2018年8月13日月曜日

山手線などの完全自動運転を考える




2018年8月13日の読売新聞の記事で、山手線や京浜東北線に乗務員を乗せない完全自動運転を目指すという記事が出ていたので、現状の自動運転全般の問題から実現性について検討したいと思います。

どういった無人化を目指しているのか?


大崎駅停車中の山手線E234系
自動運転を目指している山手線

ベテラン乗務員の大量退職で、将来的に運転士や車掌などの不足が見込まれることに対応するのが狙いだ。
中略 
JR東が検討しているのは、列車に運転士が乗務せず、自動で運行するシステムの開発だ。第1段階として、緊急時の対応などのために車掌のみが乗車することを目指す。将来の完全無人の自動運行も視野に入れる。
以上の文章は2018年8月13日のYomiuri online 「山手線や東北新幹線、自動運転検討…運転士不足」より引用したものです。

有料記事だったので部分的にしか読めませんでしたが、概要は読み取ることが出来ます。

自動運転自体は既に普及している

・完全自動運転(ゆりかもめなどの新都市交通)
・ほぼ自動運転(新規路線や地下鉄の一部など)
・かなり部分的な自動運転(山手線や都市部の私鉄など)

まず日本での鉄道の自動運転技術について見てみましょう。今では採用路線が増えていますが、内容としては主に三つに分けられると思います。

一つ目は完全な自動運転で、「ゆりかもめ」など新都市交通で採用されているもので、ATO(自動列車運転装置)と呼ばれる装置を使います。運転士も車掌も乗務しておらず、遠隔からの監視のみとなっています。更にホームはスクリーンドアと呼ばれる大型のホームドアで仕切り、線路も基本は高架で人が入ることは出来ず、最初からその前提で作られた線路です。一方で駅の距離が数キロあり、一編成に数百人が唯に超える一般的な鉄道では採用されていません。

二つ目はほぼ自動で運転されているものです。これはつくばエクスプレスのような新規路線の他地下鉄でも採用されていて、完全自動運転と同じATOを使います。運転士は乗務していますが、車掌は乗務していません。運転手が基本的に操作するのはドアの開け閉め程度で、運転の操作は訓練や装置に不具合がある時などです。運転手の仕事は運転ではなく、列車・線路・ホームの安全を監視するのが主な役目です。ホームにはホームドアが設置されている他、運転室にはホームを確認するために駅ホームの映像が無線通信で映るモニターが付いています。完全自動運転と同じく線路に人が入れないよう設計された、新しく建設された路線に採用されていることが多いほか、地下鉄のようなホームに仕切りさえ作れば人が線路に入れなくなる路線では、後付けで採用されています。完全自動運転と違い、10両編成で沢山の人が乗るような大都市の中心路線にも採用されています。

三つめはかなり部分的な自動運転です。私鉄JR問わず設置されていることがあり山手線にも採用されていて、TASC(定位置停車装置)が使われます。運転士と車掌が乗務し、運転も殆ど運転士が行います。電車が駅に止まる最後の段階だけ自動運転となります。この装置は自動運転というより、ホームドアがあったりホームの長さに余裕がなかったりと、停車位置がシビアな路線で運転手を補助するための装置です。

第一段階であればかなり簡単だが

日本で普及している自動運転を三つに分けて解説しましたが、山手線の自動運転が目指す第一段階までであれば、比較的容易に達成することが出来ます。他の路線での実績も多く、地下鉄のような非常に多くのお客さんが乗る路線でも問題がないことが分かっているからです。

そして自動運転の中心となるATOという装置は、完全自動運転でもほぼ自動運転でも使っているので、自動で電車を動かすだけならある程度は可能です。山手線が目指す第二段階の完全自動運転では、他の部分を中心に問題があります。

・設備の更なる改修が必要
・乗客の多い路線での実積がまだ無い
・自動運転のためのデータが必要
・非常時の安全確保をどうするか

一つ目は設備の問題で、今よりも更に人が入りにくい構造にする必要があります。まず現在設置されているようなホームドアではなく、スクリーンタイプに更に改修する必要があります。その他については山手線は踏切が一か所ある以外人が入るところがなく、線路を覆うフェンスも有刺鉄線に加え他では見られないトゲが付いているものに変更されているので、時間と予算さえあれば今の技術で解決するのも不可能ではないでしょう。

二~四つ目は重なる部分もあるのでまとめて解説します。山手線は日本の路線でも乗客が多く、そのような路線にいち早く導入するのは賛否があると思います。

雨や雪などが降ると自動運転では、列車が上手く停車出来なかったりします。運転手がいる場合は、手動で対応することで対処しますが、完全自動運転の場合はそれが出来ません。それに対応するためには、実際の天気や運転手・車両のデータをもとに自動運転を開発する必要がありますが、そのためデータも不十分だと想像できます。これについてはデータの蓄積で段階的に対応する必要があるでしょう。山手線の最新型車両E235系には、様々な情報を記録するモニタリング装置が搭載されています。なので、現在の運転の状況を記録し実現が比較的容易な第一段階に向けて開発を行う。そして第一段階での自動運転の記録を取り続け、対応出来なかった時のデータをもとに、システムを向上させれば最終的には列車の運転が可能でしょう。

一番厄介な問題は非常時の安全確保です。日本は台風や地震に見舞われることも多く、予期せぬ機械的なトラブルは絶対に起きるもので、駅以外での緊急停止は避けられません。その時は駅から誘導員を派遣するわけですが、山手線は駅の間が短いので比較的有利な条件ではあります。しかし、火災のような咄嗟の判断が必要な場合では、どう考えても間に合いません。車内をモニタリング出来るようにしても、トラブルの影響で必ず使えるかは分かりません。新都市交通もこの点は一緒ですが、ほとんどの場合は高架を走り、乗客も山手線ほどではないので、まだ安全性を確保し易いと思います。一方で乗務員も完ぺきではないので間違った判断することもありえます。過去の例を見ると事故がより広がったり、逆に最悪の惨事を防げたこともあります。ただ、現状においては乗務員は居ないより居るほうが安全なことに、異論はないでしょう。

人件費削減の狙いも想像できる

技術的な問題を中心に見てきましたが、人件費という経営的な部分も外せない部分でしょう。

鉄道会社では車両や設備の保守に駅員などは、外注や契約社員にして経費削減してきました。その中で聖域的に守られてきたのが乗務員です。ここを削りたいのは言うまでもないでしょう。この点から早急に完全自動運転化させたいのなら、危険と言えるでしょう。

技術的には着実に歩みを進めていけば不可能ではない自動運転ですが、それ以外の要因で早急に進めると危険なのも事実です。より良い鉄道へと発展することを願っています。

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