2021年12月17日金曜日

小田急50000形ロマンスカーVSE 2023年廃車へ- 連接台車の歴史に幕を下ろすか?




小田急電鉄は50000形ロマンスカーVSEの2022年3月11日までの定期運行終了と2023年秋の廃車を、2021年12月21日に発表しました。なぜ廃車に至るかの考察と、今後も連接台車特急の運行自体は可能ということを解説していきます。

定期運行終了の後廃車へ

小田急電鉄50000形VSE
運行を終了する予定の
小田急電鉄50000形VSE
2022年のダイヤ改正前日にあたる2022年3月11日に、50000形特急電車VSEの全編成にあたる計2編成の定期運行を終了すると発表されました。

理由としては車体の経年劣化や機器更新が難しくなってきていることが、プレスリリースに記載されています。

小田急のプレスリリースにも明記されていますが、イベント列車としての運行は継続されるため、完全な運行終了ではありません。繁忙期など臨時列車ので運行もあるかもしれません。しかし、23年秋には引退予定とあるので、定期運行終了後1年程度で廃車が決定しています。

今のところ新型の特急の発表はありません。2022年のダイヤ改正で特急の運行本数が削減されるため、今のところ車両自体が必要ないと考えられます。新型や既存の車両が追加されるかは、旅客需要がどの程度戻ってくるかによるでしょう。

10000形LSEが長野電鉄に譲渡され、富士急には20000形RSEが譲渡され今も活躍しています。前例としてはロマンスカーの譲渡はあり得るので、VSEの譲渡による新天地での活躍も期待したいところです。

コストとホームドアによる影響が大きいか

早期の廃車になったのはコストとホームドアが大きいと思われます。

一般的な鉄道車両では15~20年で制御装置などが古くなるので、その時期に大幅な車両部品の交換を行います。そうしたタイミングで座席などの内装や塗装などの外装にも手を加え、今後15~20年程度使えるようにします。そして30~40年程度を寿命として廃車にするのが一般的です。

VSEは2004~2005年にかけて2編成製造されました。17年経つのでちょうど更新が必要な時期なので、機器の劣化であればそうした措置を行えばよいだけなので、それ自体は運行終了の大きな理由にはなりません。ただ、機器更新は大きなコストがかかるので、何らかの問題がある場合、それを区切りに廃車にする場合もあります。

小田急は1957年に登場した初代ロマンスカーである3000形SE車以降、伝統的に連接台車の特急列車を多く採用してきました。日本での連接台車の採用は少なく近年では路面電車の採用が中心で、近年で特急電車での採用は小田急のみです。そのため車両部品が特殊であることは事実で、編成数が少ないことや特急車両が高速走行で元々高価な部品を使っているのを考慮すると、VSE専用の非常に高価な部品があることは想像できます。

小田急に限らずホームドアの設置が進められていますが、VSEは連接台車であるため通常の特急電車より1両あたりの長さ短くドア位置も変則的であるため、小田急線のホームドア取付の障壁になっていると指摘されていました。現在のホームドアは様々なタイプのものが開発され、VSEへの対応自体は可能だと思います。しかし、VSEだけのために特殊なホームドアを採用しないので済むのであれば、そちらのほうが良いのは間違いありません。

以上のことを考えるとホームドアとVSEの相性が悪かった上に、車両全体の部品を大幅に交換する時期に差し掛かっていたため、この際廃車という方向になったと想像できます。

※連接台車…連接台車は車輪などが取り付けてある台車が、2つの車両の中間にある構造のもの

連接台車特急は復活は出来るが…

今後もホームドアにより連接台車が運行できないかですが、連接台車でも特急という特殊な運用形態上通常のホームドアへの対応は可能です。

特急車両は通勤電車と違い乗降人数が少ない関係で、ドア数が多少減ったりドア位置が変則的でも問題ありません。なので、単純にほかの20メートル車と合うように、ドアがついている車両を設計すれば良いだけの話です。あとはホームドアの開閉プログラムを、ドアがついている箇所のみ開くようすれば良いのです。

さらにロマンスカーならではの利点もあります。一般的な車両では運転台からの乗り降りを考慮して、編成長にあわせた乗務員用の乗り降り設備もホームドアには必要です。ロマンスカーでは運転台が二階にある特殊構造を採用することも多く、その場合は乗客用出入口から乗務員も乗り降りします。なので乗客用のドア位置だけを合わせさえすれば良いのです。

以上から理屈の上では通常のホームドアへの対応は可能です。ただ、本来停車しない駅などへの緊急停車などの非常時を考えると、20mのボギー車が良いのも事実です。色々な事件も増えている現代では、単純なドア位置以外も考慮に入れる必要はあります。

連接台車の意義と小田急らしさ見出せるか?

初代ロマンスカーSE車では軌道へのダメージを最小減にした上で高速走行が可能なよう、技術的な理由から連接台車が採用されました。車両の軽量化・高性能化が進み線路設備が充実した今の小田急電鉄で、技術的な理由で採用をこだわる理由は少なくなっています。小田急でも50000形の先代である30000形EXE、後継である70000形GSEとボギー台車のロマンスカーは多数運行されています。

※ボギー台車…台車が車両に2個付いたいわゆる普通の台車。日本の鉄道車両は基本的にボギー台車です。

しかし、高速走行時有利な物理的特性や、車両ごとを区切らないで済む連接台車ならではの車内づくりができるメリットが全てなくなった分けではありません。50000形VSEが先代30000形EXEの展望席など観光特急らしさの無さと、連接台車の特性を生かしたより快適で特徴ある車内空間を求めて生まれた車両で、それを証明しています。

特急電車でもロマンスカーは箱根への観光列車で、他の特急以上に非日常感を求められる車両です。そういった非日常感を作るために連接台車を採用した、誰もが認める独創的な車両を今後も運行して欲しいと願っています。


2021年11月27日土曜日

205系の異端車 珍しいJR相模線205系500番台を紹介




 205系の中では少し変わった経緯や特色を持つ、相模線用205系のJR東日本205系500番だについて解説します。

205系では珍しい短編成用新製車

橋本駅に到着する205系500番台
橋本駅に到着する
JR205系500番台
相模線の205系500番台は、205系が新規製造時に通勤線区を中心に投入された中、4両編成という短い長さで投入された珍しい車両になります。

205系は国鉄末期からJR初期に製造された通期電車で、回生ブレーキの採用などで高性能・省電力化した反面高価になってしまった201系を反省し、コストを抑えつつ性能と省電力を維持した上に更なる軽量化を進めた通勤電車です。

赤羽駅を出発する埼京線205系
10両編成の
JR埼京線205系
通勤電車であるため新規製造時、初期の国鉄時代投入線区は山手線や東海道線緩行線(関西地区)に投入され、その後のJR発足後の平成初期に阪和線・横浜線・京浜東北線・埼京線・相模線・南武線・中央総武緩行線・京葉線・武蔵野線と通勤線区を中心に新製投入が行われました。

上で挙げた新製時の投入線区を見ると分かりますが、首都圏や関西の混雑線区が中心の投入が行われました。そんな中で郊外線区の特徴が強い相模線への投入は、珍しいものでした。

顔が特注の500番台

相模線205系500番台先頭車両
専用デザインの前面
相模線用の205系は500番台という区分を与えられています。この500番台という区分は、相模線用の205系のみで使われています。つまりその205系だけが持つ特色があります。

205系500番台は1991年春3月16日に相模線電化されるの期に、4両13編成が新製投入が実施されました。そのため全ての車両が1991年1月から電化直前3月までに製造された兄弟車両となっています。13編成のうち第12編成にあたるR12編成中間2両と、R13編成はJR大船工場製造でそれも特徴です。ちなみに大船工場は技術維持のため107系、205系・209系・E217系のごく一部の製造を行いました。

500番台だけの大きな特徴として、前面デザインがあります。JR初期という時代や電化というタイミングもあり、205系500番台の専用のデザインとなっています。地下鉄車両のような、運転台と反対側に縦型の大型窓を採用しています。

丸形ヘッドライトの0番台とは違う前面デザインは、京葉線・武蔵野線用のメルヘン顔と言われたデザイン、阪和線用の前面展望を考慮して運転台側窓をちょっと窓を大きくした205系1000番台があります。

今ではどの205系にも付いているスカートですが、最初から装着しているのはこの205系500番台からとなっています。

短い4両編成

205系のうち新製時に4両で投入されたのは、相模線と阪和線向けの車両だけとなっています。これも一つの特徴です。

もっとも現在は首都圏を中心に、E231系やE233系投入により余剰になった205系を2~4両に短編成化した車両が、新たに日光線・宇都宮線・鶴見線・南武線・仙石線(宮城県)で活躍しているため、短編成の205系というのは珍しくはなくなりました。

原型と改造後の特徴が同居する

205系500番台は投入時からずっと相模線で活躍している車両です。運行時に必要な改造は少しづつ行われているものの、転属時に行われるような改造は行われていないため、登場時の原型と改造後の特徴が同居しているのも特徴です。

JR205系500番台の車内
更新があまりされていない
205系500番台の車内
車内は登場時からあまり改造されていないように見えます。他の205系が転属時などに行った、ドア横の座席の仕切りの増設なども行われていません。つり革も優先席付近以外は登場時に近く、丸形の持ち手にベルトタイプの紐を採用しています。モケットも山手線や埼京線205系などで標準的に使用されていたものが、引き続き採用されています。

205系500番台の白色LEDライト
前面ではヘッドライトは初期の白熱電球タイプから、白色LEDに変更されています。一方で、行先表示器は方向幕タイプで、列車番号表示器は7セグメント表示のデジタルタイプが引き続き採用されています。

205系500番台のJRマーク
先頭車両のJRマーク
側面の行先表示器は方向幕がそのまま採用されています。先頭車両のドア横には最近はあまり見られなくなった大型のJRマークのシールが貼りつけられています。

ドア横には半自動ドアボタンが設置されています。このスイッチは205系では珍しく登場当時から搭載されているのも特徴です。

走行機器は大半がそのまま

走行機器については間違いが無いよう調べたつもりですが、間違いがあった場合はご了承ください。

205系500番台の台車
台車
台車はボルスタレス台車で電動車にDT50Dを採用し、付随車にTR235D採用しています。モーターは120kWのMT61を採用しています。

205系500番台の主制御器と励磁装置
主制御器と励磁装置
主制御機器は登場時のまま界磁添加励磁制御で、主制御機器にCS57形・励磁装置にHS52A形を採用しています。

205系500番台の床下機器
コンプレッサーはレシプロ式でMH-3075A-C2000Mを採用していて、昔ながらのブロロロ!という音を聞くことが出来ます。発電機はDM106で、SIVへの改造は行われていません。

205系500番台の冷房装置のAU75G2M
ベンチレーターと
冷房装置AU75G2M
屋根上の冷房装置はAU75系列を使用していて、私が見た編成ではAU75GMとAU75G2Mを採用していました。そして空気取り入れようのベンチレーターもそのまま付いています。

このように多くの機器は登場時を維持していますが、いくつかの走行機器は更新されています。

更新された205系500番台のパンタグラフPS33E
ひし形パンタグラフPS21より更新された
シングルアームパンタグラフPS33E

パンタグラフは登場時はひし形パタングラフのPS21形を採用していましたが、雪に強くメンテナンスもしやすいシングルアームパンタグラフのPS33E形に変更されています。

モニター装置はPC-98シリーズの産業用版FC-9800をベースにしていたMON5型を採用していましたが、MON3型に更新されています。

さよなら205系500番台

そんな205系500番台ですが、2021年11月18日に新型車両のE131系500・580番台の運行が開始されました。

運行開始まで11月18日までに大半の編成が置き換え可能な9編成が完成しているものの、運用は1日1運用程度にとどまっています。今後順次運用が拡大していくと見られます。

今の置き換えペースであれば来年のダイヤ改正には全てが置き換え完了となりそうです。なので相模線での活躍を見たければ、マナーを守って今年度中をお勧めします。

このまま廃車?

元々郊外線区用に作られたので半自動ドアが付いていて地方私鉄向けにはぴったりな反面、需要の減っている地方では4両は持て余し気味な上に、車内も手を加えられていないので大きな改造が必要な場合多いと思われます。

一方でインドネシアのジャカルタでは4両の205系が走り始めて、需要はありそうです。ただ、インドネシア政府が中古車両の輸入を終了する方向で、205系の輸出は武蔵野線からの分でひとまず終了となっているようなので、そちらも微妙です。

このまま廃車になってしまう可能性は大きそうに思えますが、どうなっていくでしょうか。



2021年10月27日水曜日

山手線大規模運休渋谷駅拡幅工事の臨時列車を振り返る




 2021年10月23~24日の二日間にわたり山手線内回り「池袋~大崎」間を終日運休し、様々な臨時運転を活用し混乱を避けて行われた、山手線渋谷駅拡幅工事について臨時列車を中心に振り返ります。


渋谷駅大規模改修工事の一環で実施

拡幅工事中の山手線内回りホーム
拡幅工事中の山手線内回りホーム
渋谷駅は東急東横線が地下化されて以降、乗り入れ路線の大半を巻き込む大規模な改修工事が続けられています。銀座線・埼京線と湘南新宿ラインホームの移設などが既に行われており、その一環として山手線内回りホームを拡幅工事を行いました。

山手線渋谷駅ホームは内回りと外回りが別々で、二面二線の構造です。今回の工事ではその構造自体には手を加えず、山手線内回りの線路を埼京線・湘南新宿ライン側に数メートル移動し、内回りホームが拡幅されました。

今後は山手線外回り線路を山手線内回り・埼京線・湘南新宿ライン側から反対がに少し移動し、1面2線の島式ホームにする工事が行われる予定です。そのため今度は外回り線の運休を伴う工事が実施されると予想されます。

特別経路の列車などで内回り運休を他の路線で補う

臨時列車が表示される新宿駅の電光掲示板
臨時列車が表示される
新宿駅の電光掲示板
山手線内回りが部分運休したため、様々な方法でその穴を埋めることなったので、後で詳しく解説しますがまずは簡単に説明します。

山手線は外回りは「品川~大崎」間の本数を3分の2に減らして通常通りの環状運転、内回りはだいぶ本数を減らして10分間隔で池袋と大崎駅で折り返し運転を実施しました。

埼京線は本来池袋駅まで行かないりんかい線や相鉄線からの直通列車を折り返しの設備のある、池袋・赤羽・武蔵浦和駅まで延長運転しました。そのため「大崎~池袋」間で、倍近くに本数を増やして運転となりました。

湘南新宿ラインは成田エクスプレスを同じ経路を使った「新宿~品川」間で、30分間隔のピストン列車が運行されました。大崎駅の線路配線上、大崎駅は通過での運転でした。

山手線は外回りも送り込みの関係で減便変則ダイヤ

山手線は内回り線は「大崎~池袋」間が運休で、大崎駅と池袋駅で10分間隔の折り返し運転となりました。一方外回り自体は運休しなかったのですが、内回りの送り込みの関係で「池袋~大崎」間を3分の2に減便の変則ダイヤとなっていました。

今回の運休は内回りと外回り両方を運休させたわけではありません。そのため内回りの折り返し列車を外回りを使って営業列車として、池袋から大崎まで送り込む必要があります。そのため外回り線の運行本数の限界が、山手線全体の運行本数の限界となったのです。

池袋駅では3線を使って折り返し

池袋駅山手線内回り7番線から 発車を待つE235系
池袋駅山手線内回り7番線から
発車を待つE235系
内回り線の列車は通常の列車同様に、まず池袋6番線に入ります。その後列車は池袋駅新宿側にある引き上げ線まで回送されます。そこで折り返して、外回り線へ転線し折り返します。

転線した列車は、新宿方面からの営業列車も到着する7番線と、始発・終着列車専用の東上線横にある8番線ホームから交互に折り返し列車が発車しました。

大崎駅でも3線を使って折り返し

山手線外回り大崎駅4番線に 到着するE235系
山手線外回り大崎駅4番線に
到着するE235系
品川方面から到着した外回り列車は、折り返し列車とそうでない列車で別のホームに入ります。営業列車は通常通り3番線ホームに到着し、そのまま池袋方面へ向かいます。一方ここで折り返す列車は、始発・終着列車用の4番線に到着します。そこから大崎駅品川側にある引き上げ線に回送し転線します。その後1・2番線に交互に列車を振り分け、そこから折り返します。

埼京線は大幅増便

新宿駅停車中の埼京線直通池袋行きの相鉄12000系
新宿駅停車中の
埼京線直通池袋行きの相鉄12000系
山手線の減便列車を補うため埼京線「池袋~大崎」間で、大幅増便されました。埼京線・川越線内で運行する列車はダイヤをあまり弄らず、りんかい線と相鉄線からの超通列車の延長で対応されました。

山手線の横にある山手貨物線には、埼京線と湘南新宿ラインが運行しています。湘南新宿ラインは東海道線・横須賀線・高崎線・宇都宮線と長距離路線通しの直通のためダイヤを弄るのは難しく、ダイヤの弄りやすい埼京線を中心に増便したと想像できます。

りんかい線からの直通列車は大崎止まりの列車を延長するだけでなく、運行本数自体を1時間あたり数本増便し、赤羽駅と武蔵浦和駅行きの列車としました。

相鉄線からの直通列車は通常ダイヤでは新宿駅を折り返しを基本としていますが、池袋駅まで延長運転が行われました。そのため相鉄車の池袋折り返しも見ることが出来ました。

湘南新宿ラインは臨時ピストン列車

品川駅で横須賀線E235系と並ぶ臨時列車のE233系
品川駅で横須賀線E235系と並ぶ
臨時列車のE233系
長距離列車が多くダイヤを弄るのが難しい湘南新宿ラインですが、大崎駅を通過の「品川~新宿」間で30分間隔で折り返し運転が行われました。

新宿駅では普段埼京線の折り返し用ホームとなっている2番線ホームが、臨時列車の折り返しホームとなりました。埼京線は延長運転を行っているため折り返し列車が少なくなっているため、日中の2番線ホームは折り返し臨時列車だけが長々止まる、普段では考えられない贅沢な使い方です。

品川方面へ向かうため大崎駅を通過する臨時列車のE233系
品川方面へ向かうため大崎駅を通過する
臨時列車のE233系
「新宿~品川」間で列車は、「渋谷・恵比寿」のみの停車となっています。新宿と品川を行き来する列車は、新宿側大崎駅手前にある分岐線(厳密にはこっちが本線)を利用し山手貨物線と横須賀線を経由する必要があります。この大崎駅の真ん中を通る分岐線には、ホームが無いため、大崎駅は通過するしかないので通過となりました。

新宿行き臨時が表示される品川駅横須賀線の電光掲示板
新宿行き臨時が表示される
品川駅横須賀線の電光掲示板
臨時列車は横須賀線を経由するので、品川駅では横須賀線のホームを使うとスムーズに折り返せます。そのため横須賀線14番線ホームを使っての折り返しが行われました。ピストン列車はE233系やE231系が使われたため、横須賀線ホームでは普段見られないE217系やE235系とのツーショットが見ること出来ました。

このように様々な臨時列車とダイヤを駆使することで、混乱を抑えて工事を実施することが出来たのは見事だったと思います。また、私も含め珍しい光景に非常に多くの鉄道ファンが集まりました。今回は鉄道ファンによる大きな混乱が無かったのは良かったと思います。ただ、写真よりも録音するための棒を狭いところで使う人が多かったのはどうかと思いました。JRを見習い鉄道ファンも気を引きしめて、鉄道を楽しみたいものです。

また先に触れたように外回り線の工事が今後実施されると思われます。JRがどのような工夫で工事に挑み、どんな臨時列車が走るかも楽しみです。


2021年8月10日火曜日

2022年度から磐越西線一部再非電化へ - ゆくゆくは磐越西線全線非電化へ?




 2022年度より磐越西線「喜多方~会津若松」間が非電化工事を開始予定と報道されたことから、なぜ非電化するかや今後の磐越西線について考えてみたいと思います。


予定されているのは「喜多方~会津若松」間16.6km

会津若松駅に停車するJR東日本E721系とキハ40系
左が磐越線電化区間を走るE721系
右が磐越線非電化区間を走る今は引退したキハ40系
JR東日本が非電化化を検討しているのは磐越西線の「喜多方~会津若松」間で、営業キロにすると16.6kmで6駅が対象となっています。

福島民友新聞の8月4日の記事によると、8月3日に喜多方市はコスト削減を理由にJR東日本より2022年度から「喜多方~会津若松」間の再非電化化の予定を説明されました。これに対し市側は観光や直通列車への影響を懸念したと報道されました。

役目を終えつつある電化

磐越西線は福島県郡山駅~新潟県新津駅を結ぶ、全線営業キロ換算で175.6kmの路線です。そのうち約半分にあたる福島県内郡山駅~喜多方駅間の81.2kmが交流電化されています。

E721系指定席車両
快速列車に連結される指定席車両
この交流電化は1967年により一度に全線で行われ、上野駅から会津若松・喜多方へ直通する特急や急行が運行されるようになりました。その後東北新幹線が開業し、特急列車は「郡山~会津若松」へ縮小されていきました。高速道路の磐越道の延伸などもあり、現在では特急も廃止され快速列車に指定席が連結されるのみとなっています。

磐越西線は会津若松駅を起点とし運行系統が二分されています。「郡山~会津若松」間が電車列車、「会津若松~新津」間が非電化列車という住み分けになっていて、全線直通する列車はありません。その中で郡山方面への列車2本・喜多方方面1本が電化区間全線を走る列車となっています。

優等列車がほぼ廃止され電化区間の全線直通列車が減った今、市側の懸念はもっともなものですが、電化区間が縮小されてたとしても影響はかなり小さいのは事実です。

JR東日本は地上設備を減らしたい

鉄道は車両だけでなく架線・信号・踏切など地上にも設備が必要です。

JR東日本は将来の乗客や働き手の減少を見越して、地上設備のメンテナンスやコスト削減ののための投資を進めています。例えば海外でも進み始めている信号の無線化技術の開発や、踏切制御の無線化も進めています。それに加えてかなり以前から電車の架線を無くす、架線レス技術にも注目していました。そのため鶴見線では燃料電池車の実験などもする予定です。

その点架線を取っ払ってディーゼル列車など走らせるのは、ハイテクではありませんがシンプルな方法です。

交流車両は高価・電気式でディーゼルも高性能化
磐越西線全体の非電化化も現実的?

磐越西線は交流電化されているのですが、そこを走る交流用電車を簡単に言うと、直流用電車に交流を直流にする変換機を追加で載せた車両です。なので、その分通常の車両より少し高価になっています。

路線単体で見ると電化コストが高くても、周辺路線との車両の融通やメンテナンスコストに貨物列車との兼ね合いで電化が必要な場合があります。しかし、磐越西線の電化区間の場合、既に半分は非電化区間であり郡山側にも非電化路線の磐越東線があり、そちらと車両を融通しあえるようになります。そして郡山には非電化列車の車両の点検の出来る車両工場もあり、メンテナンス面でも問題ありません。

そして最近登場した電気式ディーゼル列車はエンジンで発電した電力で走る列車なのですが、加速性能は普通の電車並みに進化していてディーゼル列車より上です。正確な値段は不明ですが、ディーゼル列車よりはコストが高いものの、メンテナンスコストで有利になると考えられるます。

それらを踏まえると電気式ディーゼル列車のような新しい車両でを導入することで、利便性を落とさず非電化化も不可能ではありません。そして車両コストはあまり変わらないものの、地上の電化設備の分でコストを減らすことは可能かもしれません。

部分的な非電化化工事の結果や、701系の廃車に合わせた今走っている車両の転用計画など次第では、全線の非電化化の検討も決して不思議なことでは無いと思います。


2021年2月21日日曜日

東京メトロ17000系の東武東上線内試運転を振り返る




 2021年より本格的に実施された東武東上線での東京メトロ17000系の試運転を、乗務員訓練を中心に振り返ります。

2020年12月から本格スタート

東京メトロ17000系は有楽町線や副都心線で運行している7000系の置き換え用として導入された新型車両です。

東京メトロ17000系東上線内深夜試運転
東上線内深夜試運転
2020年1月に17000系の第一編成が製造されましたが、東上線では年末までは志木駅近辺での小規模な試運転に留まっていました。12月20日にやっと東上線の和光市から小川町まで入線し、技術者も添乗し誘導試験やPQ輪軸試験など東上線内での走行が問題無いかの最初の技術的な検査が行われました。その後は同様の目的で池袋まで入線しました。

深夜に最低限の技術的な確認が終わった後は、日中に小規模な入線試験が実施されました。

2021年1月23日からは乗務員訓練

技術的な確認が終わった後は、実際に列車を動かす運転手さんや車掌さんの訓練が始まります。17000系は東京メトロの車両ですが様々な路線に乗り入れます。そのため東上線へ車両を貸し出しての訓練となります。

東京メトロ17000系の東上線乗務員訓練初日
東上線乗務員訓練初日
年も変わり第1編成の製造から約1年の経った2021年1月23日からは、あいにくの雨でしたが東上線川越市駅~森林公園駅間で営業列車の合間を縫って乗務員訓練が開始されました。同区間を各駅に停車して往復しました。

訓練初日の様子


川越市駅に停車する17000系試運転列車
川越市駅に停車する
乗務員訓練の試運転列車
暫くは1編成が貸し出されて川越市駅~森林公園駅間で、ほぼ毎日乗務員訓練が行われました。

志木駅の電留線へ入線する東京メトロ17000系
志木駅の電留線に入る17000系
2月8日からは更にもう1編成が貸し出され2編成体制となりました。1編成は相変わらず川越市駅~森林公園駅間で乗務員訓練が続けられ、もう1編成は高坂~志木間で乗務員訓練が行われました。

川越市駅での17000系の並び
2編成になったため乗務員訓練列車同士のすれ違いも見られるようになりました。川越市駅では電留線で発車待ちの訓練列車の横を志木からの訓練列車が追い抜く一幕も見ることができました。

8000系とすれ違う17000系訓練列車
8000系とすれ違う訓練列車
次の週からは2編成とも川越市駅~森林公園駅間での乗務員訓練となりました。平日の上り訓練列車の1本は森林公園検修区から越生線への回送列車の一本前を臨時ダイヤで先行して走っていたため、後続の回送列車は坂戸駅手前で信号待ちが発生しました。上の写真はその信号待ちの列車とすれ違う下り訓練列車です。


東上線への17000系回送列車
東上線への回送列車
訓練列車は1ヵ月間行われましたが、その間に何度か列車は東京メトロの車両基地へ帰るために回送列車が設定されていました。おそらく簡単な検査が理由だと思われます。

様々な乗務員訓練の様子

2月21日営業運転開始へ

東上線での訓練は2021年2月20日まで行われました。そして翌日の21日の朝1本だけ有楽町線の新木場から和光市まで営業運転が行われました。

この時点で製造が完了しているのは17000系の10両3編成のみです。今後10両編成の車両も引き続き増備されるだけでなく、8両編成の車両増備されます。

そして全ての車両が揃ったのちに7000系は引退する予定です。

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2021年2月13日土曜日

東京メトロ17000系を紹介 - 有楽町線・副都心線用7000系置き換えへ




 東京メトロ7000系置き換え用に副都心線・有楽町線に導入される東京メトロ17000系を紹介します。

17000系の導入で7000系は引退へ

東京メトロ17000系試運転列車
東上線で乗務員訓練する17000系
東京メトロ17000系は東京メトロ有楽町線と副都心線用に、10両6編成と8両15編成が導入される予定です。10両編成は日立製作所製、8両は近畿車輛製と製造メーカーが違うのも特徴です。

営業路線としては東京メトロ有楽町線・副都心線の他、直通先の東武東上線・西武池袋線・東急東横線・横浜高速鉄道みなとみらい線となります。相鉄線については不明です。

置き換えが行われる
東京メトロ7000系
有楽町線と副都心線開通時から使用されている7000系は、10000系の導入時にも一部置き換えが行われました。そして今回の17000系で全てが置き換えられ、引退します。

丸みのある可愛い先頭車両

東京メトロ17000系先頭車両
先頭車両
車体はアルミ合金です。先頭車両は丸みのあるデザインとなっており、スカートも丸みのある柔らかいデザインとなっています。地下鉄用のため前面から脱出できるよう非常用の扉が付いています。

デザインのイメージ図を見たときはいまいちに感じましたが、実際に見てみると良い可愛いらしい良いデザインに感じました。

東京メトロ17000系日本製鉄MTC-001連結器
日本製鉄MTC-001連結器
連結器は密着連結器です。銘板による日本製鉄製で型番はMTC-001のようです。

東京メトロ17000系行先表示器
行先表示器
行先表示器はフルカラーLEDで、列車番号もフルカラーLEDが採用されています。

東京メトロ17000系LEDヘッドライト
前照灯
前照灯と尾灯ともにLEDが採用されています。前照灯はLEDを束ねたものを二つ備えます。

東京メトロ17000系尾灯
尾灯
前照灯の下に尾灯用の赤色LEDが搭載されます。こちらはまるでなく、デザイン性のあるものが採用されています。

東京メトロ17000系側面帯
側面帯
先頭車両のアクセント部
側面の帯は7000系や先代の10000系と違い、白が1色無くなっています。また、先頭車両だけアクセントがあります。

東京メトロ17000系ピクトグラム

ピクトグラムは上部に配置され非常時脱出用のドアコックも高い位置にあり、ホームドアがあっても問題が無いように配慮されています。

屋根上機器

東京メトロ17000系アンテナ
先頭車両のアンテナ
東京メトロではデジタル無線の導入をすすめており、先頭車両にはデジタル無線や乗り入れ先の他社線用に合計3本のアンテナが搭載されます。

東京メトロ17000系パンタグラフ
パンタグラフ
パンタグラフはシングルアーム式を採用し、10両編成では1両づつに1基で計4基搭載しています。そのため7000系や10000系のように1両に2基搭載する車両はありません。

東京メトロ17000系クーラー
冷房装置
冷房装置には集中式を採用し、1両に1基搭載されます。性能は58kWで7000系よりは橋梁であるものの、10000系とは同じ能力です。

冷房のカバーは全体的に角ばったものが採用されています。全体的に柔らかいデザインを採用しているので、ちょっと違和感を感じます。

床下機器

東京メトロ17000系台車FS781
FS781を採用
東京メトロでは整備不良とボルスタレス台車の特性により、苦い思い出があります。そのため10000系に続きモノリンク式ボルスタ台車を採用します。

東京メトロ17000系の台車銘板
銘板より日本製鉄製と分かる
形式はFS781で日本製鉄製です。モーター車もトレーラー車も同一の台車を使用します。

モーターはPMSM(永久磁石同期モーター)205kWを採用します。4M6Tで10両編成のうち4両がモーター車で、和光市方面を1号車とした時2・4・7・9号車がモーター車です。このMT比・モーター車の位置・モーター出力は07系と同じで、5M5Tの10000系と比べると先祖返りと言えるかもしれません。

ちなみに有楽町線・副都心線のMT比・出力の変遷としては、7000系(VVVF更新車)5M5T・165kW→07系4M6T・205kW→10000系5M5T・165kW→17000系4M6T・205kWとなっています。

加速度は3.3km/h/s、減速度3.5km/h/s、非常時減速度4.5km/h/sです。営業最高速度は110km/hで、設計最高速度は120km/hです。

ブレーキは回生ブレーキと路面ブレーキを備えます。

東京メトロ17000系SiC-MOSFET VVVF
VVVF(SiC-MOSFET)
VVVFは三菱製でフルSiC(炭化ケイ素)のMOSFET方式です。モーター車1両につき1群の、計4群を搭載します。

東京メトロ17000系SIV
SIV
ハイブリッドSiC
一方でSIVはSi(シリコン)も併用する三菱製ハイブリッドタイプを5・6両目に搭載します。SiCがこなれて来たといっても、扱う電流が少なく費用対効果の小さいSIVにフルSiCはまだ採用されないようです。

東京メトロ17000系コンプレッサー
コンプレッサー
コンプレッサーはオイルフリースクロール式で4台で1ユニットとしたものを、3・6・8号車に搭載します。

各先頭車両にはATO・ATC・ATSと自社と各社の信号システムを処理するための各種機器が搭載されます。また無線制御システムのCBTCにも対応準備がされています。

東京メトロ17000系TIS装置
TIS
車両のモニタリング装置としてTISが搭載されます。これにより車両の各装置の状態がモニタリングされます。そしてTISで収集された情報がTIMAへ送られ、指令室や車両基地でリアルタイムに監視できるようになっています。

VVVFで省エネ性能が大きく進みましたが、SiC-MOSFETやPMSMの採用で更にもう一段進んだ省エネ車両となっています。これら13000系とほぼ同じ仕様ですが、13000系は舵操舵台車で台車やMT比が特殊でした。なので東京メトロの20m車としては、この仕様がしばらく標準として採用され改良されていくと思います。

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