようです。

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2015年3月3日火曜日

インドネシア初の地下鉄車両受注と「STRASYA」




2015年3月3日に住友商事と日本車輛はMRTジャカルタ社(MRTJ)からインドネシア初の地下鉄車両を受注したと発表しました。

今回納入することになった路線はインドネシアのジャカルタ特別州が出資するMRTジャカルタ社が2018年の開業を目指しているMRTJ南北線です。この路線は日本政府からの資金提供のもとに延伸する計画などもあります。

納入する車両は官民がアジア輸出向けに策定した仕様「STRASYA」に基づいたもので、6両×16編成の計96両を納入予定です。

インドネシアへはKRLジャボタベックへ東急8500系・東京メトロ6000系・JR東日本205系など様々な日本製車両が輸出されていることが有名ですが、新造車両は20年ぶりとなります。

今回受注した2社はジャカルタには鉄道網の新設計画も多数あるため引き続き車両シェアの拡大を図るとしています。

「STRASYA」とは


・日本の鉄道システムをベースとする
・信号システムを重視し、衝突を前提としない軽量車体で省エネルギー・省メンテナンスを実現
・メンテナンスを不要または容易にし、トータルライフコストが安価になる構造・仕組み


「STRASYA」(ストラシア)とは日本の鉄道技術・ノウハウをベースに、上に挙げたようなコンセプトを持つアジア地域輸出向けの官民で作った仕様です。


2015年2月9日月曜日

駅前も日本的? 東京駅と台湾新竹駅が姉妹駅へ




2015年2月9日にJR東日本と台湾鉄路管理局(台湾の国鉄にあたる)は東京駅と新竹駅の姉妹駅締結を2月12日に新竹市で行うと発表しました。

新竹駅概要

1893年開業
1913年現駅舎完成
縦貫線・内湾線が乗り入れている

姉妹駅締結について

台湾の新竹駅の駅舎は日本人である松ヶ崎万長が設計をし、1913年3月31日完成しました。そして東京駅は1914年の12月20日に完成をしました。

それぞれの駅舎は100周年を越え両国の鉄道代表する歴史的建造物であることから、姉妹駅締結を結び友好を深めていくことになりました。

日本製電車も走る

新竹駅に乗り入れている縦貫線ですが、日本製の電車TEMU1000形が走っています。このTEMU1000形はJR九州885系をベースとした、日立製の振り子式特急電車です。こういった部分でも日本とのつながりがあります。

駅前も日本的?

この締結とは無関係なのですが、新竹駅の駅前に「そごう」や「三越」があるのに驚きました。

「三越」は「新光三越」という名で台湾の新光集団と三越伊勢丹ホールディングスの子会社と経営されており、今でも日本の三越と資本的にも関係があります。

一方「そごう」は「太平洋崇光(太平洋そごう)」の名で日本のそごうと台湾の太平洋建設が作った合弁会社により経営されていました。経営自体は良好だったのですが、日本のそごう本体の破綻やアジア通貨危機により日本のそごうとは関係がない状態になっているようです。

こういった日本国内の影響が海外にまで及ぶのは、いろいろと繋がっているのだなと感じさせます。


2015年1月20日火曜日

JR西日本外国人向けフリーパス新設




2015年1月20日にJR西日本は外国人向けフリーパス「JR-WEST RAIL PASS」の「山陰・岡山エリアパス」と「北陸エリアパス」のエリア変更と、「関西・北陸エリアパス」の新設を発表しました。

JR西日本大阪環状線を走る201系

山陰・岡山エリアパス

2015年3月31日分までの現在の切符は、連続した3日間を大人4410円・子供2050円で山陰・岡山のフリーエリアの特急・快速・普通列車の自由席を利用できます。

2015年4月1日からは今までの路線の他に智頭急線の追加やJR線のエリアを拡大し、国外購入4500円・国内購入5000円で連続した4日間を特急・快速・普通列車の自由席を利用できるようになります。

北陸エリアパス

こちらは北陸新幹線がらみの変更です。
2015年2月28日分までの現在の切符は、大人4500円・子供2250円で連続した4日間を北陸フリーエリアの特急・快速・普通列車の自由席と一部私鉄とバスを利用できます。

2015年3月14日からは現北陸本線の一部区間とバス・一部私鉄の利用が出来なくなりますが、今までの路線のほかに北陸新幹線と三セクの一部区間を連続した4日間利用できるようになります。
値段は国外購入5000円・国内購入4500円で特急・快速・普通列車の自由席を利用できるようになります。

関西・北陸エリアパス

新たに新設される切符で、西は倉敷・東は上越妙高と関西・北陸フリーエリアのJRと一部三セク線の新幹線・特急・快速・普通列車の自由席を連続した7日間利用できる切符です。
2015年3月14日からの発売で国外購入は15000円・国内購入は16000円となります。

これらの切符は短期滞在の外国人向けで、引き換えの際にパスポートの提示が必要です。
購入は日本国外の旅行会社・インターネットの専用サイト・パスエリア内の駅や旅行会社で購入することが出来ます。
また、一度の滞在の際に一度までの利用となっています。


2015年1月18日日曜日

新幹線を海外へ売り込め オールジャパンIHRAとCrash Avoidanceとは




新幹線を海外へ売り込むため2014年4月1日に設立された一般社団法人国際高速鉄道協会(略称IHRA)と、IHRAが提唱するCrash Avoidanceの原則について解説したいと思います。

新大阪駅停車中のN700系8000番台

一般社団法人国際高速鉄道協会 - IHRAとは?

IHRAのホームページの組織や挨拶を要約しますと、「新幹線のような日本型高速鉄道システムを国際標準とするため、高速鉄道建設を検討する国にCrash Avoidanceの原則に基づく日本型高速鉄道システムが欧州の高速鉄道システムと異なるシステムで、様々なメリットがあることを理解してもらう活動を行う」とあります。

大雑把に言い換えれば、新幹線型の高速鉄道の良さや外国との違いを知ってもらって国際標準にしようと言ったところです。

この組織の会員はJR東日本・西日本・東海・九州のほかに車両製造メーカー、信号機器メーカー、電装関係メーカー、大手商社など日本の鉄道売り込みに関わる様々な企業が名を連ねています。

組織の理事にはJR各社の人間のほかに台湾高鉄の方や、理事長代理に米国の方がいたりと日本以外のパイプ作りをしているのも分かります。

IHRAが薦めるCrash Avoidanceの原則とは?


今までにも何回か出てきた「Crash Avoidance」という言葉の意味ですが、日本語で言うと「衝突回避」の意味です。
高速鉄道専用線とATCの組み合わせで衝突回避を行うことを原則とするシステムというのが、IHRAの提唱する日本型高速鉄道システムというわけです。

IHRAが挙げる「Crash Avoidance」のメリット

・専用線/専用車両による高密度運行
・専用設計による車両設計の柔軟性向上
・耐衝突性能を組み込まないことによる軽量化や軌道保守の低減

専用線と高速鉄道専用車両とすることで速度の統一がしやすく、貨物列車などを一緒に走らせる場合より多くの運転本数が可能になります。

また、専用設計により旧来の車両より広い幅の車体にしたりもすることが出来ます。

そして耐衝突性能を排除することで強度がある程度低くても問題がなくなります。
それにより線路への負担や加速に必要なエネルギーを抑えることが出来ます。

日本の鉄道の多様性をもっと売りにしても良いのではないか?

IHRAは新幹線ベースのシステムを売り込むことを主眼にしているので、それ以外の形態についてはあまりアピールをしていません。

鉄道の世界でも規格化の流れがあり、着実に規格化は進んでいます。
その一方でコストや各地域の事情などで特殊化する流れは今でも続いています。

新幹線は確かに優れていますが、コストや地域の特性の関係で日本国内でも新幹線を気軽に建設できない状況であり、それは外国でも同じはずです。

日本ではコストを抑えるためにミニ新幹線や「はくたか」「スカイライナー」のようなスーパー特急方式など違った方法で効果を上げている路線もあります。

なので新幹線を第一案として提案しつつ、それが無理でも豊富な選択肢を用意できる団体であることをアピールしたほうが良いと思います。

IHRAに鉄道事業者として加盟しているのはJR4社のみとなっています。より多くの鉄道事業者に加盟してもらえれば、より柔軟な提案を可能に出来るのではないでしょうか。


2015年1月9日金曜日

台湾向け車体傾斜式車両を続々追加受注




2014年12月25日に日本車輌は台湾国鉄向けTEMU2000形を追加受注したと発表しましたが、2015年1月9日に日立製作所もTEMU1000形の追加受注を発表しました。この記事では追加受注が決定した二つの特急車両について紹介したいと思います

JR九州885系
TMEU1000形のベースになったJR九州885系

日本車輌製TEMU2000形

・交流用特急形交流電車
・最高時速140km/h(設計最高速度は150km/h)
・8両で1編成
・空気バネ式の車体傾斜装置を採用
・嘉義~台北~花蓮間で運行
・アルミニウム製車体
・欧州規格に対応

この車両は台湾の交通部台湾鉄路管理局(略称TRA、台湾の国鉄にあたる)向けの特急列車で、都市間輸送向けの車両です。日本車輌と住友商事で受注をし、2012年から2014年に300億円で17編成136両の導入が決定されました。2013年2月6日より「普悠瑪號(プユマ号)」として営業運転を開始しました。

追加受注として2編成16両を33億円で受注しました。

日立製作所製TEMU1000形

・交流用特急形交流電車
・最高時速130km/h(設計最高速度は150km/h)
・8両で1編成
・振り子式の車体傾斜装置を採用(最大傾斜角5度で本速+25km/h)
・斗六~台北~寿豊間で運行
・アルミニウム製車体
・JR九州の885系をベースに設計

この車輌もTRA向けの都市間輸送向け特急列車です。日立製作所と丸紅で受注をし、2006年から2007年に3編成ずつ、計6編成48両が納入されました。2007年より台湾初の振り子式特急電車「太魯閣號(タロコ号)」として営業運転を開始しました。

追加受注として2編成16両を受注し、2015年度中に納車する予定です。

※日本車輌・日立製作所のプレスリリースより記事製作

現在TRAで運行されている車体傾斜式車両は日本製の2形式のみとなっています。通勤車両でも東急車輛・川崎重工など様々な日本製車両が外国製の車両と共に採用されています。

そして2014年12月22日にはTRAと山陽電鉄が姉妹鉄道協定を結ぶなど、車両面以外でも日本鉄道業界と友好な関係が築けています。今後も両国の鉄道が共に発展していく未来が描けそうです。


2015年1月7日水曜日

日立 英国向けハイブリッド高速車両を出荷開始




日立製作所は2015年1月7日に英国都市間高速鉄道向け車両の先行生産車両の出荷を開始したと発表しました。

7日に出荷された車両は今月の20日ごろ神戸港より大型船にて輸送され、3月中の英国到着を予定しています。英国到着後は、各種測定機器を搭載し4月より乗務員試験も兼ねた走行試験を開始する予定で、営業運転は2017年からを予定しています。

今回出荷された車両は去年11月に公開されたClass 800シリーズで、2009年より営業を開始したClass 365をベースに設計された最高速度201km/hまで出せる高速鉄道用車両です。この車両の特徴はディーゼル発電機と架線の二つの電源を使用して非電化区間と電化区間の両方を走行可能にしたということです。

ただし、電化区間専用の車両も生産される予定で電化・非電化区間対応型がClass 800、電化区間専用がClass 801 となる予定です。

車両の量産は現在建設中のイギリスのダーグラム州の日立レールヨーロッパで2016年から開始する予定ですが、先行量産車3編成と一部量産車9編成を3山口県笠戸事業所での生産を予定しています。

※追記
1月22日ごろに予定通り神戸港から積み込みが行われ英国へ向けて発送されました。台湾新幹線の700Tなども神戸港から旅立ったように、海外向けの発送が度々おこなわれています。

3月12日英国のサウサンプトン港へ到着しました。同行では記念セレモニーも実施されました。

※関連記事
日立がイギリスで走らせるAT-200とは
日立 英国向けハイブリッド高速車AT-300受注

2015年1月1日木曜日

中国に世界最大の鉄道メーカー誕生




2014年12月30日に鉄道会社規模世界2位の中国南車グループと1位の中国北車グループが合併し、世界最大の鉄道車両メーカー中国中車股フン(-にんべんに分)有限公司(略称は中国中車)が誕生すると発表がありました。

大宮駅に到着する北陸新幹線E2系
中国に輸出されたCRH2のベースになったE2系

両者は中国鉄路機車車両工業が分割され誕生した二つの企業でしたが、今回の合併で中国南車が中国北車を合併する形で再統合されます。

今回の合併は一度は分割されたものの国内外での争いによる損失が大きくなったことや、一社に統合することでより強い国際競争力を持てるとの考えから実現したようです。

また、中国では様々な国の高速鉄道用車両が技術供与により走っていることは良く知られていますが、中国南車グループはCRH2(日本のE2系ベース)・CEH3(ドイツソーメンスのICE3ベース)を製造し、中国北車グループはCRR1やCRH380D(カナダボンバルディア)といった具合に二社は別々の国から供与を受け車両を製造しています。それが今回の統合で世界中の高速車両を一社で製造することが可能になりました。

中国中車は海外進出にも積極的姿勢なことや、技術・資金様々な面で競争力を増した形となり日本の鉄道輸出戦略にも大きな影響を与えると予想されます。具体的には世界各国の高速車両の技術を保有するために幅広い提案が出来ることや、中国政府の積極的なバックアップなどです。

エアバスが中国で本格的な生産を始めていること考えると、欧州は中国との提携は積極的なのが分かります。なので、アジア地域への高速鉄道売込みでは、欧州+中国みたいな形もありえると思います。

東南アジア地域では各国が高速鉄道の売込みを図っていますが、今回の合併はその点でも大きな影響があると思います。日本としてもいろいろ考えていかなければないのではないでしょうか。

2014年12月10日水曜日

世界最長距離を走った貨物列車と日本の関係




2014年12月9日に中国~スペインを結ぶ最長距離を走る貨物列車が21日間かけてマドリードへ到達しました。

この列車は通常運行の前に行われる試験で、中国東部の浙江からカザフスタン、ロシア、ポーランド、ドイツ、フランスを経由しスペインのマドリードまで運行されました。2015年の定期運行を目指しており、月に2往復程度の運行を計画しています。

中国はEU諸国との経済的結びつきが強いのでこのような列車が運行されたわけですが、近年日本のトヨタ自動社なども部品輸送のため新潟港からロシアのウラジオストクを経由してモスクアやフィンランドに近いサンクトペテンブルグなどにシベリア鉄道を使い輸送しようと以前から試行錯誤しています。

コスト的には船のほうが安いのですが、到着日数が船便の半分の2週間ということやリスク分散という観点から生まれた計画のようです。しかし、シベリア鉄道の輸送品質などがあまりよくないようで、順調というわけではないようです。

今回運転された貨物列車はロシアのモスクワも経由するようなので、順調に運転が行われ輸送品質が確保することが出来るのであれば、中国を経由して日系企業も荷物を送るようになるかもしれません。さらに生産という面でも日本より中国で作るメリットが大きくなると思います。

しかし、ロシアの諸外国との関係悪化でカザフスタン経由の国際鉄道路線の運行停止なども発生していて、こちらも全てが順調とはいかなそうです。

三井物産モザンビークの鉄道に出資




三井物産は12月9日にモザンビークの炭鉱、鉄道・港湾インフラへ出資するとの発表をしました。
その中の鉄道について注目してみたいと思います。

概要

三井物産は、総合資源会社のVale S.A.が開発中のモザンビーク共和国のモアティーズ炭鉱、ナカラ回廊鉄道・港湾インフラに同社とともに出資参画することになりました。

三井物産はモアティーズ炭鉱の95%の権益を確保するVale子会社の15%持分(540億円)とインフラ事業を運営するVale子会社の50%持分(376億円)を取得を予定しています。

なぜこのような出資に至ったかですが、同国は南アでも有数の資源国であり、今後の発展が見込めるからとありました。

※モザンビーク共和国・・・南アフリカに位置し、隣国としてマラウィ共和国、ジンバブエ、タンザニア、南アフリカなどがあり、海を挟む位置にマダガスカル島がある。また、2014年1月に安倍首相が同国を訪れ、ナカラ回廊地域へ700億の支援を表明した。

金額としては炭鉱に対する出資が大きいのですが、50%の取得という点を見ると鉄道にも大きな出資をすることが分かります。

ナカラ回廊鉄道への出資について

現在モザンビークのナカラ湾から隣国マラウィまで走るナカラ回廊鉄道をモザンビークのモアティーズ炭鉱まで230kmの延伸をし、ナカラ港の石炭・一般貨物ターミナルも整備するというものです。

一番の目的としては炭鉱の拡張にあわせた石炭輸送の安定ですが、その他鉱物資源・農産物や一般貨物・旅客輸送にも活用します。そのため、Vale社と三井物産で一般貨物輸送事業も推進していくともあります。

あとがき

近年鉄道の海外進出が盛んになってきているので、三井物産のプレスリリースをベースにこのような記事を書いてみました。今回の内容は出資ということなので、日本の鉄道の直接進出ではありませんが、商社の動きなども今後は活発になるのではと思ったので注目してみました。今後も海外進出関係も気になったものは取り上げて行きたいと思います。


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