2024年9月21日土曜日

東北新幹線列車分離が重大インシデントに当たらないのは正しいのか?




 東北新幹線が315km/h走行中に連結が外れるという前代未聞のトラブルが発生しました。こういった場合重大インシデントと呼ばれる事故に繋がりかねない事象とし、国土交通省が調査を行うのが一般的ですが、事故原因が分からないトラブル発生当日に重大インシデントには当たらないと国土交通省がコメントし、波紋を呼んでいます。これが妥当か考えてみたいと思います。

やはり重大インシデントにあたるのでは?

大宮駅に到着するE5系
当該車両と同じ形式の
東北新幹線E5系
結論から言えば過去の事例や今回と似た原因と思われる例から見るに、それらとの違いから重大インシデントにならない反証もあるものの、やはり当たるのでは?というのが私の考えです。

そもそも重大インシデントとは何が対象になるか?、今回と過去の事例を比較するとどうか?という2点から解説したいと思います。

1点目何が重大インシデントにあたるのか?

まず重大インシデントとはですが、日本では大きな事故に繋がりかねないトラブルを指して使われています。そして、そういったトラブルが鉄道で起きた場合、法令で国土交通省へ報告することが定められています。

更に具体的にどういった内容であれば報告する必要があるかも定められており、公開の件に該当しそうな車両の走行装置、ブレーキ装置、電気装置、連結装置、運転保安設備等に列車の運転の安全に支障を及ぼす故障、損傷、破壊等が生じた事態という例も示されています。

今回であれば連結装置のトラブルなので、上記の基準に入ると考えられます。

その報告が該当する場合は、国土交通省管轄の「運輸安全員会」が調査に向かうことになります。そして1年程度の調査を行い公に公表するので、国民が原因を知ることが出来るだけなく全ての鉄道事業者が参考に出来るというメリットがあります。

1点注意しておきたいのは、重大インシデントというのは人為的な原因だけでなく、偶発的や未知の事象も含まれるので、重大インシデントを起こしたから悪いとは言えない点です。誰もが想像できないレアケースや、未知の現象によるものであればそれを最初から防ぎようがないのは当然なだけでなく、責任の所在が誰にあるという話でもありません。だからこそ調査し、未然に事故を防ぐ対策を立てるのが重要なのです。

今回の事例の内容

近年起きた事例と比較する前に、今回の内容を知る必要があります。

2024年9月19日盛岡始発東京行きはやぶさ6号(車両形式: E5系10両)の後ろに、秋田始発東京行きのこまち6号(車両形式: E6系7両)が盛岡駅で連結。古川~仙台間を315km/hで走行中に、はやぶさ号とこまち号が分離。列車は安全装置が働きブレーキが働き減速。その時後方のこまち号の車掌が異常に気づき、2両目である12号車から先頭車両11号車へ移動し手動でもブレーキをかけて停車。

停車後に車両の連結器を目視で調べたが、特に異常はなし。緊急点検を他の車両でも行ったが、異常は見つからなかったというのが概要です。

新幹線の連結切離しは日常で歴史もある

現在東北新幹線では、E5系とE3・E6・E8系の4形式が日常的に連結を行っています。この連結運転は1992年の山形新幹線つばさ号運行開始から行われており、30年以上歴史ある運行形式で、今まで大きな事故はありません。

列車分離は本当に古典的で重大事故

列車分離事故というのは、鉄道の運行開始からある事故と言っても過言ではなく、日本で有名な古い事故は小説にもなった塩狩峠の事故です。それだけ古くからあるので、対策も行われて安全装置が発達しているだけでなく、起きてはいけない事故の筆頭ともいえると思います。

連結器は走行中外れるなどあってはならないので、それ相応の構造と強度を持っています。今の電車は様々なシステムでモニタリングをしているため、電気的にも安全装置が組み込まれています。今回はで言えば5km/h以上の速度では、切離しされないようロックする別のシステムもついています。なので、本来それが働きロックされるはずだったので、この点は間違いなく問題です

最後の安全装置という点で日本で走る鉄道であれば、連結している列車全てがブレーキ管と呼ばれるブレーキ制御用の空気の管で繋がれており、それが切断されると自動で非常ブレーキがかかる仕組みが付いています。

今回の事例でもそのシステムはちゃんと働いており、分離された時点でブレーキがかかりました。それに加えて東北新幹線の場合は、分離した車両のブレーキのかかり具合で衝突するのを防ぐため、後ろに連結している車両のほうが強くブレーキがかかるシステムが付いているそうで、今回もちゃんと300mの間隔をあけてそれぞれの列車が停車しました。なので、最後の安全装置という点では、満点の働きをしたと言ってもよさそうです。

原因は電気系統の不具合か?

事故当初から専門家も指摘していますが、連結器の破損などが見られないのを考えると電気系統の不具合により分離したと考えるのが自然です。

また、この後紹介する重大インシデントの事例でもあったのですが、電気的な不具合と人為的ミスが重なって分離するという事例がありました。

近年の事例で参考になりそうなのは2件

運輸安全委員会では、2001年からの鉄道での重大インシデントの内容をHPで公開しています。それによると、2001年から63件の重大インシデントが発生しており、そのうち2件が列車が切り離されるという内容でした。

その2件を見ると、1件目が理由不明の連結器解除による分離で非常停止、2件目が人為ミスと電気系統の不具合に地形の影響が重なったことによる分離です。これらの詳細を見るにどちらも結果安全に停止できているにも関わらず重大インシデントに含まれており、今回も調査対象に入ってよさそうに思えました。

1件目 調査中の大井川鉄道の事例

1件目は現在も調査中の大井川鉄道での事例です。

2023年11月28日に終点の家山駅についた電気機関車E31形と客車普通列車3両編成の列車は、駅構内で機回し作業を実施。機関車の付け替えを完了し、折り返し家山駅を発車しポイント付近を通過。その直後に連結器が外れ機関車と客車が分離、その時ブレーキ管が外れ非常ブレーキが作動し停車。乗客や乗務員に被害は無し。
※機回し作業とは、機関車を客車や貨車の前後反対につける作業

この件が起きた翌日には運輸安全委員会が調査入りし連結器の緊急点検を実施、12/1には車両・現場の調査が行われ連結時の検査・テスト項目の追加、12/8には事故当時の状況を再現する検証を実施も、原因が見当たらず引き続き調査というのが概要です。

観光列車という側面が強かったのもあると思いますが、安全のため事故から12/1までは似たようなシステムで運行されるSL含めて、客車列車の運行を停止しました。

このケースでも自動ブレーキにより安全に停止できています。なので、安全に停止でき、見た目では問題が確認できなくても重大インシデントに当たるというのは、ポイントです。

一方で、新幹線と違いアナログな物理的システム中心で連結すれば物理的操作をしなければ外れにくい古い方式であるにも関わらず、外れたので重大性を大きく見積もられたという点もあるかもしれません。

もう一つ特筆したいのは、大井川鉄道が事故が起きてから調査や新しいことを実施する度に、ホームページで追記しながら公開していた点です。本来当たり前ではあるはずの透明性のある事後報告というのができない企業が多い中、こういった公開を行ったのは評価すべきだと思います。

2件目 似ているかもしれない両毛線での事例

2005年5月31日に始発駅小山駅を発車した107系2両編成を2編成連結した4両編成は、次の駅の思川駅に到着。その時車両下部からエアーの抜ける音がし、車両が後退し始め車掌が非常ブレーキをかけ停車。乗客・乗務員に被害は被害は無し。

思川駅で点検を実施したところ、前2両のドアは開閉できるが後ろ2両のドア開閉ができない・ブザーによる連絡ができないなどを確認、そのため連結器を点検したところ20cm分離していたのを確認。

技術係を呼び再度点検。後ろ2両の解結スイッチは点灯していたが(連結)操作ハンドルは運転位置であり、異常は見つからなかったので、再度連結し岩舟駅へ向けて回送を実施。発車した後の走行中に本来オフのはずの自動解結NFBがオンになっていのに気づいたが、走行中なので万一を考えそのまま走行。
※自動解結NFBは自動解結装置の電源を入れるためのブレーカー

次の栃木駅到着後に、思川駅と同様の分離が発生した。というのが重大インシデントの概要です。

原因は前日の作業ミスと偶発的な電気系統の不具合と地形とみられています。

107系は2両固定編成ですが、2・4・6両と必要に応じて編成を増減するため連結切離しを行います。そのため日常的に連結と切離し作業が実施されていました。

前日も2編成の連結作業を行っていました。本来は自動解結NFBスイッチをオンにし、自動解結装置の操作を行い連結、連結完了後に自動解結NFBをオフにするのが流れです。しかし、自動解結NFBをオフにするのを作業員が忘れていたようでした。

しかし、自動解結NFBは自動解結装置の電源スイッチであるため、自動解結装置の操作を行なわなければ、問題ないはずでした。ですが、自動解結装置を分解したところ、装置自体に故障が無かったものの、設計の問題によりコネクタの通電不良で誤作動が発生した可能性があると分かりました。これにより本来人が操作したときしか作動しては行けないのに、逆に作動してしまったと考えられます。

それに加えて、自動解結装置は5km/h以上であればロックをかけるのですが、思川駅が下り勾配で停車した後に列車がゆっくり動きだしたために、勝手に動き出し分離しました。

つまり、作業員のミスと自動解結NFBの設計ミスと下り勾配という3つの条件が重なって、初めてこのトラブルが起きたことが分かりました。そして、この件では車掌が非常ブレーキをかけましたが、人為的にブレーキをかけなければ相当距離列車が動いたことも指摘されています。

これらの原因から自動解結NFB取り扱い時の確認や注意喚起のシール追加、自動解結装置の改良が実施されました。

この例では当初原因は全く分からなかったものの、調べたことにより人為的なミスや設計の不具合が起こったことが分かりました。

このケースが今回の東北新幹線のケースと違うのは、車掌の機転により列車が停止、列車に搭載された装置だけでは、安全に停車できなかった可能性があるという点だと思います。ただ、安全に停車した大井川鉄道のも調査対象になったのを考えると、そこまで大きなポイントともいえないのでは無いかと思います。そして未知であった電気系統の不具合が原因が一つだったと言う点は、今回のケースのヒントになるかもしれません。

大企業なので調査はするだろうが…

JR東日本は調査は間違いなくすると思います。人間自分に甘くなるように、自社には甘くなってしまうものです。運輸安全委員のような第三者の立ち入り・原因の公表範囲・安全対策の実施などは、全てJRの自主性に委ねられてしまうので、それがどこまで出来るかは心配なところです。

そして一番思うのは、調べて事故を防げることがあっても、調べて事故が起こることはないということです。

更に今回装置が正しく働いたのちに車掌が機転を利かせブレーキをかけたというのが、どういう意味があったかも調べる必要があると思います。JR東日本は自動化を推し進めているので、人間の機転にも意味があったのか無かったも重要な話になると思います。逆にこういうケースでは、機械の非常動作と人間の良かれと思った動作がぶつかり悪い方向に働くこともあります。

重要インシデントにならない以上はJRに委ねられたわけですが、透明性のある公表を行ってくれることを願っています。


2023年12月4日月曜日

東武ファンフェスタ2023をレポート




 2023年12月03日に東武鉄道の南栗橋管理区で実施された2023東武ファンフェスタを紹介します。

東武鉄道唯一の車両基地公開イベント

東武ファンフェスタは1年に1回行われてる東武鉄道の車両基地イベントです。以前は東上線の森林公園でも車両基地イベントがあったのですが、それが無くなった今では東武鉄道唯一の車両基地イベントです。

2023年は12月3日の開催で、10:00~15:00の開場時間でした。11月1日より事前登録制の無料で、1万人限定です。当日私は9:45頃到着して、入場したのは10:30頃だったので、入場には時間がかかりました。

有料事前登録イベントが増加傾向

車両撮影会(無料)
ATカート乗車体験(500円)
架線作業車乗車体験(500円・小学生以下対象)
訓練線での6050系運転体験(10万円・10名)
イベントなりきりスタッフ体験 (2万円・3名)

他社同様有料の事前登録イベントが増え、車両撮影会以外は有料です。特に6050系の運転体験10万円は、安いところだと1万円程度からある他社の運転体験と比べても強気な設定です。

もう一つ変わり種がイベントなりきりスタッフ体験で、スペーシアXの「浅草~東武日光か鬼怒川温泉」の往復乗車・スタンダードシート特急券とスタッフジャンパー付ではあるものの、お金を払ってスタッフとして働くというものがありました。

車両撮影会は5車種

2023東武ファンフェスタ車両撮影会の列車たち

イベント定番の車両撮影会です。今回は無料の事前登録制で、12:00~14:15分の間に15分入れ替え制で7回実施されました。8000系8111Fが船橋から南栗橋までのツアー列車として運行されたため、午後からの実施になったようです。

登場した車両は、右から8000系8111F・200系りょうもう・100系SPACIA DRC塗装・634型・70090系THライナーの4車種でした。

スペーシアXや500系Revatyはありませんでした。やはり2編成しか無いスペーシアXは展示が難しかったようです。

車体吊り上げは9000系9106F


車両基地のイベントといえば車体の吊り上げです。今回は11:00/12:00/13:00/14:00の15分づつ4回が実施されました。

この日車体作業場に入っていたのは、9000系4両で9006・9706・9806・9906号車でした。その中で吊り上げに使われたのは先頭車両の9006号車でした。

9000系は東上線で使われている車両で、検査の時だけ南栗橋へやってくる車両です。なので、ちょっと珍しい車両が吊り上げ展示に使われました。

6050系は一日中往復

訓練・試験用に使われている東武鉄道6050系

東武鉄道では引退した6050系ですが、南栗橋車両管区内での訓練用や試験用として使われています。この日は10名の運転体験もありましたが1日中往復していたので、サービスで往復していたようです。

その他実施されたもの

・スイッチマルタイ 11:00~ 1回のみ
・工場棟見学 10:00~14:45
・SL検修庫見学 10:00~14:45
・子供制服着用体験 10:00~14:30
・TOBU Kidsブース (顔出しパネル) 10:00~14:30
・運転台撮影会 車掌体験 10:00~14:30
・ドアモックアップ開閉体験/工場棟内
・パンタグラフ操作体験/工場棟内
・スペーシアXシート展示/工場棟内
・ミニステージ
・ミニSL運転 10:00~14:30
・移動動物園 (アルパカのしらたまちゃん1頭)
・ベリーハッピートレイン展示/休憩用
・鉄道各社と自治体による出店

その他に実施されたものも備忘録として残しておきます。来年実施時の是非参考にご利用ください。

ドアとパンタグラフの体験は工場建屋内で実施されていたのですが、列がまだあり見学終了時刻を見越して14:30頃には受付を締め切っているようでした。

終了後は続々回送列車が出発

七光台へ回送される東武8000系8111F

車両撮影会などで使われた車両は各車両基地へ帰っていきます。100系・200系・70090系は南栗橋車両管区春日部支所、8000系は南栗橋車両管区七光台支所のため、イベント終了後に回送されていきました。

今年はこんな感じの開催でした。来年も開催されると思うので、ぜひ参加されてはどうでしょう?


2023年9月10日日曜日

消える振り子式特急から復活の振り子式特急へ




 国鉄時代に山岳路線などのカーブの多い線区へ切り札として投入された振り子式特急がの変遷を、登場時から現在まで紹介していきたいと思います。

記事作成日: 2015.05.25/記事更新日: 2023.09.10

振り子式車両とは

長野駅に停車するJR東海383
特急「しなの」に使用される
381系の後継で制御付き自然振り子式の383系

振り子式車両は特殊な構造の台車を利用して、列車がカーブを高速で通過したときに遠心力で車両を傾けて乗り心地を向上するシステムです。ただし、カーブの速度向上は振り子式だけで可能になるものではなく、高速で通過できるように線路を強化したり車体を軽量・低重心にするなど、様々な技術を組み合わせて可能になります。振り子装置は、あくまでも乗り心地を良くすることが中心の装置です。

「しなの」で初めて採用された振り子式

日本では国鉄時代に開発され、1973年より製造された381系が、営業列車で最初に振り子式を採用しました。381系は中央線を走る特急「しなの」でデビューし、スピードアップの成果を上げました。その後「くろしお」「やくも」と導入路線を増やしていきました。

この時採用された振り子装置の方式は、自然振り子式です。この方式はカーブを曲がると動力なしで勝手に車体が傾くので、安全性が高い利点があります。

しかし、この方式の弱点として、車体の傾く動作とカーブと合わない点です。カーブが入る時は、列車が曲がり始めてから車体が傾斜し、カーブを出たときは逆でカーブから出た後傾きがなくなります。この欠点により乗り心地が悪くなり、乗り物酔いがおきやすく乗り心地では、必ずしも好評とは言えませんでした。

乗り心地を改善した制御付き自然振り子

JR東日本E351系の台車
E351系の台車
自然振り子方式が登場して約20年後、乗り心地の悪さを改善した方式の制御付き自然振り子が登場しました。

この方式は列車の走行位置を把握し、カーブの手前とカーブを抜ける直前に少し力を加えることで、傾きのタイミングを調整することができます。そして最終的な傾きは今までと同じ方法で、カーブにより勝手に車体が傾くようにしています。なので安全への影響は最小限に抑えつつも、乗り心地を向上させることが出来ます。

JR発足後各社が新車開発にしのぎを削る時代、JR四国と鉄道総研により開発され、JR四国2000形特急気道車で採用されました。1989年に試作車が作られ、1990年より量産車が開始されJR四国の特急では標準的に採用されていきました。

上の写真の特急「スーパーあずさ」用のJR東日本E351系特急電車など、気道車・電車問わず広く採用されていき、JR貨物以外のJRグループでは急カーブの多い特急用として、全社が採用していきました。

広がる新方式空気バネ式

良いこと尽くめに見える振り子式車両ですが、大きな欠点がありました。構造が複雑になることから、車両の製造コストやメンテナンスコストが上がってしまうことです。そのため日本で振り子式を採用しているのは、ある程度コストがかかっても許される特急車両だけです。

千歳線苗穂駅付近を通過するキハ201系
空気バネ式の車体傾斜装置を採用する
JR北海道のキハ201系
そんな中で振り子式に変る方式として、「空気バネ車体傾斜式」というものが登場しました。この方式は、現在の鉄道で標準となった台車の空気バネをカーブに入ったとき膨らませ、車体を傾けるというものです。空気ばねが浮き輪のように空気が入ったゴムでできているから出来る芸当で、風船のようにカーブの外側のばねを内側より膨らませることで車体を傾けます。

車体の傾斜角度が振り子式に劣るのでカーブの通過速度は下がりますが、仕組みが簡単で製造・メンテナンスコストの両方を抑えることができるほか、乗り心地も振り子式より良いとされます。

JR北海道が開発に意欲的だった頃、コストの低さを武器に一般車両のキハ201系で1997年に初めて採用されました。当初は振り子式ではカバーしきれない路線を中心に特急用として採用されていきました。

現在ではN700系やE5系と300km/hを超える速度で走る新幹線車両にも、標準装備として採用されています。

その後は2014年に登場したJR四国8600系特急電車を皮切りに、現在振り子式の車両が運用されている区間でも、空気バネ式へ置き換えるケースがでてきました。先ほど紹介した特急「スーパーあずさ」用E351系も空気バネ式のE353系に置き換えられました。

希望だったハイブリッド傾斜システム

振り子式の採用が減っていくなか、JR北海道は振り子式と空気バネ式を共存させて更に高速でカーブを曲がれるようにと考えたのがハイブリッド傾斜システムです。振り子式で車体を傾かせつつ、さらに空気バネを膨らませて今までのシステム以上に車体を傾斜させ、カーブの通過スピードを上げようというものでした。

しかし、JR北海道内の安全に関わる度重なる大きなトラブルで、新しい技術の開発を行うより安全性の強化が先だという判断が下されました。試験車両のキハ285系は、完成したにも関わらず試験は中止となってしまいました。2014年に製造されて以来まともに本線は走ることはなく、2017年には解体されています。

この開発中止はJR北海道以外にも影響があったと思います。この当時空気バネ式が広がる一方で、振り子式を大きく発展させようとしていたのは、日本の鉄道会社の中ではJR北海道ぐらいのものでした。振り子式を採用してる列車の中には地方ローカル線なども多くあり、空気式が広がる中でも振り子式を必要としています。そんな中での唯一発展させようとしていたJR北海道がやめたことで、振り子式の日本での発展は大きく後退しました。そして地方ローカル線にとっても、進化の一つの道筋が経たれてしまいました。

車体傾斜装置を停止したJR北海道

キハ285系の後も状況は悪化していきます。安全への優先でそれ以外のコストを下げるため、JR北海道の特急車両は車体傾斜装置の採用をやめただけでなく、既に搭載されている車両での使用もとりやめています。これにより特急列車の所要時間が伸びてしまいました。

経費削減と安全対策が優先で、以前のような速度向上のめどが立っていません。確かに脱線などしたら元も子もないのですが、北海道でも高規格道路の延伸が続いており、常に速度向上の策を練らないとどちらにせよジリ貧なのは間違いありません。

状況の好転を願っているのですが、JR北海道に関わる国や自治体がとても交通政策に真剣に取り組んでいるとは言えない状況で、先が真っ暗なのが現状です。

一時は車体傾斜を捨てたJR西日本

北陸線福井駅に到着する683系しらさぎ
289系の改造元となった683系
JR北海道ほどではなくとも、一時は消極的だったのがJR西日本です。特急「くろしお」で使われていた381系を置き換えるため、2012年に登場した287系・2015年に登場した683系を改造した289系という車体傾斜装置の付いていない車両で置き換えを行いました。

287系・289系は381系と比べて強力なモーターを採用してるものの、車体傾斜システムがなくカーブの通過速度は劣ります。そのため特急「くろしお」では所要時間が381系より若干延びてしまいました。

287系が「くろしお」で運行を開始した2012年は、リーマンショックの余波もあり景気の良い時期とは言えませんでした。更に北陸新幹線の開業で北陸地域などで運行していた683系交直流特急電車が余剰となっており、当時登場して15年も経っておらず廃車にするには早すぎました。また、381系との置き換えならば所要時間に大きな差が出ない、振り子式は導入コストが高いなどもあります。

これらから推察できる経済性から、仕方の無い判断だとは思いますが、速度面では後退してしまいました。

復活の振り子式

空気ばね式に押される形で衰退していくかと思われた振り子式ですが、空気ばね式の弱点が露呈することで復活していきました。

空気ばね式の弱点としてカーブが多い区間だと、傾斜が追い付かない問題があります。風船のように空気を送り込む関係で、頻繁に空気ばねへの空気の吸気と排気を行うために、頻繁にカーブの切り替えしが行われると追い付かなくなるのです。

JR四国は気動車でも空気ばね式を拡大しようと、2017年に2600系を製造しました。しかし、カーブの多い区間では給気が追い付かないことが分かったため、導入は2編成のみとなっています。

そのためJR四国では2019年より2700系制御振り式気動車が製造されていく流れとなりました。振り子式車両の新形式は、18年ぶりの登場でした。その後JR西日本も最後の国鉄型特急電車となった特急「やくも」用381系の置き換えで、制御振り子式の273系の導入を発表し、JR東海も383系の後継に385系の導入を発表しています。

273系と385系では新しい位置検知システムやジャイロシステムを搭載し、コスト削減や振り子装置の稼働タイミングを調整出来、より進化した振り子式が搭載される見込みです。

一時はだいぶ劣勢に見えた振り子式ですが適材適所ということで、カーブが多い路線には必要な方式として復活してきています。今後もすみ分けていくのではないでしょうか。

海を越えた振り子式

停車中のJR九州885系
TEMU1000形のペースとなった
JR九州885系

日本での振り子式の採用が減る中で、台湾の国鉄にあたる交通部台湾鉄路管理局(TRA)は日本製の振り子式車両を採用し続けています。JR九州の885系の姉妹車両にあたる、日立製TEMU1000形のです。車両は太魯閣(タロコ)号用として使用されており、従来の車両より所要時間の短縮を実現しました。

また日本同様に空気ばね式車体傾斜装置の車両も採用しており、こちらも日本車輛製の日本製で、普悠瑪(プユマ)号用にTEMU2000型を採用しています。

あとがき

この記事を最初に書いた2015年は、日本の鉄道高速化を支えてきた振り子式が節目を迎えようとしていました。そして記事を更新した今では、振り子式に復活の兆しが見えています。

列車の高速化技術自体が消極化される中で、振り子式の復活は一つの明るい話題だと思います。様々な乗り物が速くなる中で、少子高齢化で新幹線以外の日本の鉄道の高速化は進みにくくなっています。日本の鉄道は今でも間違いなく安全で快適になっている一方で、乗り物は速くてなんぼのとこもあるので、高速化の取り組みが少しでも進むことを願っています。


2023年6月17日土曜日

関東私鉄2023年新型車両動向まとめ




各社の事業計画などをもとに2023年の関東大手私鉄の新型車両動向をまとめました。私が理解している範囲で、現在の車両動向も解説します。

東武鉄道はスペーシアXのみで10050系ワンマン化と8000系一部線区全廃か

東武日光線を走るN100系SPACIA X
増備予定のSPACIA X
新造車両は特急用N100系スペーシアXの追加2編成です。その他に10050系2両編成を、7編成更新して佐野線・小泉線・桐生線用にするとしています。

N100系スペーシアXは東武鉄道のフラグシップ特急で、2023年7月に2編成が運行を開始します。100系スペーシアは既にりょうもうへ転用ではなく廃車が発生しているので、今回のN100系の導入でも廃車になる可能性は十分ありますが、ならない可能性が出てきました。8月より日光線の特急リバティを増車する関係で、100系スペーシア充当の列車が増えるので今後の需要次第となりそうです。

10050系は通勤電車で、2両編成はスカイツリーライン(伊勢崎線)での増結用して組み込まれ、単独での運行は行っていません。それをローカル線用にワンマン改造して投入されます。投入予定線区では2両編成の8000系が6編成運行されおり、今年度で一気に廃車となる見込みです。今後は3両編成の8000系で運行の伊勢崎線以北などにも投入され、減車されるのではと予想します。

西武鉄道は40000系のみ


新造車両は40000系4編成40両の増備です。車両更新で6000系1編成の制御装置とモーターの更新が実施されます。サステナ車両(他社からの中古車)にも言及はありましたが、準備を進めているとのみとなっています。

40000系は2017年から製造される通勤車両で、ライナー・通勤兼用のデュアルシートが10両6編成、通勤用が10両6編成在籍しています。最近は通勤用の増備と同時に2000系の中心に廃車が発生しており、この流れが今年も続くと思われます。

6000系は1992年~98年に製造された車両で、2014年以降に制御機器をとモーターの更新が行われてきました。今年は既に入場中の第1編成の6101Fが更新されれば、6000系全編成の更新が終了します。

東急電鉄は新車なし


東急電鉄は大井町線9000系・9020系置き換え用の車両製造に着手します。

9000系は1986年~91年に製造で15編成、9020系は1992年~93年に製造された2000系の改造車で3編成が在籍します。なので最終的には18編成の置き換えが行われる見込みです。今年度は着手とあるので、年度内の導入は無さそうです。また、田園都市線と大井町線にCBTCの導入をすると発表があったので、それを見据えた設計になると予想されます。

相模鉄道は21000系2編成で導入済み


相鉄は21000系8両2編成を導入し、予定数の9編成全ての導入が完了するとしています。既存車両については、リニューアルも実施されます。

相鉄は2023年3月15日開業した新横浜線直通用に10両編成の20000系と、編成数が8両編成になった以外はほぼ同じ仕様の21000系を導入していました。21000系を開業後すぐとなる3月末に第8編成と4月末に第9編成を導入したので、既に今年度分の新車投入は終了しています。

リニューアルの実施とだけあったので、具体的な数や内容は不明です。今年から車体を青くするヨコハマネイビーブルー化も再開されているので、更新分は実施されそうです。

小田急電鉄は3000形更新のみ


小田急は3000形6両3編成の更新のみで新車はありません。

3000形は2001年から06年に製造された車両で、昨年から新製日順ではなく6両編成に更新が実施されています。見た目では分かりにくいのですが、内容は制御機器から内装と多岐に渡り大規模なものとなっています。

京王電鉄は5000形1編成


京王はライナー拡充用に5000系1編成の増備と、8000系3編成26両の機器更新が実施されます。

5000系は京王ライナー・通勤者兼用に2017年から導入され、7編成が在籍します。これに加えて1編成が増備されます。

8000系は1992年から99年に製造された車両で、今までに車体更新と機器更新が別々に実施されてきました。実施両数が発表されているのは機器更新の方で、8000系には8両と10両が存在するので、8両2編成と10両1編成が実施される見込みです。機器更新以外についても昨年も平行されて実施されていたので、今年度もされる可能性が高いです。

京浜急行は10000形2編成


京急は今年度は1000形を8両1編成、6両1編成を導入と発表しています。車体更新は8両1編成、4両2編成が実施されます。そして2025年と26に20両づつ、計40両導入する予定です。

京急は2022年度に1500形の置き換えを発表しており、昨年度は新車導入がなかったにもかかかわらず、2023年3月に4両2編成の廃車が発生しています。なので、順当にいけば今年度も1500形の廃車が発生する見込みです。

車体更新は内装工事を中心としたもので、フリースペース設置・非常通報装置の増設・窓の開閉化が実施されます。走行機器は基本的に弄らないはずですが、窓が開くことになったため換気扇用の電源を撤去したりがあるので、小規模な機器の変更も発生する場合があります。

そして2023年以降として40両の新車が見込まれていますが、これは運賃の改定を国交省に申請する書類にあった数字で、参考程度のものとなります。ただ、この数字通りであれば、1500形は現在22編成138両在籍するので、置き換え完了までには時間がかかりそうです。

京成電鉄は3100形1編成と新車設計開始


京成電鉄は3100形1編成の導入と、新型車両の3200形の設計に着手と発表しました。

3100形は2019年よりスカイアクセス線用として導入されました。今年度分の1編成分が既に6月に出場しており、それを含めて7編成となりました。

そして設計に着手される3200形ですが、編成車両数が変更できる設計を予定しています。最近は西日本の0.5M車やJR東海のN700Sなど、需要の増減や転属時を考え、編成の組み換えが用意な設計が増えています。その流れの一つと言えます。

3200形の登場が決まったことで、3100形の増備が不透明にもなりました。根拠のない私の予想では、突発な理由で編成の増備が急がれない限り3200形の増備に一本化される気がするのですが、今後に注目です。

東京メトロは言及があるのは丸ノ内線のみ


東京メトロは丸ノ内線への新型車両導入するとしています。

東京メトロは導入車両数を毎年はっきりは発表しないのですが、昨年は丸ノ内線以外にも半蔵門線や有楽町・副都心線も言及していたのが、丸ノ内線のみとなっています。

有楽町・副都心線は増備終了とみても良さそうですが、半蔵門線は置き換え中の8000系が残っています。丸ノ内線は元々の計画だと2023年度中に02系全車置き換えの予定で、現在52編成中12編成が02系です。そう考えると今年度は集中的に2000系の増備が実施され、02系が全廃となるかもしれません。


2023年6月11日日曜日

さらば快速SL銀河 - 列車運行・ダイヤ編




 2023年6月11日で運行を終了したSL銀河のダイヤや見どころ、運行の特徴などを紹介します。

たっぷり1日乗れて東北を元気づけた列車

釜石駅に到着する快速SL銀河
釜石駅に到着する快速SL銀河
SL銀河は2014年4月12日より運行を開始した列車です。東日本大震災の復興支援という名目で、春から秋にかけて土休日にほぼ定期運行という形で運行されました。列車種別としては全席指定席の快速列車です。2023年6月11日の臨時運行で、運行を終了しました。

車両は蒸気機関車がC58型239号機と、客車をディーゼルカーに改造したキハ141系700番台を牽引と、非常に面白い列車です。車両についてはここでは魅力を書ききれないぐらいで、以下の別記事で紹介しています。


運行が廃止になる理由としてJR東日本は車両の老朽化を挙げています。老朽化自体は事実としても収益性の厳しさが大きく、復興が一区切りついたという点にもあると私は思います。

快速SL銀河ダイヤ
快速SL銀河ダイヤ
(拡大可能)
運行区間は釜石線全区間にあたる「花巻~釜石」間90kmを、約4時間半で走り抜けます。運賃は片道乗車券が1690円、それに加えて指定席料金が860円かかります。途中の遠野駅には機関車の給水を兼ねて1時間以上停車するので、列車を乗り通しながら観光ができました。更に列車は2日で往復での運行で、初日は下り「花巻→釜石」・翌日は上り「釜石→花巻」となっていて、釜石の観光を組み込むことでより深い列車の旅をすることが出来ました。

それでは盛岡駅を起点に通常運行時の列車の区間や駅ごとのみどころを紹介していきます。

乗る前・降りて楽しい回送区間

SL銀河の楽しいところは、乗る前・降りてからもあることです。

SL銀河は盛岡駅近くのSL車庫にて整備されます。そこから回送されて、花巻駅より営業列車となります。その発車前・発車後から楽しむことが出来るのです。

転車台が楽しいSL検修庫

検修庫より出庫するC58形蒸気機関車
SL検修庫より出庫するC58
盛岡駅西口から南に進むとあるのが盛岡車両センターSL検修庫です。ここでC58型239号機は点検や給水に石炭の補給を行い、運行に備えます。

この検修庫は24時間見学スポットが解放されており、下り列車運行日は朝7時ごろから1時間ほど出発の準備を、上り列車運行日は18頃から30分ほど機関車を車庫に入れる様子を見ることが出来ました。

列車が出る・入る時に方向転換するため、転車台で機関車を回転させます。その姿も見どころたっぷりで、運転手さんが汽笛を鳴らすサービスも行ってくれました。

※転車台…車両を回転させる台のこと。電車と違ってSLは運転台が片方向にしかついていないため、転車台で方向を反対にする必要がある。

機関庫出庫の様子

客車と連結する盛岡駅

機関車とは別に客車は盛岡駅西口から北側に進んだ盛岡車両センターに停車していて、そこで検査や給油を行います。

なのでSLと客車をどこかで連結や切り離す必要があり、それを盛岡駅構内で行います。下りの連結の場合は8:20頃、上りの切り離しの場合は17:30頃駅ホームで実施されています。

客車が機関車を引っ張る珍風景

盛岡駅を発車する回送列車
「盛岡~花巻」間は回送でお客さんは乗せないのですが、その回送姿が非常に独特です。

盛岡から釜石に列車が向かう場合、花巻の線路の配線の関係で列車は花巻駅で、進行方向が前後逆転をします。しかし、花巻駅には機関車の向きを変える転車台はありません。そのためバックで「盛岡~花巻」間を走るのですが、その時後ろについてる客車がSLを引っ張って走る、日本でここだけの姿を見ることができました。

しかもそのスピードが遅いため、盛岡駅で発車を見送っても後から出発する普通列車で追い越して、先に花巻駅に到着することが出来ます。(その逆パターンの花巻駅から盛岡駅でも可能)なので、盛岡での転車台や連結を見てからも列車に乗ることが出来ました。

花巻駅回送から入庫までの様子
最初に回送の映像が見れます。

平野・山 様々な姿を見せる釜石線

釜石線は花巻~釜石間を結ぶローカル線です。足ヶ瀬駅周辺を頂点に、内陸部の平野から峠を抜けて太平洋側の釜石に抜けるローカル線です。そのため区間によって様々な姿を見せます。

川に沿って田畑を走る「花巻~春山」間

花巻を出ると春山駅のあたりまではのどかな景色を走ります。まだのこの辺りは勾配が緩く、SLも軽快に走ることが出来ます。景色も田んぼが多く、猿ヶ石川に沿って線路は走ります。

めがね橋を越えて 「春山~遠野」間

めがね橋を通過するSL銀河
めがね橋を通過するSL銀河
「春山~遠野」間はまだ勾配はきつくないものの、少し山に入ってきます。この区間で特に有名なのは、「宮守~柏木平」間にかかる通称めがね橋です。

めがね橋は宮守駅近くにある橋で、正式名称は宮守川橋梁です。愛称の由来は橋の構造で、コンクリート製のアーチ構造がめがねに似ているため付きました。谷状になっている宮守川付近を越えるために作られ高さも17m以上あるので、下から見ても乗って見ても迫力があります。

見方によっては列車が空を飛ぶように見え、宮沢賢治の銀河鉄道の夜のモデルになったとも言われています。

私も降りてSL銀河の走る姿を見ましたが、本当に空を走るようで美しかったです。

河童の町 遠野

遠野駅でC58形の石炭を均す乗務員
遠野駅で炭水車の石炭を均す様子
SL銀河が上りも下りも長時間停車するのが遠野駅です。この駅ではSLの簡単な点検の他、給水を行います。上りの場合釜石から遠野までで、水を5t以上使ってしまいます。SLは最大17tの水を積めるので終点までに切れてしまうことはありませんが、万全を期すためにもここで補給します。到着後すぐにこの作業は実施され、列車の到着の合間を縫って再度連結されます。

遠野駅でのC58への注油
遠野駅での駆動部への注油
大きな作業は遠野駅のみで行われますが、古い蒸気機関車はデリケートのため、殆どの駅で停車時に車軸の温度を測ったりして、状態を監視する作業は行われています。

また遠野は河童で有名な街です。遠野物語で紹介され、日本中で有名になりました。駅前の交番も河童型だったり、なんか不気味な河童の絵があったり町を挙げて河童を推しています。

遠野駅停車中の快速SL銀河の車内
遠野駅停車中の車内
長時間停車で殆どの乗客が降りている
河童が言われるというカッパ淵までは5kmほどあるので、タクシーを使えばギリギリ戻ってこれるくらいの距離なので、駅前で散策というのが無難なルートです。駅前散策なら1時間以上あるのでお昼を食べたり、ちょっとしたお茶したりと色々楽しめます。

ちなみにカッパ淵は本当に居るのか!?ってくらい浅かったりします。妖怪だから多分大丈夫なんでしょう… そして遠野物語は青空文庫で無料で読めるので一度読むのに超おすすめです。

峠越えの「足ヶ瀬~陸中大橋」間

遠野を越えるといよいよ峠越えです。足ヶ瀬駅を頂点に仙人峠という峠となっており、そこを越えると釜石まで下っていきます。途中いくつも見どころがあります。

足ヶ瀬~陸中大橋間はほとんどがトンネルとなっています。特に上有住~陸中大橋間は勾配がきつい区間です。直線で線路を結ぶと勾配が急過ぎる、オメガ型に線路が敷設されており、オメガループの愛称で呼ばれています。

この区間は勾配を緩和した形であってもなお、蒸気機関車にとっては厳しい急勾配区間となります。花巻行きの上りSL銀河の場合、機関車だけの自走で上りきることは出来るのですが、トンネル内を低速で大量の煙を吐き出しながら上ることになり、機関車の機関士が大変なだけでなく、隙間から車内に煙が入り込むため乗客も大変です。その急勾配を克服するために連結しているのが、客車のキハ141系です。

協調運転中のキハ141系の運転台
協調運転中の運転台
ブレーキレバーは刺さっていない
SL銀河の客車は気動車を改造した車両で、ディーゼルエンジンが搭載されています。そこで客車側にも運転手が乗り込み、上り勾配では蒸気機関士の機関士たちと無線で連携し、必要に応じてエンジンで客車で機関車を押し上げます。ブレーキに関しては機関車側で一括制御しているため、客車の運転手は操作しないのも特徴です。このような別の駆動方式の列車同士が協力して運転するのを、協調運転と言います。このような客車が機関車を押し上げる方式は、SL銀河だけで行われていました。

上りの足ヶ瀬~陸中大橋間が協調運転の主な実施区間ですが、雨であったり秋で枯れ葉で線路が滑りやすい場合は、それ以外の区間でも実施し、定時運行を出来るようにしています。釜石線は太平洋側勾配のほうがきついので、特に上り列車は、釜石を出て上り区間に入ったらすぐ実施する場合もあります。

また、足ヶ瀬駅は峠の頂点にあたるため、駅に到達すれば列車の難所は乗り越えたことになります。そこで乗客の乗り降りのない運転停車を行って、勾配を上った機関車の不具合が無いか確認する作業が実施されます。

鉱山の積み込み設備の残る陸中大橋駅

陸中大橋駅のホッパーの遺構
陸中大橋駅のホッパーの遺構
釜石と言えば明治時代からの製鉄の町ですが、それを支えた鉱山が釜石鉱山です。釜石鉱山は陸中大橋駅は、その鉱山からの鉱石の積み込みを行う駅でした。そのためホッパーと呼ばれる上から鉱石を貨車に落として積み込む設備の遺構が残っています。

SL銀河は列車の行き違いのために上下ともに、少し長めに停車します。なので、停車中にホームからその遺構を見ることが出来ます。

もう一つの起点 釜石駅

陸中大橋駅も過ぎると30分ほどで海辺の町釜石駅です。SL銀河の終着駅です。

釜石駅の転車台で方向転換するC58形
転車台で方向転換するC58
SL銀河は釜石駅に到着すると、機関車は客車と切り離されます。駅の南側の列車到着後歩いて見に行くことが出来る距離にあり、まずそこで機関車が方向転換をします。なので、転車台に乗るのは到着時だけです。

釜石駅で炭水車に石炭を積み込むC58形
炭水車に石炭を積み込むC58形
SL銀河は片道で約2tの石炭を消費します。なので、無補給の場合盛岡までの往復は心もとない状況です。そこで釜石駅で、石炭の補給を行います。石炭の積み込みをホイールローダーによって行い、積み込んだ石炭を機関士さんが炭水車の上に乗って均す貴重な光景を見ることが出来ます。その後簡単な整備を行い翌日へ備えます。

切り離された客車も簡単な整備を行います。簡単な清掃だけでなくディーゼル車のため、給油を行って翌日までホームに留め置かれます。

釜石駅での出発準備の様子

大人数で支えるSL銀河の運行

今時の電車であれば運転手さんと車掌さんの二人か、運転手さんだけの一人で長い通勤電車を運行できます。しかし、SL銀河ではそれと比べ物にならない人数で運行しています。

まず蒸気機関車だけで、最低2人が必要です。蒸気機関車は運転手さんにあたる機関士さんの他に、釜に石炭をくべる機関助士の最低二人が必要です。SL銀河では長時間での運転のため、機関助士が2人いるので機関車だけでも3人乗っています。

そして客車側にも複数名乗っています。まず協調運転をするための、客車の運転士さんが1人に走行中の不備に備える整備関係の乗務員さんが1人乗っています。それに加えてドアの開け閉めや検札をする車掌さんが2人乗っています。

これに加えて観光列車であるため、ラウンジカーでの物販や車内のプラネタリウムを案内したりする販売さんが2人乗っています。

そして場合によっては更に乗り込むことも想定できるため、9名を超える人たちにより運行されており、以下に手間がかかっているか分かります。

夢へ消える銀河鉄道

このように非常に魅力的な運行を行う列車だったのですが、廃止になってしまいます。車両数がたったの4両で、1日に片道運行しか出来ない列車かつ、乗務員も非常に多く乗っているので完全にボランティア列車です。キハ141系の誕生経緯を考えると、客車は限界近いものがあります。

もうちょっと値段が上げてキハ110なんかを改造して運行という方法もあるのでしょうが、あまり高いと乗る人も減り、それでも黒字にするのは難しいのを考えると運行継続は難しいのでしょう。

ローカル線の経営が厳しさを増すのを考えると、不採算列車は切り捨てるしかないのでしょうが、ますます人を呼び込むのが難しくなるのは明白です。モチーフとなった銀河鉄道の夜同様、はかない旅路が決まっていた列車なのかもしれません。


2023年6月10日土曜日

さらば快速SL銀河 - 車両編C58形・キハ141系




  2023年6月11日で運行を終了する快速 SL銀河の蒸気機関車や客車について解説します。

蒸気機関車とディーゼル車の珍列車

SL銀河は蒸気機関車での運行で、蒸気機関車での運行自体が珍しいものでした。しかし、それだけでなく上り勾配など蒸気機関車だけでは辛い場面では、ディーゼルカーを改造した客車が蒸気機関車を押していく珍しい運行形式でした。客車の老朽化が理由で、2023年6月11日の臨時運行を最後に運行を終了しました。

この記事では車両を中心に紹介します。ダイヤや見どころなどは下記の別記事で紹介しています。

日本で2列車だけのC58形

釜石線釜石駅停車中のC58形239号機
釜石駅停車中のC58形239号機
JR東日本はC57形180号機・C58形239号機・D51形498号機・C61形20号機の4両の蒸気機関車を所有しています。

その中でSL銀河で使われている蒸気機関車はC58形239号機です。電車でも通勤用や特急用といったように役割があるように、蒸気機関車にも役割があります。C58はローカル線用の客車と貨物両方を牽引するための蒸気機関車でした。そのためパワーを抑えて軽くした設計にし、路盤が幹線より貧弱なローカル線に入ることが出来るようになっています。

JR東日本の他の蒸気機関車と比較すると、役割による違いが分かります。C58は他の3車種の機関車より車体が軽く、客車を引くパワーが弱くなっています。速度はC57とC61が旅客用で最高速度が100km/hに対し、C58は貨物用でパワーに割り振っているD51と同じ85km/hで抑えめになっています。

C58形の運行はSL銀河の他、秩父鉄道のパレオエクスプレスでも使用されていて、日本ではこの2列車でしか見ることが出来ません。秩父鉄道で活躍するのは、363号機です。

C58形は431両製造されたので、途中で仕様変更が行われています。383号機以降ではボイラーの拡大や炭水車の容量アップが行われました。SL銀河やパレオエクスプレスで使用されているのは383号機より前の車両なので、言わば前期型と言えるタイプのC58形です。

東北で活躍した239号機

239号機は1940年に製造され、1972年まで活躍した車両です。川崎重工で製造され、最初は愛知県稲沢機関区に配置、1年で奈良機関区へ転属、2年後の1943年には岩手県宮古機関区へ転属し約30年活躍、1970年に盛岡機関区へ、翌年1971年に八戸機関区へ最後の転属、そして1年の活躍のちに休車となり、1972年に正式に廃車となりました。

個人サイトなどを参考にさせていただいたのでやや怪しい部分もあるのですが、所属機関区から考えるに東北地区で活躍するも、釜石線での活躍はあまり無かったようです。宮古機関区時代は山田線・小本線(岩泉線)、八戸機関区時代は八戸線での活躍が中心だったと推測されます。ただ、釜石線でのC58の運行はちゃんと存在していました。

その後盛岡市にある岩手県営運動公園で1973年から2012年まで保存されました。屋外でしたが、屋根付きだったので良い状態で保存することが出来ていました。

そこで東日本大震災の復興支援を兼ねたSL銀河運行計画が立ち上がり、2012年に運びだされ2013年に運転可能な状態へ、2014年にはSL銀河として運行を開始しました。運行可能にするにあたって、当時からあった設備を元にするだけでなく改造も行われました。

C58形239号機のスノプロー
C58形239号機のスノプロー
緑色のATS車上子も見える
まず信号設備をATS-P・Psの搭載、防護無線用にデジタル無線も搭載しています。これによりJR東日本ほとんどの路線を走行可能です。

それに加えて外観の改造として保存時からの変更で、ヘッドライトは形状を変えず違う型番のものに、スノープローを小型のものに、重油タンクのボイラー上から炭水車への移設、集煙装置の撤去を行っています。

スノープロー … 列車の先頭に取り付けられた小型の雪かき
重油タンク … 蒸気機関車は燃焼パワーを上げるために重油も一緒に燃やすタイプも多く存在する。そのために重油のタンクも付いている。
集煙装置 … 煙突に付ける煙の流れを変える装置。トンネル内などで使用し、煙を後ろに流すようにして、機関車の乗務員が煙にまかれるのを防ぐ。

改造に改造を重ねたキハ141系700番台

蒸気機関車と同じぐらい重要なのがキハ141系です。釜石線は太平洋側に急勾配のトンネル区間があり、機関車だけで登ることも出来るのですが、煙が多くなり機関士と乗客両方がきつくなること、雨や落葉の季節は滑りやすくなり列車の定時運行が難しくなるため、客車にもエンジンが付いていて、SLを押し上げます。

そのために採用されたのがキハ141系なのですが、この車両誕生からSL銀河の客車になるまでが、独特な車両です。キハ141系は客車を改造してディーゼルカーにした車両です。なので、客車→ディーゼルカー→客車という変わった経歴を持っています。

苦肉の策で生まれた50系

キハ141系は50系客車が勿体ないという理由で生まれたのですが、まず50系の誕生の経緯も独特なので簡単に紹介します。

50系は国鉄時代に作られた普通列車用では最後の世代の客車です。50系が作られた1970年ごろには、古くなった客車列車は電車かディーゼルカーにする方針で、新しい列車はどちらかを中心に作られていました。ただ、それだけでは更新が追い付かず、貨物の減少で電気・ディーゼルカー機関車余っており、労組との兼ね合いもあって、地方の混雑路線用に、妥協案として作られたのが50系客車です。

そのため通勤列車を意識したお金をかけない構造で、出来るだけシンプルな構造に大型の引き戸の乗降口、つり革のあるセミクロスシートが採用されました。

本州向けが50系、北海道向けに窓・発電機・ブレーキを寒冷地仕様にした51系が、1978年から1982年に作られました。

勿体ないから生まれたキハ141系

千歳線札幌駅停車中のキハ141系
札幌駅停車中のキハ141系
50系自体が客車からの転換の過渡期に生まれたので、当然すぐに役目を終えていきます。国鉄からJR北海道になり、余った51系を再利用しようとして生まれたのがキハ141系です。沿線の発展で混雑するようになった札沼線向けに、車体をなるべるそのまま再利用し、エンジンを載せてディーゼルカーにしたて上げました。

キハ141系のうちキハ141・142形とキサハ143形は、もっとも安くしたて上げられた車両です。台車は古い急行用のキハ56系からの廃車発生品を利用し、その他の必要部品は新しいものを使っています。キハ141・142形は1990~1995年にかけて作られました。エンジンを持たないキサハ143形は1995年に作られました。

パワーアップ型として、当時最新のキハ150系の部品を使って台車も新しいものを使ったキハ143形も1994~95年に作られました。

そしてまた客車になったキハ141系700番台

釜石線釜石駅停車中のキハ141系700番台
釜石線釜石駅停車中の
キハ141系700番台
そしてSL銀河の運行の時改造用の気動車として白羽の矢が立ったのがキハ141系です。札沼線の混雑区間が2012年に電化されたので、気動車であった141系が余る状況となっていました。それに目を付けたJR東日本がJR北海道から入手した流れです。JR北海道からエンジン付きのキハ141・キハ143形1両づつと、エンジン無しのキサハ144形2両が導入されました。外観・内装と走行機器両面から改造が行われました。

釜石線釜石駅停車中のキハ142-701
キハ142-701
車両により様々な星座がデザインされている
見た目の改造は宮沢賢治の銀河鉄道をモチーフに改造されています。外観は青をベースに星座がデザインされました。

キハ141系700番台車内
改造されたボックスシート
内装は元の通勤仕様から、古い客車風のボックスシートへ変更された他、車内販売のあるラウンジカーやミニプラネタリウムが設置され、完全に観光仕様に変更されています。

走行機器はキハ141・キハ143形共にエンジンが換装され、信号システムをATS-SnからJR東日本用のATS-Psに変更、防護無線をデジタル式に交換されました。

それに加えてSL専用の装備として、SLと情報をやりとりする機能が追加されています。協調運転時に信号システムのデータのやり取りが出来るようになった他、デリケートなSLの車軸の温度を客車側から監視するシステムが搭載されました。

SLはまだまだ走れるが客車は本当に厳しい

SL銀河の運行終了後の車両の行方ですが、機関車は何らかの形で活用され客車は廃車という流れになりそうです。

先ほど紹介したようにキハ141系は、40年前に製造された客車をベースに改造して生まれた車両です。更に走っていたのが北海道で、雪により腐食しやすい環境でした。もちろんSL用に改造するにあたって改修もしていますが、今後さらに走るのであれば更なる改修が必要になってくると思われます。

一方で機関車のほうはJR東日本であればどこでも走れるよう改修されているので、元々長期で使用されることが想定されていると思われます。

ただ、客車については改修してから10年程度なので、もう少しは走れてもおかしくなかったと思うので、JRの経営状況で前倒した感も否めないところもあります。


2022年7月13日水曜日

キハ281系・キハ283系引退へ スーパー特急挑戦と妥協と挫折の歴史




まもなく定期運用を引退する、JR北海道の高速化とその終わりのきっかけを作った振り子式ディーゼル特急車両キハ281系とキハ283系を紹介します。

記事作成日: 2021.09.17/記事更新日: 2022.07.13

千歳線を走る特急「スーパー北斗」キハ281系
キハ281系
千歳線を走る特急「スーパー北斗」

JR後高速化に取り組んだJR北海道

キハ281系とキハ283系の話をする前に外せないのが路線の高速化の話です。

JR各社はJR化後に、それぞれ高速化への取り組みを行っていました。JR北海道も例外ではなく、「函館本線高速化事業・根室本線石勝線高速化事業・宗谷本線高速化事業」などが実施されました。

理想で言えば線路自体での作り直しですが、当然莫大な費用が発生するので無理な話です。そのため高速化事業は、妥協案として路盤の強化やポイント通過速度の向上など既存の路線を最大限利用しての高速化が実施されました。

しかし線路などの地上設備の改良だけでは高速化は十分ではありません。そこで投入されたのがキハ281系とキハ283系です。

函館本線の切り札キハ281系

JR独自で行った函館から札幌へ向かう列車の所要時間を短縮すべく、函館本線高速化事業と合わせて1992年から27両導入されたのがキハ281系です。1994年より特急「スーパー北斗」として運行を開始しました。特急「北斗」より30分以上の大幅な高速化が実現しました。

雪の千歳線を走るキハ281系
キハ281系
雪の千歳線を走る
国鉄時代から函館本線で運行されてたいキハ183系は、エンジンのパワーアップにブレーキの強化で高速化が図られていましたが当然限界もあります。

そこでJR四国の2000系をベースに、雪にも強いようJR北海道用にカスタマイズして開発されたのがキハ281系です。キハ183系と同じ強力なエンジンやブレーキを搭載するだけでなく、車両がカーブを通過する時に傾けるための装置「制御自然振り子装置」を搭載しました。この装置は台車の構造が複雑になるものの、あらかじめ高速走行に耐えられるよう路盤を強化することで、カーブ通過時に列車の車体を傾け乗り心地を損なわず通過することが可能になります。これにより日本初のディーゼル特急130km/h運転と、カーブ通過時の速度を振り子装置が無い通常列車と比べ最大30km/hも引き上げることが可能になりました。

完成系として更なる高みを目指したキハ283系

根室本線石勝線高速化事業に合わせて、1995年から「スーパーとかち」用などに38両が導入されたのがキハ283系です。1997年より「スーパーおおぞら」として運行を開始し、「おおぞら」より40分以上の時間短縮を実現しました。その後「スーパー北斗」や「スーパーとかち」でも利用が開始されました。

札幌駅停車中のキハ283系特急車両
札幌駅停車中のキハ283系

函館本線と同じく、線路と車両の両面からの高速化ということで実施されました。この事業では線路など地上設備を第三セクターの道東高速鉄道開発(現在の北海道高速鉄道開発)が改良しJR北海道へレンタル、車両側をJR北海道が用意することになりました。

基本的な設計はキハ281系と同じですが、走る線区に合わせた改良やカーブ通過時により滑らかに通過できる自己操舵機能を台車に追加しました。最高速度は130km/hと同じものの、カーブ通過時の速度を通常列車より最大40km/hも引き上げることに成功しました。

この車両の設計最高速度は145km/hでまだ速度には余裕がありました。そのため2000年に一部車両に140km/h対応工事、2006年には一部車両に振り子装置に空気バネ車体傾斜装置を組み込んだ実験を行い、更なる高速化や新型車両につながる実験をしていました。

このようにキハ281系とキハ283系はJR北海道の高速化に多大な貢献したのです。

JR北海道の綻びを露わにしたのもスーパー特急

JR化後に高速化を続けてきたJR北海道ですが、2011年にキハ283系のエンジンシャフトが脱落する大事故が起きました。乗客の機転によりけが人が出なかったのは奇跡としか言いようがないものでした。その後も他の鉄道会社ではありえない事故が頻発し、経営体質が問題となります。

事故の原因はJR化後努力はしてきたものの、人口減少や経済成長の低迷で思ったより収益伸びず経営が悪化したこと、国鉄分割時の見通しの甘さなどがあります。結果コスト削減を車両や人材全ての面で行うしかなくなったのですが、そのやり方にも問題があり様々な事故に繋がりました。

経営改善策として特急の速度ダウンなど身の丈に合わない高速運転の見直しや、国鉄時代の車両を中心とした新型車に置き換えてのコスト削減と安全性向上、赤字路線や駅の廃止など多岐にわたることが今も実行されています。

スーパー特急故の高コスト体質

高速運転の見直しは結果としてキハ281系とキハ283系の引退を決定づけました。

高速運転は車両にも線路にも負担をかけるため、両面からコストが上がります。なので最高速度とカーブ通過時の速度を下げるだけでコストカットになります。それに合わせて全ての車体傾斜装置も使用を停止しました。

苗穂にて留置中のキハ261系
キハ261系0番台
苗穂の留置線にて

振り子式は複雑な装置と紹介しましたが、複雑な分整備コストもかかります。それなのに速度を落としてカーブ通過時の高速運転をしないのですから、鉄道会社としてはただのお荷物装置です。おまけに長距離を高速走行していた車両は痛みも通常より激しいものとなります。

経営悪化の中唯一の明るい話題だった海外からの外国人客の流入も完全に停止しました。それらの理由から本来であればメンテナンスをすれば十分使える車両でも、国鉄型のキハ183系と共にキハ261系1000番台で置き換えられることになりました。

キハ261系は宗谷本線高速化事業と合わせて「振り子装置」の代わりに「空気式車体傾斜装置」を採用し、製造とメンテナンスコストを抑えてカーブ通過時に最大25km/hの速度アップを実現した車両です。置き換えは0番台から1000番台1~4次車までは付いていた空気式車体傾斜装置を省き、更にコスト削減した5次車以降のキハ261系1000番台で行われています。それに合わせて空気式車体傾斜装置搭載している既存の車両も、取り外し工事が実施されています。

2022年度より定期運用離脱開始

2022年現在ではキハ281系は特急「北斗」でのみ使用されており、2022年9月いっぱいで、定期運行からは離脱します。元々2019年発表の「JR北海道グループ中期経営計画2023」で、2022年度中の運用離脱が記載されていました。27両の在籍を考えると、2022年度分のキハ261系新製で2022年度中に運用離脱は微妙に思えましたが、定期運用からは予定通りの離脱決定となりました。

外国人客が多い状況が続いていれば何らかの活用法があったかもしれませんが、現在の状況では定期運用離脱後はキハ281系はそのまま廃車になる可能性高いと予想します。

一方キハ283系は特急2021年9月に発表の2022年春のダイヤ改正で「おおぞら」のキハ261系化が決まり、2022年3月で定期運用を離脱しました。このまま一時的な臨時運行で使用されたのちに廃車となるかと思われましたが、新たな活躍の場が与えられることなりました。JR北海道の定期特急で最も古い車両をキハ183系で運行されている「オホーツク」「大雪」で、2023年3月から運行が開始される予定です。キハ283系置き換え分のキハ261系の増備は今のところ予定されていないのですが、今後長期間の運用になるか短期間でのつなぎでの運用となるかは見守っていきたいところです。

北海道内の高速道路・バイパス延伸の対抗や交通による環境負荷問題などを考えると、再び高速化をして鉄道利用を促す必要があります。

対策が必要なのは各方面重々理解はしていても、何も出来ず緩やかな衰退しか見通せないのが現状です。どこも最低限しか支援の余裕はなく、投資にせよ廃止にせよ思い切った決断が出来ない鉄道に限らない社会情勢もあるからです。

鉄道ファンとしてはJR発足時のようにチャレンジ精神あふれるJR北海道の姿を再び見れることを、たとえ願望と言われようと強く望んでいます。

※記事の一部にご指摘があり修正いたしました。ご指摘ありがとうございます。


2022年6月18日土曜日

電車の顔の話 普通電車編 - 鉄道雑学




列車の顔と呼べる先頭車両のデザインですが、目的や会社によって色々な形があります。そんな列車の顔について見ていきたいと思います。今回は比較的新しい普通列車を中心に紹介します。

列車には目的ごとの顔がある

JR東日本E231系とE233系
JR東日本E231系とE233系
先頭車両のデザイン、列車の顔と呼べるデザインに明確なルールがあるわけではありませんが、傾向はあります。

普通列車は機能性を最優先したデザイン。特急列車では機能性だけでなく、会社のイメージにも繋がるため、デザイン性を重視したデザイン。新幹線であれば速度を重視したデザインになっています。

今回は比較的新しい普通列車のデザインを見ていきたいと思います。

コストと機能を優先したい普通電車

普通列車のデザインは箱型のデザインが多い傾向にあります。お客さんを安く快適に沢山乗せるには、まずスペースが重要です。そのため最もスペースが有効利用できる箱型になります。それに加えて走る場所によって、乗客の多さ・連結の必要性・気象条件に合わせての装備が考慮されます。

特に通勤列車は大量の車両を用意する必要があり、単純化されたデザインが理想です。単純なデザインであれば破損したときの修理も簡単ですし、平面的なら掃除の手間も減ります。

方向性としては同じはずですが、各社こだわりがありデザインでは結構違ったものとなります。

例えば、JR東日本は装飾は最低限でシンプルなデザインを採用する傾向にあります。特にE231系以降の通勤電車はその傾向が強い車両が多いです。

一方で私鉄は住宅地開発など沿線事業も手掛けることからイメージを大事にします。そのためコストがかかってもデザインを重視することがあります。相鉄の新車では車のようなグリルがありますが、ラジエーターを冷やす必要のない鉄道では無意味なものです。本当にデザインのためだけに、お金をかけているのです。

通勤電車の顔

それでは各社の通勤電車の顔を見ていきたいと思います。

JR東日本E235系
JR東日本E235系
JR東日本の通勤電車の最新形式のE235系です。非常にシンブルなデザインで、大型の一枚窓を採用し、上部にヘッドライトとテールライトと行先表示機を備える最小限の構成です。窓ガラスが大きいため、非常に見晴らしの良い構造になっています。

JR東日本の場合、以前は山手線など混雑する首都圏を走る短距離を走る通勤電車と、混雑はするものの駅間の長い郊外を走る首都圏の郊外電車で設計を変えていました。今では効率化と技術の進歩で、通勤電車に寄せた共通のデザインとなっています。

JR西日本323系
JR西日本323系
JR西日本の大阪環状線323系です。大阪環状線という通勤路線の特性を考えれば、大型の一枚窓の構成でも良いのですが、JR東日本とは対照的に近郊型車両に寄せて共通化されています。

東京メトロ17000系
東京メトロ17000系
JR東日本とは違い3分割された構造の東京メトロ17000系です。地下鉄車両は非常用脱出扉を前面に設けることが必須なので、そのため扉があります。ただし、非常用で普段は使わないので片側に寄せることで、出来るだけ運転手の視界を確保しています。ある程度曲面も使われており、そこはコストのかかっている部分のはずです。

京王電鉄9000系
京王電鉄9000系
京王電鉄9000系です。都営新宿線に乗り入れるために、非常用の貫通扉を設けています。東京メトロと違い、貫通扉は端に寄せないデザインを採用しています。コストのかかる曲面ガラスを採用して、運転手の側面の視界を確保しているのがポイントです。

相模鉄道12000系
相模鉄道12000系
通勤電車ではかなり例外的な見た目重視の相模鉄道12000系です。車のようなデザインで、ヘッドライトはリング状のデザインが入り、フロントグリルのような装飾が施されています。鉄道でいえば完全に不要な装備で、デザインのためだけのものです。これは相鉄のブランド戦略の一環で、鉄道車両以外も含めてデザイン性を高め企業価値を高めようとするものです。車両カラーリングではよく見られますが、通勤電車のデザインでここまでやるのは珍しい方だと思います。

静岡鉄道A3000形
静岡鉄道A3000形
静岡鉄道のA3000形です。静岡鉄道は清水市など静岡県の都市部を走る私鉄です。地方私鉄は中古車を導入することが多いのですが、都市部で運行しているので比較的経営基盤が強く、自社設計の新型車両を導入しています。

都市部で需要が安定しているため、2両の固定編成での運行で貫通扉はありません。こちらもデザイン性を重視しており、コストアップに繋がる編成によって異なるカラーリングを採用しています。

近郊型やローカル線のデザイン

都心部近郊やローカル線のデザインも基本は同じですが、需要に合わせて連結できるようになっていることが多く、そのため通路用の貫通扉を設けることが多いです。また、地方の非電化私鉄では、新潟トランシスの車両が採用されることが多く、よく見ると似ていることが多いのです。

JR東日本E721系
JR東日本E721系
東北地区を中心に活躍する、JR東日本E721系です。首都圏以外のJR東日本の車両は、連結や雪を考慮した構造となっています。そのため中心に貫通扉を装備し、連結時は車内の通行が出来る設計が多く採用されています。

JR北海道733系
JR北海道733系
札幌近郊で活躍するJR北海道733系です。中心に貫通扉を設け、連結時を考慮するのは他と同じです。それに加えて北海道は積雪も多く、駅間距離が長く高速走行を行います。そのためヘッドライトの数を多くし、視界確保や列車の接近をわかりやすくしています。

どの鉄道車両も踏切などでの衝突時に、運転手の安全確をする構造となっています。JR北海道の車両は、普通よりも運転台も高い位置にし前面を厚みのある構造にすることで、衝突の時の安全性がより高いものとなっています。

JR東日本GV-E400形
JR東日本GV-E400形
JR東日本の最新式電気式気動車のGV-E400形です。東北や新潟地区で活躍しています。こちらもヘッドライト上部に付け、中心に貫通扉を設けて連結を対応しています。ローカル線は最初1両単位で運行されるので、乗客数に柔軟に対応出来るよう1両から数両の連結を考慮した設計が一般的です。

JR北海道H100形
JR北海道H100形
こちらはGV-E400形の兄弟車にあたるJR北海道H100形です。全く同じでも良いのですが、733系同様の理由だと思いますがライトが運転台下にも増設されているのが分かります。

鹿島臨海鉄道8000形
鹿島臨海鉄道8000形
鹿島臨海鉄道8000形です。この車両は非電化私鉄では多く採用されている新潟トランシス製の車両です。ライトの位置が違ったりはしますが、新潟トランシスの車両はよく見ると似ている部分があったりします。

今回の紹介はここまででざっくりした解説として各社の傾向などを紹介しました。他にも色々な顔の理由があるので、是非どうしてそういう形なのか考えてみると楽しいと思います。


2022年6月12日日曜日

上越新幹線275km/h運転復活とさよならE2系




 JR東日本は2022年6月7日に、2023年春から上越新幹線の最高速度を再び275km/hへ引き上げると発表しました。これと同時上越新幹線より2022年度末にE2系を引退させ、E7系に統一すると発表しました。今回は再び275km/h化されること、E2系がこのタイミングで引退する理由を考察します。

今回は全区間で275km/h化

JR東日本E2系新幹線
上越新幹線から引退するE2系
写真の下枠交差パンタグラフのタイプは
既に引退済み
275km/hに速度が引き上げられるのは、「大宮~新潟」間で上越新幹線全区間となります。現在同区間は240km/hが最高速度で、30km/h速くなることになります。後述しますが、以前は下り一部列車が一部区間でのみ275km/h運転が実施されていました。

これにより所要時間が最大7分短縮されると発表しています。275km/hで運行するのはE7系です。E7系は設計こそ275km/hですが、260km/hでの運行しかしておらず、これで本来の性能が発揮されることになります。これに合わせて上越新幹線はE7系に統一され、E2系は2022年度末に一足早く上越新幹線から引退となります。

2019年5月にも275km/h化することをJRは発表していたのですが、当時は2022年度末実施予定としていたので、若干計画は遅れたことになります。

高速化発表化以降、車両を使った試験や工事などを進めてきました。速度が上がれば騒音も増えるので、防音壁のかさ上げや形状の変更、吸音壁を設置することで騒音が大きくならない工事が実施されています。また、高速走行をするとどうしても架線が揺れやすくなるので、架線をより強く引っ張って張る工事を行うことで、地上設備でも高速化を実施しました。

復活する275km/h運転

1990年3月10日~1999年12月4日の間で、「上毛高原~浦佐」間の下り勾配を利用して、越後湯沢を通過する下り速達列車の一部だけでトンネル区間を中心に275km/h運転を実施していました。

これは谷川連峰を超える際の高低差を利用したもので、上毛高原駅が標高約440m・越後湯沢駅が約355m・浦佐駅が約118mと下りが続いているのが分かります。この区間は半分以上がトンネル区間で、騒音も問題になりにくい構造です。それを利用して275km/h運転を実施していました。(標高は駅中心部の地上1Fを基準にしたものです。)

この列車には、専用の4編成の200系だけが使われていてました。ATC関係を275km/h用に特別改造し、ブレーキ性能や騒音対策が強化され検査基準も厳しくした特別編成でした。

その後275km/hは中止されてるのですが、これは200系以降の車両で車両性能が向上したことや、ほくほく線が開業し「はくたか」乗り換えなど越後湯沢駅の重要性が高まったことが理由とされています。

E7系統一で車両性能向上で275km/h復活へ

JR東日本E7系新幹線
上越・北陸新幹線で活躍する
E7系
2021年10月までは最高速度が240km/hのE4系が上越新幹線で運行されており、これも速度アップの障壁だったと考えられます。

現在上越新幹線で運行しているE2系は、275km/h対応のE2系1000番台で、東北新幹線では275km/hでの運行が可能です。そして、公開されているカタログスペックだけで言えば、E7系と大差はありません。しかし、E7系はE5系の技術を取り入れ、最高速度とスペックを落とした車両なので、E2系よりは性能が高く高速運転しやすいはずです。

また、E2系は順次廃車の進められている古い車両です。安全性や信号制御を考えると、東北新幹線で275km/走っているから、上越新幹線もそのまま走れるという単純な話ではないはずです。走れるか走れないかで言えば上越新幹線でも275km/hで走れるでしょうが、引退が近い車両へ手間をかけるのは得策でないという判断になったのだと思います。

上越新幹線がE7系に統一されることで、すべての車両性能や座席数が統一されることになりまうす。これによりダイヤを考える上で単純化できることや、ダイヤが乱れたときへの対応が楽になります。

東北新幹線でE2系が残る理由としては、最高速度がE2系と同じE3系が速度上のボトルネックとして残っており、E3系は今後置き換えることが予定されているからだと思います。E3系はE2系と連結して運行されているので、E3系の引退と同時期に東北新幹線でのE2系も引退になると予想します。

そういった理由からE2系の置き換えを上越新幹線で先に進め、東北新幹線でのみの運行とし、E7系で統一しての速度向上の実施という判断なのではないしょうか。240km/hを最高速度として、E2系の上越新幹線での繁忙期の臨時運行が今後あるかは、気になるところです。


鼻の短い山形新幹線E8系投入 E3系の終焉へ




JR東日本は2020年3月3日に山形新幹線へE8系を投入し、福島駅のアプローチ線の改良を行うと発表しました。E8系の特徴を中心に解説します。
記事作成: 2020.03.03/記事更新日: 2022.06.12

鼻は短く最高速度300km/hで定員重視

JR東日本E3系2000番台
山形新幹線E3系2000番台
E8系は2024年春から運行開始で、E5系との併結で東北新幹線走行時の速度が275km/hから300km/hに引き上げられます。2024春から2026年にかけて導入予定です。

基本的な構成はE6系に準じたものとなりますが、大きく違うのは速度と定員です。E6系は鼻が尖っている先頭部13m、最高速度320km/h、定員330名(グリーン車22名)、荷物スペース四か所、車椅子スペース一か所です。対してE8系は先頭部9m、最高速度300km/h、定員355名(グリーン車26名)、荷物スペース七か所、車椅子スペース二か所となります。

E6系は「こまち」として「はやぶさ」と連結して、東北新幹線内は最速達列車として運行しています。一方でE3系は「つばさ」として「やまびこ」と連結して運転していますが、「やまびこ」は元々停車駅が「はやぶさ」より少し多めに設定されている列車です。また、「こまち」は盛岡まで、「やまびこ」は福島までと、東北新幹線内を走る速度や停車駅が列車の設計に反映された形です。

グリーン車はE6系もE8系も先頭車一両のみで7両編成となっているため、先頭車2両で10名以上の定員が増えていのるが分かります。さらにE8系は大型荷物スペースが全車両に拡大され車椅子スペースが一か所増えているのに定員が増加しており、他の箇所でも定員増加の工夫がされているようです。

E3系からの変更箇所として全車両のフルアクティブサスペンションダンパー化による乗り心地向上、E3系・E6系との違いがコンセントの全席化となっています。カラーリングに関しては現行を踏襲します。

投入編成数としては当初17編成の導入を予定していました。しかし、2022年6月の報道によると、導入決定時より需要が下回る予想となったため、運行中のE3系1000・2000番台の合計数と同じ15編成の導入となります。

導入編成数は減ったものの運行本数に影響はないとしているため、現在の運行本数より減るのではなく、週末に運転されている臨時列車や東北新幹線内での増結編成での運用の調整になるのではないでしょうか。

E3系の終焉へ

E3系は0番台が秋田新幹線に投入され、その後にE3系1000番台と2000番台が投入されました。2022年6月現在では東北新幹線の増結用と山形新幹線用に1000番台・2000番台が活躍しています。

E8系が投入されることで、本来のミニ新幹線としての役目は終わると予想されます。また、増結用編成としては0番台が秋田新幹線引退後活躍したように、1000番台と2000番台が少しだけ活躍するかもしれません。しかし、速度も同時に引き上げられるために、その頃にはE2系も定期運転では引退してるでしょうから唯一のダイヤ上ネックになるため微妙なところです。

福島駅のアプローチ線の改良

福島駅にある奥羽本線から東北新幹線への接続用のアプローチ線は、下り線側のみの単線構造となっています。なのでアプローチ線を上り線にも増設し、複線構造に変更されるのがE8系導入と同時に発表されました。使用開始は2026年度で、E3系の置き換え完了と同時になります。

これにより東北新幹線上での平面交差や単線区間が解消されるために、増発やダイヤ乱れ時の対応がしやすくなります。


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