2020年11月18日水曜日

進む川越工場からの移行 東武9000系9108F甲種・試運転レポート




 東上線川越工場の廃止による南栗橋工場への移行に関連すると思われる、東武9000系9108F甲種輸送や乗務員訓練による試運転などをレポートします。

東武9000系初の本線へ

9月には東武9050系の本線系統でのPQ台車を使った深夜試運転が行われましたが、11月に入り本線へ東武9000系が甲種輸送され、本線での日中の乗務員訓練が実施されました。

東武9000系は有楽町線直通用に製造されたため、今までは東上線を中心に乗り入れ先の路線での運用しか行われいませんでした。しかし、今回の甲種輸送や乗務員訓練で、初めて東上線以外の東武線での運行が行われました。

これは川越工場廃止により南栗橋工場で検査を実施し、検査前の回送や検査後の試運転を実施するための措置だと思われます。

小川町以北の単線区間を行く

森林公園駅に停車中の東武9000系9108F回送
森林公園駅で発車を待つ9108F
11月12日に東武9000系9108F森林公園検修区を出発して、寄居駅を目指します。

連結器にアダプタを装着する東武9000系9108F
連結器にアダプタを装着する
翌日は秩父鉄道の電気機関車を使い秩父鉄道線を走行するので、森林公園出発時にはあらかじめ並型連結器のアダプタが寄居側の密着連結器に取り付けられています。一方池袋側は連結器ごと自動連結器に交換されています。

東武8000系と行き違いをする9000系
8000系とのすれ違い
東上線小川町以北へは普段入線しないため、とても貴重です。途中8000系ワンマン車とのすれ違いもありました。

森林公園~小川町間の動画での様子

30年ぶり?甲種輸送でいよいよ本線へ

秩父鉄道デキ500形と連結する東武鉄道9000系9108F
寄居駅でのデキ500形との連結作業
寄居駅に一晩留置され、翌日に秩父鉄道を経由して南栗橋工場を目指します。秩父鉄道線内は自走出来ないため、秩父鉄道の電気機関車による甲種輸送で寄居から羽生駅まで運ばれます。

東武9000系と50000系以外は南栗橋工場でも検査をしていたため、甲種輸送は日常的に行っていました。しかし、9000系は川越工場での検査のされていため、今回の甲種輸送は9108Fの場合約30年ぶりだったと思われます。

羽生駅到着後は自走により、その日のうちに南栗橋工場へ回送されていきました。この日の回送が、初めての本線での走行となりました。

寄居での連結から秩父線内甲種輸送

本線で乗務員訓練開始

春日部駅で東武100系スペーシアと並ぶ東武9000系
春日部駅で東武100系スペーシアと並ぶ
11月16日からは東武本線「南栗橋~春日部」間での乗務員訓練が実施されました。春日部駅での折り返しでは、今までありえなかった車両たちと並ぶ様子も見ることが出来ました。

自動連結器を装着する東武9000系
自動連結器を装着したまま
甲種輸送で片側のみ自動連結器に交換されていましたが、乗務員訓練の試運転時も自動連結器が装着されたままとなっていました。

本線での乗務員訓練の様子

今後9000系9108Fがすぐに返却されるか一旦工場で検査されるか不明ですが、本線での9000系の走行は日常となっていきそうです。


2020年11月10日火曜日

東上線新駅「みなみ寄居」 ホンダ自動車からの要望で設置




東武鉄道は2019年6月3日に東武東上線「男衾~東武竹沢」間に、ホンダ自動車からの要望で2020年秋に新駅を設置することを発表し、2020年10月31日に「みなみ寄居」駅として開業しました。設置経緯や、駅について紹介します。
記事作成日: 2019.06.23/記事更新日: 2020.11.10

ホンダの自動車工場のための新駅

みなみ寄居駅(ホンダ寄居前)駅舎
みなみ寄居駅(ホンダ寄居前)駅舎
東上線に新駅が設置されるのは「武蔵嵐山~森林公園」間に2002年のつきのわ駅以来で、18年ぶりの新駅となります。周りには本田技研の寄居工場があるだけで、本当に何も無いところです。駅名は「みなみ寄居」で、副駅名が「ホンダ寄居前」となっています。

駅が設置されたのは「男衾(おぶすま)~東武竹沢」間のちょうど中間あたりです。みなみ寄居駅と名乗っていますが、「寄居→玉淀→鉢形→男衾→みなみ寄」と、かなり離れているのが分かります。東武鉄道のHPの説明には「寄居町の南側に位置する駅として分かりやすく、また親しみを込めて“南”を平仮名で表記しました。」とありますが、ホンダの工場名が寄居工場なので寄居を入れたかったのではないかと思います。

みなみ寄居駅開業記念ヘッドマークの付く東武8000系
開業記念ヘッドマークが付く8000系
駅開業時にはヘッドマーク付きの列車が運行しました。

ホンダ再編で必要に

ホンダ寄居工場は山に囲まれた場所にあり、アクセスは工場脇を走る2車線道路の国道254号線がメインとなっています。工場に勤める方達は、自動車やバスでの送迎でしかアクセスできません。

さらにホンダは工場の再編を進めており、4000人ほどが勤務される埼玉県狭山市の工場の機能の大部分を、この寄居工場と三重県鈴鹿工場に集約します。そのため単純計算で1000人以上の方が、新たに勤務されることになります。

17年11月、ホンダが東武に東上線の活用などの相談を持ち掛け、両社で協議を開始。新駅開設に至った。建設費用はホンダが負担する。事業費用は非公表。
埼玉新聞ウェブ版2019年6月3日記事より引用

それ理由がでしょうが、上記のように駅の建設費用はホンダ側が負担する形になっています。

簡素だがしっかりした駅舎

みなみ寄居駅を出発する8000系
駅を出発する8000系
駅の構造は1面1線です。発表された時点では駅になりそうな用地部分に柵があるだけで、駅の構造物は何もありませでした。2020年1月頃から工事が本格化し、1年しないで構造物が出来てしまいました。

みなみ寄居駅駅舎
駅舎小川町側
駅は3階建ての構造で1階が入口、2階が改札階、3階がホンダ寄居工場への連絡通路となっています。工期が非常に短かったのですが、駅の出来栄えは決して悪くありません。また、駅の周りは本当に何もなく、国道254号に続くアクセス用の道路と工場に隣接するビオトープだけです。ちなみにビオトープには入ることは出来ません。

みなみ寄居駅ホンダ寄居工場連絡通路
改札階から見た連絡通路
ホンダ寄居工場は高台にあるので、このような形で通路が繋がっています。面白いのはトイレの場所、トイレは駅舎になく工場門横にあります。なので、ちょっとドキドキしながらトイレを借りる形となります。自分もちょっとドキドキしながら借りて使いました。

暫定運賃計算で特殊な改札

乗る方向ごとに色分けされたみなみ寄居駅改札
乗車方向で違う改札

暫定措置として運賃計算が特殊です。池袋方面から降車・へ乗車する場合は、東武竹沢駅での乗降として計算されます。寄居方面から降車・へ乗車する場合は男衾駅として計算されます。そのため乗降時には改札が別々になっています。

更にICカードの場合は改札を間違えないようにすればよいのですが、切符の購入時も複雑なルールがあります。池袋方面の場合は券売機で切符を購入すれば良いのですが、寄居方面の場合は乗降車駅証明証で乗車する形となります。

東上線で乗降駅証明証が設置されているのはみなみ寄居駅だけなので、この暫定措置が続いてる間だけとなっています。

寄居商工会は川越方面直通の要望も

東上線の川越方面からの電車は小川町駅止まりで、寄居方面には同駅で寄居駅行きに乗り換える必要がある。柴崎会長は利便性向上の観点から「新駅設置を機に、従業員のためにも、朝夕だけでも、川越方面から新駅に直通する電車の運行を検討していただきたい」と要望した。
 埼玉新聞ウェブ版2019年6月3日記事より引用

寄居商工会は川越方面への直通列車の要望だしています。確かに昔は池袋駅から寄居駅までの特急が一日数本走っていた頃もあり、それより遡れば秩父鉄道直通もありました。現在東上線は小川町駅で運行系統が分断されており、10両編成で運行する「池袋~川越~小川町」と4両編成の「小川町~寄居」に分かれています。

東武鉄道8000系81119F
「小川町~寄居」間で活躍する
4両編成の東武鉄道8000系81119F
 小川町駅で対面乗り換えできるので、あまり不便はありませんが、乗り換えが無ければ便利なのも事実です。しかし、東上線の武蔵嵐山~小川町駅間の中間地点から、小川町駅までは単線で列車本数に限界があります。今も殆どの時間で毎時4往復程度と、運行本数いっぱい近くで走っています。編成の長さも小川町駅で変わるため、一部時間の増発や行先変更などはあっても直通列車はなかなか難しいと思います。


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