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2022年6月7日火曜日

報道の印象と違う?蒲蒲線計画の都と大田区の合意について解説




 大田区と都が2022年6月6日に合意した新空港線(通称:蒲蒲線)の発表内容について解説します。見ていただくと報道とは印象も変わってくる部分もあるかと思います。最初に簡単にまとめて細かい点を解説していきます。

京急1000形
蒲蒲線は京急への乗り入れも目指すが
実現なるか…

簡単には補助金の支払の一部と大田区が主体になることを合意

1 大田区は、整備主体となる第三セクターに出資、都市鉄道利便増進事業の採択に向けた調整など、本事業を推進する主体となる。

2 東京都と大田区は、都市鉄道利便増進事業の地方負担分について補助を行う。その負担割合は、東京都が3割、大田区が7割とする。 

3 大田区は、整備主体となる第三セクターとともに、本事業の事業計画の検討に当たり、事業費の圧縮に努める。 

4 本事業の都市計画決定及び都市計画事業認可の後、大田区が本事業を特別区都市計画交付金制度の対象事業とすることができるよう、東京都と大田区は調整を行う。 

5 空港アクセス利便性の向上に資する京急蒲田から大鳥居までの整備について、東京都と大田区は、引き続き実現に向けた関係者による協議・調整を行う。

6 上記合意事項の実現に向けて、東京都と大田区は、責任を持って必要な対応を行う。

大田区ホームページ
「新空港線(矢口渡~京急蒲田)整備事業について」より引用

上の文章は2022年6月6日大田区と都が合意した発表したことについて、大田区ホームホームページにあった内容です。

以上より簡単に解説すると、大田区が事業の中心となり、今後第三セクターを設立する。都と大田区で「都市鉄道利便増進事業」という制度の補助金の支払い割合を合意した。今後もコスト削減に努める。都と大田区で具体的な計画を決め、特別区都市交付金という都からの出資を受けられるようにする。今回決まったのは東急多摩川線矢口渡駅~京急蒲田間で計画路線の一部分、京急蒲田~大鳥居間は今後も協議する。それらが実現できるよう、都と大田区は努力するといった具合です。

実際に路線建設に至るには様々な申請が必要で、そういったことはまだと分かります。なので建設を決定したわけではありません。

それではそれぞれについて、1~6を細かく見ていきたいと思います。

1.大田区が中心に事業を進める

この新規路線は線路や駅を第三セクターが建設し保有し、東急など鉄道会社へレンタルして実際に運行を行してもらう想定です。なので、大田区が第三セクターに出資することで、中心的に事業を進めることができます。それで中心に事業を進めるとなったのです。

都市鉄道等利便増進法というのがあり、その法律に基づいて行われるのが都市鉄道利便増進事業です。これを利用すると国・自治体が3割づつ費用を補助金で負担してくれて、実際の支払いは残り3割のみでよくなります。なので事業が認可されるように努力するということです。

2.都と大田区で補助金の支払い割合決定

先ほどの都市鉄道利便増進事業で自治体が3割支払うとありましたが、この割合を都が3割・大田区7割と決めたということです。総事業費が1360億円の予定なので、単純計算で自治体支払い分が3割で453億円、大田区はその7割で約317億円支払うことを合意したことになります。

実際には都からの資金や第三セクターへの出資があるので、支払い金額はそこから増減します。

3.コスト削減を頑張ります

これに関してはあまり言うことはないのですが、1000億円を超える事業なのでコスト削減を頑張りますというこです。

4.東京都からの資金を受けられるようにする

簡単に言うと計画をちゃんと決めて、都から認可してもらい、都から資金を受け取れるようにするという話です。

この辺りは私も理解しきれてないので、間違っていたら申し訳ないのですが、解説していきます。

都市計画法という都市の開発に関する法律があるので、まず大田区が具体的な計画を決めた都市計画を決定します。そうすると都道府県、この場合は都が認可することで、都市計画事業というものになります。そしてその財源が都が交付する特別区都市計画交付金制度というわけです。

5.今決まっているのは路線の一部分

今回の話の対象となっているのは、「矢口渡~京急蒲田」間で計画の一部のみ、「京急蒲田~大鳥居」間は引き続き調整するということです。報道によると2030年代に、部分開業を目指すとしています。

新空港線(通称:蒲蒲線)は東急矢口渡駅から蒲田駅・京急蒲田駅を経て、京急空港線大鳥居駅まで繋がる路線です。元々「矢口渡~京急蒲田」間を第一整備、「京急蒲田~大鳥居」間を第二整備として分割して建設する予定です。なので、第一整備の区間のみ話がまとまったということです。

6.これからも対応を続けていく

このように見ると実際の路線新設にまだまだなことだらけとわかります。なので、引き続き都と大田区がで対応していくということです。

以上が大田区と都が合意した内容の解説です。こうやって見ると報道の内容や印象と違うところも見えてきたのではないでしょうか?

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蒲蒲線(新空港線)ってどんな計画でメリットや問題は?




 羽田空港へ向かう新空港線として計画されている通称「蒲蒲線」が、どんな計画でどんなメリットや問題があるのか紹介します。

記事作成: 2022.06.06/記事更新: 2022.06.07

そもそも蒲蒲線って?

東急5050系
蒲蒲線に乗り入れるかもしれない
東横線の列車
蒲蒲(かまかま)線という通称で呼ばれている新空港線ですが、東急矢口渡駅から京急大鳥居駅までを結ぶ計画の路線です。

東急多摩川線矢口渡駅を出て環八を越えたあたりで分岐し、まず地下に潜ります。そこから蒲田駅・京急蒲田駅を経て、京急空港線の大鳥居駅手前で空港線に合流し、大鳥居駅に至ります。そこから京急空港線に乗り入れて、羽田空港を目指します。蒲田駅と京急蒲田駅を結ぶのが、蒲蒲線という通称の由来です。

これによって東京メトロ副都心線・東急東横線方面から東急多摩川線を経由して列車を乗り入れさせ、東京西部や埼玉方面からの羽田空港へのアクセス向上を狙っています。

矢口渡~京急蒲田間を「一期整備」、京急蒲田~大鳥居間を「二期整備」とし、二段階で新設する計画です。一期整備区間を2030年代までに完成を目指しています。

計画の中心は大田区が担います。線路などの設備を大田区が出資する第三セクターが整備し、実際の営業は東急が運行することを大田区は想定しています。総事業費は1360億円を見込んでいます。

どこまで計画は進んでいるのか?

必要予算や路線の大まかな計画を立てるところは既に完了していて、予算の出資割合や出資者を募っている段階です。今決まっているのは都と大田区が補助金の支払いについて、一部合意しているところです。

この後に出資者同士や運営を委託する東急などと調整を行い、実際に国などに計画を申請して認可や補助金などを受けられるようにし、実際の建設に移る必要があります。なので、かなり実現性が高まっていますが、まだ本当に計画が実施されるか分からないところがあります。

時間よりも乗り換えの楽さ?

効果が期待させている東横線方面渋谷駅から、どんぶり勘定ですがどの程度早くなるか予想してみたいと思います。

今の山手線・京急の場合、山手線「渋谷~品川」間が約13分、京急「品川~羽田空港第1・第2ターミナル」が快特で約15分、乗り換えが5~10分と考えると32~37分といったところでしょうか。

東急経由で東横線「渋谷~多摩川」間が現在と同じ急行で約13分、多摩川線「多摩川~蒲田」間は現在と同じ普通で11分と想定、「蒲田~京急蒲田」間を3分程度と想定、京急線「京急蒲田~羽田空港第1・第2ターミナル」は現在の急行と同じ11分と想定で、38分程度という予想になります。

蒲蒲線への列車を東急線内特急で、京急蒲田から大鳥居以外止まらない快特とほぼ同じ停車駅にすれば、もう少し早くはなるかもしれませんが、5分早まれば御の字といった具合だと思います。ただ、後述する東急線の本数や京急の立場を考えると、特急や快特並みにするのは難しいとも思います。

こう見てみると時間的には大幅に早くなるかは微妙なところです。ただ、計画が謳う通り東横線や副都心線方面からであれば、乗り換えがなくなる分こちらを選択する人も少なくないと思います。

もう少し具体的なメリットは?

想定としては東横線・副都心線を経由して東武や西武からの列車も直通することで、新宿方面に埼玉方面からの羽田空港へのアクセスが向上します。南北線や都営三田線と直通する目黒線からも東横線に簡単に乗り換えられるので、多くの人が羽田空港へアクセスする際に楽になると思います。

蒲田駅と京急蒲田駅は800mほどあります。そこが鉄道で結ばれれば大田区内の移動も楽になります。

鉄道会社としては東急と京急が関係してきますが、東急に関しては主体が大田区であるので、比較的小規模な投資で新たな乗客を確保できる可能性があり、乗らない手は無いといった感じです。

一方で京急は微妙な立場です。アクセス向上の期待できる東京西部や埼玉方面の乗客は、今であれば品川から京急に乗って、羽田空港に向かう乗客が多く含まれています。品川から羽田空港と大鳥居から羽田空港では、当然前者のほうが京急の利益は多くなります。しかし、新しい経路での需要創出が多少考えられる事や、JRも新しい羽田空港への路線を計画しているので、乗らざる得ないといった状況なのではないでしょうか。

そして主体となる大田区としては、この新路線による効果で街づくりの起爆剤としようとしています。具体的にはリニア完成による羽田空港の国際線への発着枠増加するとの予想からの外国人需要の増加、空港や京浜工業地帯への近くという立地、飲食店の多い土地柄、そういったものを絡めて街の活性化や企業誘致へ繋げようと考えているようです。

大田区民の負担は少なくない

予算について実際に決まったわけではありませんが、今決まっている都市鉄道利便増進事業の負担割合を見るに、単純計算300億円を少し超える負担は決まっています。第三セクターへの出資も考えると、ほかの補助金などを活用しても300億円は確実に越える負担になりそうです。

ただ、大田区は区の予算を3000億円で組める規模なので、普通の都市では考えられない予算規模でも、何とかならないわけではありません。しかし、区民への負担は決して小さくないと言えます。

難しい車両の問題

予算さえ付けば第一期整備の矢口渡~京急蒲田間は、実現可能です。ただ、車両や運用については、調整がかなり面倒になりそうです。多摩川線の列車が乗り入れるだけであれば問題ないのですが、東横線方面からの列車乗り入れが多摩川線を走るのに課題があります。

最初に車両についてですが、多摩川線の列車は18mの3両固定編成です。東横線や副都心線の列車は、20mの8両か10両編成のどちらかです。多摩川線の列車が東横線方面へ乗り入れるのは、需要に対して車両数が少なすぎる上に、ホームドアの問題があります。東横線の列車が多摩川線方面へ乗り入れるには、18mより長い20mへ車体・8~10両の長い編成に対応できるよう、線路や駅を様々な改造が必要があります。ただし、車体の問題に関しては、18m路線の20m化は日比谷線という例があるので、線路側は最低限で主に車両側の対応で可能な場合もあります。

運用については東横線があっちこっちに乗り入れているので、そこへ更に乗り入れ路線を増やすという点です。東横線はみなとみらい線・東京メトロ副都心線が既に乗り入れており、さらに東急新横浜線が乗り入れる予定で、各乗り入れ路線には更に複数の路線が乗り入れてます。既に超複雑な乗り入れ路線網に、更に多摩川線経由で蒲蒲線乗り入れるという問題があります。

また、多摩川線は今は普通列車しか運行しておらず、特急など駅を通過する列車はありません。もし特急として走らせるのであれば、駅を通過できるようダイヤや設備の調整が更に必要になります。

難しい線路の幅の問題

第一整備までは、面倒というだけで不可能ではありません。問題は第二整備の京急蒲田~大鳥居間です。

大鳥居から先は京急の線路を走るわけですが、京急の線路幅は1435mmで東急の線路幅は1067mmで幅が違い、このままでは走れません。技術的には線路を4本や3本ひいて、両方の幅に対応させることは可能です。しかし、線路が増える分メンテナンスが大変になり設備故障原因も増えるので、鉄道会社的にはやりたくないというのが本音です。

フリーゲージトレインという線路の幅が違っても走れる車両を使う案もあるのですが、車体コストが高くなることや開発がとん挫に近い状態で完成していないので、現時点では案としてはほぼ無い状態です。

さらに空港線は結構な本数の列車が走っているため、京急としては、お客さんを取られてしまうかもしれない蒲蒲線からの列車へ本数を割きたくないとも想像できます。

そういった理由から京急への乗り入れに関しては、実現が疑問視されているだけでなく、京急へは京急蒲田での乗り換えで対応して、第一整備で計画が打ち切りになるのではという見方もあります。

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2022年3月31日木曜日

東上線の電車も走るかも? 有楽町線「豊洲~住吉」間延伸決定へ




 2022年3月28日に東京メトロ有楽町線の「豊洲~住吉」間の延伸が決定しました。開業は2030年代半ばの予定です。延伸区間の解説を中心に、もしかしたら東上線からの回送列車が走るかもという点にも最後触れます。

川越市駅に到着する東京メトロ10000系
有楽町線でも使われる
東京メトロ10000系

約5kmの延伸へ

建設キロ: 4.8km
事業者: 東京メトロ
総建設費: 約2690億
開業目標: 2030年半ば

都区内東部の利便性向上、スカイツリーや豊洲市場などの観光地へのアクセス向上、東西線の混雑緩和を理由に建設が決定されました。

建設区間は「豊洲~住吉」間4.8kmです。ルートは半蔵門線住吉駅側からみると、東京都道465号線四ツ目通りの真下を通り南下し、JR東日本のレールを管理している越中島貨物駅付近の汐見運河とぶつかったところで西へ向かい、新木場側から豊洲駅直前で有楽町線に合流し終点の豊洲駅に至る経路です。

途中駅は3駅作られる予定で、新駅二つと既存駅との接続駅1つとなります。住吉側から見ていくと江東区千石2丁目あたりに新駅が一つ、既にある東西線の東陽町駅に接続して一つ、汐見運河にぶつかったところから西へ向かって首都高9号深川線とぶつかったあたりの江東区枝川2丁目のあたりに新駅が一つ、そして豊洲駅に至ります。

第三セクターなどを作るのではなく、事業者は東京メトロです。なので利用者としては東京メトロと同じように使え、負担は小さくなっています。

建設費は約2690億円です。同時に申請された南北線の延伸区間が2.5kmで1310億円なので、概ね距離に比例して倍額となっています。詳細な費用の調達方法や内訳は調べられなかったのですが、整備新幹線など様々な運輸事業に関わっている独立行政法人の鉄道・運輸機構からの融資や補助金により建設されます。最近の鉄道建設事業を見ると東京メトロの実質的な負担は建設費の3割ぐらいと予想します。

やっと準備されていた設備が活躍へ

始点と終点となる半蔵門線の住吉駅と有楽町線の豊洲駅は、開業時から元々延伸が可能なようになっている構造で駅が作られています。

どちらの駅も今営業用で使っている線路とは別に延伸路線用の線路が設置されており、留置線や臨時のホームスペースとして活用されています。

どういった形の乗り入れ形式となるか

列車の運行形態について発表はまだありません。

配線の構造的に半蔵門線は押上方面からの列車が、有楽町線は和光市方面からの列車が延伸区間に乗り入れが可能です。

有楽町線と半蔵門線の都心部の駅の位置関係を考えると大きく乗り入れる意味はあまり無さそうに思えます。また有楽町線各駅から住吉駅より、半蔵門線各駅から豊洲方面への需要の方がまだありそうに思えます。

そう考えるとピストン運行か、半蔵門線側からの住吉駅への乗り入れとなりそうです。

本線列車との顔合わせや

東上線からの検査列車が直通するかも?

東上線からの営業列車が走ることは無いと思いますが、一部回送列車が走る可能性はありそうです。

東武東上線と越生線は他の東武鉄道の路線からは独立しています。そして、東上線車両の全般検査や重要部検査を行っていた川越工場を閉鎖しました。そのため秩父鉄道を経由して南栗橋の工場まで検査列車を送るという、変わった形態になってしまいました。それが豊洲駅で半蔵門線と繋がれば、地下鉄車両は比較的簡単に東上線と本線を行き来することが出来るようになります。

半蔵門線は車両限界が有楽町線より少し小さく地下車でも50070系の一部しか乗り入れ不可能な点、半蔵門線の信号システムにCBTCを導入する予定などの問題点もあります。しかし、乗り入れ開始が10年以上先なので、東上線の地下車の大半の9000系もさすがに更新がされている可能性が高く、その頃には有楽町線もCBTCに更新となってもおかしくないので、東上線の検査を行う車両が走る可能性は十分ありそうです。

先ほど説明したよう東上線と越生線の位置の関係上、普段は本線との車両とは顔を合わせません。しかし、地下鉄線を経由しては顔を合わせており、中目黒駅で日比谷線直通の本線の車両と東上線からの副都心線直通の車両が他社の駅で顔を合わせています。なので新線が開業されれば、豊洲駅でも顔合わせをするようになるかもしれません。


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