2017年12月3日日曜日

鉄道技術展2017に行ってきた「広がる無線無線信号システム・ディーゼルエレクトリックの波」編




前回の「山手線の新技術・足元を支える台車技術」編引き続き鉄道技術展2017について、テーマ別に紹介していきます。今回は「広がる無線無線信号システム・ディーゼルエレクトリックの波」編です

広がる無線無線信号システム

大崎駅停車中のE233系7000番台
首都圏発の無線信号システム運用中のJR埼京線
日本ではJR東日本の仙石線に続き、埼京線でATACSによる無線信号が2路線で運用されているに留まります。一方海外の新規路線などでは無線信号が普通になりつつあります。そして日本の信号メーカーも各々が開発を進め、それぞれ特色を出そうとしています。

無線障害への耐性が強み

日本信号

そんな中日本信号は前回に続きSPARCSについて展示していました。このSPARCSは日本信号が開発したシステムの名前で、北京の地下鉄で採用されています。

無線信号システムはシステムが簡素化される分、機器が減ったことによる故障率の低減やコスト削減などのメリットがあります。しかし、無線の電波自体が届かなければ上手く動作しないという、当たり前のようなデメリットがあります。そして電波が上手く届かない理由に、電波の妨害・干渉などがあります。

SPARCSはこの部分に強く、北京の地下鉄での採用コンペで競った3社の中では1番だったそうです。近年は様々なものが無線化されていて、電波の干渉や使える帯域の減少などの問題は増える一方です。身近な例だとスマホやパソコンを繋ぐ無線LANも、各家庭同士がたくさんの無線LAN機器を使うことで、速度低下などが発生しています。この妨害に強いという特徴は、今後無線信号が普及する上で非常に需要なのではないかと思います。

より強固なシステムへ

京三製作所

京三製作所は無線信号システムを補う技術を展示していました。一つはドップラーアンテナによる速度計測です。鉄道車両は車軸に速度を計測するための速度発電機という装置を装着していますが、雨で車輪が滑ったりすると誤差が発生します。それを避けるためにドップラーレーダーを搭載し、地面に向けて電波を照射することで速度を求めるという技術です。

二つ目はGNSSと呼ばれるGPSなどを利用した衛星測位システムの位置情報を元に、速度を計算する方法です。スマホのナビで自分の位置が間違って表示されたりしますが、単純に位置情報を利用すると同様の問題が発生します。そこで位置情報を求めた後で明らかにおかしい情報を捨て、使えるデータだけを使うようにしています。

技術的な点以外に注目すべきなこととして、二つ目のGNSSを使った技術ではある程度技術を開放している点です。特許自体は京三製作所が持っているものの、場合によっては他社に無料使用を認めるというものです。

パソコンの世界では当たり前のことですが、鉄道業界では珍しい用に思います。こういった取り組みが広がり上手くいくのかも、興味深い点です。

ディーゼルエレクトリックの波

ディーゼルエレクトリック方式は、ディーゼルエンジンで発電してその電気でモーターを動かし走る、海外では割とポピュラーな方式です。日本ではJR貨物のDF200形が採用ていて、JR東日本・北海道も国鉄型気動車の置き換えで本格採用を決定しています。そのディーゼルエレクトリックを支えるのに必要な、ディーゼルパワーユニットも展示されていました。ディーゼルパワーユニットはエンジンを中心に複数の機器まとめ、一つのユニットとしたものです。

日本に食い込めるか
富永物産・MTU

富永物産のブースには、珍しい海外製ディーゼルパワーユニットが展示されていました。〇〇物産とあるように、製造を行っておらず商社としての展示です。製造はMTUフリードリヒスハーフェンという、ロールスロイス系列の会社です。船舶・鉄道・農機など様々な分野のディーゼルエンジンを作る会社です。

展示されていたのは「PowerPacks」と言うシリーズで、ヨーロッパでは約6500台の納入実績があるそうです。このエンジンユニットは必要に応じて様々な組み合わせが可能です。エンジンのみで走ることも、発電機として使いモーターで走ることもでき、設置も床下から屋根上まで対応しています。なので、ケースごとに細かいオーダーメイドに対応します。

良いところでも悪いところでもある日本企業の保守的な風土もあってか、今のところ日本の営業車での実績はないそうです。展示されていたものも、日本で試験で使われていたものだそうです。そこで今は日本企業の海外向け案件に力を入れていこうと、考えているそうです。


ブラッシュアップで生まれた日本製DPU
中村自工

中村自工は様々な熱交換機や鉄道部品を作っている会社で様々なものを展示していましたが、一際目を引いたのはディーゼルパワーユニットです

冷却装置にあたる熱交換器を中村自工が自社製造し、それに小松製ディーゼルエンジンや東芝製永久磁石同期モーターを組み合わせた、オールジャパン仕様の製品です。以前からこういったものが欲しいという話はあったそうで、試作もしていたそうです。それをさらにブラッシュアップして製品化に至ったそうです。

こちらは先ほどの「PowerPacks」とは対象的な製品です。仕様用途は、完全にディーゼルエレクトリックタイプの車両に絞ったものです。調整的な細かい仕様変更はあっても、オーダーメイドのような大幅な変更に対応した製品ではないそうです。

今回二社がディーゼルパワーユニットを展示していましたが、作っている会社も製品コンセプトも対照的でした。日本の気動車は変革期入ると思うので、様々な会社が競争していけば、趣味的には面白くなり技術的にも更に良くなると思います。今後も同行に注目したい部分です。

前回「山手線の新技術・足元を支える台車技術」編

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